Masukのどかな田舎の小さな集落で生まれ育ったジャン・ロイは15歳の誕生日の前日、村を襲った盗賊から逃げている最中唐突に四十半ばのおじさんだった前世の記憶が蘇った。 略奪され、焼き尽くされた村でただ一人生き残ったジャンのサバイバル生活は、なんだかんだと仲間が増えて村が町の規模に。 復興したことが領主にバレたのを機に叛旗を翻し、ついには下剋上を成し遂げ領主として戦国の世におどりでる。
Lihat lebih banyak「人生やり直せたらなぁ……」
そう思っていたことが僕にもありました。
ありましたが……。
だからってこれはないんじゃないでしょうか?
こんな状態で前世の記憶が蘇るとか、神様の仕業だとしたら「あんたバカぁ!?」って罵ってやりたい。
いいや、一発殴らせろ。 こんな切羽詰まった状態だが、現在の状況を冷静に確認分析だ。 まず、ここは村はずれの雑木林をちょっと入ったところ。 この辺は子供達がよく遊ぶ場所で僕も勝手知ったる何とやらだ。 つまり、普段は危険のほとんどない場所で、そんな林の比較的幹の太い木をできるだけ登った枝の上にいる。 僕の名前は、えーと……そう! ジャン・ロイ。…………。
ギャバンなのかシャイダーなのか、どっちかにしろ! 混ぜたら中国系みたいじゃないか。
いかんいかん、前世の記憶に引っ張られて現世の記憶があやふやだ。 ひとまず現世の記憶だけを整理するぞ。 年齢は確か明日十五歳になるはずだ。…………。
じゃあ、明日蘇れよ前世の記憶っ!
まぁそれは今は置いとけ。 なんで僕は、こんなところにいるのか? それは、村が盗賊団に襲われたからだ。 こんな田舎の村にお宝なんてあるわけないじゃないか! って、少年としては悪態つくところなんだが、前世の思考が邪魔をする。 だよなぁ、収穫期に農村襲えば食いもんにありつけるわな。 運の悪いことに今回の盗賊団は食いもん奪うのに村人を殺す系の盗賊団だったらしく、僕は母ちゃんに背中を押される形で村を逃げ出しここまでたどり着いたわけだ。なんだ、うまく逃げだせたんじゃん。
とか、思っているそこのキミ。
そんなわけないじゃないか。 僕の下を盗賊団の手下たちがウロウロしてんだよ。 くそっ、皆殺し系盗賊団だこいつら。 襲った村の村人を全員殺すことで自分たちの身バレリスクを減らそうってんだ。見つかったら百パー確実に殺される。──というのが、今の状況だ。
街道は一本道でホルスの二頭立てキャラバンが通れる程度の道幅しかない。 徴税に来てるくらいだからそれくらいは敵だって判っている。 ……はず…………たぶん。 だから行軍は二列か三列縦隊なはずだ。 畑に出るまでは軍を展開できない。 そこをまず飛び道具で狙い撃つ。 先制攻撃だ。 町からなだらかに下っている斜面はそれなりに見通すことができるので、戦闘が始まったのは見て取れた。 弓より射程の短い投石兵の女性陣がまず街道の出口に一斉攻撃をする。 次の投石準備をしている間に狙いを絞った弓兵八人がそれぞれの的を撃つ。 しばらくはこれの繰り返しだ。 敵の先頭がどの兵種だったか判らないけど、少し下がって弓兵を展開することになる。 こちらの兵は準備万端畑に設置した置盾に隠れながらの投石・射撃なのに対して、相手側は不意を打たれて浮き足立っている。 とはいえ、こちらは民兵であっちは正規兵と傭兵という戦闘のプロ。 体制が整うと不利になる。 特にこちらの主力は女性の投石兵だからね。 弓兵の戦力差は二十対八。 投石で相手にどれだけ損害を与えられていたかが気になるところだ。「始まっておったか。どうじゃ、戦況は?」 ラバナルがチャールズを連れてやってきた。「始まったばかりだよ。まだなんともいえない」「そうか」「鉄の弾丸の威力はどうなった?」「うむ。なかなかの威力になったぞ」「ここから狙える?」 ここから戦場までは一カル半ってとこだろうか?「届きはするじゃろうが」 威力はない、と。「じゃあ、一度に何発撃てる?」「一度に? やったことはないが三発はできるじゃろう」「じゃあ、早速お願いしたい」「おお、いいじゃろう! ぬふふ」 味方でも怖いな。 敵の弓兵が森の木を遮蔽物にしてこちらへの反撃を始めたので、ラバナルには弓兵のとこ
総大将はもちろん僕。 僕はサビーとガーブラと一緒にホルスに騎乗、ペギーと一緒に本陣としてカイジョーの後ろに布陣だ。 カイジョーにはペギーを除くカシオペアの四人の他に剣士として二十人、ギランにも剣兵隊として反お館派の十六人をつけた。 ちなみにギランの軍は先鋒にした。 ギラン隊の前には飛び道具の二隊。 イラードには七名の男をつけて弓隊に、ザイーダには投石隊として女たちを二十人任せている。 どの隊も今日は畑の外れで野営だ。 ジョーのキャラバン隊は遊軍として雑木林の中に伏せてもらっている。 予備役、雑用係として主に女子供と老人が門の中で待機している。 その数ざっと五十人。 震えてきた。 夜のうちに改めてオギンを斥候に放つ。 そのオギンが戻ってきたのが朝靄けむる早朝だ。「あと三時間ほどで接敵します」「判った。サビーはイラードとザイーダ隊に、ガーブラはカイジョーとギランに伝令」「はっ!」 二人は短く返答するとホルスを蹴って駆けていく。「ペギーはラバナルに知らせろ」「すぐに」「疲れているところすまないがオギンは雑木林の中にいるジョーに伝えてくれ」「はい」 あ、僕の周りに誰もいなくなった。 思ったより心細いな。 そんなことを思っているところに「ペギーが来たんでな。陣中見舞いだ」 と、焼きたての無発酵パンを持ってルダーとクレタがやってくる。 気がきくな。 ちなみにルダーには町の差配を担当してもらっている。「いよいよか」「ああ、いよいよだ」「勝てるか?」「勝つよ」「そう願いたい」 それだけ言って帰っていった。 ほどなくしてペギーたちが戻ってくる。「オギンには二時間の休息を命じる」「お館様?」「戦が始まったらこき使うからそのつもりでいろ
「じゃあ、明日か明後日にはここに来るってことでいいのか?」 僕ん家の囲炉裏の間で行われている軍議。 参加しているのはジョー、カイジョー、イラード、ペギーそしてザイーダ。「いえ、隣村からこの町までの道は行軍には不向きですので、先行して人夫が道の拡幅作業をしています」 あら、ありがたい。「それってどれくらいの時間がかかりそうなんだ?」 結構かかりそうだぞ? つーか、無駄な労力だと思うね、本当にありがたいけどさ。 「兵は神速を尊ぶ」は魏書郭嘉伝だったかな? まぁ、地球でもヨーロッパとアジアでは戦争の仕方が違ったわけで、今回の一戦でこの国の戦争実態が初めて知れることになるわけだ。 おおよそは文献で想像がつく。 国王を頂点とする封建国家、爵位の制度があって国王に対する直臣貴族の領主がおり、その下に陪臣、下級貴族である騎士が存在する。 軍は騎士と傭兵で構成されていて、少なくとも現時点では徴兵制はない。 騎兵、つまりホルスに乗れるのは騎士以上。 ま、だから騎士なんだけど。 傭兵は自分の得意武器によって剣兵、槍兵、弓兵に分けられる。 ってところが、僕の現世知識だ。「拡幅といっても大木を伐採するわけではありませんから、四、五日後には姿を現すでしょう」 どんなことをしてんだろ?「軍勢規模は?」 侍大将カイジョーとしてはやっぱりその辺気になるか。 当然、僕も気になる。「騎兵十五騎、弓兵二十、それに剣兵が三十六人です」 七十人規模。 結構な人数だ。 想定より多いのは前回あまりにも華麗に追い返しすぎたせいか?「歩兵のうち騎士の配下、正規兵は何人だ?」「そこまでは……」「カイジョー、正規兵と傭兵だと違いがあるのか?」「ええ、傭兵は不利と見るや逃げ出します。命あっての物種ってやつですよ」 なるほど。「
僕は糸電話の原理を説明する。 糸電話は地球では十七世紀に発明されたと言われている。 最初に作られたのがブリキ缶を針金で結んだものだったため、英語ではブリキ缶電話という。 地球の物理的には糸をたるませると振動しなくなるけど、魔法なら魔力そのもので振動させられるんじゃないかと踏んでいる。 ラバナルの目がキラッキラと輝きだした。「できるぞ。それなら魔法にできる。お主、やるな」 僕じゃなく(前世世界の)先人の知恵なんだけどね。「しかし、それを実現させるにはやはり魔力操作が必要だな」 む?「つまり、町に魔法が使える人間が必要ということですか?」「道具に魔法陣を施せば魔道具として用意できるが、魔道具は魔力を通さねば使えんでの」 僕はオギンと顔を見合す。 候補は三人。 物見櫓から落ちて歩けなくなったチャールズ。 カシオペアの紅一点ペギー。 そして、ルダーとヘレンの娘ママイ。 もっとも、ママイはまだ一歳にもなっていないから無理だ。「魔力感能力が高いのが町には二人いる。ここに通わせてもいいかな?」「む。二人か。……いいだろう」「一人は事故で歩けなくなっているんだけど……」「面倒な……とはいえ、会ってみなければなんともいえん。明日、連れてこい」「僕も?」 やることいっぱいあるんだけどな。「お館様は忙しいんだ、あたいが連れてくるんじゃダメかい?」「んーん、仕方ない。三人だけだぞ」 翌日、ラバナルに面会した二人はどうやらお眼鏡にかなったらしく、チャールズはしばらく住み込み、ペギーは三日に一度通うことになった。 十日後、ペギーとオギンによってラバナルの家、物見櫓、僕ん家の三ヶ所に魔道具電話が施設された。 電線がわりに利用されたのは魔法によって生み出された糸だ。 魔法の糸なので強度が高く腐食にも強いんだって。 さらに四日経って、
「逃げたのはガキ一匹か」 と、僕の真下で傷だらけのごつい男が言っている。 こいつが盗賊団の頭目と見た。「へい、多分」「多分だと!?」「へ、へ……」 あたふたした下っ端が頭目にぶん殴られ、仰向けにぶっ倒れる。 気絶してろ! 盛大に気絶してろよ、でなきゃここにいることがバレる。 僕の祈りは天に通じたのか、そいつは白目をむいて動かない。「このさらに奥に行ったかもしれませんぜ」「ならいい」 頭目は、一言吐き捨てて踵
さて、ここからは前世の記憶をフル活用だ。 襲ってきたのは、十数人の盗賊団。村には女子供を含めて三十人ちょっと。ここは本当に農村の一集落だった。 ん? この世界は前世知識的にどれくらいの文明水準なんだ? くそっ、ど田舎の未成年じゃ参照知識がなさすぎる。 異世界転生ものならそれなりの環境に生まれ直させろっての。 ──って言っても仕方ないわけで、そもそもテンプレの神様にあった記憶がない。 現世の記憶を手繰り寄せてもなろう系のお作法である知ってるゲーム世界的な場所でもなさそうだ。 あ、もっとも僕、
「人生やり直せたらなぁ……」 そう思っていたことが僕にもありました。 ありましたが……。 だからってこれはないんじゃないでしょうか? こんな状態で前世の記憶が蘇るとか、神様の仕業だとしたら「あんたバカぁ!?」って罵ってやりたい。 いいや、一発殴らせろ。 こんな切羽詰まった状態だが、現在の状況を冷静に確認分析だ。 まず、ここは村はずれの雑木林をちょっと入
「で、僕のステータスはどうやったら確認できるの?」「なにそれ、美味しいの?」 え?「うそうそ、そんな便利機能現実世界にあるわけないじゃない」 だよねー。「数値が知りたいなら体力測定とかIQ検査でもしてみる?」「それって実際あてになるの?」「参考程度には」 だめじゃん、そんなの。「まぁまぁ。ホラ、そろそろ準備始めなきゃまた木の上で寝ることになるよ」 リリムに言われて気がついた。 お日様がだいぶ西に傾いているらしく、僕の影