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青年はむしろTRPGっぽいワイルドキャンプの準備をする1

Author: 結城慎二
last update Last Updated: 2026-01-28 07:45:50

「しかし、わけも判らず次元の回廊でいきなりモンスターに襲われたにもかかわらず苦もなく撃退するとか、たった一人で島のモンスターと戦って塔の遺跡を冒険するとか、あんた存外勇者だな」

 まさにゲーム感覚だったことを考慮に入れても、「次元の回廊」「ハジマリの島」「塔の遺跡」と一人で何度も死にかけながら戦ってきたのだから、命知らずの勇者といわれても「ダヨネー」てなもんだ。

「しかも、あたしと出会うまでダンジョンの中、お姫さん守りながら戦ってたんだろ?」

 いわれてみればその通り。

 その通りすぎてクリスが歯噛みで悔しがるくらいだ。

 いやいや、悔しがるんじゃなくそこは感謝を示そうよ。

 心が狭いぞ、クリス。

「さて、この町を出るとしばらくはモンスターひしめく中を荒野行動だ。明日は旅の準備と休息にあて、明後日出発でどうだろう?」

 ライアンの提案にヴァネッサが賛意を示し、クリスも異議はないようだ。

 異世界の旅慣れないレイトは意見の言いようがなく、クリスティーンに至ってはお任せします状態だ。

 話し合いは終わりとでもいうようにクリスが立ち上がり、ライアンも後を追うように部屋のある二階へ上がっていく。

「あたしもベットとやらで寝るのは初めてだからね。楽しみだなぁ」

 なんてヴァネッサもほくほく顔で部屋に行った。

 もちろん、レイトの視覚情報的にはそんな細かいニュアンスは表現されていなかったけど、なんとなくそんな風に伝わってくる。

 不思議だよね。

 残った二人の間になんとも言えない沈黙が生まれる。

(……気まずい)

 相手の表情や仕草が判ればまだ、対処もしようがあるだろう。

 けど、四頭身の2Dキャラクターが身動ぎもせず椅子に腰掛けているビジュアルだけでは相手の気持ちが推しはかれない。

(困ったもんだ)

 と、心の中ではつぶやくものの、行動に移さないあたり案外奥手であることよ。

 そのままなんとなく時間だけがすぎ、

「そろそろ寝ましょうか?」

 というクリス

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    「すると、私の倒したウィザードは姫をさらったウィザードではないのか!?」 どこに驚愕しているのか、クリスよ。 そして、クリスに対して何を勝ち誇った顔をしているんだライアン。 それからクリスティーン「ええ。私をウィザードから救ってくれたのはレイトです」 とか、追い討ちをかけてやるな。「まぁ、それはともかく。塔の最上階からダンジョンの最下層に飛ばされて、その地下ダンジョンを探索している間にヴァネッサたちと仲間になったわけだ」 ようやくパーティメンバー全員が知っているところまで話し終わった時、クリスティーンの表情は確信に満ちたものになっていた。「やはり」「王女様、やはりとは?」「これは王家の伝承に語られているのですが、『王国に危機が訪れる時、次元の回廊を越え救世主が現れる』と言うのがありまして、その救世主というのが、レイトなのではないかと」「次元の回廊?」 ヴァネッサ、そこ食いつくとこじゃないと思うぞ。「それが何を意味する言葉なのかは判りませんが、レイトが最初に冒険した洞窟というのが、その『次元の回廊』なのではないでしょうか?」「なるほど。しかし、当事者である王女を目の前にしていうのもはばかられることだけど、王族とはいえ末子のお姫様がさらわれることが王国の危機とは少し大袈裟じゃありませんか?」「いや、そうとも限らん。私は父から姫が光の巫女として誕生したと聞かされている」「光の巫女?」「ああ。女王が姫をご懐妊された際、夢にて光天使が顕れ『この世を照らす巫女を授ける』と告げられたそうだ。その姫こそがクリスティーン姫である」(あー、宿命のヒロイン物語展開ですか。で、俺、救世主系主人公なわけね) ゲームやろうとしてモニターに吸い込まれ、視覚情報がまるっきりゲーム画面なせいか、RPGオタク思考全開なレイトであった。 …………。 四人とも地の文で突っ込んだし、いつもレイトには突っ込んでるから、今回は突っ込んでやらないんだ

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    「そうですね、お互いわだかまりがあってはこの先王都までの旅も落ち着いてできないかも知れません」 沈黙は気にしていなかっただろうクリスティーンだが、思うところがあったのだろう。 こっちは存外というべきかさすがはお姫様と言うべきなのか、なかなか気遣いのできるレディである。「なるほど、では改めて私から。ファンタジア王国騎士団第十七番隊隊長クリス・パークだ。邪悪なウィザードにさらわれたクリスティーン姫救出を任された我が隊だったが、残念ながら……しかし、お前たちの協力で無事に姫を助け出すことができた。感謝する」「じゃあ、右回りとして次は俺が自己紹介しよう。プリーストのライアンだ。そっちの三人は知っての通り、元はそのウィザードの部下としてダンジョンの第三階層の管理を任されていたんだが……王女様の仲間になった方が得かと思って寝返らせてもらった」 寝返ったと聞いて、クリスはあからさまに軽蔑の態度を示す。(融通の効かないやつだな) と、レイトなんかは思うのだけど。「じゃあ次はあたしかい? あたしはアマゾネスヴァネッサ。そいつがいい男だったのと、ちょうど退屈していたんでついてきたのさ。おかげで退屈しないよ」「ファンタジア王国現国王エドワード・ハッセイ8世の末子クリスティーン・ハッセイです。みなさまに助けていただいて、本当に感謝しています」 と、なぜかそこだけ四頭身のクリスティーンがペコリと頭を下げる仕草が入る。 カワイイなこのヤロー。「ええと……世良玲太です。なんて言えばいいかな? 家でゲームをしていたらこの世界に飛ばされて……」「待て待て待て。え? 今、なんて言った?」 と、やっぱり慌てて聞き返すライアンに「家でゲームをしていたらこの世界に飛ばされて」 と、律儀に繰り返すレイトはやっぱり育ちがいいのか?「この世界ってどう言うことだ? 何か? この世界以外に別の世界があるって

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     ハジマリの島では町のシーンが確かにあった。 そこにそびえていた「遺跡の塔」に登ってクリスティーンを助けた後は5階層の3Dのダンジョンを探索し、ダンジョンをクリアした後はフィールドアドベンチャーで一泊野営もした。 レイトにとってずいぶんと久しぶりの町である。 ドラゴンクエスト風のポップで牧歌的な田舎町だったサイショノ村と違って、全体的にくすんだ寂れた町という〇〇年代初頭のダーク系ファンタジーMMORPGを想起させるドット絵の町並みだ。 僻地に取り残された寂れた町は住人もどこか疲れた様子で動きも緩慢な様子がある。「とりあえず宿を取ろう」 クリスの提案で、冒険者たちは宿を探して町を歩く。 時折処理落ちするようなな視覚に悩まされながらレイトが見つけたのは、いかにもなRPG宿だった。 一階が酒場になっていて、二階に部屋があるという例のアレだ。 寂れてはいるが自給自足ができているのか、何人かが酒場にたむろしている。 カウンターに近寄ると、酒場のオヤジが声をかけてきた。「いらっしゃい、ご注文は?」 NPCテンプレ対応そのものだ。 あー……いや、店員の対応はそもそもマニュアルか。「適当に料理をみつくろってくれ」(おい、選ばせろよ) レイトはクリスにムッとしながらも選ぶにしたってどうすればいいのか、そもそも料理が選べるのかも判らないのでなりゆきに任せることにした。 クリスが先導する形で五人の冒険者は隅の方にあるテーブルに座る。 なぜかお誕生日席に座らされてレイトはもやもやした気持ちになる。 座るとすぐに店の女性店員が料理を運んできてテーブルの上に置く。(これは、どうやって食べればいいんだ? そもそも食べられるのか?) と、疑問に持つのも当然か。 レイトはとりあえず、食べるという行動をとってみる。 すると視覚的にはナイフとフォークをかちゃかちゃ動かしているだけなのに、どういう原理かちゃんと口の中に食べ物が入ってくる感

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     レイトはなかなか攻撃を当てられなかったバットを瞬殺して何度目かのレベルアップを自覚した後、みんなで息を整えている間にヴァネッサに疑問をぶつけてみることにした。 すると彼女は「はぁ? 戦っている最中に突然はっきり判るくらい強くなった感覚? 何言ってんの?」 と言う反応だったので、これは自分だけの感覚らしいと知れた。 森の中で一泊して(これまたレイトには寝た瞬間に朝になった感覚だったわけだが)森を抜けると、荒涼とした平地に一本道の街道が現れる。「この道はどこに続いているんだ?」 と、疑問を口にしたら、クリスがこれまたため息をつき、言い聞かせるようにこう言った。「この道は王都までの道だ。建国当時、王都からファジリアム神殿までの街道として整備されたらしいが、度重なる魔王軍の侵略などですっかり荒廃してしまい、もはや街道跡としてかろうじて痕跡が残っているという状況だ。この先に『捨てられた町』と言われるサナリアムという町がある。その町までは神殿の加護がかろうじてある。そんなことも知らないのか? お前、どこから来た?」 ここで「日本」と答えたものかどうか一瞬考えたレイトは、念の為「ハジマリの島」と答える。「何!?」 そこに食いついたのはライアンだった。「ライアン、何か知っているのか?」 問い詰めるクリスにライアンは「あ、いや……知っているのは伝説の島という話だけで、姫をさらったウィザードがハジマリの島へ行くのに姫をさらったとかなんとか……」「詳しく聞きたいが、今は町へ向かうことを優先しよう。我々にはもう食料もない」「そうですね」 クリスティーンの賛同を得て、パーティは街道をゆく。 街道を歩く間はほとんどモンスターに出会わなかったあたり、腐っても街道なんだなと、レイトは感心する。 やがて、景色が夕景になった頃、町が見えてくる。 人の倍ほどの町は例によって、重なるとブラックアウトして町中へと視界が切り替わった。

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    「は?」 なんて横暴だとレイトは反発するが、なぜかライアンが同調し、あれよあれよという間に身ぐるみ剥がされてしまう。 そんなこと言うならヴァネッサなんか武器も防具も魔力のエンチャントされたそれこそ国宝級じゃないかと抗弁したいところだったけれど、どさくさに紛れてヴァネッサからも取り上げられたら戦力ダウンどころじゃないのでじっと我慢の子であった。 てなことで、王国支給で冒険中に倒された騎士の残した騎士の鎧と騎士の盾、予備で持っていた鋭利な鉄の剣というちょっともやもやする装備になったレイトは、改めてパーティと共に丘をくだりはじめる。 丘の斜面は草原で、もっぱらスライムとコボルド、まれにコブリンが現れたが、パーティを組んだ冒険者が苦戦するような相手ではなかった。 スライムはファイヤーボールで簡単に倒せたし、コボルドは剣をひと振りすれば一撃で破裂する。(破裂ってのがゲーム的だよな) その感想はよく判るよ、レイト。 自分の意思で行動することができ、モンスターを攻撃すれば手応えがあり、ダメージを受ければ痛い。 触覚・痛覚は現実的なのに視覚だけが妙にコンピューターゲームなのでイマイチ現実感を得られないのだ。 だからついついダメージを顧みない無茶をしてしまう。 そんでもってなぜかクリスに「無茶をしすぎだ! いくら魔法で回復してもらえるからと言って姫の手を煩わせるな」 と、怒られる。 どうでもいいことかもしれないが、回復は基本プリーストであるライアンがしてくれる。(クリスティーンの手なんか煩わせてないんだけどな) と、心の中で悪態をつくレイトであった。 ともあれ、丘をくだって森の中を頻繁に遭遇するウルフ、バット、コボルド、ゴブリンを倒しながら、道無き道をかき分けて(視覚的には移動できる場所を縫うように)進み続ける。 それぞれがアルゴリズムを持っているかのようなパターン攻撃をしてくるモンスターを作業のように倒していくと、どんどんレベルアップするようでメキメキと強くなる感覚を味わう。(

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