Chapter: 《18番外編》もし、穴織と恋愛していたら⑰戸惑う穂香に、涼は少し拗ねたような顔をする。「穂香が、付き合ってることをできるだけ隠したいって言うから、これでもだいぶ我慢してるねんで? なぁなぁ、文化祭は一緒に回っていい?」涼は急に胸ポケットを叩くと「しつこい男は嫌われるって……うっさい、ジジィは黙っとれ!」と小声で話している。「あ、もちろん、穂香が嫌なんやったら断ってくれてもいいけど、ほら、俺って幸せな気分を味わっておかないと死ぬやん? 俺が長生きするためにも、できるだけ穂香と一緒にいたほうがええと思うねん」「涼くん……」涙を浮かべながら、穂香は抱きついた。「良かった……。私の妄想じゃなくて。私達、ちゃんと付き合ってたんだね」「え? ええー!? どういうこと!?」戸惑いながらも涼は、穂香を抱きしめた。*その一か月後。現実の世界に戻った穂香と涼は、相変わらず仲良く付き合っている。(と言いたいところだけど……)穂香は、隣を歩く涼を見て、こっそりとため息をついた。(最近の涼くんって、ボーッとしてたり、何か悩んでいそうだったり、急に赤くなったりして変なんだよね)「えっと、涼くん、大丈夫?」「へ? 何が!?」「何がって……もしかして、穴織家のおうちのことで何かあった?」「ないない! 何も問題ないでー」ニコニコと明るい笑みが向けられる。「じゃあ、えっと&
Last Updated: 2025-05-02
Chapter: 《17番外編》もし、穴織と恋愛していたら⑯賢者から怪しい瞳を向けられて、穂香は一歩後ずさった。(研究だなんて怖い。でも……)「りょ、涼くんのためなら――」そう穂香が言ったとたんに、涼は賢者を攻撃した。また見えない壁に弾かれ攻撃は届かなかったが、賢者は明らかに怯えている。「暴力反対!」そう呟いた賢者の目には涙が浮かんでいた。「死にたくなければ、さっさと教えろ」「ちょっとした冗談なのに……」「今のは嘘やな。ということは、本気で穂香を研究するつもりやったってことや」「分かった。君は怒らせてはいけない奴だってことは分かったから。落ち着いて!」穂香は、涼の袖を小さくつかんだ。「涼くん、教えてもらおうよ。私、涼くんとずっと一緒にいたい……」「穂香……」ため息をついた涼は、少し落ち着いたようだ。「分かった。もう手は出さん。その代わり、賢者も穂香には手を出すな」「はいはい。じゃあ、学校が元に戻るまで君達の話を聞かせてよ。それならいいでしょ?」「まぁ、それならええか」穂香と涼は、それぞれの抱えている事情を話した。話が進むにつれ、賢者の目はキラキラと輝いていく。「じゃあ君は、その恋愛ゲームってやつの中に閉じ込められてて、そっちの君は次元の穴を閉じることができる一族なんだね。なんて面白い!」小躍りしながら喜ぶ賢者を見た涼が「本当にコイツ、頭ええんか?」と疑っている。そのとき、それまで静かにしていたおじいちゃんが声を
Last Updated: 2025-05-01
Chapter: 《16番外編》もし、穴織と恋愛していたら⑮(紫色の髪?)しかもフードの下に隠されていた顔は、とても整っていた。(女性……ではなく、色白イケメン!? あれ? この人、私の恋愛相手候補とかじゃないよね?)混乱する穂香をよそに、涼は紫髪の青年をにらみつけている。「おまえ、こんなことをして何が目的や」冷たい問いかけに、青年は首をかしげた。「あれ? 勇者じゃなかった。君、誰?」「それはこっちのセリフや!」「わっ、ちょっと待って! 私は戦闘得意じゃないから!」涼の攻撃をかわしながら、青年は何もない空間に手をかざした。すると、そこに穴が開く。穴の中は真っ暗だ。その穴の中に、青年が飛び込むと同時に穴も消える。「涼くん、大丈夫?」穂香は、呆然としている領に駆け寄った。「大丈夫やけど……」涼の瞳は、先ほど穴が開いた空間を見つめている。「あいつ、穴を開けた上に、閉じた」「それって、何か問題が?」穂香の質問には、おじいちゃんが答えてくれた。『化け物は、穴を開けられるが閉じることができん。だからワシらが代わりに閉じて回っている』「ということは、さっきの人は化け物じゃないってこと?」『分からん。より強い化け物の可能性もあるな』「そんな……」『先ほど涼も言っていたが、そもそも、この学校を取り巻く気配がおかしい』赤い瞳が穂香を見つめている。「穂香、も
Last Updated: 2025-04-30
Chapter: 《15番外編》もし、穴織と恋愛していたら⑭涼が言うには、学校全体が怪異に飲み込まれてしまっているそうだ。「学校全体が!?」「早く犯人探しをせんと……」涼が校内に入ると、着ている制服が変わった。それは、夢で見た軍服と着物を混ぜたような制服だった。「涼くん。それ、前の学校の制服なんじゃ……? あ、髪も伸びてる」涼の長く赤い髪は、一つにくくられていた。「ここに来る前は、そういう感じだったんだね」「み、見んといて……」「え?」「お、俺の黒歴史、見んといてぇええ!!」「ええ!?」涼は、半泣きになっている。「ちゃ、ちゃうねん! これは、俺の趣味じゃないから! だって皆、こういう制服やったし、穴織家の一族のもんは、力が強くなるからとかいって、髪を伸ばしてて!」「落ち着いて、大丈夫だよ! その姿、夢の中では何回か見てるし! それに、その姿もすごくかっこいいよ! ほ、ほら、アニメとか漫画のコスプレみたいで!」その言葉が涼の傷をえぐったらしく、涼は「あああああ!」と叫びながら頭を抱えている。『涼! 遊んでいる場合か!?』「はっ!? そうやった! 犯人を捜さんと!」すばやく周囲を見回した涼は、「アカン、怪異の影響で学校内に入った生徒の服装が変わっとる! 誰が誰か分からん!」と首をふった。穂香には、相変わらずモブの姿は見えていない。『この中から瘴気の発生源を追えるか?』「無理やな。学校中に変な気が充満してて、元をたどれへん」『ならば……穂香なら犯人を見つけ
Last Updated: 2025-04-29
Chapter: 《14番外編》もし、穴織と恋愛していたら⑬【同日 夜/自室】(涼くんと別れて、自分の部屋まで帰ってきてる)なぜか夜の自室にいる自称幼馴染のレンには、もう慣れてしまった。「穂香さん、お帰りなさい」「ただいま……」「なんだか元気がありませんね? 穴織くんと、うまくいってないんですか?」「そうじゃないんだけど。ねぇ、レン。この恋愛ゲームの世界ってハッピーエンドあるよね?」レンは、緑色の瞳を大きく見開く。「もちろんありますよ。ゲームなんですから」「そうだよね? だったら、もし、涼くんに不幸な設定があったとしても、私がなんとかできる可能性ってあるのかな?」「あるでしょうね。恋愛相手が不幸な状態では、向こうも告白なんてしてくれないでしょうし」「だよね⁉ じゃあ、やっぱり私が涼くんの問題を解決できるかもしれないんだ……そうと分かれば」穂香は勢いよく立ち上がった。「明日に備えてもう寝る!」「頑張ってくださいね」レンが立ち上がると、風景が変わった。【10月11日(月) 朝/玄関】(あれ? 日曜日が飛ばされて月曜日になってる!?)『頑張る!』と張り切ったものの、何をしたらいいのか分からず、1日がすぎてしまったようだ。(家にいてもイベントが起こらなかったから、学校に行けば何か起こるかな?)玄関を開けると赤い髪が見えた。こちらに気がついた涼は、ニコッと明るい笑みを浮かべる。「穂香、おはよう!」「おはよう、涼くん」
Last Updated: 2025-04-28
Chapter: 《13番外編》もし、穴織と恋愛していたら⑫それからは、配布する用のプリントを印刷したり、文化祭準備の手順を確認したりして、気がつけばお昼どきになっていた。【同日 昼/教室】目の前に浮かんだ文字を見て穂香は、向かいの席に座り作業している涼に「お腹空いたね」と声をかける。「ほんまや、もうこんな時間か!」あわてて立ち上がった涼は、「行こう!」と、穂香に右手を差し出した。「どこへ?」「そりゃあ、もちろん『遊びに』」満面の笑みの涼に手を引っ張られると、風景が変わった。【同日 昼/商店街】(学校から、商店街に飛んでる)そこは、学校付近にある商店街だった。学校帰りの寄り道は禁止されているが、ここはひそかな寄り道スポットとして、生徒の間では有名だ。「穂香、ここで買い食いしよ!」「え? う、うん、いいけど……」「どこか行きたいところ、ある?」「ごめん。私、学校帰りに寄り道したことないから、どこのお店がいいのか分からない」「そうなん!? 実は俺もなくて」「ええっ!? 涼くんはあるでしょう? だって、友達多いよね?」「いや、放課後は、いつも学校の怪異を調べてたから、本当にやったことないねん!」「そうなんだ……。じゃあ、今日は、端からお店を全部見てみる?」穴織の表情がパァと明るくなる。「よっし、行くで! 穂香」「おー!」その後、2人は楽しく初めての食べ歩きを楽しんだ。【同日 夕方/商店街】
Last Updated: 2025-04-27