LOGIN「じゃあ、その代わり……。もう少し依那感じさせてもらってい?」慧さんが耳元でそう囁いて、あたしを見つめ微笑む。その声は、静かに甘くあたしを誘惑する。「慧さん……」その囁きと微笑みに、あたしはまた胸が高鳴り、その瞳に吸い込まれるように、うっとりと見つめる。すると。今度は、さっきまであたしを優しく支えてくれていたと思っていた手に急に力が入り、グイッとあたしの腰を更に慧さんの方に引き寄せ身体ごと近づける。そして、すぐ目の前に近づいた慧さんを見つめると。「浮気すんなよ?」そう言ってニヤりと怪しく微笑んで……。「そんなの……、んっ!」“そんなのするわけない”と反応しようと思ったら、その言葉を言う前に、目の前の慧さんの唇でその言葉も塞がれる。こんな素敵な慧さん目の前にして、あたしはいつだってドキドキして限界ギリギリで。こんなに甘く唇を塞がれるだけで、胸がいっぱいになって仕方ないのに。「依那。手、首回して」唇を離して、そう伝えてくる慧さんに、あたしはドキドキしながら、目の前の慧さんの首に両手を回す。「ん。いい子」そう言って今度は優しく微笑んで、更にあたしの頭の後ろに手を触れ、慧さんの方に今度は頭ごとまた近づけて、甘い唇の嵐を降らす。あたしはこの甘い幸せにとろけそうになりながら、必死に慧さんにしがみついて、この甘いキスの嵐を堪能する。浮気なんてする暇ないくらい、他の誰も見えなくて。いつだって、慧さんに夢中なのに……。そして、唇が離れて、慧さんと見つめ合う。あたしは、幸せな気持ちになって笑みが自然と零れる。「フフ。幸せです」あたしは、つい慧さんに素直な気持ちを伝える。お互いの存在を気持ちを求め合って、受け止め合ってるような感じがして、気持ちも満たされる。「依那は、こんなんでいいの?」「えっ?」すると、慧さんがなぜかそんなことを聞き返す。どういう意味かを慧さんに尋ねようかと思ったら……。「オレはこんなんじゃ全然足んないんだけど」さっきまで優しく見つめていたかと思えば、今度は少し求めるような少し熱を感じる視線で見つめてきて、更に慧さんがあたしの感情を揺さぶる。「あたしも……です……」そして、あたしもそんな慧さんに刺激されて、満足していたはずの気持ちが、更にもっとと慧さんが恋しくなる。だから、あたしもその気持ちのまま、そ
「ホントですか……?」「あぁ。それもわかった上で、オレは彼らをこのプロジェクトに任命したんだから」「あっ、そっか……」「オレもそう思ったから、正直依那が適任だと思ってる」「慧さん……」「依那は、オレが想像しないようなアイデアや世界観や価値観を生み出してくれる。だからプロジェクトメンバーとしての依那に、オレも社長として大いに期待してるんだ」「ありがとうございます……」慧さんがそうやって当たり前のように、あたしの背中を後押ししてくれるような言葉をかけてくれることで、あたしはまたそんな慧さんに胸がいっぱいになる。「だけど。そっか。そういう立ち合いもあるってことか……」「そうですね。だから、ホントは明日一緒にめちゃめちゃ食べに行きたいんですけど、琉偉の仕事が立て込んでて、明日のその夜しか時間がどうしても取れなくて。うちのスケジュール的にもそれ以上延ばせないんで、絶対明日は撮影しなきゃなんです」「ん。わかった。大丈夫。オレと一緒にはまたお互いの時間が合えば行けばいい」「はい」あたしは少し寂しい気持ちを感じながらも納得する。っていうか昔のあたしならそんな琉偉と夢みたいな時間過ごせるなんて最高に嬉しかったのになー!琉偉のためなら、何時間だって待つし、どこまで遅くなっても一緒にいれる時間が増えるなら大歓迎くらいに思ったはずなのに。今のあたしは少しでも慧さんと一緒に過ごす時間が恋しい。一緒に暮らしてて、今だって一緒にいるのに。でも、やっぱり琉偉のこの感情はファンとしてワクワクする気持ちで。自分へ想いを返してくれる慧さん。自分を必要としてくれる慧さん。自分を求めてくれる慧さん。そんな慧さんは、琉偉への感情とはまたやっぱり全然違う。琉偉も好きなのは変わらないけど、すぐそばで想いを通じ合わせられている存在がいるというのは、やっぱりもっと特別なものだから。一緒にご飯に行けると思うだけでワクワクして、一緒に行けないとガッカリして。すぐそばにいるのと同じように、その度感情が同時に溢れてきて、いてもたってもいられなくなる。その気持ちを慧さんと常に共有したくなる。そんな幸せを知れただけでも、あたしは幸せに思う。
「あっ、そうだ。明日オレ仕事打合せで外に出るんだけどさ。それが夕方には終わりそうなんだよね。久々に夜、外で一緒にメシ食わない?」「えっ、そうなんですね! 行きたいです!」うわっ、慧さんと二人で食べに行けるのどれくらいぶりだろう。最近慧さん出張とかで忙しかったし、一緒に食べに行くことも出来てなかったもんな。しかも慧さんからわざわざ誘ってくれるなんて、なんかデートのお誘いみたいで嬉しい!と、久々の慧さんの提案に心躍らせて答えてもるモノの。「あーっ、そうだ明日ダメだ!」いきなりの嬉しいお誘いに嬉しい気持ちが優先して、ほんの一瞬でも明日の予定を都合よく忘れてしまっていたのに気づいて、すぐに訂正する。「ダメって? なんか予定入ってるのか?」「はい。夜まで急遽SEIKAプロジェクトの仕事入っちゃって」そうだった。急遽今日その予定に変更になったから、思わず慧さんのお誘いが嬉しくて忘れちゃうとこだったよ。「あのプロジェクト? 依那の担当的にそんな夜急遽入る内容だったか?」「あ~。明日プロジェクトの広告に載せる琉偉の個人撮影で」「彼の……? それになんで依那が?」「それが実は撮影するテーマのコンセプトを打合せしてた時に、メンバーがあたしが出したアイデア気に入ってくれたみたいで……」「依那が出したアイデア?」「プロジェクト内で相談してた時は、なかなか思ったよりいい案が出なくって。それでついあたしがファン目線の方向でチラッと提案したら、まさかのそれがいいって、チームの皆もEveRのメンバーも賛同してくれて。でもそのイメージ通りに仕上げるために、あたしが全員の撮影に立ち会うことになっちゃったんです」「そんなの、依那が大変なんじゃないのか?」「いえ。元々EveRのファンだし撮影立ち合えるのなんて正直役得ですし、それに何より自分のそのアイデアは、誰よりEveRの良さや魅力をよく知ってるファンの自分だからこそ生まれたアイデアだと思うんです。だから、それをちゃんと想像通りの形に仕上げたいんです。きっとそのアイデア通りの形になれば、このプロジェクトのアンバサダーとしてのEveRはもちろん、プロジェクトとしてもどれほどすごいモノで魅力的なことかを絶対たくさんの人に知ってもらえると思うんで、あたしも妥協したくないっていうか」と、気付いたら長々と慧さんの前で熱弁
そして、あたしは振り向いたまま、もっとしっかり慧さんの方に身体と顔を向け。ギューッ。正面から慧さんの胸元に抱きつく。「ん?依那? どした?」あたしが黙ったままギューッと抱きついたままでいると、慧さんが声をかけてくる。「慧さん。大好きです」そして、あたしは胸元に顔を埋めたまま、思ったままの気持ちを慧さんに伝える。「ん」そして、慧さんは片手は抱きついたままのあたしの背中に手を回し、もう片方の手は、同じように抱き締めながら頭に優しく触れ、丸ごと抱きかかえてくれる。ゆっくり何度か頭をポンポンなで、あやすように触れる。それがなんだか心地よくて、それから少し何も言わずその時間を二人で感じる。特にそこで言葉を交わさなくても、慧さんのこの触れてくれる手から抱き締める強さから、あたしと同じように想いを返してくれているのだとわかる。「依那」「はい」そして、慧さんが静かにあたしの名前を呼ぶ。「いつかさ。依那を連れて行きたいところがある」「えっ、連れて行きたいとこ、ですか?」「うん。っていうか、一緒に行ってほしい場所、でもあるかな」特にどことは告げずに、そう伝える慧さん。「あたしは慧さんとならどこにでも」慧さんがあたしと一緒に行きたいと思う場所なら、どこだってついていく。「そこはオレにとって、大切な場所で……。だけど、ある時から行けなくなってた場所。依那に、そこについてきてほしい」慧さんにとって、それが何を指して、どういう意味を示しているのかはわからない。だけど、慧さんの中で大切だと思える場所に、あたしを連れて行ってくれると言ってもらえただけで嬉しい。今はそれがどこなのか、それがいつなのかもわからないのに、なぜだか今までとは全然違う安心みたいなものを感じる。今までは、慧さんが自分だけで抱えていた傷をなかなか打ち明けてくれなかった寂しさや、心を開いていないのかもというもどかしさを感じたりしたこともあったけど。だけど、今の慧さんからのこの言葉は、具体的な的確な何かを伝えなくても、なぜかその先の未来にあたしがちゃんといるような、そんな気がしたから。いつかのその時に、あたしがちゃんと慧さんの隣にいる。そんな未来を、ちゃんと慧さんは思い浮かべてくれている。慧さんの中で大切な何かに、きっとこの先あたしも触れさせてもらえるような、なんかそんな予
「なんかそんなすごい存在になれてるなんて嬉しいです」大好きな慧さんの中で、自分が気付かないところでそんな存在になれてるなんて嬉しい。言葉にしないところでも、慧さんはあたしを特別に思ってくれているのが伝わる。「そう。だから依那はオレにとって女神みたいな存在だって言ってもいいかも」「えっ!? それは大袈裟ですよ!」すると、まさかの驚くようなその言葉に、あたしはさすがにビックリして恐縮しながら否定する。「オレにとってそう思ってんだからそれでいいんだよ」だけど、そうやってあたしが恥ずかしくて否定するのを目にしても、慧さんは特に気にもせず、そんな風にサラッとあたしに告げる。「だって自分では全然自覚ないし……」「だろうな。別に依那は何かそれを意識してるってわけじゃないんだし。まぁこれはオレの感覚とかそういうもんだから、依那は実感なくて当然だよ」「そういうもんなんですかね」「そう。だから、依那はただ言葉通りにそれをわかってくれてたらいいよ」「じゃあ、あたしはあたしのままでこれからも変わらずにいればいいってことですか?」「そう。今の依那がいいんだから。何も変わる必要はない」「はい。ありがとうございます」慧さんはいつだってあたしのままでいいと言ってくれる。今のあたし自身を受け入れて好きだと言ってくれる。それがどれほどあたしに自信と勇気を与えてくれているだろう。誰に言われるより嬉しい言葉。誰に認めてもらうより嬉しい存在。仕事でも、彼女としても、一人の人間としても、慧さんの前で自分を好きな自分でいたい。いつかもっと自分自身誇れるようになっていきたい。「でも。慧さんはやっぱりすごいです」「ん? 何が?」「そんな風に言ってても、たくさんすごいお仕事どんどんこなしていって。こんなすごい人独り占め出来るなんて、すごく贅沢なことだなって思います」「依那といる時は、オレは社長でもなんでもないただの一人の男だよ。だから、別にすごいとか思わなくていいし、そういうことは気にせずもっと素直に依那が思うまま接してきてくれればいい」確かにそう言ってくれる今の慧さんも、いつもあたしに接してくれる慧さんも、いつだって社長の雰囲気とか感じることは一切なくて、あたしにとってただ大好きな人なだけ。好きになる前は、社長という肩書や噂やイメージが先行して、そういう見方し
「きっと、今までは自分の中でストッパーにしてそれを抑えるようにしてただけなのかもな。……って、あぁ、そうか。そういうことか」すると慧さんが自分で口にした言葉に、何か気付いたことがあるのか納得する。「ん? 何がですか?」「あぁ。多分それも自分の中で怖かったのかも」そして、またそんな気になる言葉を呟く。「え? また?」「うん。自分で抑える何か理由がなければ、多分オレはきっと依那を好きになりすぎる予感がしてたから」なんだ。そんな嬉しい理由なら、何も怖くなる必要なんてないのに。「それならいいことじゃないですか。 あたしは大歓迎ですよ!」あたしは、慧さんを日々好きになっていくけど、好きになっていくたび怖いなんて感じたことない。それどころか、もっとあたしと同じくらい好きになってほしいと思う。「多分。依那が想像してないくらいだぞ?」「えっ、どういうことですか?」後ろから抱き締めてくれている慧さんの手を掴みながら、少し後ろに顔を向けながら尋ねる。「ずっとこうやって依那に触れていたいし、ずっとこの腕に閉じ込めておきたいくらい」「フフ。いいですよ? ずっとこうやって抱き締め続けててください」「それだと仕事出来なくて困んだよな~」「えっ? そこまでですか?」「ずっとって言っただろ」「一緒にいる時だけかと思ってました」「いや。可能なら仕事中もこうしてたいくらい」「えっ!? 慧さんがですか!? そこまで!?」慧さんからのまさかの言葉に、あたしは驚く。「オレが何? おかしい?」「いや、だって仕事人間の慧さんが仕事中もとか……」「だな。仕事中も最近は依那のこと想い出しすぎてホント自分でも困ってる」「えっ……。そこまでなんだ……。でも、フフ。嬉しい」そんな時まであたしを想い出してくれてるとか幸せ過ぎる。慧さんが素直に伝えてくれるということを、嬉しいとは思ったけど。慧さんが一つ一つ伝えてくれるその言葉で、慧さんがあたしを想ってくれているのだと、しっかり感じられて、想像以上に幸せを実感出来る。「あっ、だけど、それで喜んだりしちゃダメですよね!?」「ん? なんで?」「だって、それで慧さんお仕事出来なかったら、影響良くないですよね……。でもさすがに慧さんはそこまでにはならないか」自分で言っててちょっと恥ずかしい。あたしじゃあるまいし、
「あっ、社長起きました?」この体制が気になりつつも、とりあえず社長に声をかける。「何……楽しそうにしてんだよ……」「ん?? ……あぁ! 本村さんのことですか!? 社長こんななってたから送ってきてくださったんですよ~。ホント本村さん優しいですよね~」「お前には……オレが……いるだろ……」「え……?」見下ろして寝そべっている社長の、トロンとした表情と気だるい雰囲気と纏う色気。そんな社長にまっすぐこんな至近距離で見つめられて、そんな言葉を呟かれて、あたしの心臓はまた急に早くなり始める。いや……絶対、これ……ヤバい……。「何……コソコソ……話してんだよ……」「いや……え……?」
「しかも、この段ボールあんたどうやって運ぶの? 引っ越しの人取りに来るの?」「えーっと、それは~あの~」適当に誤魔化しながら段ボールを運びながら玄関へ移動すると。人の気配が……。って、社長だ!「あっ、もう着いてたんですね!」「あぁ。うん。なんか二人で話してたみたいだから、ちょっと待ってたんだけど」いつの間にか玄関に社長が到着していて。ん? ちょっと待ってた?ってことはルイルイのことでお姉ちゃんと話してたの、もしかして聞かれた!?いや、そこまでは聞こえないか。てか、聞かれても意味わかんないだろうし、別に社長にとっちゃ興味もないだろうけど。住んでるとこ問い詰められてたとこ
すると。「逢沢。顔上げろ」静かにあたしに声をかける社長。「……はい」どうしよう。社長怒ってたら。あたしみたいなヤツにこんな勝手なこと言われて絶対ムカついたよね。だけど、契約……解消したくないよ……。そのまま俯いたまま、ちょっと泣きそうな寸前になっていたら……。「フッ。お前、なんて顔してんだよ?」すると、社長はあたしを見てなぜか優しく笑う。「……えっ?」「わかったから。もうそんな顔すんな」「わかったって……」「オレが余計な気回しすぎただけだったみたいだな。悪かった」「いえ! 社長は全然悪くないです! あたしが勝手に……! 勝手に……ちょっと悲しくなっちゃっただけです
「お姉ちゃん、それはもういいじゃん。そんなのいきなり困っちゃうから」あたしはとりあえず今のピンチを逃れることに必死で。「大丈夫。依那。ちゃんと答えるから」すると、社長がそっとあたしに声をかける。「え……?」「素直で純粋で、仕事にも勉強熱心ですし、何より明るくて一緒にいて自分が楽しいんで。オレが一緒に住もうって誘いました」社長……。また自分が想像もしていなかった言葉が飛び出す。そんなあたしの中身に対して言ってくれるなんて思わなくて。もし何かを言うとしたら、家事をしてくれるだとか、そういう感じのことだと思ってたから。社長は、そんな風にあたしのことを思ってくれてるってこと……







