THE CEO'S CONTRACT LUNA

THE CEO'S CONTRACT LUNA

last updateLast Updated : 2026-05-04
By:  Sonia.COngoing
Language: English
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Evelyn “Evie” Thorne is a gifted architect whose family business is one bad contract away from bankruptcy. Desperate, she seeks help from the one person she swore she’d never deal with again: Damon Rourke, the ruthless billionaire CEO of Rourke Industries—and the undisputed Alpha of the Silver Crescent Pack. Damon doesn’t offer a loan; he offers a deal: a highly detailed, non-negotiable marriage contract. Evie must become his wife, his ‘Luna’ in name only, for one year. The contract strictly forbids intimacy, requires public displays of affection, and demands absolute obedience. Evie agrees, believing she is only signing away her freedom. But the closer she gets to Damon, the more she realizes the contract is a thin shield against a primal attraction. Damon Rourke doesn’t just manage boardrooms—he commands a territory, and in his world of shifters, a contract can’t negate the terrifying, undeniable reality: They are Fated Mates. Evie is thrust into a world of pack politics, ancient enemies, and a dangerously alluring Alpha who is determined to keep his contract—and his mate—at arm’s length, even as their forced proximity threatens to shatter both their defenses.

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Chapter 1

Chapter 1: The Rourke Tower Deal

菅野雷星(すがの らいせい)はすべてのパイロットにとって、信仰にも等しい存在だった。

十六歳のときには、たった一人で人質救出任務をやり遂げている。二十五歳で北方航空基地の指揮官の座に就き、一万回を超える指揮でもミスは一度としてない。

雷星の辞書に「私情」の文字はない。あるのは「責務」のみだ。

星野遥(ほしの はるか)は五年を費やし、素手で百メートルの断崖を攀じ登り、高空の鋼索を渡り歩いて、ようやく高所恐怖症を克服した。

航空士官学校に合格し、首席で卒業を果たした。そのまま北方航空基地へと配属される。

あと五年の考査期間を無事に通過すれば、エースパイロットとなり、雷星のただ一人の飛行パートナーになれるはずだった。

ところが、この五年間に与えられた三度の任務は、いずれも惨憺たる結末を迎えることとなった。

一度目の任務は、雷星自らの命令によって下された。遥は国境の外から極秘の製剤を持ち帰ることになった。

しかし、唯一の飛行ルートで激しい雷雨に遭遇してしまう。遥は歯を食いしばり、戦闘機を操縦して雷雲を引き裂くように突破した。

製剤のケースは無傷のままだったが、機体はいたるところが激しく損傷していた。

二度目は、百人規模の拉致事件での航空支援任務だった。遥はすでに犯人の位置を特定し、あとは包囲網を締め上げるだけのところまで追い詰めていた。

その決定的な瞬間、暗号通信に一人の女の声が突如として割り込み、作戦計画を敵に晒してしまった。

雷星は間髪を入れず命令を下した。「プランBに移行。機体ごと目標ビルへ突入せよ。今すぐだ」

遥は一切の躊躇なく指示に従い、百名の人質は全員無事に救出された。

しかし、遥を窮地に陥れたあの女の声の主は、いつまで経っても突き止められないままだった。

三度目には、遥は紛争地帯への救援物資投下任務に派遣された。

ところが、最初に投下された荷物は――爆弾だった。

遥は自らの機体を爆弾に衝突させ、空中で起爆させるほかなかった。

無数の命を救ったにもかかわらず、その危険極まる操縦を理由に、一年間の飛行停止処分が下された。

五年の考査期間が終わり、遥は雷星の直属チームから外される運命に直面していた。

それでも、遥は諦めていなかった。

この一年、あらゆる伝手を使って調査を続け、掴んだ証拠はすべて同じ一つの名前を指し示していた。

井上愛椛(いのうえ あいか)――指令センターに籍を置く、一介のインターン生だった。

遥は証拠の束を抱え、雷星の執務室へと歩き出した。

胸の奥には、整理のつかない無念と悔しさが渦を巻いていた。

執務室の扉の向こうから、激しい口論の声が漏れてくる。雷星と、副官の中村蒼(なかむら あおい)の声だった。

蒼の声には、押し殺しきれない怒りが滲んでいた。

「今回のエースパイロットの栄誉を、戦闘機に乗ったことすらない愛椛さんにくれてやるつもりか?遥さんのあの三度の任務の裏で何があったか、私が知らないとでも思っているのか」

扉の外で、遥の足が凍りついた。

雷星の声には、感情の波一つ立たない。十年間聞き続け、神託のごとく崇めてきた、あの冷徹な声だった。

「俺は司令官だ。俺の評価は、常に公平かつ公正である」

「公平だと?遥さんの一度目の任務は、愛椛さんの特注の生理用品を届けることだったじゃないか。『国内製のものだとアレルギーが出る』――たったそれだけの理由で……

あの時の遥さんは、雷の直撃を受けて全身から血を流し、死にかけた状態で帰ってきたんだぞ。あんたが知らないはずがないだろう」

扉の外の遥は、見えない大きな手に心臓を鷲掴みにされたかのように、息をすることさえできなかった。

雷星の声には何の揺らぎもなく、むしろ当然のように愛椛を庇う響きすら滲んでいた。

「緊急事態だった。愛椛はアレルギーが出ると、ひどいことになる」

蒼の怒りは収まらない。

「じゃあ二度目はどうなんだ。愛椛さんがあんたを見つけられず、暗号通信で泣き喚いたせいで、遥さんの位置が敵にバレた。その後、犯人どもの報復で遥さんの両親は交通事故に遭わされ、弟と妹はあのクズ共に……」

蒼は、それ以上言葉を続けることができなかった。

遥もまた、これ以上聞いてなどいられなかった。

雷星の声に、ようやくわずかな疲労が滲む。それでも、愛椛を擁護する姿勢を崩そうとはしなかった。

「愛椛は暗い場所が怖いんだ。あの時は、俺がそばにいる必要があった。遥の家族の件については、すでに相応の補償は済ませてある」

遥は全身を震わせ、壁に縋らなければ立っていることすらできなかった。

無残に変わり果てた弟と妹の遺体写真が脳裏をよぎる。二度と繋がることのない両親の電話番号が、耳の奥で虚しく鳴っていた。

毎晩のように遥を叩き起こす、あの悪夢――そのすべてが、愛椛の「暗い場所が怖い」というたった一言のためだったというのか。

蒼は、悲しみと怒りを堪えきれない様子で声を絞り出した。

「それはそれとして、三度目は?愛椛さんが理由もなく救援物資を爆弾にすり替えたのは、地上の難民を皆殺しにするためか、それとも遥さんを殺すためか?

本来なら軍事法廷にかけられるべき罪だ。なぜあんたは揉み消した」

雷星の声が、ひとつ低くなった。

「愛椛はほんの一時、魔が差しただけだ。俺と遥が結婚すると知り、きっと受け入れられなかったのだろう。あの程度の過ちで、彼女の一生を台無しにする必要はない」

――あの程度の過ち、だと?

遥の震えは止まらなかった。

十年に及ぶ血みどろの努力も、幾度となく彷徨った生死の境も、そして家族四人を失ったことさえ、雷星の目にはただ「あの程度」のものに過ぎないというのか。

蒼の声から、抑えきれない皮肉が零れ落ちる。

「あんたが愛椛さんをそこまで特別扱いするのは、彼女があんたが初めて救い出した人質だからだろう?特別な意味がある、だからだろう?

だが――彼女を守るためなら、自分の結婚すら遥さんを繋ぎ止めるための道具にするとはな。司令官殿、あんたは遥さんを一体、何だと思っているんだ」

短い沈黙の後、雷星の声が再び響いた。相変わらず、それが当然の理であるかのようだ。

「遥はじきに俺の妻になる。婚姻届を出し次第、彼女を俺のただ一人の飛行パートナーとして申請するつもりだ。だが、愛椛は違う。彼女にはもう、何も残っていない」

蒼が一語一語、刻むように問いかけた。「……もし、遥さんがこのすべてを知ったら?それでも彼女は、あんたと結婚し、飛行パートナーになりたいと願うと思うか」

雷星の声が、一気に冷え込んだ。これ以上の議論を拒絶する、断固たる響きを伴っている。

「遥が知ることはない。それに、遥は十年間、俺を追いかけ続けてきた。彼女の望みは、もう十分すぎるほど叶えてやった。あと一ヶ月で結婚する。遥が俺のもとを離れることはない」

――彼は、すべて知っていたのだ。

――自分が十年間彼を愛し、彼のただ一人の飛行パートナーになることを夢見続けてきたと、知っていたのだ。

――だからこそ、家族四人を無惨に奪われ、狂ったように内通者を暴こうとしていた自分に、彼は耳元で何度も囁いたのだ。

「遥、もう怖がるな。これからは、俺がお前の帰る場所になる」

そして、もう一つ。さらに残酷な事実があった。

あの日、雷星が初めての実戦任務で最初に救い出した人質――それは愛椛ではなく、遥自身だったのだ。

それは遥にとって、悪夢の終わりであり、同時に、狂信にも似た想いの始まりでもあった。

病院に運ばれ、傷が癒えた頃、雷星も近くの施設で療養していると耳にした。

遥は、彼から授かった小さなお守りを握りしめ、こっそりと病室を抜け出した。けれど、遠目に見えたのは――雷星が一人の少女を、その胸にしっかと抱きしめている光景だった。

やがて、慌てて駆けつけた両親に連れ戻され、それきり――航空基地に入るまで、遥が彼と再会することは二度となかった。

遥の頬を、一筋、また一筋と、声のない涙が滑り落ちていく。

心に灯し続けた唯一の信仰も、骨の髄まで刻みつけた忠誠も、ようやく手が届くと信じていた夢も――そのすべてが、ただの償いと、哀れみに過ぎなかったのだ。

こんな馬鹿げたもののために、遥は青春を、健康を、そして最愛の家族の命までをも捧げてしまったのだ。

遥は背筋を伸ばし、頬に残った最後の涙の痕を拭い去った。

あの扉を、遥は押し開けなかった。

ただ静かに踵を返し、一歩ずつ自分のデスクへと戻ると、手元のすべての証拠を一つのファイルに束ね、最高軍事法廷の内部告発サイトへと送信した。

モニターに、一件の自動返信が浮かび上がった。

【告発資料を受理しました。これより審査手続きに移行します。審査完了まで、およそ三十営業日を要する見込みです】
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