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社長令嬢、インターン生活は波乱の幕開け!

社長令嬢、インターン生活は波乱の幕開け!

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私は桐生美琴(きりゅう みこと)、社長の実の娘。 真のお嬢様として、父に会社の基礎から経験を積ませるように言われ、私は一生懸命にインターンシップをこなしていた。 ところが、ある同僚がまるで「私が社長の娘である」かのように振る舞い、私が金持ちの愛人だと噂を流し始めた。さらに、マネージャーと手を組んで私の企画を横取りし、同僚からは無視され、上司には解雇されてしまった。 幸いにも、父がすぐに登場して、私が本物の社長の娘であることを証明してくれ、そしてあの同僚とマネージャーにはしっかりと処罰が下った。

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Chapter 1

第1話

入社初日、新しい同僚たちが話の中で「社長の娘だ」と吹聴し、みんなが一斉にお世辞を言ってきた。

でも、私のことは、まるで年上の男に養われている愛人だと言って中傷している人もいた。

私は腹が立って、すぐに父に電話をかけた。

「父さん、あの人たち、父さんが年上の男だって言って、私を愛人だって言ってるんだけど……」

……

大学を卒業した後、父は何も言わずに私を直接、会社の基礎の部分から始めさせることに決めた。

表向きは「能力を高めるため」「意志を鍛えるため」だと言っていたが、私は正直、少し不安もあった。

でも、心の中では独立するチャンスだと密かに期待していた。

ところが、入社初日、私がオフィスに入ると、同僚たちがささやき合っているのが聞こえた。

「ねえ、聞いた?あの白石社長の娘も同じインターンにいるんだって」

「社長、ちょっと無神経だよね。せめてマネージャーから始めさせてあげればいいのに」

私は驚いた。この情報、誰から漏れたんだろう?

幸い、その後すぐに話題は別の方向に移っていった。しかし、まだ気になることがあった。

その後、インターン生の自己紹介の場で、一人遅れてやってきた女の子が名乗りを上げた。

「皆さん、こんにちは。私は、白石絵理(しらいし えり)と言います」

「白石絵理って……もしかして、白石社長の娘さん?」彼女の周りの人たちがすぐに驚いて声を上げた。

そして、会議室は一瞬で騒然となった。

その「白石さん」は、上から下まで一式ブランド物を身に着けていて、腕時計もカーディアンの新作ブルーバルーンだった。

まさにお嬢様そのもの。

白石は軽く頭を下げて微笑んだ後、少し答えにくいことを言った。

「私の父は、常に低調であることを大切にしなさいと教えてきました。会社に来たのも、彼の意志を尊重してのことです」

「やっぱり金のスプーンを持って生まれたんだね。あのオーラ、違うわ!」

「白石さん、実習期間が終わったら、ぜひ私たちともお友達になってね!」

私は驚き、言葉が出なかった。

私が社長の娘だと思っていたのは、私だけだったのだろうか?

私、確か一人っ子のはずじゃ……父がどうしてこんなことになっているのか、理解が追いつかなかった。
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第1話
入社初日、新しい同僚たちが話の中で「社長の娘だ」と吹聴し、みんなが一斉にお世辞を言ってきた。 でも、私のことは、まるで年上の男に養われている愛人だと言って中傷している人もいた。 私は腹が立って、すぐに父に電話をかけた。 「父さん、あの人たち、父さんが年上の男だって言って、私を愛人だって言ってるんだけど……」 ……大学を卒業した後、父は何も言わずに私を直接、会社の基礎の部分から始めさせることに決めた。 表向きは「能力を高めるため」「意志を鍛えるため」だと言っていたが、私は正直、少し不安もあった。 でも、心の中では独立するチャンスだと密かに期待していた。 ところが、入社初日、私がオフィスに入ると、同僚たちがささやき合っているのが聞こえた。 「ねえ、聞いた?あの白石社長の娘も同じインターンにいるんだって」 「社長、ちょっと無神経だよね。せめてマネージャーから始めさせてあげればいいのに」 私は驚いた。この情報、誰から漏れたんだろう? 幸い、その後すぐに話題は別の方向に移っていった。しかし、まだ気になることがあった。 その後、インターン生の自己紹介の場で、一人遅れてやってきた女の子が名乗りを上げた。 「皆さん、こんにちは。私は、白石絵理(しらいし えり)と言います」 「白石絵理って……もしかして、白石社長の娘さん?」彼女の周りの人たちがすぐに驚いて声を上げた。 そして、会議室は一瞬で騒然となった。 その「白石さん」は、上から下まで一式ブランド物を身に着けていて、腕時計もカーディアンの新作ブルーバルーンだった。 まさにお嬢様そのもの。 白石は軽く頭を下げて微笑んだ後、少し答えにくいことを言った。 「私の父は、常に低調であることを大切にしなさいと教えてきました。会社に来たのも、彼の意志を尊重してのことです」 「やっぱり金のスプーンを持って生まれたんだね。あのオーラ、違うわ!」 「白石さん、実習期間が終わったら、ぜひ私たちともお友達になってね!」 私は驚き、言葉が出なかった。 私が社長の娘だと思っていたのは、私だけだったのだろうか? 私、確か一人っ子のはずじゃ……父がどうしてこんなことになっているのか、理解が追いつかなかった。
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第2話
私の苗字が母の「桐生」を名乗っているせいで、みんなが勘違いするのも無理はないけど、白石がこの実習生たちの中で唯一「白石」を名乗る人だったのも大きい。 今では当然のようにみんなの注目の的になっていた。 彼女が満面の笑みを浮かべているのを横目で見ながら、私は急いでその嘘を暴こうなんて考えなかった。 そうこうしているうちに、部長が入ってきて、賑やかだった雰囲気も徐々に落ち着いていった。 でも、何の理由かはわからないけど、部長が白石に向ける態度だけは明らかに他の人とは違っていた。 さらに驚いたことに、彼女を実習生グループのリーダーに指名して、会社の様々な指示を私たちに伝える役目を任せるというではないか。 私はこの一方的なやり方に納得がいかなかった。 だから思い切って口を開いた。 「やっぱり公平にしたほうがいいと思います。みんなで投票して決めるべきじゃないでしょうか」 「会社にそんな時間はない。それに白石君の履歴書が君たちの中で一番優秀だったんだ。当然彼女がリーダーにふさわしい」 部長のその言葉に、私は笑いそうになった。 だって昨夜、父がはっきり言っていたのだ。 「今回の実習生の中で、美琴の履歴書が一番輝いている。父さんは美琴がきっと成功すると信じているぞ」 だから、部長が平気で嘘をついているのを聞いても、その場で反論することはしなかった。ちょうど、白石の「偽お嬢様」の正体をすぐには暴かなかったのと同じだ。 嘘というのは、破綻した瞬間にこそ一番おもしろいものだ。 だから私は本気で知りたい。白石がどれだけ「優秀」なのかってね。 でも彼女の実力を知る前に、まず私が面倒ごとの的にされてしまった。 私のデスクには、半分の身長ほどもある書類が山のように積み上げられていた。そして、白石は得意げに私に命令する。 「これ、全部時間順にデータ化して、明日の朝までに私のメールに送っといて」 さらに帰り際、彼女は振り返ってこう付け加えた。 「あと、私にコーヒーも入れてきてね」 その命令口調に、私は思わず呆然としてしまった。 「自分でやれば?」 だって、私の父親ですら私が入れたコーヒーを飲む権利なんてないのに。 「ついでにできることじゃない。同僚なんだからそんなにケチケチするなよ?」 同僚の藤沢梨花(
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第3話
「あの桐生、ほんっとうにうっとうしいわ。朝はみんなの前で私がリーダーになったのに不満だって言うし、さっきも私に反抗してきたの」 「そんなことがあったのか?」 部長は白石の細い腰を抱き寄せて、彼女を暗い隅に押し込むようにしていた。 「その件は俺に任せろ。桐生が実習期間を終える前に消えるようにしてやるさ」 その後、静まり返った廊下には、耳を塞ぎたくなるような甘ったるい声が響いた。 その光景を目にして、私は全身に鳥肌が立つのを感じた。だけど、それと同時に妙におかしくもあった。 どうやって私を辞めさせるつもりなのか、むしろ見物じゃないか。 そう思っていたら、翌朝早々に部長室に呼び出された。 「昨日頼んだ資料、どうして提出されていないんだ?基本的な仕事もできないようじゃ、君にはもうここにいる資格はない」 私は部長の「手段」とやらがどれほどのものかと思っていたけど、たかがこんなものかと拍子抜けした。 冷ややかな目で部長を見据えながら口を開く。 「白石さんが告げ口したんですか?」 「彼女は事実を報告しただけだ。俺も公平に対応している」 公平だって?笑わせるにもほどがある。 「その資料って、全部15年前の案件ですよね?会社の公式サイトにすでにアーカイブがあって、検索すればすぐに出てきます。わざわざ再整理する必要なんて全くありませんよね」 そう言って両手を広げてみせ、さらに問いかける。 「まさか部長、会社の公式サイトを一度も見たことないんですか?」 「なっ……当然見ているに決まっているだろう!」 私が準備万端で来るとは思わなかったのか、部長は一瞬で顔を真っ赤にして口ごもった。 「こ、これは君の姿勢を試しただけだ!」 ――ほんとに、見栄を張るだけ無駄なのに。 もちろん、私はこれ以上彼と争うつもりはなかった。だって、実習期間中に自分の実力を証明するのが私の目標だから。 部長は軽く咳払いをして話を切り替えた。 「それと、聞いた話だと、昨日オフィスで同僚と揉めたらしいじゃないか?」 「私の指示が気に入らないのはわかるが、社会に出たらすべてが自分の思い通りにいくわけじゃない。君はまだ若いんだ。これから学ぶべきことがたくさんある」 もし、昨日部長と白石がこそこそ密会しているところを目撃していなかっ
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第4話
部長室を出て自分のデスクに向かって歩いていると、遠くから見てもわかるくらい、私の席の周りには人が集まっていた。 その中心にいた藤沢が、私の姿を見つけるなり声を張り上げた。 「いやぁ、ほんとに厚顔無恥な人っているもんだよねぇ!表向きは偉そうに清廉潔白ぶってるくせに、裏では人に言えないようなことをしてるんだから!」 どうやら私の悪口を大声で叫んでいるらしい。 「まあまあ、藤沢さん、そこまで言わなくてもいいじゃない?同じ同僚なんだし。きっと、桐生さんもただ好奇心からちょっと見ただけかもしれないし……」 白石はわざとらしい困ったような顔をして、藤沢の手をそっと引きながら、私に向かって涙ぐみそうな顔を見せてきた。 「なにそれ。泥棒したくせに言い返す権利なんてないでしょ?笑わせるわ!」 ――また何をやらかしてるんだ? 私は眉をひそめ、周囲の野次馬を掻き分けながら前に進んだ。 藤沢はさらに声を張り上げる。 「桐生!あんた、白石さんのカ○ティエの腕時計を盗んだんだってね?よくもまあ平気な顔でここに座ってられるわね!」 ――カ○ティエ?私の家のクローゼットには並ぶほどあるけど、どれも興味が湧かなくて放置してるくらいなのに、今さら盗む必要なんてないでしょ。 「どの目で私が盗んだって言ってんの?証拠もないのにでたらめ言わないでくれる?」 「じゃあ、引き出しを開けてみせなさいよ!」 そう言ってくる藤沢に続いて、白石が前に出てくる。 「桐生さん、もし本当にその時計が気に入ったんだったら、私が新しいのを買ってプレゼントするよ。でも、あれはお母さんが私にくれた大切な形見なの。だから本当に返してほしいの……」 ――これ、完全に私を泥棒扱いしてるわけね。 二人が息の合ったやり取りをしているのを見て、私は確信した。 ――この時計、どうせ引き出しの中にあるんだろうな。 そうでなければ、藤沢がここまで自信満々にみんなを集めて証人に仕立てるわけがない。 それに、会社のデスクの引き出しには全員鍵がかかってる。でも白石が部長とグルなら、予備の鍵を入手するのなんて簡単だろう。 私が少し黙っていると、藤沢が勝ち誇ったように言い放つ。 「どうしたの?心当たりがあるから言い返せないんでしょ?泥棒!」 頭上にある監視カメラをちらり
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第5話
翌日、会社では夜に残業があった。白石がインターン生全員のリストを手に、みんなのためにお弁当をまとめて注文してくれていた。 ところが、みんなにお弁当が配られたとき、どういうわけか私だけの分がなかった。 「リストに載っている13人分をそのまま頼んだんだけど、どうして足りないのかな?」 困ったように眉を寄せる白石の顔は、私の目にはただの見え透いた芝居にしか見えない。 リストには私の名前が真ん中にしっかり載っている。前も後ろも間違いなくいるのに、どうして私の分だけが抜けてるの? 「じゃあ、私が新しく頼み直そうか?」 そう言って彼女はスマホを取り出す。 「あら、でもデリバリーが来るの、たぶん7時くらいになっちゃうよね。もうすぐ会議始まるのに!」 ――まったく、こんな子どもじみた手段、よく思いつくわね。 私は冷笑しながら口を開いた。 「簡単な話でしょ?失敗した人が責任取ればいいんじゃない?白石さんの分を私がもらうってことで」 ――まあ、言ってみただけよ。実際に彼女の弁当なんてほしくもないし。 だけど、白石が何か言う前に、藤沢が口を挟んできた。 「ちょっと!あんたって本当に図々しいわね!前は白石さんの腕時計を盗んでおいて、今度はお弁当まで横取りするつもり?」 声が大きいから、その場の空気が一気にこっちに集中する。周りの視線がちらちらと集まり、みんなが私をどう見るかを探り合っているのがわかった。 私は冷たく口元を引きつらせて笑う。 「まず、腕時計を盗んだなんて事実はありません。監視カメラが証明してくれるでしょう?もしどうしても調べたいって言うなら、いくらでも付き合いますよ。それから、どの目で私が弁当を奪おうとしたのを見たんですか?」 藤沢は私がこんなふうに理路整然と反論するとは思っていなかったようで、一瞬言葉を詰まらせた。 その隙を突くように、白石が間に入る。 「桐生さん、そんなふうに思わないで。藤沢さんはちょっと言葉がきついだけで、悪気はないのよ」 ――その嘘くさい笑顔、ほんとにどこまで演技派なのか。 私は白石さんも藤沢さんも、二人とも虚偽に満ちた表情を睨むだけ睨んで、そのまま書類を抱えて会議室に向かった。 見なければ、少しは気も楽になる。 だけど、会議が9時を過ぎた頃には、空腹で目の前が
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第6話
翌日、会社に出勤すると、さらに驚くような出来事が起こった。 「聞いた?桐生ってパパ活してる愛人らしいよ!」 「昨日、残業してた人たちはみんな見たんだから。オッサンが高級車で迎えに来てたんだって!二人でニヤニヤ話してたらしいし、ホント恥知らずだよね!」 トイレの個室を勢いよく開け放し、冷たい視線で噂話をしていた二人を睨みつける。 まさか本人に聞かれているとは思っていなかったのか、彼女たちはバツが悪そうに俯き、慌ててその場を後にした。 オフィスに戻ると、藤沢がわざわざ私の前に立ちはだかり、軽蔑に満ちた表情でこう言い放つ。 「若いうちにやることなんて他にいくらでもあるのに、なんでわざわざ家庭を壊すようなことをするの?そんなの家族に知られたらどうするつもり?」 私は不機嫌そうに睨み返しながら言い返す。 「証拠もないくせに、いい加減なこと言わないでくれる?」 「証拠ならあるわよ。昨日みんな見てたじゃない、アンタの愛人が車で迎えに来たのを。 たかがベン○レーくらいで何よ。いつか白石さんの家の車庫を見せてあげたいわ。あそこには本物の高級車が揃ってるんだから!」 ……いや、私がそんな自慢話をした覚えなんて一度もない。ただ、父が私のことを気遣って、夜遅くまで残業していた私を心配し、運転手の佐藤さんを迎えに寄こしただけなのに。 それが同僚たちの目には、私が恥知らずな女に見えたらしい。 そのとき、白石が私のそばに寄ってきて、わざと親しげな様子で腕を組んできた。 「誤解かもしれませんよ。昨日のおじさん、もしかして桐生さんのご家族だったのではありませんか?」 「何言ってるの?あの貧乏くさい服装でどこが金持ちに見えるの?白石さんってほんと優しいよね。そんな子をかばおうとするなんて」 藤沢は冷たく笑いながらそう返す。 正直、今すぐ彼女の顔にパンチをお見舞いしてやりたい気分だった。 デマを流しても罪にならないからって、やりたい放題ってわけ? この茶番は結局、朝会の開始でなんとか終わった。 でも、それ以降、明らかに周囲の同僚たちの態度が変わったのを感じた。 中には、白石に媚びて実習期間を乗り切ろうとする者もいれば、単純に噂話を真に受けて、私を軽蔑する者もいた。 私は別に気にしていない。真実なんて、いずれは明らかに
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第7話
こうして二週間が過ぎた頃には、私は完全にインターン生の中で孤立した存在になっていた。 その間も白石は、仕事中にわざとらしく、あるいはさりげなく私の小さなミスを指摘してくる。 でも、どんな攻撃だって受け流せばいい。状況に応じて柔軟に対応するように、私はその都度なんとか問題を乗り越えてきた。 そんな中、ある日白石が出勤してくるときに、同僚が彼女を目撃したらしい。なんと、彼女はロールス○○スから降りてきたのだとか。これでさらに「白石絵理は白石社長の令嬢」という噂に信憑性が増したらしい。 藤沢はその噂を嬉々として何度も持ち出し、私を貶める材料に使ってきた。 「いいなぁ~、お金持ちのお嬢様は楽で」なんて嫌味を言いながら、彼女の視線は常に私を見下すようだった。 分かってる。このインターンの連中にとって、私は「恥知らずな愛人」で、白石は「高貴な令嬢様」だ。 もうすぐインターン期間が終わるという頃のこと。突然、部長に呼び出されてオフィスへ行くと、そこには白石がいた。 この時点で嫌な予感しかしない。だから、念のためスマホの録音をオンにしておいた。 「桐生、今持っているいくつかの企画書だけど、これからは白石に引き継いで、彼女が続きを担当するから」 「は?どうしてですか?」 企画書と言っても、まだ骨組みを作っただけの状態だったけど、それでも私は何度も徹夜をして形にしてきたものだ。 全部渡せなんて、私の努力がそのまま白石のものになるってこと? こんなあからさまな窃盗、見たことない。 部長は構わず手をひらひらと振り、「会社の決定だ」とだけ言い放つ。 「だったら、その正式な書類を見せてください」 権力の乱用をされて、黙って従うと思ったら大間違いだ。 部長は机をバンッと叩き、怒声を浴びせてきた。 「誰が部長だと思ってるんだ?私が命令を偽造でもしてるとでも言うのか?今日お前が引き継がなかったとしても、インターンが終わる頃には、これらのプロジェクトは白石のものになる!」 さらに追い打ちをかけるように、部長は冷たく言葉を続ける。 「桐生、これは『相談』じゃない、『通知』だ。お前も分かってるだろう、白石がどういう立場の人間かってことくらい」 笑いが込み上げてくるのを堪えるのに必死だった。 白石がどんな立場だろうと、そ
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第8話
「桐生さん、こうしましょうよ。何といってもこの企画案には桐生さんの努力も詰まっているわけですから、後で私が部長に相談して、桐生さんの名前も載せてもらえるようにします。どうですか?」 私は冷たい笑みを浮かべる。 「それ、もともと私のものなんだけど?」 「まあまあ、これも会社の上層部の決定なんですから。何しろ、私の立場も分かるでしょう……」 またその「立場」か。こんなこと、もし父に聞かれたら、彼女に拳をお見舞いしたくて堪らなくなるに違いない。 私は彼女の虚勢たっぷりな笑顔を見つめながら、真っ直ぐに言い放つ。 「それで?あんたはどうしたいわけ?」 白石がこんなに親切なわけがない。本当に私の名前を載せるつもりだなんて、信じるほうがおかしい。 案の定、彼女は次の瞬間、こう続けた。 「この企画案、まだ最終的に仕上げる必要がありますよね?だから、桐生さんが完成させてくれませんか?私はその最終チェックをするので。そうすれば、協力して仕上げたことになりますよね?」 結局、全部私にやらせるつもりじゃない! 白石のその浅はかな計算が、遠く離れたところからでも透けて見える。 断るつもりで口を開こうとしたけど、彼女がわざとらしく「可哀想な顔」を作るのを見て、私は言葉を飲み込み、わざと調子を合わせた。 「いいよ、分かった。 それじゃ、絶対に約束してくださいね!ちゃんと最後に私の名前も入れるって!」 白石が口元の笑みを隠しきれないまま満足げに去っていくのを見送りながら、私は心の中でほくそ笑む。 あいつはきっと、私が権力に媚びている姿にだまされたんだろうな。
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第9話
軽く引き受けたはいいものの、実際に企画書を書き始めてみると、それがいかに難しいか痛感することになった。 膨大なデータを調べて、細かい内容を一つ一つ確認しなければならない。これじゃ、白石が成果だけ横取りしようとするのも納得だ。 翌朝、私は大きなクマを抱えて階下に降りた。朝ごはんを食べながら、あまりの疲れにその場で寝落ちしそうになるほどだった。 そんな私の前に、父がミルクを持ってきてくれた。 「美琴、昨夜何してたんだ?こんなに眠そうにして」 「もちろん、うちの会社の企画書を書いてたんだよ!」 「インターン生って、たしか企画書の初稿を出せばそれでいいはずだよな。さすが俺の娘だ、どんな仕事でも全力でやるところは俺にそっくりだ!」 父が嬉しそうに笑いながら褒めてくるのを聞きながら、私は何も隠さずこう言った。 「違うよ、実はこれ、私の会社の同僚の分なの」 その後、ここ最近の出来事を父に全部話して聞かせた。 話し終わるや否や、父、つまり社長である彼は箸をテーブルに叩きつけた。 「けしからん! うちの会社にこんなクズがいるなんて信じられん!今すぐ人事部に連絡して、そいつを解雇させる!」 そう言って、彼はスマホを取り出す。 「ちょっと待って!」 今ここで私の正体をバラすなんて、あまりに面白みがない。 「せっかく昨夜、徹夜したんだから、無駄にしたくないの」 だって私は、このために白石に贈り物を用意したのだから—— 最終版として提出する企画書に、わざと予算コストの金額を小数点ひとつ間違えて記載しておいたのだ。 一見すると些細なミスに見えるかもしれないが、これが会社に数億円の損失をもたらす可能性がある。 もちろん、もし白石が「ちゃんと確認する」と約束してくれた通り、しっかりと企画書をチェックすれば、このミスを見つけられるはずだ。 これは彼女に、改心のチャンスを残してあげたというわけ。 企画書を手渡すとき、私は一言添えた。 「しっかり確認してね。問題があれば早めに修正してくれていいから」 「任せてよ!大丈夫!」 白石が胸を張る一方で、隣にいた藤沢は呆れたように目を剥きながら口を挟んだ。 「白石さん、ちゃんと確認しなさいよ。じゃないと、誰かさんが中に細工してるかもしれないからね!」 「私
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第10話
さっきまで自信満々だった私の顔色が、瞬時に変わった。 「インターン期間を無事に通過した皆さん、おめでとうございます。これで晴れて我が社の一員ですね。もちろん、通過しなかった人も落ち込まないでください。それはただ、当社の理念に合わなかったというだけのことですから」 名前が呼ばれなかったのは、私一人だけ。 その瞬間、周囲の視線が一斉に私に向けられた。 その目には哀れみもあれば、嘲笑も含まれている。 彼らの中では、私が入社初日から社長令嬢の白石を敵に回したのは周知の事実だった。 だから、例え私がここに残ったとしても、待っているのは不遇な未来だけだとみんなが思っているのだ。 でも、私はそんなの納得できない。 その場で立ち上がり、声を上げた。 「理由は?どうして私だけが実習期間を通過できないんですか?」 他の同僚たちは遅刻や早退を何度も繰り返していた。それに比べて、私は一度も欠勤せず、プロジェクトの完成度も誰よりも高かったはずだ。 完璧ではなかったかもしれないけど、それでも他の人よりははるかにマシだった。 「これは会社上層部による総合的な判断です。私が一言で説明できることではありません」 また上層部のせいにするつもりか。本当にそんな判断をした上層部がいるのか、それともただの言い訳に過ぎないのか。 私は真実を知りたかった。 「前にも言いましたよね?皆さん、実習期間が終わる前に企画書を提出するように、と。桐生さん、あなたの企画書はどこですか?」 部長が私を鋭く睨みつけ、不満げな声を上げた。 「実習期間中から私の言うことを聞けないような人間に、ここに残る資格なんてないですよ!」 私の企画書がどこにあるかなんて、部長も白石も分かりきっているはずだ。 私は視線を白石に向けるが、彼女は目をそらし、私と視線を合わせようともしなかった。 やっぱり。 白石は私が提出した企画書の最終版を、自分の名前だけを載せて提出したに違いない。 すべてを自分のものにしたのだ。 私は冷たい笑みを浮かべる。 「こんな卑怯な手段を使って、会社の上層部が黙っているとでも思ってるんですか?」 「桐生さん、いったいどういう言い方をされるんですか?明らかに、実習中の仕事を終わらせていないのはあなた自身ですよ。それで、今さら会
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