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◇あっけなく振られる 33

Auteur: 設樂理沙
last update Dernière mise à jour: 2025-03-21 23:23:26

33

 田野はこう言った。

「玲子ちゃんを守れなくてごめん。

 両親は元より祖父から結婚するなら絶縁すると言われた。

 生前贈与の話もなくなるだろう。

 それでもいいっていうことなら、絶縁して俺は玲子ちゃんと結婚しても

いいかなって思ってる……けど、一文無しの俺なんて玲子ちゃんヤだろ?」

 田野は最初のデートではその気のなさそうな素振りだった玲子が

祖父からの生前贈与の話、遺産の話など口にしてからコロリと態度を

変えたことをちゃんと見抜いていた。

「私たちの結婚に賛同してくださってたのに今になって反対と言うように

なったのは何が原因なのかなぁ?」

「玲子ちゃんが婚約者のいる男を好きになり、ないことないことを

婚約者女性に嘘を吹き込んでふたりの仲を裂いたってことらしいよ」

「私は嘘なんてついてない。

 相手の女性のメンタルが弱すぎて婚約者と上手くいかなくなっただけの

ことなのに、酷いわ。

 私だけを悪者にして。

 今までも就職を2度も邪魔されてるの。

 ね、その横槍を入れてきてるのは誰なのか分かる?

 知ってるなら教えて」

「今玲子ちゃんが話したメンタルの弱い女性の婚約者って向阪っていう

性の人では?」

「えっ、何で知ってるの?」

「俺も知らずにいて、祖父と父親の話を小耳に挟んで知ったんだけど、

ごめん、肝心のところは話が聞けてなくて……」

「分かった、いろいろ教えてくれてありがとう。

 田野さんにこれ以上迷惑かけられないから私は身をひくわ。

 じゃあ、そういうことで」

 玲子は田野にこれっほっちの未練も残さず、カフェから出て行った。

『参ったなぁ~』

自分は絶縁してでも玲子と一緒になってもいいと清水の舞台から飛び降りる覚悟で

告白したというのに、あの女はあまりにも分かりやすい態度であっさりと自分の前

から去って行ったのだ。いっそ清々しいくらいの体で。

自分の後ろにあるもの(お金)で彼女の心を射止められたのかもしれないとは

思っていたものの、こうもあからさまな態度を取られ未練がなくなったのは

よかったかもしれない。

 だが、そう思いつつもなんだかもやっと胸が痛むのを田野は止められなかった。

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    113 相原さんとの初デートは音楽と美味しい食事、そして語らえる相手もいて思っていた以上に楽しい時間を過ごすことができた。 こんなに近距離で長時間、洒落た時間を共有したことがなかったので、朗らかに活き活きと話をする相原さんを見ていて不思議な感覚にとらわれた。 私はこれまで交際していない男性と一緒に食事をするという経験がなく、世の中には恋人ではない異性の同僚と一緒に食事をするという経験のある人ってどのくらいいるのだろう? なんて考えたりした。 もちろん相手のことが好きでデートするっていうのは分かるんだけどね。 まだまだ相原さんのことは知らないことだらけだけど、彼と話すのは楽しい。 彼を恋愛対象として見た場合、凛ちゃんのことはさして気にならない……かな。 だけど凛ちゃんママの関係はかなり気にしちゃうかなぁ~などと、少し後からオーダーしたワインをチビチビ飲みながらほろ酔い気分でそんなことを考えたりして、一生懸命話しかけてくれている相原さんの話を途中からスルーしていた。笑って相槌打ってごまかした。『ごめんなさぁ~い』「明日も仕事だから名残惜しいけどお開きとしますか!」「そうですね。今日は心地よい音楽に触れながら美味しいものをいただいて、ふふっ……相原さんのお話も聞けて楽しかったです」「そりゃあ良かった」 支払いを終え、私たちは店の外へ出た。「今日はご馳走さまでした。 でも休日のサポートは仕事なので次があるかは分かりませんけど、もう今日みたいな気遣いはなしでお願いします」「分かった。 休日サポートのお礼は今回だけにするよ。 さてと、家まで送って行くよ」「えっ、でもすぐなので」「一応、夜道で心配だから送らせてよ」「ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて」「俺たちってさ、お互いの家が近いみたいだし、月に1~2回、週末に食事しようよ。 俺、子持ちで普段飲みに行ったりできないからさ、可愛そうな奴だと思って誘われてやってくれない?」

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇おデート 112

    112    お礼に、たぶんだが……何かご馳走してくれるらしいけどそれを彼は 『デート』と表現した。   シングルなのか既婚なのかは知らないけれど今でこそ子持ちパパだから デートする特定の相手がいるのかもどうかも分からないけど、独身だった頃 はあの見た目と積極的な性格を見るからになかなかな浮名を流していたので はなかろうか。 初めて社外でプライベートに会うのに『デート』という言葉をサラッと 使ったところを見ての私の感想だ。  私たちの初デート? は相原さんお勧めの駅前のカフェだった。  そこはジャズの生演奏が流れていてむちゃくちゃムーディーで恋人たちに もってこいの雰囲気があり、私には腰を下ろすのが躊躇われるほどだ。 お相手が素敵な男性《ひと》ではあるものの、残念ながら 恋人ではないから。 匠吾と付き合ってた時に巡り合いたかった……こんな素敵な夜を過ごせる お店。 昼間はどんな顔《店の様子》をしているのだろう。 駅前に立地していて自宅からも近いので次は平日の昼に来てみようかしら。 「俺たちラッキーだな」「えっ?」「何度か来たことあるけどジャズがスピーカーから流れていることはあって も生演奏は今日が初めてだからさ。うひょぉ~、やっぱ生はいいねー」「へぇ~、そうなんだ」 そっか、じゃあ平日来てもきっと生演奏はないだろうなー。 私たちはオーナー特製のピザと各々チーズのシンプルパスタと ツナときのこのパスタでボスカイオーラーというのを頼み、ジャズの演奏 を楽しんだ。 「掛居さんって家《うち》どの辺だっけ?」「言うタイミング逃してましたけど実は最寄り駅が相原さんと同じで ここから4~5分のところなの」 「まさか駅近のあの35階建てとか?」 ずばりそうなんだけど、相原さんの言い方を聞いていると『まさかね』 と思いながら訊いているのが分かる。  だって分譲で結構なお値段《価格》なのだ。 とてもその辺のサラリーマンやOLが買えるような物件じゃない。 本当のことを言うか適当な話でお茶を濁すか……どうしよう。「お金持ちの親戚が持っていて借りてるんです」「いいな、お金もちの親戚がいるなんて」 「まぁ……そうですね」

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇相原さんとデート 111

    111     メールアドレスを残して帰ったものの、相原からは次の日の日曜Help要請が入らなかったので体調は上手く快復したのだろう。 今日は出社かな、週明け、そんなふうに相原のことを考えながらエレベーターに乗った。 自分のあとから2~3人乗って、ドアが閉まった。 振り返ると気に掛けていた人《相原》も乗り込んでいた。「あ……」「やぁ、おはよう」「おはようございます」 挨拶を返しつつ私は彼の顔色をチェックした。 うん、スーツマジックもあるのだろうけれど元気そうだよね。 土曜はジャージ姿で服装も本人もヨレヨレだったことを思えば嘘のように元の爽やか系ナイスガイになっている。『凛ちゃんのためにも元気でいてくださいね』 心の中でよけいな世話を焼きながら先に降りた彼の背中を見ながら同じフロアー目指して歩いた。 歩調を緩めた彼が少しだけ首を斜め後ろにして私に聞こえるように言った。「土曜はありがと。この通りなんとか復活できたよ」「……みたいですね。安心しました」 私たちの間にそれ以上の会話はなく、各々のデスクへと向かった。 昼休みにスマホを覗くと相原さんからメールが届いていた。「土曜のお礼がしたい。 残業のない日がいいので明日か明後日、いい日を教えて」「ありがとうございます。気にしなくていいのに……。 凛ちゃんのことはどうするんですか?」「デートの予定が決まれば姉に預けるよ」 お姉さんがいるんだ、相原さん。 じゃあこの間はお姉さんの方の都合が付かなかったのね、たぶん。「私はどちらでもいいのでお姉さんの都合のいい日に決めてもらって下さい」「じゃあ明日、俺の家の最寄り駅で19:30の待ち合わせでどう?」「分かりました。OKです」 すごい、私は明日相原さんとデートするらしい。 そんな他人事のような言い方が今の私には相応しいように思えた。

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