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一一
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Novels by 一一

バケモノが愛したこの世界

バケモノが愛したこの世界

幼い頃、世界から敵と認定され祖国を滅ぼされた元王女のレイミス・エレナート。 全てを奪われながらも仇を討つ事を糧に生きてきた彼女はある日、自らをバケモノと名乗る青年ニイルと出逢う。 復讐を成す力を得る為、彼女はそのバケモノの手を取る事を決意する。 これはヒトとバケモノのモノガタリ
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Chapter: 登城
全てが終わりレイ達4人がいつもの宿に戻った時には、太陽が昇り始める時間になっていた。朝日に目を細めると緊張が解れたのか、途端に空腹と眠気がレイを襲う。(そういえばご飯もまだだったわね)仕事終わりの食事をするつもりがここまでの騒動になってしまった事に、つい苦笑してしまうレイ。今すぐにでもベッドに飛び込みたい欲求を堪えて、まずはニイルの部屋でレイとニイルの治療を行う事となった。治療と言っても例の如く、ニイルの用意した魔法薬を飲むだけなのだが。しかしそこで一悶着起きた。ニイルから差し出された魔法薬を見た瞬間、今迄の鬱憤が爆発したのだろう、レイが以前苦言を呈した時以上の怒りでもってニイルに詰め寄ったのだ。「魔力は治癒魔法では回復しないからこれを飲むのは分かるわ。でもいい加減この地獄を何とかしないと耐えられない」と、今迄ニイルに向けた事の無い剣幕でそう告げたのだ。「以前貴方は言ったわね?飲んだ事が無いから分からない、と。なら今すぐ貴方も飲むべきだわ。そうすればいかに貴方が悪逆非道な行いをしてきたのか分かる筈よ」その迫力は、フィオやランシュでさえもレイを止めるのを躊躇わせる程。流石のニイルもその雰囲気に呑まれつつ、抵抗を試みる。「い、いえ…私も飲みたくないから飲まない訳では無く、飲・ん・で・
Last Updated: 2025-08-09
Chapter: 惑わす者
「一体…何が起こってるの…?」震える声で囁くレイ。誰かに対して言った言葉では無い。ただひとりでに、無意識の内に出た言葉であった。レイは全てを目撃していた。スコルフィオの周囲に突然現れた騎士達も。その騎士達と戦うマーガも。スコルフィオが燃やされ、しかし何故か死なずにマーガ諸共斬られる所も。そして、意識を取り戻したマーガの首が刎ねられる所も…その全てが、ま・る・で・現・実・の・上・か・ら・重・な・っ・て・流・れ・る・映・像・の・様・に・、半・透・明・
Last Updated: 2025-08-08
Chapter: アスモデウス
「『神性アルカヌム』?それに『惑わす淫魔アスモデウス』って…」聞き慣れない単語を耳にし、1人呟くレイ。だがその圧力プレッシャーはどこか身近で、しかしその何倍も大きくて…「『神性アルカヌム』とは、簡単に説明するならば神性付与ギフトの上位互換です。か・つ・て・存・在・し・た・神の権能、その半分程が人間と混ざり合い新たに名を得たのが『神性アルカヌム』、その保持者達を『神性保持者ファルサ』と呼びます」ニイルの説明に愕然とするレイ。かつてレイが勝てなかったベルリや、序列大会で会ったルヴィーネ、レイが出会い戦った相手はどちらも尋常では無い強さを有していた。しかしその『神性付与保持者セルヴィ』達でさえも、『神性保持者ファルサ』の前では劣るのだという。にわかには信じがたいが、そもそもレイはこの力の事をよく知らない。
Last Updated: 2025-08-07
Chapter: 夜の女王、その真の力
土煙の中から姿を現すマーガ。今にも倒れそうな様相で意識も朦朧としているが、その瞳には確たる意志を宿していた。横で倒れているブレイズに目を向けるマーガ。意識は無いが呼吸は辛うじてしている状態だった。しかしその状態も長くは続かないだろう、最早一刻を争う状態であろう事は傍から見ても理解出来た。(魔法障壁のお陰で、何とかお互い一命は取り留めた。敵の増援が来た以上本来なら部下を呼んで撤退するべきなんだろうけど…)周囲に意識を向けるが戦闘の音が全く聞こえない。最後に見たのは部下全員がたった1人を相手に向かって行った時。それから一向に助けに来ないところを見るに、想像したくは無いが全員やられたのだろう。(敵の増援が来た以上、早々にこの場を切り抜けなければならない。僕の魔力ももう空だけど、何とか君だけは逃がしてみせるよ)内心でブレイズに語り掛けるマーガ。彼を喪う事はセストリアの、いや世界にとっての損失だ。それ程この『剣聖』は人類にとっての希望なのである。
Last Updated: 2025-08-06
Chapter: 覚悟と決着
「さぁ、そろそろ決着をつけましょうか?」挑発する様にそう告げるレイだったが、決して勝算の目処が立ったからでは無い。寧ろその逆で、いよいよレイの魔力の底が見えてきたからである。これ以上長引けば、2人を削り切る前に確実にレイが魔力切れを引き起こす。当初想定していた最悪のシナリオ通りに進む事が予想出来た。故にレイらしからぬ挑発も兼ねた宣言を行ったのである。しかしその挑発を受けても、対する2人の冷静さが失われる事は無かった。勿論、状況的に追い込まれている事は重々承知の上だがそれでも尚、2人は勝利を諦めてなどいない。この程度の苦境、英雄と呼ばれるようになってから今まで、いやそれ以前からも、幾度となく乗り越えてきたのだから。「しかし追い込まれてるのもまた事実…ってね。そっちはどう?」わざと明るい雰囲気を醸しながら言ってのけるマーガ。ここで悲観した所で状況は好転しない、それ故の態度だった。「確かに早々に決着を付けたいのはこちらも同じだがな。だがこちらも奴を殺れるだけの決め手が無い。持久戦に持ち込まれればこちらの敗北は目に見えている」マーガなりの気遣いに感謝しつつ、しかし厳しい現状を冷静に突き付けるブレイズ。マーガの魔力も、ブレイズの体力も限界に近い今の状況では短期決着を狙うレイと同じではある。しかしこちらの手の内を全て晒し、その上で互角である。
Last Updated: 2025-08-05
Chapter: 加速する戦い
流石に嘘だと信じたかった。しかし現実と共に思い知らされる。英雄と呼ばれる者の恐ろしさを―(たった1回、それも目で追えない様な速度だったのに…たったそれだけで対応してきた。そもそも雷に追い付くなんて、人間に出来る芸当じゃ無いのだけれど…)いくら100%の『雷装』ほんとうのぜんりょくでは無かったのだとしても、この技はレイにとっての切り札。速度も、本物の雷に劣るが決して並の人間が捉えられる速度では無い。身近に師匠バケモノが居るから錯覚してしまうが、英雄と呼ばれるブレイズとマーガも、バケモノになる事を選んだレイも、本来なら人類では最強格なのである。(そういえば、いつだって御伽噺では、バケモノは退治される側だったわね)幼い頃、妹と共に読んでいた御伽噺を思い出すレイ。世界各地で伝えられている物語は様々で、ある者は怪物を、ある者はドラゴンを…そしてある者は神すらも屠り、英雄と崇められていた。レイ達はそのどれもが好きであり色々と読み漁ったものだが、思い起こせばそのどれもが、人間がその上位の存在を打ち破る話だった。だからこそ人類は絶望に負けず希望を見出し、ここまで繁栄して来れたのだろう。その希望の象徴たる『英雄』の称号を与えられた人間が弱い筈は無く、その相手はバケモノ未満であるレイ。
Last Updated: 2025-08-04
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