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第2話

Auteur: リンゴ
私の苗字が母の「桐生」を名乗っているせいで、みんなが勘違いするのも無理はないけど、白石がこの実習生たちの中で唯一「白石」を名乗る人だったのも大きい。

今では当然のようにみんなの注目の的になっていた。

彼女が満面の笑みを浮かべているのを横目で見ながら、私は急いでその嘘を暴こうなんて考えなかった。

そうこうしているうちに、部長が入ってきて、賑やかだった雰囲気も徐々に落ち着いていった。

でも、何の理由かはわからないけど、部長が白石に向ける態度だけは明らかに他の人とは違っていた。

さらに驚いたことに、彼女を実習生グループのリーダーに指名して、会社の様々な指示を私たちに伝える役目を任せるというではないか。

私はこの一方的なやり方に納得がいかなかった。

だから思い切って口を開いた。

「やっぱり公平にしたほうがいいと思います。みんなで投票して決めるべきじゃないでしょうか」

「会社にそんな時間はない。それに白石君の履歴書が君たちの中で一番優秀だったんだ。当然彼女がリーダーにふさわしい」

部長のその言葉に、私は笑いそうになった。

だって昨夜、父がはっきり言っていたのだ。

「今回の実習生の中で、美琴の履歴書が一番輝いている。父さんは美琴がきっと成功すると信じているぞ」

だから、部長が平気で嘘をついているのを聞いても、その場で反論することはしなかった。ちょうど、白石の「偽お嬢様」の正体をすぐには暴かなかったのと同じだ。

嘘というのは、破綻した瞬間にこそ一番おもしろいものだ。

だから私は本気で知りたい。白石がどれだけ「優秀」なのかってね。

でも彼女の実力を知る前に、まず私が面倒ごとの的にされてしまった。

私のデスクには、半分の身長ほどもある書類が山のように積み上げられていた。そして、白石は得意げに私に命令する。

「これ、全部時間順にデータ化して、明日の朝までに私のメールに送っといて」

さらに帰り際、彼女は振り返ってこう付け加えた。

「あと、私にコーヒーも入れてきてね」

その命令口調に、私は思わず呆然としてしまった。

「自分でやれば?」

だって、私の父親ですら私が入れたコーヒーを飲む権利なんてないのに。

「ついでにできることじゃない。同僚なんだからそんなにケチケチするなよ?」

同僚の藤沢梨花(ふじさわ りか)が不満そうに口を挟む。

「そうそう。コーヒーくらい入れてあげてもいいじゃない。ちょっとした手間でしょ?」

まるで私が意地悪をしているかのような言い方に聞こえて、イラッとした私はカップを藤沢に押し付けた。

「じゃあ、手間ついでにお願いしてもいい?」

お世辞にも良いとは言えない顔色の藤沢が、すぐに噛みついてくる。

「桐生、どういうつもり?初日から揉め事を起こしたいわけ?」

私が何も言う前に、横から白石が出てきて、これまた「私が悪いです」という顔でみんなに謝り始める。

「全部私が悪いんです。桐生さんにコーヒーなんてお願いすべきじゃなかったです。みんな、私のせいで険悪にならないでください」

まるで、私が意地悪をしたみたいな言い草だ。

私は別に、コーヒーを入れるくらいのことに怒ってるわけじゃない。ただ、彼女の人を見下したような命令口調が気に食わないだけだ。

藤沢は手を顔の横でパタパタさせながら、目を吊り上げて私にこう言った。

「こんな小さなこともやりたくないとか、どうやってこの会社に入ったの?」

「私は、お茶汲みをするためにこの会社に入ったんじゃありませんから」

思わずそう言い返すと、藤沢は明らかに苛立った様子で反論しようとする。

「あんた……」

「じゃあ、こうしましょう」

白石は私を遮るようにして言った。

「桐生さんの代わりに、私がみんなにアフタヌーンティーをご馳走します。ほらほら、みんな席に戻って仕事を続けましょう!」

そして彼女は、私ににじり寄ってきて、優しく見せかけた声でこう言った。

「桐生さん、私のこと怒らないでくれませんか?」

その甘ったるい声を聞いた瞬間、私は吐きそうになった。

だから、彼女の手を振り払ってその場を離れる。溜まった苛立ちはどこにもぶつけられないまま、私は一人でうんざりした気分だった。

どうしてあんなに取り繕うことができるのか、心底理解に苦しむ。

でも、それだけじゃ終わらなかった。天気を吸いに屋上へ上がって戻る途中、階段で、私は白石が部長とこっそりいちゃついているところに出くわしてしまったのだ――
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