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Novels by Aica

社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!

社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!

結婚記念日、杏華は妊娠していた。 愛する夫に伝えようとしたその日、彼が寄り添っていたのは――腹違いの妹。 「サインしろ」 一弥が差し出したのは離婚届。 心が死んだ杏華は誰にも告げず、お腹の子とともに姿を消す。 自分さえいなくなれば彼は幸せになれる――そう信じて。 だが彼女を失った瞬間、一弥はすべてを知る。 愛していたのは、ずっと彼女だけだったと。 狂ったように探し続けても、もうどこにもいない。 そして―― 世界が注目するファッションショーのランウェイで トップモデルとして現れたのは消えたはずの元妻・杏華だった。 これは手遅れになってから愛を知った男が すべてを失ってなお、ただ一人の妻を追いかける極上の追妻ラブストーリー
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Chapter: 第173話 彼女だけが知る彼の本音
【夏希side】「どうか杏華のすべてを受け止めてもらえませんでしょうか」いきなりそんなことを言い出した意味がわからず、私は聞き返した。「それはどういう意味でしょうか」「彼女は、ある理由があって、今まで一人でいくつもの苦労をして心が傷つく想いをしてきました──。もし彼女がその理由を自分から話すときがあれば、どうかあなたが友人として、その心を支えてやってほしいんです」「え……。杏華にそんな辛いことがあったってことですか……?」「理由は……、俺の口からは言えません。ですが、きっと彼女はあなたに頼るはずです。そのときは、俺が彼女と話せないようなことを、あなたは聞いてやってほしい」桐生さんの表情は、少し悲しそうで苦しそうな表情だった。何かの理由があると思いながらも、私は何も尋ねなかった。「──わかりました。何があったかわかりませんが、彼女がもし私を頼ってくれたとき、必ずすべてを受け止め私が支えます」「ありがとうございます」桐生さんは私に頭を下げる。そのときは、ただのビジネスパートナーだったから、そこまでするのかと思っていた。だけど、実際杏華から話を聞いたら、まさかの元夫婦で、結婚していたときは、今と想像出来ないほどの冷酷だったことを知った。そんな人が、あのとき何のためらいもなく、私にそんなお願いをするために、頭を下げていた。私は桐生さんと出会ったときから、杏華に嫉妬し、気にかけ、ただ不器用ながら杏華に想いを向けている人という印象だった。だからどうしても私は、今の桐生さんは私にはそんな人にしか見えないのだ。「ですが──。契約金は、いらないです」「え?」私はそのとき掲示された契約金の話を断った。「約束の金額をいただけるだけで十分です。私は、杏華がもし何かを打ち明けて来たときは、友人として、ただ支える。それだけです」桐生さんは私のその言葉が意外だったのかハッとした表情になる。
Last Updated: 2026-09-15
Chapter: 第172話 不器用で大きすぎる愛
【夏希side】杏華の撮影が始まるナイスタイミングで、桐生さんがスタジオに到着した。二人の様子を見てたら、お互い目を合わせ、小さくはにかんでいる二人が初々しくて仕方ない。ホントにこの二人は離婚したのか?しかもこの桐生さんが杏華にまったく興味がなく冷酷な男?いやいや、どう見ても感情ダダ洩れで、甘々なんですけど?確かに言葉的にはそんなふうには感じないしクールに見えるけど、あれはただ本人が自覚なくて表現の仕方を知らないだけなんだよな。私にも『全力で杏華を守れ』って普通の条件じゃないんだよね。でも杏華は確かにこの人に傷つけられて自信なくしてるし、元々そういう要素は持ってるんだろうけど。でもなんか放っておけないんだよな。この二人。よし。ちょっと探ってみるか。「桐生社長。お疲れ様です」私はスタジオの後ろで立っている桐生さんの横にスッと並び声をかける。「あぁ。お疲れ様」私に言葉だけ返し、視線は杏華をずっと見つめ続けている。その視線は、完全に社長というより、愛しい恋人を見つめる視線なんだよな~。「あの。フルーツどうもありがとうございました!」「あぁ。無事届きましたか」「はい! 杏華もすごく喜んでました!」「そうですか。──よかった」そう私が伝えると、一瞬嬉しそうに安心したように小さく微笑む。「今日の杏華。どうですか。杏華が本来持っている優しいイメージを際立たせるように、柔らかくて透明感ある仕上がりにしました」「──あぁ。彼女が持ち備えてる優しい部分が、あなたの腕を加えてもらえたおかげで、より魅力的に出てると思います。さすがですね」「ありがとうございます」ちゃんとそういうふうに思ってるんだ。杏華にそういう言葉ちゃんと伝えてないのかな、この人。「なんとか撮影に間に合ってよかったです」「あっ、そういえば今日来られる予定じゃなかったんですよね?」「はい。元々の予定では昨日から韓国に出張に行ってたので、今日の夜に帰ってくる予定でした」「え? そうなんですか? お仕事急遽なくなったとかですか?」「──いえ。仕事のスケジュールは変わりなかったのですが、杏華の今日の撮影はどうしても自分が見たくて、徹夜で仕事を早めて、なんとか間に合わせました」「え!? 徹夜ですか!?  てか今、午前11時ですよ?」夜までの予定だった仕事を徹夜し
Last Updated: 2026-09-14
Chapter: 第171話 初恋のように……
この日の撮影は、綾乃も他のモデルも誰もいない一人だけの撮影。別現場で私の撮影を見ていた関係者さんが、私が雑誌のイメージにピッタリだと言ってくれて声をかけてもらったお仕事だ。「杏華さん。今日はよろしくお願いします!」「こちらこそよろしくお願いします」スタジオに行くと、早速関係者さんが挨拶に来てくれる。「まだこんな新しく創刊されて人気も出ていない雑誌ですが、仕事引き受けてくださってありがとうございます」「いえ! とんでもないです! 私もまだ新人みたいなものですし、ここからいろんなお仕事していきたいんです」「うちの雑誌は『優しさと笑顔を届けたい』というコンセプトなんです。以前杏華さんが女の子と花畑で撮影していた雑誌の写真を拝見して、あの透明感や優しい雰囲気が、うちの求めてるイメージにピッタリだなと思って、ぜひ杏華さんにお願いしたかったんです」「嬉しいです。私もあの写真大好きで、通常では機会がなかったお仕事なので、あの撮影が出来て私もとてもいい経験になりました」たまたま撮影現場でスタッフさんから他のモデルさんの代わりに撮影に行ったお仕事。小さな子供との撮影だったから、他のモデルさんは誰も率先して手を挙げなかった。だけど、私はあの撮影を経験出来たおかげで、母親になるこれからの期待や楽しさを味わわせてもらえて、とても実りある撮影だった。それがまたこうして別のお仕事に繋がっているなんて、すごく嬉しい。頑張ったことや、自分が信じた道は、こうしてどこかに誰かに届いているんだと思うと、また胸がいっぱいになる。そしてそれからスタッフさんと打合せをしていると、スタジオに入ってきた人物に気づき、私は視線を移す。──あっ、一弥さんだ!キリッと引き締まった表情と出で立ちの一弥さんに、スタジオがざわめき一斉に視線が彼に集まる。入ってきた瞬間、彼から醸し出す圧倒的なオーラある存在感に、スタジオの空気が一瞬で引き締まったのがわかった。彼が颯爽とスタジオに入ってくる姿に、小さく胸が跳ねる。こんなふうに、彼の姿を見つけ、胸をときめかせることは、初恋だったあの頃以来かもしれない。結婚が決まってからは嬉しい気持ちはすぐに消え、不服そうな彼との時間を重ねていくことは、私にとって幸せより彼を苦しめている悲しみに変わっていった。けれど、初恋だったあの頃は、いつも人気でた
Last Updated: 2026-09-13
Chapter: 第170話 初めての想いのやり取り
「杏華! それ! この前杏華がフルーツタルト食べてたときに言ってたやつ!」「フルーツタルト?」私はそのとき言ってたことを思い出そうとする。私、何て言ってたっけ。「フルーツがいっぱい乗ったケーキが好きだって言ってたじゃん!」「え? 嘘ッ! もしかして、それでこのフルーツ!?」確かにあのときそんなことは言ってたけど。まさかそれがこのフルーツに繋がったっていうの!?「だって今まで一言もそういうこと言ってないなら、『杏華が好きなフルーツ』ってなるのおかしいじゃん。もうそれしか考えられない!」「やっぱり、そう……だよね? え、あんな一瞬のたいしたことないやり取りに?」あまりにも普通の会話で、そこまで大きな意味を持たない言葉で、言った自分でさえ、ちゃんと覚えてないくらいなのに……。それを、彼は覚えてくれていて、今日これを用意してくれたってこと──?私は彼のその優しさと気配りに、ドキドキが止まらなくなる。ここにいないのに、一弥さんの存在が、このフルーツから、ひしひしと伝わってくる。これを一つ一つ彼が用意したわけじゃないけど、でもこの華やかで彩られている美しいフルーツを見ると、ぽかぽかと私の心まで明るく温かくなって満たされていく。「いや、この急な溺愛攻撃やばすぎん?」「え!? 溺愛!? 」私はあまりにも聞きなれないその言葉に、動揺しまくって顔まで熱くなる。「いや、こんなのあからさまでしょ。まぁ多分向こうは変わらず無意識に、その溺愛攻撃されてるだけでしょうけどね~フフッ」夏希がニヤっとからかうように笑う。「もう夏希からかわないで!」私は熱くなった顔を両手で必死に抑える。「フフッ。照れちゃって可愛いな~杏華ちゃん♪」そんな仕草をしながら、ホントは心では嬉しくて、つい零れてしまいそうになる笑みを、その両手でそのまま隠してごまかす。夏希は私のそんな想いを知っているはずなのに、あまりの恋愛初心者の私は、ついそんな小さなことも、恥ずかしくなってしまう。だけど、本当にあのときの言葉を覚えててくれて、こんな素敵なものを差し入れしてくれたんだと思うと、またときめきが止まらなかった。「ね、ね。まだ撮影まで時間あるし、影響ない程度に今食べちゃおうよ。リップは取れても直してあげるから!」「うん。食べちゃおう!」私たちは差し入れしてくれた豪華な
Last Updated: 2026-09-12
Chapter: 第169話 「好き」の贈り物
「杏華さん。失礼します」そのときコンコンと楽屋のドアをノックする音が聞こえる。「はい。どうぞ」その声に返答すると、撮影現場のスタッフさんが顔を出す。「これ。差し入れです」「え? 差し入れ?」「はい。杏華さんところの桐生社長からです」「え? うちの桐生から?」今日はまた別の仕事で現場に来れないとは言ってたけど、わざわざ差し入れなんかしてくれたんだ。「どうぞ」そう言ってスタッフさんが楽屋に届けてくれたのは、すごく豪華なカットフルーツの盛り合わせだった。「うわ~すごい……」そこにはイチゴやオレンジにキウイだけじゃなく、高級そうなメロンにマンゴーに巨峰にシャインマスカット──。色鮮やかに所々のフルーツでバラの花のように華やかに飾られている。だけどあまりの大きさと量。「あの、これ量が多すぎるんですけど、私の楽屋じゃなくスタジオへの差し入れじゃないですか」「あっ、スタジオにももちろん差し入れしていただいてます。それは間違いなく杏華さんに届けるようにと言われてるので」「え──私に?」「はい。あっ、これ一緒に預かったメッセージです」「え? メッセージまで!?」そう言われて渡された小さな白い封筒を受け取る。「いや~ここまで高級フルーツの差し入れ初めて見ましたよ。こんな高級店のフルーツいただけて皆すげー喜んでます! ありがとうございます!」そのスタッフさんは、勢いよく頭を下げ、嬉しそうにお礼を伝え戻っていった。「やっばー。この豪華さ、すごすぎるんだけど。高級店のここまですごいフルーツ盛り合わせ、いくらするんだろ」夏希はそのフルーツをマシマジと興味津々に見ている。「どうしたんだろ。これ。なんで私の楽屋にこんな豪華なフルーツを?」私は謎の行動に頭が疑問だらけになる。「その受け取った封筒
Last Updated: 2026-09-11
Chapter: 第168話 本当の優しさに気づくとき
「まったく問題ないよ」私の不安なんて気にも留めないような素振りで、夏希はそう口にした。「問題ないって……」「だって。すでにもうあの人、杏華に自分をコントロール出来ないくらい激しい恋愛してんじゃん」そう言って二ッと笑う。「え──!? まさかそんなのあるはずないよ!」「ハハッ。やっぱり杏華も全然気づいてないよね~」そう言って夏希が笑っているのを見ながら、私はキョトンとしてしまう。「私が見ているだけでもあの人の行動普通じゃないよ? っていうかヤバいからね。杏華に嫉妬と独占欲が丸出しで。あんなの誰が見ても杏華への愛情ダダ漏れだからね?」夏希は平然とそんな言葉を呟く。私はまさかと思いながらも、もし本当にそうだとしたらと思うと、少し恥ずかしくなってしまう。「思い返してみなよ? 全部それ当てはまるでしょ? あの人自分でそれ気づいてないだけだよ」「確かにそう言われてみれば、思い当たらないこともないけど……。でも、やっぱり夫婦だったときのことを考えると、どうしても信じられなくて……」「あぁ~確かにそれはあるよね。それはあの人が反省すべきマジ大きすぎる罪だからね」「罪って……」「多分ね。子供が出来たそのときの夜の話も聞いてて思ったんだ。無意識に杏華に嫉妬して独占欲が大きくなって、止められない感情が爆発してそういうことしちゃったんだろうな~って」「え……」「そのときさ、無理やりだった?」「え!?  あっ、どうだっただろう!? 最初は強引だったけど、段々なんとなく優しさを感じていったというか……」決して怖さも辛さも感じなかった。私は確かにあのとき、どんなカタチでも彼に求められたことが、そのとき感じられた偽りの幻のような優しさでも、幸せを感じられたから──。「うん。そういうことだと思うよ」夏希はすべて見透かしたような表情で、優しく嬉しそうに微笑む。
Last Updated: 2026-09-10
おいしい契約恋愛

おいしい契約恋愛

日々の楽しみは推しを愛でること。 全力で推し活をしてたある日。 「オレと契約しない?」 なぜだか始まった社長との契約恋愛。 「これは、オレとお前だけの秘密だ」 この日から始まった社長との秘密の関係。 だけど、それはお互いおいしい契約だけの関係。 二人を繋ぐのは、お金? 料理? 夢? 推し? 仕事? 恋愛? 契約恋愛から始まる二人にとってのいちばん大切なモノは…?
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Chapter: 365.深い絆⑧
「だけど、すごく嬉しいです」「え……?」「女将さんが、……お母さんが、こんなにも慧さんのことを愛していたのだと知れて」それを知れただけでも、なんだか胸がいっぱいになる。「そんなの当たり前よ。慧のことを忘れた日なんてなかったわ。慧のことはちゃんと今の主人にも話してあるの」「そうなんですか?」「えぇ。私にとっては愛する息子だから。今は会えなくても、そんな存在が私にはいること、ちゃんと伝えておきたかったの」「素敵です……」「主人も元々子供好きな人で、とても優しい人だから、その話を聞いて、”いつか会えるといいね”って、そう言ってくれたの。それを聞いて、”あぁ、私はとても素敵な人と一緒になれたんだな”って、とても幸せに思えたわ」女将さんは穏やかに幸せそうに笑みを浮かべながら伝えてくれる。「ご主人。やっぱり素敵な人ですね」「えぇ。私にはもったいないくらいの人よ。だけど、慧と離れてそんな状況になって自分の人生が嫌になったの。愛する息子を自分の手で育てられない辛さと悲しさ。その時いくら悔やんだって、もう慧は帰ってこない。自分の選択に何度も後悔した。何日も泣き続けた。そんな時にね、今の主人に出会って、そんな私をずっと支えてくれた。こんな私でもいいからと、主人は私と人生を歩んでくれることを選んでくれたわ」「慧さんにとって本村さんがいてくれたように、女将さんにもご主人がいてくれたってことですね……。二人ともとても素敵な方に巡り合えて支えてもらえていたことで乗り越えられて、そしてきっと今のこの再会が実現したんでしょうね」「あぁ、そうね……。そうかもしれないわね。主人と一緒にならなければ、きっと慧とも出会えてなかったわけだものね」「はい」女将さんも旦那さんという、とても心強い理解ある素敵な人がそばにいてくれたことで、きっといろんなことを今まで乗り越えてこれたんだろうなぁ……。大将が元々いい人なのはすでに知っていたけれど、思っていたより、二人の夫婦の絆としてもとても強いことを更に知った。大将は
Last Updated: 2026-09-15
Chapter: 364.深い絆⑦
「依那ちゃん。ありがとう……。慧を好きになってくれて……。それだけの想いをしていた慧が、依那ちゃんのことは信じられたってことね……」「そうだと嬉しいです。でも、最初はあたしの好きと同じになるまで時間かかりました。誰かを信じること、愛することも怖かったって……、とても恋愛にもお付き合いすることにも慎重でした」あたしが知らなかった過去の慧さんを初めて知った今、どれだけ愛や人に裏切られて信じられなくなったのかがようやくわかる。自分が信じようと思っていた人に、どんどん裏切られて離れられていく現実。女将さんはこんなに愛していると知らないまま、慧さんはきっとその現実だけでずっと一人苦しんできた。女将さんのこの愛情も意図的に奪われ、慧さんにもその愛情が届かなくて。その新しい家族からもいつの間にか愛情を向けられなくなって……。あたしが好きだと伝えた時に、どうしてあんなにもすぐに好きになろうとしなかったのかがよくわかった。好きになるのが怖い、信じるのが怖い。幼いながらにその現実と向き合っていた慧さんの心は、どれほど傷ついていただろう。叶うのなら今すぐその頃の慧さんに会いに行って、抱き締めてあげたい。"あなたはホントはとてもお母さんに愛されている人なんだよ"と。"大人になったあなたは、ある女性からとても愛される人生になるんだよ"と。お母さんである女将さんのことも、今の自分のことも、どれだけ愛されているのかをちゃんと伝えてあげたい。そして……、今の慧さんにも、この女将さんの気持ちをちゃんと伝えてあげたい。いや、伝えなきゃいけない。慧さんはまだこの女将さんの……、お母さんのこんなに愛されているという事実を知らない。きっとそれを知らない限り、いくらあたしが好きだと伝えても、慧さんにホントの意味であたしを好きになってもらえてない。もしかしたら、きっとまたあたしの愛も不安になったり心配になっているような気がするから。あたしがどれだけ離れないと伝えても、きっと慧さんの中で、この過去が残り続けてる限りは、慧さんの中できっとどこか不安が続いてしまう。こんなにもあたしはずっと慧さんへの想いを愛を伝えているのに、どこかしらまだ信じられていないような、そんな気がするから。例え女将さんと慧さんと二人の昔の時間は取り戻せなくても、これからの二人の時間はいくらでも作るこ
Last Updated: 2026-09-14
Chapter: 363.深い絆⑥
「今の慧さんの会社は、その本村さんと作った会社なんですよ?」「その方と二人で?」「はい。慧さんが社長で、本村さんは副社長兼秘書で。本村さんはすごく頭が冴えて気を回せて、とても優秀な方です。その本村さんとは、食べ物や考え方とかすごく気が合うし、お互いの得意なことをそれぞれ活かして支え合いながら共に人生を過ごして、そしてお二人でこの会社大きくされてきました」「そう……」「慧さんがされてる仕事ってホントすごいんです。いろんな飲食店プロデュースしてる会社なんですけど、慧さんは普通社長がやらないところまで全部チェックして把握していたり、プロデュースが終わったお店ともその後もずっと関わり続けてサポートされてます。とにかく慧さんは人と向き合うこの仕事をとても大切に思われていて、人として常に気持ちを向けて返してる人なんです」「人間不信になっていた慧が……?」「だからだと思います」「え……?」「そこまで人に敏感になったからこそ、慧さんは向き合えているんだと思います。きっとどこかで誰より人を信じたいと思ってるんじゃないかなって……」「信じたい……」女将さんはその言葉の意味を確かめるように、その言葉を繰り返して呟く。「慧さんは結局関わった人たちのことを信じて仕事をしているんです。その人たちの才能やそこからの可能性や人柄。すべてを信じたいと思っているからこそ、どこまでも慧さんは向き合おうとしてるんじゃないかな……」あたしはそれを女将さんに伝えることで、改めてその慧さんの人柄や素敵なところを実感する。そういう人だったんだと、また改めて確信して、やっぱり慧さんが素敵な人で、そういうところが好きなんだと気づき直して、また嬉しくなる。「あたしも亡くなった母と行った素敵なカフェみたいなお店を、いつか自分もプロデュースしたくて、慧さんの会社に入りました」「あぁ、依那ちゃんは慧の会社で働いてたんだったわね」「はい。慧さんはあたしにとって、憧れの人です。仕事に対しての志も、それを実現させる力も、すべてがすごい人なんです」「そう……」「そんな人の元で今働けて夢に向かって頑張れていること、そして、そんな慧さんとお付き合い出来ていること。ホント自分にとってはすべてが奇跡で、毎日夢のようです」あたしの言葉に、穏やかに微笑みながら耳を傾け、少しの言葉だけで反応してる女将さんを
Last Updated: 2026-09-13
Chapter: 362.深い絆⑤
「あの……。これ以上事実を聞くのは辛いとは思うのですが……。でも、こんなにも慧さんを愛されているお母さんには、慧さんの想いを知ってもらいたいです……。だから、もし女将さんが大丈夫なら、あたしが聞いた慧さんのことお話したいです……」だから……、あたしはその想いを、そのまま女将さんに伝えた。「依那ちゃん、ありがとう……。えぇ……。依那ちゃんが知ってること全部教えてちょうだい……」そして涙を拭いながら、女将さんは笑ってそうあたしに告げる。「大丈夫、ですか……?」「大丈夫よ。あの子の今まで感じてきた苦しみを、ちゃんと私は知る権利があるもの」「女将さん……」そう伝えてくれる女将さんは、母親として強い意志を感じるような……。その言葉にも、その表情にも、そんな力強さが、今度は存在していた。「女将さんは、慧さんのこと手放されてから、その後のこととかいろいろ聞かれたりしてたんですか?」「いいえ……。向こうは一切そういうのは教えてくれなかったわ。だから、正直ビックリしたの。あの子が父親の事業を継がず、自分の会社を経営してるってこの前知ったから」「やっぱりそういうことだったんですね……。じゃあどうしてそうなったかは何も……?」「えぇ……。あの人はそれが目的で慧を引き取ったはずなのに……」「慧さんが引き取られた時は、自分の家の子供のように可愛がってもらってたそうです。だけど、いつからか母親をいなくなったものと思えと言われて、なんの説明もなく会えなくなったって言ってました」「やっぱり、なんの説明もしなかったってことね……」「はい……。その時慧さんが、自分を一番愛してくれていたお母さんが何も言わずにいなくなったことで、他に大事なモノが出来て自分は捨てられたんだと、そう思ってしまったって……」「あぁ……。やっぱり自分の言葉でちゃんと伝えるべきだったのね……。今更後悔したって遅いけれど……。例え離れることになっても、あの子に "私はあなたを愛している" と伝えられていたのなら、あの子にそんな辛い想いさせなくてよかったはずなのに……」女将さんのその言葉に、その当時に女将さんが抱いていた想いと決意がどれほどだったのかがわかる。本当は心からその言葉を一番伝えたかったはずなのに、それを伝えられなかった辛さ。ホントはちゃんと愛はそこに存在していたはずなのに、その想いを
Last Updated: 2026-09-12
Chapter: 361.深い絆④
「依那ちゃん……。一つ、聞いていいかしら……?」「あっ、はい」「慧が……。どうして捨てられたと思っていたのかわからなくて……。実は、私たちは慧を手放す条件として、ある条件をお互い決めたの」「条件……」「えぇ。まず向こうの条件として、慧があたしに想いを残すことを向こうは不本意に思ってたから、慧とは別れをハッキリさせず自然に離れるということ。そして、私はその条件を受け入れる代わりに、すぐじゃなくてもいいから慧がその状況を理解出来る年齢や環境になった時でいいから、私が離れたのは決して慧を嫌になって離れたわけではなく、慧を愛しているからこそ離れたのだと伝えてほしいと……。私は離れていても、あなたのことをずっと愛していると、それだけを私はあの人にお願いしたの」「そんな条件を……」「なのに、どうして、慧は捨てられただなんて……」女将さんの慧さんの愛の大きさや深さを感じて泣きそうになる。こんなにも慧さんを愛していた人だったのに、慧さんはその想いを知らず、誰にも愛されない自分だと思い込んで、今まで過ごしてきた。そんな悲しい現実……。悔しい。悔しい。もしその女将さんの想いを知っていたら、慧さんはもっと愛というモノを信じることが出来ていたのに……。だけど、慧さんの話を思い出せば、女将さんが約束したその条件は、きっと守られていない……。慧さんはそれどころか引き取られた実の父親にも愛されているか確信を持てなくて、その家で幸せにしてもらうことはなく居場所がなくなってしまった。もしかしたら、新しく自分たちの子どもが出来るまではそうしていたのかもしれない。幸せにするはずだったのに、どこからか、きっと何かが狂ってしまった。きっとその奥さんも実の血の繋がっている子供が出来れば、そりゃそっちに愛情を注いでしまうのだろう。それなら、せめて実の父親は、慧さんを最後まで愛し続けてほしかった。そこまでして二人を引き離した責任があるのだから、途中で手を離さないでほしかった……。「きっと、慧さんは……。その女将さんが伝えてほしいという想いを、知らないんだと思います……」「えっ……?  それは、どういう……」「慧さん。人を好きになるのが怖いって言ってました」「え……?」「誰かを信じて愛すことが自分には出来ないって……」「でも依那ちゃんは……?」「はい。あたしと出会
Last Updated: 2026-09-11
Chapter: 360.深い絆③
「慧の未来を保証してくれると約束してくれたの」「保証……?」「父親としての認知はもちろん、会社の跡継ぎになるまでの全面サポート。慧が望む学業に金銭面、すべてにおいて面倒見てくれると約束してくれたの」「それで……?」「もしそれをこちらが受け入れなければ、向こうの奥様から不貞行為の相手として慰謝料を請求すると言われたの」「えっ?」「それも……向こうの手口よ……」「手口……?」「当然私と慧は二人だけでギリギリの生活をしていたから、余分に払えるそんな大金あるはずなくて……。ホントに随分悩んだわ。どうすればいいか……」「…………」あたしはそんな胸を締め付けられるような酷い選択を聞いて、何も言えなくなる。そんなあからさまに無理やりな選択……。「そんな選択を迫らされて、正直決めるのは困難だった……。私が慧と一緒にいる幸せを選ぶか、慧が幸せになれる未来を選ぶか……。それで、私は慧のこの先の幸せを選んだ……」そういうことだったんだ……。ただ女将さんは慧さんと一種にいたかっただけなのに。慧さんといるだけで幸せだったはずなのに。だけど、そんな幸せを願うことさえも許されなかったなんて……。「慧が向こうの家の息子として可愛がってもらえて幸せにしてもらえるなら、どれだけ私は辛くて寂しくてもそれでいいと思った……」「女将さん……」「誰より大切で誰より愛しているのは自分だけれど、慧が幸せになれるのなら……、私の代わりに、あの二人が慧をめいっぱい愛してくれると約束してくれたから……」涙をこらえながら、そう語る女将さんを見ると、どれだけその時慧さんと離れるのが辛くて、どれだけ愛しているのかが伝わってくる。女将さんは慧さんの幸せを選んだってことだったんだ……。母親としては、そうするしかなかったかもしれない。慰謝料も払えないのも明らかで、だけど、慧さん自身を幸せにしてくれるという保証をしてくれると約束してくれるのなら……。きっとホントは、女将さんも、慧さんも、二人でいることが一番幸せだったはずなのに……。だけど、きっと実際はそんな約束も守られていなくて。慧さんは一人頑張って……。今の慧さんがあるのは、慧さんが自分でその辛い現実を乗り越えて頑張ったからだ。それを考えると、とても胸が痛い……。どこまで慧さんは辛い状況で耐えきたんだろうと……。「そし
Last Updated: 2026-09-10
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