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第 122 話

Author: 一笠
すぐに正義は皆を連れて二階へ行ったが、部屋はもぬけの殻だった。

「そんな......はずは......」

正義は驚き、優奈のことを思い出し、彼女を自分の前に引き寄せた。「お前が凛を見ていたんじゃないのか?あいつはどこにいるんだ?」

「私......」優奈は震えながら、聖天を見ることさえできなかった。「......逃がしちゃった......」

「何だと!?」正義は怒鳴った。「どうして逃がしたんだ!」

「お父さん......」

優奈は涙を浮かべながら正義を見つめた。「姉さんが目を覚ました時、ずっと私にお願いしてきて......かわいそうで......」

「お前!」

正義は怒って優奈を美代子に押し付
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