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転生して恋しいものがある

Author: 結城慎二
last update publish date: 2026-07-30 06:00:09

 ルダーを連れ立って僕は館に戻る。

 館につくとザイーダが現れた。

「なにかあったのか?」

「いえ、御用がおありかと」

 よく気がつきますこと。

「じゃあ、イラードを呼んできてもらえないかな?」

「ワタシならここに」

 うおっ!

 後ろから突然声をかけてこないでくれ。

「じゃあ、みんな中へ」

 と三人を招き入れる。

 館の一階は基本的にはこの世界の常識にならって土足でいいのだけど、二階と奥座敷は土足禁止になっている。

 その奥座敷には囲炉裏が切ってあって常時火種を絶やさない。

 その囲炉裏に炭をくべ水を入れた深鍋を乗せる。

 お茶が欲しいなぁ……。

 他の地域がどうか知らないけど、この村では昔から水を沸かして飲んでいた。

 白湯であったり湯冷ましであったり、基本生水は飲まない。

 この季節ならダリプの果汁ジュースが子供達に人気だった。

 大人たちはまぁダリプ酒を|昼
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  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    ジャンの懸念

    「さて……」 と、飲み物で一息ついた三人を見回し視線を集める。「今晩宴が開かれるわけだけど、みんなにはこの宴で僕を正式な村長にしてもらいたい」「正式な村長?」 と、ザイーダが「なにを言ってんだ?」って顔で聞き返す。  イラードも「正式もなにもお館様はこの村の村長でしょう」 と、さも当然と言った口調で言う。  判ってないなぁ。  チラリとルダーを見るとこっちはなんとなくニュアンスがつかめていそうだ。  イラードもザイーダも村の中では結構な知識人なはずだけど、この辺りの機微は文字が読めるからと言って理解認識できるもんじゃないのかな?「今僕は、元々の村の住人ということで村長をやっている」 そこで区切ってみんながうなずくの確認する。「最初の七人はその経緯を知っているしある意味納得している」「知識や復興活動の運営を率先して行なっていたし、実績もある。誰もが納得していると思うが?」 と、ルダーは言うけどそうとも言えない。「さて、それはどうだろう? 後から来た人たちの中には僕を幼くて経験不足、信用ならないと思っている人も少なくないと思うんだ」「確かに若いと侮っている村人が数人いますね」 さすが、諜報部。  ザイーダはそこらへんの情報もちゃんと持っていたようだ。「なるほど、今は復興に力をあわせる都合もあって声に出していないだけで、お館様が村長でいることに不満を持っているものがいるのですね」「そう! 彼らはきっと『仮の村長』と思っているんだと僕は考えてる。復興作業も一段落したら『今の村長で本当にいいのか?』とか言い始めるに違いない」 ま、この辺は半分被害妄想なんだけど。「そこで、この機会に村の総意として僕を村長として正式に認めさせる」「できますか?」 いい質問だよ、ザイーダ。

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    転生して恋しいものがある

     ルダーを連れ立って僕は館に戻る。  館につくとザイーダが現れた。「なにかあったのか?」「いえ、御用がおありかと」 よく気がつきますこと。「じゃあ、イラードを呼んできてもらえないかな?」「ワタシならここに」 うおっ!  後ろから突然声をかけてこないでくれ。「じゃあ、みんな中へ」 と三人を招き入れる。  館の一階は基本的にはこの世界の常識にならって土足でいいのだけど、二階と奥座敷は土足禁止になっている。  その奥座敷には囲炉裏が切ってあって常時火種を絶やさない。  その囲炉裏に炭をくべ水を入れた深鍋を乗せる。  お茶が欲しいなぁ……。  他の地域がどうか知らないけど、この村では昔から水を沸かして飲んでいた。  白湯であったり湯冷ましであったり、基本生水は飲まない。  この季節ならダリプの果汁が子供達に人気だった。  大人たちはまぁダリプ酒を昼日中から飲んでた。  原始的な醸造だからか、甘くてアルコール分低めなので水のようにがぶがぶ飲めてしまえる。  けど今は、僕の前世知識から平日は仕事中に飲んではいけないことにしている。  アルコールは脱水を促すし、肝臓に悪いしね。  ルダーが四人分のカップを持ってくる。  勝手知ったる他人の家ってやつか?  ザイーダは野生のスタベラをジャムにしたものを湯の中に入れる。  甘酸っぱくて疲れた体になかなか効果がある。  そうか、日本茶的なのは難しくてもハーブティー的なものなら飲めるかもしれない。「ルダー、ハーブティー的なものってできそう?」「ん? 食える草はいくつかあるけど、うまい飲み物になるかどうかは……」「アニーたちと一緒に試してみてよ」「んーん……まぁ、来年な」 あ。  そろそろ冬枯れの時期か。  仕方ないな、本題に入ろう。

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    みんなワクワクソワソワ

    「貴重な話が聞けたよ、ありがとう」 すっかり打ち解けた気になっていた男は「なんのなんの」と横柄に手をふる。「君の処遇は改めて明日決定するつもりだけれど、今日のところはこのまま部屋に戻ってもらうことにしよう」 なんというか、ジャスは阿吽の呼吸でも心得ているかのようになにも言わないうちに男に縄をかけ出す。「ちょっ、ちょっとこれは?」「君が囚われの身であることに変わりはないんだよ?」 そう金魚みたいに言葉もなく口をパクパクされても対応は変わらないよ?  ま、対応は最初から決まっているんだけど今日はこれから村をあげての大宴会だからね、不測の事態は困るんだ。  ジャスが部屋に男を押し込むのを確認して僕は家を出る。「終わったのかい?」 外では律儀に見張りについていたルダーが声をかけてきた。「終わった終わった。今後の村の計画になかなか有意義な情報があったよ」「そりゃあよかった」 遅れて鍋を抱えたジャスが出てくる。「見張りの当番はいつまでなんだい?」「日暮れまで」 とルダーに鍋を返しつつ答える。「じゃあ、宴で待ってるよ」 僕はそう言い残してルダーとその場を離れた。  向かったのは正面門。  二棟の櫓にはサビーとオギンがいる。「お館様」 僕らを見つけたオギンがスクワラーのようにするすると降りてくる。「見張りは通常体制に戻すよ」「襲撃の危険はない……と?」「そ。あいつの情報だ。信憑性は僕が保証する。二人とも宴まで休んでいいよ、ご苦労様」 そう告げて、今度はルダーの家へ。  家の前ではアニーがカルホと遊んでいた。  年の近い友達がいるのはいいことだよ。  多すぎるとそれはそれでややこしいことになるんだけどね。  あ、これは前世の経験だわ。  二人に軽く挨拶をして家に入ると、ヘレンは宴の準備で大鍋に食材を放り込んでいた。  僕は彼女にスープ

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    お館様はネゴシエーター

     まずは飴の方で行ってみることにしよう。「申し遅れたかな? 僕はこの村の村長をしている」 まだカッコ仮……だけどね。「村……長?」 惚けた顔で男は繰り返す。「意外だろうね」 あ、こいつあっさり頷きやがった。「噂で聞いているだろうけど、この村は二年前に野盗に襲われて一度壊滅しているんだ。僕は唯一の生き残りとして暫定的に村長をやっている」 そこ! 「なるほど」なんて納得するんじゃない!  僕が顔を引きつらせたのをどう解釈したのか、男が蒼ざめた顔で見上げてくる。  いけね、話の振り方間違えたか?「あー……でも、そんなことはどうでもいいんだ。今はこの町でひっそりと暮らしていられれば」 たぶん無理だけど。  リリムが吹き出す。  チッ、また独白を読みやがった。「そこでだ、君にこの村でひっそり生きるための情報提供をしてもらいたい」「ジョウホウテイキョウ?」 これはどういう意味でのおうむ返しなんだ?「君の知っていることを教えてくれればそれでいい」「見返りはあるのか?」 いや、君は本来そういう立場じゃないって自覚ないの?「情報次第だ」「…………」 …………。「……なにが知りたい?」 ホッ。  第一段階の交渉はクリアした。  僕は彼の縄をほどき、リビングへ案内する。  おっと、ひと鞭くれてやるのを忘れちゃダメだな。「逃げ出すつもりなら死ぬ覚悟をしてくれよ。危害を加えるような人間に情けをかける気はないからね」 はい、ぶるっちゃいましたね。  ま・実際、彼以外はみんな死んでるし、説得力あるべ。  イスに腰掛けると、ジャスが温めたスープをよそってそれぞれの前に置く。「まずは食事といこう」 と、僕がいうと「うまいぞ」 と、ジャスがいう。  いいフォ

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    秋だけど春なんです

    「ヘレンは順調かい?」「ああ、おかげさまで安定期だよ。そうでもなきゃスープなんて作ってもらえてないだろ」 確かにちょっと前までつわりがひどくてルダーが食事の支度をしてたな。「どっちかな?」「さあな。前世世界じゃあるまいし、生まれてくるまで判らんよ」「違いない」「アニーは妹ができると信じてるみたいだけどな」「そうか。村が復興して初めての子供だね」「そうだな。どうでもいいが、ジャリの視線が痛いわ」 憧れの姐さんだったみたいだからねぇ。「そういや、チャールズとガブリエル。正式に結婚することにしたそうだ」「そりゃめでたい」 なんてとりとめもなく話していると案外すぐに着くもんだ。  見張りにはジャスが立っていた。「ケガは大丈夫かい?」「ザイーダが言うにはこれくらいの傷なら痕も残らないんじゃないかって」「そりゃあよかった」「うまそうですね。ヘレンさんのスープでしょ」 よく判るねぇ……。  ああ、もともと同郷ってか、ヘレンを慕ってついてきたんだっけか。「一緒に食う?」「いいんすか?」「いいよ」「ルダー、ごめん。ちょっとの間代わりに見張りお願い」「はいはい」 ルダーは二つ返事で引き受けてくれた。  中に入ると殺風景な家だった。  腰を据える気なんかサラサラないって言うのが家財道具から見て取れる。  奥の部屋のドアを開けると、ベッドの上に後ろ手に縛られた男が、心配そうにこちらを見てくる。  僕は辺りを見回して武器になりそうなものを確認する。  椅子とか鍋釜程度だな。  包丁さえないってのはどうやって調理してたんだ?  ジャスに指示して縄を解く。「腹が減ったろ? 一緒に食おう」 その提案はよっぽど彼の想定外だったんだろうか?  惚けた顔して返事一つ返ってこない。  スー

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    肩の荷が下りると体調を崩すことが多い…らしい

     階下から漂ってくるおいしそうな香りに起こされた。  体は少し重い。(仕合の後はこんな感じになるとこが多かったな) などと妙に懐かしく思いながら下に降りる。「よう、やっと起きてきたな」 と出迎えてくれたのはルダーだった。  むーん……微妙に嬉しくないな。(やっぱり女性に起こされたい) などと思いつつも、なんでまたルダーが僕の館にいるのか疑問に思っていると。「ヘレンにな」 と、まるで僕の心が読めるかのように説明してくれる。「ヘレンがな、ずっと気を張ってたやつは肩の荷が下りると体調を崩すことが多いから、あったかくてうまいもんを食べさせてやれって持たせてくれたんだ」 なるほど。  おじいさん商隊長さんが亡くなったのもそんな感じだった。「滋養にもいいぞ。デーコンポモイトスープだ。肉はラバトの塩漬けを使ってる」「それはうまそうだ。じゃあ、遠慮なくごちそうになるよ」「おぅよ」 もう随分前から自炊になっていて、最近は食べる機会もめっきり減ったけど、ヘレンの料理はうまいんだ。  食事をしながら僕は村の様子を訊ねる。「今日はみんなゆっくり起きて今は村人総出で宴の準備をしてるぞ」 農作物の収穫作業も一段落ついてるし、雑木林の収穫はピサーメ以外まだ少し早いと聞いてるからちょうどよかったのかもしれない。「誕生会と収穫祭と戦勝記念の宴だね」「おお、景気がいいな」「捕虜の容体は?」 そう訊ねると、ルダーの声のトーンが少し落ちる。「二人はお館様が去って間もなく死んだ。もう一人は『苦しい、殺してくれ』って言うんでイラードが楽にした」 そうか。「生き残りは例の男の家で見張られている」 手引き役の男は戦闘で死んでいるから、今は空き家ってことになるんだし有効利用ってやつだな。「様子は?」「縛られてるからって

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    都市伝説は真実だった

    「じゃあ次は概要ね」 と、リリムは言う。「世界の概要は現世の知識があるから割愛ね」 あらま。「あなたは転生の際にDNAってやつに細工されていてね、神様曰く人よりちょっと優秀になってるそうよ」 え? ちょっと?「そこはとても優秀になってんじゃないの? テンプレ的に」「いくら世界に干渉できる環境にある神様だってそんなことホイホイしたら世の中のバランスが狂っちゃうでしょう?」「異世界転生は世界のバランスを崩さないのか?」「崩すわよ。それなりに。そもそも

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    さゔぁいぶ-後篇-

     村に戻った僕は村人の埋葬をする。  人の死には慣れている。  現世の僕が、だけど。  この世界は前世の世界と違って文明水準が高くない。  当然医療水準も高くない。  田舎だからってのはあるかもしれない。  大きな街はもしかしたらすごく発展しているのかもしれない。  魔法のある世界だから、当然治癒魔法もあるはずだ。  でもそれがどれくらいの効果があるかもわからない。  だからこの村はよく人が死んだ。  子供は特によく死んだ。  僕にも姉と妹がいたらしい。  妹の方はかす

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    さゔぁいぶ-前篇-

     僕は十五歳の朝を木の枝の上で迎えた。  この世界の元服、つまり成人の儀式が行われる日だ。  確かに一生忘れられない日にはなったけど……切ない。  あまりにも切ない。  秋とはいえ、昼頃になればそれなりに暖かくなる。  今日は天気もいいので昼頃にはむしろ汗ばむほどの陽気になった。  慎重にあたりの気配を確認しつつ、木から降り集落に戻ると、まだプスプスとくすぶっている焼け跡の中を歩く。  あたり一面、嫌な臭いが立ち込めているのは、村人の焼けた臭いだろう。  昨日から何も食べてないのに込み上げてくる胃液を吐き出し

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    泣ぬれるは枝の上

    「逃げたのはガキ一匹か」 と、僕の真下で傷だらけのごつい男が言っている。  こいつが盗賊団の頭目と見た。「へい、多分」「多分だと!?」「へ、へ……」 あたふたした下っ端が頭目にぶん殴られ、仰向けにぶっ倒れる。  気絶してろ!  盛大に気絶してろよ、でなきゃここにいることがバレる。  僕の祈りは天に通じたのか、そいつは白目をむいて動かない。「このさらに奥に行ったかもしれませんぜ」「ならいい」 頭目は、一言吐き捨てて踵

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