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鈴田在可
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Novels by 鈴田在可

獣人姫は逃げまくる~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかけて逃げた後その中の一人と番になる~

獣人姫は逃げまくる~箱入りな魔性獣人姫は初恋の人と初彼と幼馴染と義父に手籠めにされかけて逃げた後その中の一人と番になる~

獣人は番を得ると、その相手しか異性として見なくなるし、愛さなくなる。獣人は匂いに敏感で、他の異性と交わった相手と身体を重ねることを極端に嫌う。獣人は番を決めたら死ぬまで添い遂げ、他の異性とは交わらない。 獣人の少女ヴィクトリアは、父親である獣人王シドの異常な執着に耐え、孤独に生きていた。唯一心を許せるリュージュの協力を得て逃げ出したが、その先で敵である銃騎士の青年レインに見つかってしまう。 獣人の娘が、貞操の危機や命の危機を脱しながら番を決めるまでの話。 ※一部に残酷な表現があります
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Chapter: 《故郷編》1 地獄の始まり
ヴィクトリアの幼い頃の記憶は、母に関するもので占められていた。 母は獣人で、とても綺麗な人だった。二人目の子が難産のうえ死産してしまい、そのせいで病弱になったと聞いていたけど、無関心な父――シド――と違い、優しくていつもヴィクトリアを気にかけてくれた。『早く、逃げなさい』 それが母の口癖だった。母は鉄格子の窓と鍵が幾つも設置された部屋に閉じ込められて、シドが付き添う以外は外に出してもらえなかった。自分自身が自由になりたい願望もあったのかもしれないが、ことあるごとにヴィクトリアにそう語っていた。 ヴィクトリアはシドが母を絶対に逃さないだろうことをなんとなく感じていた。母を置いて、自分一人だけこの里から離れるなんて考えられなかった。 母はシドを愛していなかったと思う。 母は、シドのものになる前、別の番がいたのだ。 獣人は番を得ると、その相手しか異性として見なくなるし、愛さなくなる。獣人は匂いに敏感で、他の異性と交わった相手と身体を重ねることを極端に嫌う。獣人は番を決めたら死ぬまで添い遂げ、他の異性とは交わらない。 シドのように鼻を焼かずとも平気で何人も女を抱ける個体は異常だった。 鼻の粘膜を焼き、匂いが全く分からなくなれば番以外と交わることもできるらしいが、獣人にとって嗅覚は重要な感覚だ。それを失うのは、人間にとって目を潰すのと同じことだ。 シドは母の番を殺し、母の粘膜を焼き、自分の女にしてしまった。そして檻の中に閉じ込めた。 それはどれほどの苦痛だったのか。 シドは母一筋というわけでもなかった。 狩場で見目麗しい人間の女がいれば攫ってきてハーレムの一員にしてしまうし、気に入った獣人の娘は問答無用で番にしたが、番にされた方はたまったものではない。 年中別の、しかも複数の女の匂いがプンプンする男が自分の最愛の人になってしまう。獣人の女たちは鼻を焼くしかなくなってくるし、悲しみのあまり自死する者も稀にいた。 まさに傍若無人。 極悪、規格外、破天荒。形容の仕方ならいくつもあるが、要するにシドに常識は通じない。 あの男のせいで何人の女が泣いたのだろう。獣人族は強さが全てで、獣人の部族としては最大規模であるこの里の族長に上り詰めたシドの意に逆らえる者は、いないに等しかった。 母が死んだのは、ヴィクトリアが
Last Updated: 2026-02-27
Chapter: 《プロローグ》 出会い
炎が見える。 涙はもう出なかった。 目の前で繰り広げられた光景は、少年――レインを絶望させるのに充分なものだった。 声ももう枯れた。 誰か俺を殺してくれと、そう思った。 妹は自ら舌を噛み切って、死んだ。 「つまらんな」 悪魔のようなその男は、笑ってそのまま行ってしまった。 何の希望も見えなかった。 このまま炎にまかれ、死ぬだけだ。 死ねばこの苦しみから開放される。 やがで炎が、何もかも浄化してくれるだろう。 レインは意識を手放した。 ****** ブチブチと何かが千切れるような音がして、レインは消えかけていた意識を取り戻した。 柄にダイヤモンドがはめ込まれた短剣を手にした少女が傍らに立っていて、レインを拘束していた縄を解いていた。 銀色の髪を後ろで軽くまとめた少女は、これまでの人生で見たことがないくらい整った顔立ちをしていた。 美しいと心のどこかで思ったが、絶望に彩られたレインの心には響かない。 獣人族は容姿が優れた者が多いと聞いたことがあった。身体能力も高いらしい。 少女はこの村の住人ではないし、獣人族の一味に違いないと思った。 レインは力なく言った。 このまま死なせてくれ、もう心が死んだのだ、と。 「辛くても、生きて」 少女は無慈悲にもそんなことを言った。 (なぜ?) レインは薄く笑って、生気のない瞳を少女へ向けた。 少女は動かないレインをしばし見つめたあと、何を思ったのか、妹の亡骸を抱き上げて家の外へ出て行ってしまった。 「待て……!」 レインは解放されてから初めて足を動かした。 ――妹をどこに連れて行くつもりだ ――死んでしまっても尚奪うのか ――お前たちは俺から何もかも奪って行くのか ――許さない ――あの女は獣人だ、敵だ ――殺してやる殺してやる殺してやる レインは痛めつけられた身体を必死に動かして、うめきながら少女の後を追った。 外に出て振り返れば、父と妹と暮らした家が燃えていた。 父は獣人の襲来を知り、レインと妹に家から出るなと言い置いて、銃を持って行ってしまった。 それきり、帰ってこない。 周囲を見れば、他の家にも火の手が上がっていたり、滅茶苦茶に破壊されたりしていた。 誰の声も聞こえない。
Last Updated: 2026-02-26
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