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第240話

Author: 星柚子
女が去ったあと、ウェイターとボディガードも相次いで外へ出ていき、個室には音凛ひとりだけが残った。

彼女は再び、テーブルの上に置かれていた短刀を手に取る。先ほど北斗に投げかけられた問いを思い出し、口元に氷のように冷たい笑みを浮かべた。

――正修を手に入れる?

かつての自分は、確かに正修と付き合いたいと願っていた。

けれど今は、もう違う。

刃先が指先をかすめ、皮膚を裂く。血の粒がにじみ出たが、音凛は痛みを感じていないかのようだ。それどころか、どこか歪んだ愉悦すら滲んだ笑みを浮かべる。

いつか必ず、正修にも血を流させてやる。惨めな姿にしてやる。九条家が崩れ落ちるのを、彼自身の目で見せてやる。できることなら、路頭に迷い、自分の前に跪き、命乞いをするところまで。

――そうだ、奈穂も。

正修ひとりだけが血を流しても、何も面白くない。

彼が愛する女も、一緒に地獄へ落ちるべきだ。

……

一方、奈穂と正修の散歩は、北斗の一件に影響されることはなかった。

少し歩いたところで、奈穂が小さく甘えた声を出した。「……疲れた」

正修は苦笑し、彼女の前に回り込んで腰を落とした。「ほら、乗っ
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