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第950話

Author: 春さがそう
かつて至上の権力と富を象徴していた上里グループの最上階の社長室は、今は見る影もなく荒れ果てていた。

床には、粉々に砕け散ったアンティークの花瓶の破片と、真っ二つに引き裂かれたビジネス文書が散乱していた。

和樹は檻に閉じ込められた絶体絶命の野獣のようにたった一人、血走った目で、スマホの画面に映る紗季たちの温かく和やかなバラエティ番組の映像を見つめていた。

画面には、紗季の心からの幸福な笑顔があった。陽向の無邪気で可愛らしく、嫉妬を覚えるほど聞き分けの良い姿があった。

幸福。温かさ。円満。

これらの美しい言葉が、真っ赤に焼けた鋭い刃のように、嫉妬と敗北感でとっくに満たされた和樹の心臓を、何度も何度も貫いた。

彼の会社は、あの忌々しい「舞台裏での小細工」動画のせいで、とっくに信用は地に墜ち、悪名が轟いていた。

つい今朝方、彼は自らの手で、自分の完全な敗北を宣言する破産清算の書類にサインしたばかりだった。

「上里社長……いえ、上里さん。ご協力をお願いします。我々はオフィスの目録を作成しなければなりませんので」

ドアのところから、弁護士の恐る恐るの声が聞こえた。

「失せろ!」
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