LOGIN五年越しの恋、周囲も公認の仲。 しかし、入籍当日、婚約者は現れなかった。 プライドをズタズタにされた私は、彼との絶縁を誓う。 失意のどん底で、私は彼への当てつけのように結婚を決めた。 相手は、あろうことか元カレの実の兄であり、「金融界の冷徹な帝王」と恐れられる男だった。 愛のない生活になる……そう思っていたのに。 始まった新婚生活は、予想を裏切る激甘な日々だった!? 彼は私をお姫様のように溺愛し、どんなわがままも叶えてくれるのだ。 ある日、元カレが私を嘲笑いにやってきた。 「お前なんて価値がない」と罵る弟に対し、夫は容赦なく鉄槌を下す。 「俺の妻は、何にも代えがたい宝物だ。彼女を侮辱するなら、一族から追放してやる!」 その時、私は初めて知ることになる。 私が恐れていたこの男が、実は10年も前から私に執着し、ずっと俺のものにする機会を窺っていたことを……
View More雪枝は心臓が凍りつくような感覚に襲われた。裕也の射抜くような視線に、背筋が粟立つ。まさか、あの子は何か知っているのか?いや、あり得ない。雪枝はすぐさま気を取り直し、怒りを露わにしてまくし立てた。「裕也、あなたが優秀なのはわかっているわ。藤原家の全権を握っているのもね。でも、たとえ和也に非があったとしても、ここまで痛めつける必要があったの?弟に対する情けはないの!」雪枝の言葉には、非難の色が濃く滲んでいた。裕也が先ほど放った言葉に、他の三人はまだ呆気にとられている。和也は歯を食いしばり、悔しげに言い放つ。「兄さん、何と言おうと、俺と絵里には婚約があるんだ。やり方がまずかったのは認めるけど、どうせあいつは俺の嫁になるんだぞ。夫婦の真似事を少し早めただけじゃないか」寧々は彼以上に、それが当然であるかのように口を挟んだ。「そうよ。和也と絵里は元々愛し合ってるじゃない。絵里はあんなに和也に夢中なんだもの。既成事実を作ってしまえば、絵里の機嫌だって直るかもしれないわ」「言い訳は終わったか?」裕也の眉目には生まれつきの冷厳さが漂っている。その視線が彼らを薙ぎ払うと、威圧感に場の空気が凍りついた。「絵里はとうに婚約破棄を申し出ている。和也との婚約は事実上消滅しており、あとは両家が顔を合わせて正式に破談にするだけだ」「それからお前だ」裕也の鋭利な刃物のような視線が和也を射抜く。「薬物投与、準強制性交等未遂罪。実刑なら最低でも三年は堅いな」和也は愕然とした。「絵里のために、俺をムショにぶち込む気か?俺はあなたの実の弟だぞ!」実の弟?裕也は口元に嘲笑の弧を描いた。これ以上、言葉を費やすつもりはない。「選べ。婚約破棄を受け入れて絵里に慰謝料を支払うか、それとも、臭い飯を食うかだ」彼の口調に妥協の余地はなく、その場にいた者たちは顔を見合わせた。「兄さん!弟の俺になんて仕打ちだ!一体どうしてそこまで絵里を庇うんだよ!」和也は半狂乱で叫んだ。叫んだ拍子に肋骨に激痛が走り、顔を歪めて押し黙る。だが、どうしても腑に落ちない。兄さんはずっと絵里のことを歯牙にもかけていなかったはずだ。それなのに、なぜ今になってこれほど彼女を守ろうとするのか?雪枝は信じられないといった面持ちで言った。「裕也、他人の肩を持って弟を追い詰めるの?世間
「たかが六歳差じゃない。おじいちゃんみたいな口ぶりはやめてよ」そう言えば、裕也の私生活は確かに枯れているというか、古風だ。二十九年近く生きてきて、スキャンダルは皆無。浮いた噂の一つもなく、夜の店に出入りしているという話さえ聞いたことがない。界隈の人間なら誰もが知っていることだが、裕也の潔癖なまでの身持ちの堅さと規則正しい生活ぶりは、彼が誰か特定の相手を待ち続けているのではないかと邪推させるほどだった。「お前より年上、それだけで十分だろ」裕也は唇の端を吊り上げ、笑みを深めた。「それに、痩せすぎだ。風が吹けば飛んでいきそうな、お子様体型だしな」「そんなことないわよ、ちゃんと発育してるもん」絵里は抗議し、胸を張ってみせた。「嘘だと思うなら、ほら見て……」待って。どうして私、こんなに必死になって見せようとしてるの?絵里は急に恥ずかしくなり、踵を返して逃げようとした。だが裕也がそれを許すはずがない。伸びてきた腕が彼女の腰を捉え、強引に抱き寄せる。「何を見ろって?」男の熱い吐息が顔にかかり、絵里は頭が沸騰しそうになった。どうしてあんな大胆な真似をしてしまったのか。見る?何を?私の発育の良い、言葉にできないような場所を?絵里は唇を噛み締め、深くうつむいて視線を逸らした。「い、今の、冗談だから」裕也の瞳に熱が宿る。彼は彼女の顎を指で持ち上げ、上を向かせた。「俺はさっきのお前のほうが好きだけどな。もう一度見せてくれないか?」絵里の顔はさらに熱くなり、耳の根元まで真っ赤に染まった。幸いなことに、その時、入り口から健の声が響いた。「社長、至急決裁をお願いしたい書類が……」間の悪いことにすぐ近くまで来てしまっていた健は、瞬時に突き刺さるような冷たい視線を浴びることになった。裕也の眼差しは刃物のように鋭い。「ボーナスは無しだ」健は凍りつき、泣くに泣けない顔になった。勘弁してください、社長。まさか社長と奥様が白昼堂々、リビングでイチャついているとは夢にも思わなかったのだ。それに、いつの間にこれほど親密になったのか?健に見られた恥ずかしさで、絵里の顔はこれ以上ないほど赤くなっていた。彼女は慌てて両手で裕也を押しのける。「私、先に上に上がってるから。ごゆっくり」だが裕
絵里は何かショックなことでも思い出したのか、悪夢にうなされていた。苦痛に顔を歪め、小刻みに震えるその姿は、あまりに脆く、胸が締め付けられるほどだ。裕也は慌てて彼女を抱きしめ、額に何度もキスを落とす。「俺がいる。怖くない、もう大丈夫だ」彼の瞳には暗い色が宿り、耐え忍ぶような光が浮かぶ。抱きしめる腕に力を込めた。子供をあやすように、繰り返しなだめる。絵里は極寒の中から暖炉の前へと避難したかのように、次第に落ち着きを取り戻していく。彼の胸に小さく丸まり、頼りなくも柔らかい体で、彼の胸元の服をぎゅっと掴む。彼の匂いに包まれ、また深い眠りへと落ちていった。裕也は愛しさで心が溶けそうだった。抱きしめる腕をさらに強め、顔を寄せてまた彼女の額にキスをした…………絵里が目を覚ましたのは、もう正午だった。昨日は明らかに消耗しきっていたため、泥のように眠っていたのだ。身支度を整えても裕也の姿が見当たらない。てっきりもう出社したのだと思っていた。だが階下へ降りると、リビングのソファの後ろ、掃き出し窓の前に立つ彼の姿があった。電話をしているようだ。その気品ある佇まいは温かな陽光に染まり、端正な横顔は太陽よりも眩しく輝いている。絵里は見惚れてしまい、電話中の彼を邪魔しないよう立ち止まった。田中がスープを煮込んでくれており、朝食と一緒にすぐに食べるよう勧めてくれた。素直に栄養たっぷりのスープを口に運びながら、昨日のことを思い出す。そして窓辺に立つ裕也の背中を見つめると、九死に一生を得たような安堵感が込み上げてきた。「裕也様ったら、奥様のお体が弱っているのを心配されて、朝一番に起きて滋養のあるスープを作るよう言いつかったんですよ。本当に、裕也様は奥様に甘いんですから」田中は冗談めかして笑う。「何十年も生きている私でさえ羨ましくなりますよ。こんなに素敵な旦那様、どこを探したって見つかりませんね」絵里は心から同意した。裕也は本当に素晴らしい人だ。責任感が強いだけでなく、優しい。特に彼女への接し方に関しては、非の打ち所がない。そう思いながら、彼女は窓辺に立つすらりとした姿を見上げた。黒のスラックスに白のワイシャツ。その着こなしはラフでありながら洗練されている。全身から漂う気品と余裕。電話の相手と話すその表情は、一転して冷
よかった。彼がいてくれて、本当によかった。「今回はよくやった」裕也は彼女の涙を拭うと、その瞳を暗く沈ませてじっと見つめた。「これからは不安なことがあったら俺に聞け。相談してくれればいい」絵里は彼からの気遣いを感じ取った。それはかつては知らなかったものであり、しかし最近ではよく目にするようになった優しさだ。胸の奥から、熱いものがこみ上げてくる。とりわけ、誰とも比べようがないほど整った裕也の顔を間近で見ると、心臓が早鐘を打った。今回の鼓動は、これまでのどんな時よりも激しい。まるで、ときめいているかのように。だが、これが恋というものなのか、絵里には確信が持てなかった。彼女がどこか寂しげな表情をしているのを見て、裕也はまだ午後の出来事を怖がっているのだと勘違いしたようだ。これ以上追い詰めるのは忍びないと思ったのだろう。「腹、減ったか?何が食べたい?作ってやるよ」「なんでもいいわ」「わかった。顔を洗っておいで。すぐに出来るから」裕也は彼女の肩を軽く叩き、頷くのを確認してから寝室を出て行った。三十分後、身支度を整えた絵里は階下へ降りた。ダイニングテーブルには牛肉ラーメンが置かれていた。卵が落とされ、彩りにネギが散らしてある。見た目も香りも食欲をそそる完璧な出来栄えだ。絵里は目を丸くした。「あなたが作ったの?」裕也は「ああ」と頷き、穏やかな声で答える。「海外にいた頃、よく自炊してたんだ」スープの香ばしい匂いに刺激され、空っぽの胃袋が小さく音を立てる。絵里はたまらず、箸をつけて一口啜った。「おいしい」絵里は驚きとともに顔を上げ、心からの称賛を口にした。その瞬間、和也がもたらした恐怖の影が、一気に薄らいだ気がした。「気に入ったならよかった。たくさん食べて力をつけろ。これからやるべきこともあるしな」裕也は口元を綻ばせ、目元に温かい笑みを浮かべた。白いシャツの袖を肘まで捲り上げ、下は黒のスラックスという姿。そのリラックスした佇まいからは、理想的な夫としての包容力が溢れ出ている。絵里の脳裏に、ふとそんな確信がよぎった。彼は本当に、夫に向いている。イケメンで金持ち、その上忍耐強くて責任感もある。感情的な基盤がないまま一緒になった私に対しても、これほど優しく、誠実に接してくれるのだから。絵里はふと疑った
懐かしさが込み上げてくる。絵里は重たい瞼をこじ開けた。霞む視界に映ったのは、裕也の端正な顔立ちだ。彼は心配そうな表情を浮かべ、彼女の肩を握る手に思わず力を込めた。「絵里、しっかりしろ」低く、鼓膜を心地よく震わせるハスキーな声。それが意外なほど、絵里の記憶の中にいる少年と重なった。「……あなた、なの?」絵里は激痛に身体を痙攣させた。幼い頃から箱入り娘として育てられた彼女には、その痛みはあまりに耐え難く、意識が途切れた。「絵里!」裕也の瞳が瞬時に充血し、恐怖の色が浮かぶ。彼は運転手に怒号を飛ばした。「飛ばせ!」……病院。絵里は長い夢を見ていた。十
絵里は首を横に振るだけで、何も言わなかった。裕也は胸が締め付けられる思いで、低くなだめるように言った。「大丈夫だ。俺がついている」彼は絵里に痛みが走らぬよう細心の注意を払って抱き起こすと、その頬に残る涙を優しく指で拭い去った。涙は止まったものの、絵里は声を詰まらせて訴えた。「……帰りたい」痛みと疲労は限界に達しており、これ以上彼らと関わり合う気力など残っていなかったのだ。裕也は慈しむような声で応えた。「ああ、帰ろう」その表情に滲むあまりの慈愛の深さに、少し離れた場所にいた和也と寧々は呆然と立ち尽くした。だが、裕也の氷の刃のような視線に射抜かれると、和也は
絵里の心は、凪のように静まり返っていた。「確かに、私が間違ってたわ」寧々はその言葉を聞いて、絵里が謝罪するのだと思い込み、一瞬きょとんとした。振り返ると、和也の険しかった眉目も少し緩んでいる。「間違いを認めるならいい。ちゃんと謝るんだな……」和也がそう言い終えるか終えないかのうちに、絵里は突然、晴れやかに微笑んだ。「私の間違いは、どうしてあんたともっと早く別れなかったのか、ってことよ。そうすれば、盛りのついたケダモノ兄妹の恋を、成就させてあげられたのにね」「絵里!」和也は目を剥き、瞳の奥で怒りの炎を燃え上がらせた。「もう一度言ってみろ!」絵里が背を向けて立ち
おかしい。心臓が張り裂けるほど痛むと思っていたのに。背中から断続的に伝わる鈍痛を除けば、胸が少し塞がるような感覚があるだけで、痛みは皆無だった。あるいは、この五年間ずっと痛み続けてきたせいで、感覚が麻痺してしまったのかもしれない。絵里は蒼白な顔でふっと冷笑を漏らすと、痛みを堪えて背筋を伸ばし、一言も発さなかった。その強がった姿が、逆に和也の胸に形容しがたいわだかまりを残した。表情が微かに揺らぐ。さっきの言い草は、少し酷すぎただろうか。「絵里、俺は……」和也の心が揺らいだと察知したのか、寧々がすすり泣き始めた。「和也、来てくれてよかった……もしあなたが来なかっ
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