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彼女が試したかったもの《1》

Penulis: 砂原雑音
last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-25 19:55:07

【高見陽介】

やべぇ。

身体痛い。

頭重い。

なんか、割りと近いとこで水の音がする。

眠いから寝かせてくれよ。

頼むよー。

何故か腹が苦しくて、手で擦ると「げふ」っと空気がせりあがって鼻と口から抜けた。

「くっせ……」

くっせ!

酒くせえ!

ああ、そうか、俺酔っぱらってんのか、と漸く身体の不調の意味を理解する。

にしても、ここまで酔うことなんてこのところなかったのに……何した俺。

少しずつ少しずつ、頭が覚醒してぶっ倒れる前に自分が何をしていたのかを思い出した時。

「やべ! 慎さん!」

慌てて飛び起きた。

自分が寝かされていたのは店のソファ席で、此処に来たばかりの時も一度似たようなことがあったと思い出す。

急に跳ね起きたせいで、脳内に鉛でも入ってるみたいにぐわんぐわん揺れる。

痛いっつーか、只管、重い。

「おー、陽介起きたか」

水の音が止まった。

頭を片手で押さえながら顔を上げると、流し台で洗い物をしていたらしい佑さんが水のグラスを持って近づいてくるところだった。

店内をぐるっと見渡しても、慎さんの姿はどこにもない。

そのことで、全部悟った。

ああ、そうか。

負けたのか、俺。

「ほら、水」

「あざっす……」

「……えげつねえだろ、アレの飲みっぷり」

「……えげつねえっす」

途中からはあんまり覚えてないけど、最初からすげえハイピッチで、強い酒を涼しい顔で喉に流し込んでいく。

あの横顔は、空恐ろしい。

佑さんから手渡された水は、程よく冷たくて心地よく酔いを冷ましてくれる。

同時に、頭が冴えてくれば自分が賭けに負けたのだという事実をしっかり認識して、途方にくれた。

どうしよう。

これで、店には来れなくなった。

勝負の間、慎さんは本気だった。

容赦なんて全くなく、本気で酔い潰されたのだ、悪い冗談だとかでは絶対ない。

「あの、慎さんは?」

「流石にちょっと飲み過ぎたから風呂に入って寝るってさ」

「ちょっとって……はは……」

ジーンズのポケットから携帯を取り出して、時間を確認する。

がっつり寝てしまっていたようだけど、まだ朝方だった。

「もうちょい寝とけよ、さすがにしんどいだろ」

「でも、慎さんが……」

もう、会ってくれないんだろうか。

あ、でも、この店には来ないという条件だったから、空手道場に行く時には待ち伏せしたら会える。

それ以外は?

滅多に外に出ない人だけど、あ、ゴミ出
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