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第298話

Auteur: リンフェイ
神崎姫華が放り投げたあの果物と籠も内海智明は拾って去っていった。

ひと籠五千円ほどするのだ。

持って帰って自分たちで食べよう。内海唯花なんかにあげてたまるものか。

それを聞いたら内海唯花は果物くらい自分で買えると不満を言うだろう。

内海智文は智明の車に乗って来ていた。車に乗ると、彼は急いで自分の上司であるあの浜野社長に電話をかけて、さっき起こったことを説明した。

ただ、浜野社長はその時すでに本社から連絡を受けていて、内海智文が説明し終わる前に残念な様子で言った。「智文、お前と二人の従姉妹とのわだかまりはそんなに難しい話じゃないだろう。解決しようと思えば簡単にできたはずだ。お前たちが姉妹に謝って、しっかり誠意を見せて、それからネット上で謝罪文を公開すればよかったんだ。そうすれば姉妹から許してもらえるだけでなく、世間のみんなもお前たちがしっかり過ちを認めて反省しているとわかり、これ以上は騒がなかっただろう。

だが、お前たちは何をした?お前を停職処分に留めてから結構時間が経ったというのに、まだ今回のことを解決できていないばかりでなく、逆に悪化する一方じゃないか。神崎さんを怒らせて、本社もお前に失望したぞ。時間を作って会社に行って仕事の引継ぎをしてくれ。暫くは仕事探しはするなよ。神崎さんが怒っているから、ここ星城で良い仕事を見つけようと思ったって、難しいはずだ。

「社長、浜野社長、私は……」

浜野社長は電話を切ってしまった。

内海智文はあまりの怒りで携帯を投げてしまいそうだった。

内海唯花と神崎姫華が仲が良いなどと彼が知るはずないだろう?それから彼が二言三言彼女を脅した言葉を神崎姫華にちょうどタイミング良く聞かれるなんて思ってもいなかったのだし。

内海智明は車を運転しながら従弟に尋ねた。「弁解の余地はないのか?」

「会社に戻って引継ぎをしろって言われたよ。浜野社長が神崎さんに手を回されたら良い仕事が見つからないから暫くの間は新しい仕事を探さないほうがいいって」

内海智文は憤慨していた。

内海智明も非常に腹を立てていた。

神崎お嬢様はまるで理屈が通じない人だと思っていた。彼らを恥知らずな人間だと責めていたが、そういう彼女のほうも人のことが言えないだろう?

ただ自分の身分を頼りに、彼らを見下しているだけだ。

暫くして、内海智文は怒りのこもった声
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