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倉谷みこと
倉谷みこと
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Novel-novel oleh 倉谷みこと

その色は君への愛の証

その色は君への愛の証

僕、香川優樹は、恋人の本宮昌義さんとアウトレットモールにデートに来ていた。今日は、本宮さんの誕生日。パンケーキ屋さんで、僕は昨日買っておいたプレゼントを渡した。本宮さんはそれを気に入ってくれたようで、お返しにブレスレットを買ってもらった。 翌日、親友の渋井遼にそのことを話すと、本宮さんを紹介してほしいと言われた。本宮さんに予定の確認すると、次の日曜日なら空いているとのこと。僕、本宮さん、遼の3人でカラオケに行くことにした。 カラオケを楽しんでいる最中、遼が本宮さんに興味がわいたと言い出し――。
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Chapter: 第42話
クリスマスパーティーも無事に終わり、僕と本宮さんの結婚は親公認になった。それはさておき、年末くらいはと、家族水入らずですごしていた。とはいっても、ムーンリバーの営業があるから、クリスマスが終わってすぐにというわけにはいかなかったけれど。ムーンリバーの年末年始の休みは、12月29日から1月3日までだ。26日から29日の4日間、修行も兼ねて、カウンター内に立たせてもらった。僕が淹れたコーヒーは、お客さんからの評判もよく、受け入れてもらえたような気がした。「優樹は、初詣はどうするんだ? 一緒に行くか?」大掃除後、リビングでくつろいでいると、父さんからたずねられた。「どうしようかな?」言いながら、僕はスマホでカレンダーを確認する。元旦の予定は、何も記されていない。「おや、本宮と行くんじゃないのかい?」と、母さんがキッチンから戻ってくる。その手には、焼きたてのクッキーが入った大皿があった。「いや、まだどうするか、相談してなくてさ」肩をすくめて、僕は言った。ここ数日間、修行と勉強とで、それどころではなかった。初詣の話はおろか、本宮さんとの連絡もあまりできていない。僕のわがままで、冬休み中の彼の授業は、なしにしてもらっていた。バリスタの実践修行に専念したかったからだ。「あたしたちのことは気にしなくていいから、行ってきな。『恋人』として行けるのなんて、あと何回もないんだから」と、母さんが言った矢先のことだった。スマホが着信を報せる。確認すると、一緒に初詣に行こうという本宮さんからのお誘いだった。僕は、すぐに『行く』とメッセージを返す。忘れないように、スマホのカレンダーにも入力した。* * * *わくわくしながら年越しを待つ。こんなに待ち遠しいのは、もしかしたら、幼い頃以来かもしれない。新年を迎えてから寝るのが、毎年恒例になっていた。でも、今年は早めに寝ることにした。そわそわしてなかなか寝つけなかったけれど、いつの間にか眠っていたらしい。スマホのアラームで目が覚め
Terakhir Diperbarui: 2025-12-24
Chapter: 第41話
「ああ、そうだな。でも、そろそろ来るんじゃないか?」と、本宮さんが言った。どうやら、片桐さんから連絡があったらしい。「そうかい。お昼からの予定なのに、みんな早く集まるんだねえ」と、母さんが呆れたように言った。言葉とは裏腹に、明るい笑顔を浮かべている。口ではあんなことを言っていても、母さんも楽しみにしているようだ。「あれ? 昌義さん、お寿司ってこれだけ?」僕は、昌義さんにたずねた。ラザニアを置いたテーブルの上に、寿司桶が置いてある。けれど、人数分より少ないように見えた。「ちゃんと人数分あるよ」そう言って、本宮さんは僕の後ろを指さした。振り向くと、向かい側のテーブルに先ほど見た寿司桶と同じものが置いてあった。「3人分のを2つ買ってきてくれたんだって」と、母さんが補足する。僕は、なるほどと納得する。同時に、さすがだと思った。ここで今日のことを決めた時には、そこまで詳しくは決めていなかったからだ。僕が本宮さんのことを惚れ直していると、「優樹」と、父さんに声をかけられた。僕は無言でうなずく。人数はまだ揃っていないけれど、そろそろ準備した方がいいということだろう。カウンター内に移動した僕は、道具を準備して深呼吸をする。心を落ち着かせてから、コーヒーを淹れるためにお湯を沸かす。コーヒーを淹れていると、ドアベルが来客を告げた。「メリークリスマース!」という元気な声とともに、遼が大きな箱のようなものを抱えて入ってくる。その後ろから片桐さんがやってきた。「いらっしゃい、メリークリスマス」と、父さんが応える。僕、母さん、本宮さんもそのあとに続いた。「あれ? 今日は、優樹君がカウンターに?」片桐さんが、疑問を口にする。「ああ。店を継いでくれるらしくてね、その修行というわけさ」と、父さんが答えた。正直なところ、どう言えばいいのかわからなかったから
Terakhir Diperbarui: 2025-12-17
Chapter: 第40話
翌日から、温めた牛乳を泡立てる工程を追加した。専用の電動泡立て器――ミルクフォーマーというらしい――の使い方を教えてもらって泡立てる。けれど、なかなか上手くはいかなかった。いろいろな方法を試していくと、どうにかそれっぽい形にできるようにはなった。でも、父さんのジンジャーブレッドラテとは、どこか違うような気がした。悩みながら試行錯誤をしていると、クリスマスパーティーを翌日に控えた12月24日になってしまった。まだ、自分で納得できるほどの仕上がりにはなっていないのに。(今日中には、どうにかしないと……)焦りだけが募っていく。僕は、大きく息をついた。このまま悩んでいても解決しない気がして、気分転換に出かけることにした。玄関を出た瞬間、冷たい風が吹き抜ける。「寒っ……!」思わずつぶやいて、僕は首をすぼめた。プレゼントをまだ用意していないことを思い出して、僕は学校方面へと足を向けた。学校の周辺には、いろいろな商店が軒を連ねている。プレゼントに最適なものが、何かは見つかるだろう。(予算は、たしか5000円以内だったよな)と、考えながら歩いていると、いつの間にかなじみの本屋に着いていた。「……まあ、何かはあるか」と、僕は入り口の自動ドアをくぐった。店内は、いつもより賑わっていた。冬休みに入ったからか、家族連れの客が多い気がする。以前、本宮さんと行った本屋よりも店舗は小さい。けれど、取り扱っている本は、そこそこ充実している。小説や漫画くらいなら、ここでも充分に買い揃えられるくらいだ。小説の新刊コーナーに行くと、多数の話題作が平積みにされている。中には、個人的に気になるタイトルもある。この中から探そうとして、僕は立ち止まった。(みんな、どんなジャンル読むんだろ?)本宮さんが読むジャンルは、リサーチ済だ。その時に、片桐さんがホラーを読むという話もしていたような気がする。両親も本は読む
Terakhir Diperbarui: 2025-12-10
Chapter: 第39話
「そうか、もう2人はそこまで……。そうか」と、父さんが落ち着いた声でつぶやいた。「父さん……?」思っていた反応と違い、僕はおそるおそる父さんに視線を向けた。優しく微笑んでいる父さんは、「反対はしないよ」静かに、けれどきっぱりと告げた。いつもと同じ微笑みのはずなのに、どこか憂いを帯びているように見えた。もともと黒い瞳が、漆黒の闇のようだった。何かを言いかけた僕は、何も言えずに父さんから視線をはずす。本当は、言いたいことがあったはずなのに。でも、それが何なのか認識する前に、脳内から消えてしまった。叱られているわけでもないのに、なぜか気まずかった。「本宮君から、それとなく聞いてはいたけど、直接言われると……やっぱりくるものがあるな」父さんは、小さく息をついて言った。先ほどの口調とは打って変わって、弱々しかった。(……ん? 昌義さんから、それとなく聞いた……?)父さんの言葉に、引っかかりを覚えた。僕と本宮さんとの間で、両親にはまだ言わないという約束があったはずだ。それなのに、父さんは本宮さんから聞いたと言う。「父さん、どういうこと?」「ほら、昨日の夜、本宮君と飲んだだろ? その時に、優樹のことをどう思ってるのか聞いてみたんだよ。そうしたら、大切に思ってるって言っててな」と、父さんがうれしそうに答える。本宮さんの気持ちを聞いて、遅かれ早かれそうなるのだろうと思っていたらしい。そのせいで、飲酒ペースが速くなってしまったそうだ。そうだったのかと、僕は胸をなでおろした。「傷口抉るようだけど、父さんはどう思った?」と、僕は率直な感想を父さんに求めた。「……そうだな、率直に言うと、寂しさと感慨深さが同居してる感じかな。まだ子どもだと思ってた優樹が、もうそんなに大人になったんだなあって」
Terakhir Diperbarui: 2025-12-03
Chapter: 第38話
「サンキュ。こっちも、そろそろかな」と、本宮さんは鍋からキャベツを引き揚げた。火傷に注意しながら、僕たちはタネをキャベツで包んでいく。「こうして2人でキッチンに立ってると、何だか本当に結婚したみたいだね」僕は、何気なくそう口にした。「……っ! そ、そうだな」動揺しているのか、本宮さんの声が少しうわずっているように聞こえた。本宮さんを横目で見ると、彼のほほがほんのりと赤い。僕の言葉でドキドキしてくれたのだろうか。(もし、そうだとしたら……うれしいな)なんて思いながら、僕は次々とロールキャベツを量産していく。2人で作業していたおかげか、すべてのタネを包み終えるまで、それほど時間はかからなかった。けれど、4人で食べるには、多すぎる量ができてしまった。(でもまあ、明日の朝も食べられるわけだし、別にいっか)と、僕は思い直す。「さて、と。あとは、煮込むだけだな」本宮さんは、鍋にロールキャベツを敷き詰め、水とコンソメを入れて火にかける。洗い物は、僕が引き受けることにした。30分ほど煮込んでいると、両親が帰ってきた。「あれ? 本宮、まだいたのかい?」本宮さんの姿を見た母さんは、意外そうに言った。「母さん。失礼すぎ!」おかえりを言うのも忘れて、僕は母さんを非難する。申し訳程度に謝る母さん。どうやら、本宮さんがすでに帰宅したと思っていたらしい。「謝らなくていいですよ。俺も言ってなかったですし」と、本宮さんがにこやかに言った。「おや? 本宮君がいるのかい?」母さんの後ろから顔を出した父さんが、うれしそうに言った。「おかえり。今日の夕飯は、昌義さんが作ったんだ」「本当かい!?」と、父さんが目を輝かせる。「ええ。もう少しで、出来上がりますから」と、本宮さんがは
Terakhir Diperbarui: 2025-11-26
Chapter: 第37話
「え? いいの?」「もちろん。その方が、楽しいだろ?」勉強にもなるだろうしと、本宮さんが告げる。まさか、本宮さんからこんなお誘いがあるとは思っていなかった。だからだろうか、僕はいつも以上に浮き足立っていた。キャベツや挽肉など必要な食材を購入して、帰宅する。食材を冷蔵庫にしまった僕たちは、リビングで休憩することにした。先ほど行ったスーパーに焼き芋が売っていたのをたまたま見つけて、1本だけ買ったのだ。帰ってくる間に冷めてしまわないか心配だったけれど、まだほかほかと温かかった。(焼き芋に合いそうなのは……)と考えながら、僕はリビングの隣にある倉庫部屋を物色する。せっかく食べるのなら、相性がいい飲み物を用意したいと思ったからだ。この部屋にあるものは、すべて店で使うものだ。けれど、少しなら使っていいと父さんから許可をもらっている。「優樹?」と、ふいに本宮さんに背後から呼ばれた。「はいっ!」僕は、わずかに肩を震わせて、勢いよく返事をする。振り返ると、本宮さんが不思議そうな顔をして部屋の入り口に立っていた。彼には、リビングで待っていてほしいと言ったはずだった。おそらく、僕がなかなか戻ってこないので不思議に思ってやってきたのだろう。「悪い、驚かすつもりはなかったんだ」と、本宮さんが申し訳なさそうに言った。「ううん、全然! 僕の方こそ、遅くなってごめん!」僕が慌ててそう言うと、本宮さんは僕の方へと歩いてくる。「何か探してるのか?」「あ、うん……。焼き芋に合う飲み物、あるかなって」と、僕は本宮さんから棚の方へと視線を戻す。「焼き芋に合う飲み物、か。牛乳とか緑茶とかが定番だったりするよな。でも、意外とコーヒーも合うんじゃねえか?」と、僕の隣に並ぶ本宮さんが言った。「え、そうなの!?」自分では試したことのない組み合わせを言われて、僕は驚いてしまった。「あ、いや……俺も試したことはねえんだけどさ」と、本宮さんが弁解するように言った。でも、試す価値はあるかもしれない。そう思った僕は、棚から蓋つきの容器を1つ手に取った。それには、『中煎り コロンビア』というラベルが貼られている。「昌義さん。悪いんだけど、これ、キッチンに持って行ってもらってもいい?」僕が、そう本宮さんに頼むと、彼は快くうなずいてくれた。彼が部屋から出るのを確認した僕は
Terakhir Diperbarui: 2025-11-19
プライベートレッスン~大人の恋愛講座~

プライベートレッスン~大人の恋愛講座~

相馬佳晴は、知らない部屋で目が覚めた。ベッドを出ようとすると、自分が裸であることに気づく。 何か失態を犯してしまったのかと、昨夜の事を思い返す。行きつけのバーに行って、カクテルを飲んだ事は覚えている。しかし、その後の事が思い出せない。 服を着てリビングに行くと、家主の相沢竜希が二人分の料理を用意していた。警戒しながらも食卓につく佳晴を、意味深な視線で竜希が見つめる。その視線だけで、快楽を感じてしまう佳晴。混乱する佳晴に、竜希は「昨夜は、濃密な夜だった」とだけ告げる。佳晴は、竜希から逃げ出すようにその場を離れる。 だが、どこへ行っても竜希の影がちらつき、佳晴の体は竜希を覚えてしまっていた。
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Chapter: 第3話 逃れられない視線
(いや、まさか、そんな……あり得ないって!)一瞬、頭によぎった可能性を、僕は全力で否定してカクテルを煽るように飲む。ライチの爽やかな香りが、脳内をクリアにはしてくれる。けれど、目の前にある鍵の処遇については、何の解決策も浮かばなかった。僕は小さくため息をついて、他の席を眺める。カウンター席には、僕の他に一人の男性が座っていた。ボックス席の方に視線を向けると、カップルや友達同士らしい客が複数人いる。そんな中、一番奥の席に相沢さんの姿があった。(あ、いた!)鍵を返しに行こうと、席を立ちかける。けれど、彼の対面に肩を落とした女性が座っているのが見えた。(そういえば、マスターに何かお願いされてたっけ)座り直した僕は、相沢さんとマスターの先ほどの会話を思い返す。確か、相沢さんを指名していたような気がする。何をしているのだろうと眺めていると、相沢さんとその女性は、会話をしているだけのように見えた。ただ、楽しんでいるようには見えない。どうやら、彼女は、相沢さんに何かを相談しているらしい。マスターが彼に頼んでいたのは、客の相談に乗ってほしいというものだったようだ。(へえ。カウンセラー的な立ち位置なのか)なるほどと、様子をうかがう。次第に、女性の表情が、暗いものから明るいものへと変わっていく。きちんと相手に向き合っているようだ。そんな姿を見てしまったら、会話に割り込むだなんてできるはずもない。夜のお誘いをする口実だと思っていたのに。彼は、僕が思っているよりも誠実な人なのかもしれない。(昨日の夜の事は、魔が差しただけ……だよな。うん、きっとそうだ)と、僕は自分を納得させる。個人的に話がしたいというのも、言葉通りの意味なのだろう。そう考えた僕は、彼の手が空くまで待つことにした。けれど、そんな時間はやってこなかった。カクテルとローストナッツの量だけが増えていく。彼が僕の近くを通りすぎる度に声をかけようとして、やめた。仕事の邪魔はしたくない。僕は、
Terakhir Diperbarui: 2026-02-25
Chapter: 第2話 呪縛から逃げたい午後
脳内に浮かぶ彼の指使いに合わせながら、僕は自身に指を這わせる。優しくなで、時に激しく上下させる。自分で触れているはずなのに、彼に触れられているように感じた。錯覚なのは、わかっている。けれど、彼に出会う前の自慰よりも快楽を感じていた。何度目かの絶頂の後、僕は荒い息のまま脱衣所に向かった。収まることを知らない下半身の疼きから、解放されたかった。肌に擦れる布の感触が、完全には引いていない熱を呼び戻す。敏感すぎる感覚を恨めしく思いながら、僕は服を脱いで風呂場に入った。熱いシャワーを頭から浴びていると、体内に残っている衝動がゆっくりと鎮まるのを感じた。シャワーの音を聞きながら、あれは事故だったのだと、心の中で自分に無理矢理、言い聞かせる。ざわついていた心が落ち着きを取り戻し、僕はシャワーを止めた。その瞬間、背中を水滴が流れ落ちていった。背筋を這う相沢さんの指の感触が、一気に蘇る。「ひぅっ……!」思わぬ声が漏れ出て、咄嗟に口に手を当てる。「くそっ……!」悪態をつき、頭をかきむしる。シャワーだけでは、解放されないのか。(……そうだ! ジムに行こう!)こういう時には、体を動かすのが一番いい。おろし立ての服に着替えた僕は、車で馴染みのジムに向かった。ジムの受付で会員証を見せて、更衣室に移動する。持ち込んだ服に着替えて、トレーニングスタジオに入ると、いつもより利用客が多い。今日が土曜日だから、というのもあるのだろう。「相馬さん、こんにちは! 今日は、どんなメニューにしますか?」背の高い男性に声をかけられ、わずかに肩を震わせた。のどが締まり、息が止まる。「……こんにちは」僕は、何気ないふうを装って、にこやかにあいさつを返した。ぎこちない笑顔になってはいないかと、気が気ではない。でも、彼は気づいていないのか、僕の様子には触れなかった。声をかけてきた男性は、インストラクターの九条《くじょう》さんだ。僕が初めて
Terakhir Diperbarui: 2026-02-18
Chapter: 第1話 知らない熱の余韻
意識が浮遊する感覚と少しの眩しさに、僕はゆっくりとまぶたを開けた。(ここ……どこだ?)知らない布団の感触に、ふと疑問に思う。視界に写るのは、窓から差し込む日光に照らされた、見覚えのある天井と壁。なのに、周囲にある調度品は、知らない物ばかりだった。「痛っ……!」頭が痛み、思考を邪魔してくる。昨夜は、行きつけのバーで飲んでいた。もしかしなくても、飲み過ぎたのだろう。久しぶりの二日酔いに、僕のテンションは急降下だ。とりあえずベッドから出ようとして、僕は違和感に気づいた。普段はあるはずの、布の感触がない。「……は?」布団の中を確認して、思わず、声が出てしまった。あり得ないことに、僕はパジャマはおろか、下着すら着ていなかった。熱帯夜でさえ、Tシャツに短パンは着ているというのに。しかも、自宅ではないだろう場所で、だ。(いやいやいや……さすがに、あり得ないって! これは……そう、夢だ! 夢!)なんて現実逃避をしながら、僕はもう一度、布団の中を確認する。「マジか……」視界に写るのは、素肌のままの下半身。少し手前に視線を移せば、上半身も見えてくる。けれど、やはり何も着ていない。この事実は、間違いようもなかった。なぜ、どうして……。そればかりが、頭の中を駆け巡る。「とりあえず、落ち着け!」深呼吸をして、室内を見回す。男物のジャケットが数着、壁にかけられている。けれど、自分の物ではない。普段、僕はジャケットをクローゼットにしまっているからだ。頭痛に耐えながら、視線を床の方へと滑らせていく。艶のあるフローリングには、埃一つ落ちていなかった。きれい好きな人が家主なのだろうと思い、見覚えのある木目には気づかない振りをした。フローリングなんて、どれも同じような木目のはずだと、考えるのを放棄する。ベッド脇を見ると、一人分の服が脱ぎ散らかされていた。間違いなく、僕の服だった。そそくさと服を着る。少しだけほっとしたところで、尻の内側にある違和感に気がついた。何かを擦りつけたような、そんなしびれ。(何だろう? これ……)どうにも気になる。でも、痛みがあるわけではない。落ち着かないけれど、一旦、意識の外に追いやって、部屋を出ることにした。扉を出た瞬間、隣の部屋から物音が聞こえてきた。おそらく、リビングかキッチンだろう。僕の他に、誰かがいるのは確実だ。緊張と
Terakhir Diperbarui: 2026-02-11
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