分享

第37話

作者: 迷い魚
「二人で話してみれば、すぐに答えは出ると思うよ」

隆成はすっかり興味を引かれ、まず紗和にいくつか要点を突いた質問をした。

その受け答えから、Loverが確かに紗和の開発したものだと分かると、今度は自分のプロジェクト構想について話し始めた。

二人の話は進むほどに熱を帯び、どちらも止まらなくなっていった。

伊織は傍らでグラスを傾けながら、黙って二人を見ていた。

最初から最後まで、一度も口を挟まなかった。

隆成が紗和を高く評価していることは明らかだった。

これならプロジェクトの話も順調に進む。場合によっては、この場で紗和に任せると決めるかもしれない。

そのとき、伊織がふと顔を上げると、怜央と莉乃がこちらへ歩いてくるのが見えた。

莉乃の高価なドレスは確かに美しかったが、身につけている宝石はあまりにも派手で、かえって本人の印象を薄くしていた。

伊織は彼女を教え始めた頃から、あまり好感を持っていなかった。

とはいえ、露骨に嫌悪を示すわけにもいかない。

授業で顔を合わせるのも週に数回程度だったため、深く関わることもなかった。

学生たちの間で、莉乃が「紗和の二番煎じ」と呼ばれ
在 APP 繼續免費閱讀本書
掃碼下載 APP
已鎖定章節

最新章節

  • 夫と息子に捨てられた私、大物の子を授かった   第373話

    玲司は続けた。「忘れるな。お前は俺に、晴翔をちゃんと育てるって約束しただろ。お前が死んだら、あんなに小さい晴翔を誰が守るんだ?」「わからない!」怜央は泣きながら叫んだ。「最近、自分でも自分がどうなってるのかわからない。この世に、もう何一つ自分をつなぎ止めてくれるものがない気がする。真実を知ってから、苦しくてたまらない。善悪すら見抜けず、あんなに幸せだった結婚を自分で壊した。本当に愛してたのは紗和だったのに、ずっと傷つけ続けて、とうとう俺のところから離れていった。恩返しのつもりでしてきたことも、全部間違ってた。卑劣な詐欺師のために、十数年も時間も力も無駄にして、ずっとあの女の言いなりだったんだ。俺と紗和は、本当なら誰より幸せな夫婦になれたはずなんだ。俺は紗和に、ちゃんとした家庭を与えられたはずだった。ずっと一緒にいられたはずなのに。全部、俺が壊した。俺は最低だ。助けないで、あのまま川で死なせてくれればよかった。もう、死んで詫びるしかない」「ふざけるな!」玲司が怒鳴った。「花宮に騙されたことも、望月さんを傷つけたことも、お前の責任だ。でも、だからって死ねば済む話じゃない。死んだところで、『御堂家の後継者が川へ飛び込んだ』って騒ぎになるだけだ。望月さんの人生が良くなるわけじゃない。望月さんはもう、自分の人生を歩き始めてる。それでもあの人を大事に思うなら、必ずしも手に入れる必要はないだろ。遠くから見守ることだってできる。必要なときに力を貸して、あの人が自分らしく生きていけるよう支えることだってできる。それが、これからお前にできる償い方だ」怜央の身体が震えた。「俺に……まだそんなことをする資格があるのか?」これまで怜央は、愛するとはどういうことなのかも、愛する相手とどう向き合えばいいのかもわかっていなかった。今になってようやく、自分が本当に愛していたのは紗和だったのだと気づいた。それでも、その思いをこれからどう抱えていけばいいのかわからなかった。「今からでも……好きでいていいのか?紗和はもう……」「好きでいることまで、誰にも止められない。ただ、その気持ちを理由に相手を縛るな。静かに見守って、必要なときに助ければいい。それから、その気持ちの一部を晴翔にも向けろ。お前と同じ思いをさせるな。父親に大事に

  • 夫と息子に捨てられた私、大物の子を授かった   第372話

    「そのとおりだな」怜央は悲しげに答え、そのあとは長い間、何も言わなかった。玲司は黙って怜央を見つめながら、紗和が九条家の本当の令嬢かもしれないという話をするべきか迷っていた。それを知らせることが、今の怜央にとって良いのか悪いのかわからない。長く考えた末、結局は口を閉ざした。抹茶の点て方が似ているというだけで、同一人物だと判断するのはあまりにも早い。何の証拠もない。しかも今の怜央は、立て続けに衝撃を受け、白髪が増えるほど追い詰められている。そんなときに、さらに一生悔やむことになるかもしれない話を聞かせるのは、あまりにも酷だった。玲司には、そこまで残酷なことはできなかった。やがて怜央は、胸の内に押し込めていた苦しみを少しずつ吐き出し始めた。莉乃が九条家の令嬢ではなく、元運転手の娘にすぎなかったこと。裕福な男へ近づくため、無理をして名門校へ通っていたこと。そして、怜央を救った少女も莉乃ではなく、本物の九条家の令嬢だったこと。怜央は深く眉間に皺を寄せた。「俺は、あの女を命の恩人だと信じ続けてた。あいつをかばうために何度も紗和を傷つけたし、見下したことだってある。紗和に、取り返しのつかないことをした」涙が次々とこぼれた。あまりにも苦しそうな姿を見ていられず、玲司は言った。「いくつもの思い違いが重なったんだ。自分を責め続けても、何も戻らない」「でも俺のせいで、晴翔までひどい目に遭った。悪意のある人間にそそのかされて、実の母親を傷つけたんだ。あんなに幸せだったはずの家庭を、俺が壊した。いつか大きくなって、自分が母親に何をしたのかわかるようになったら、晴翔はきっと苦しむ。最近も夜中に泣くんだ。紗和ママにごめんなさい、会いたいって。どうして急に少しずつわかるようになったのか、俺にもわからない。俺は、あの二人に申し訳ない。馬鹿すぎた」怜央は何度も自分を責めた。玲司は黙って耳を傾けた。今は、言葉にして吐き出したほうが少しは楽になるかもしれないと思ったからだ。二人とも、ほとんど酒には口をつけなかった。怜央の状態があまりにも危うく、玲司も酒を勧める気にはなれなかった。しばらく話を聞いているうちに、ようやく怜央も少し落ち着いた。玲司は席を立ち、帰り際に肩を軽く叩いた。「過去は変え

  • 夫と息子に捨てられた私、大物の子を授かった   第371話

    茶を飲み終えるたび、玲司の表情はますます険しくなっていった。周囲に気づかれないよう、急いで席を外した。「そんなはずがない。どうして、まったく同じなんだ……」昔、玲司は家族とともに、海外にある九条家の古城を訪れたことがある。そこで征臣と、いつも彼のあとを追っていた幼い少女に出会った。父に尋ねると、事情はかなり複雑だと教えられた。少女は九条家の血を引いておらず、和彦の養女である美雲の娘だった。だが九条家が今の地位を築けたのは、望月家の莫大な資産があったからでもある。望月家はかつて、港都でも屈指の名家だった。そのため和彦は、九条家の財産と権益の少なくとも半分を、美雲へ継がせると約束していたという。つまり、あの小さな令嬢もまた、九条家の正当な後継者の一人であり、征臣とほぼ対等な立場にあった。誰からも愛され、まさに家族の宝物として大切にされていた。少女の父は、さまざまな芸術に通じた才能豊かな男だった。いくつもの楽器を演奏し、ピアノも弾けば、謡曲も嗜んだ。茶にも深い造詣があった。独特の抹茶の点て方は、亡くなった母親から教わったものらしい。そして、その技を幼い娘へ伝えていた。少女は頭がよく、手先も器用で、何を教わってもすぐに身につけた。幼いながら、驚くほど口当たりがよく、香り高い茶を点てた。仕上げに父親から文字を描くよう言われたのに、書ではなく、いたずらっぽい猫の絵を描いたことがある。描き終えると、父へ向かって得意げに舌を出した。玲司は、そのささやかな出来事をずっと覚えていた。面白そうだと思い、自分でも長い間まねしてみたが、まともに泡を立てることすらできなかった。そこで初めて、非常に難しい技なのだと知った。だが今、紗和はいとも簡単に、きめ細かな泡を一服ごとに立てた。しかも、玲司の記憶にある猫とよく似た絵まで描いた。偶然で片づけられるだろうか。本当の九条家の令嬢は、莉乃ではなく紗和なのではないか。考えれば考えるほど、疑念は深くなる。ただ、一つ大きな矛盾があった。かつて征臣の両親は、海外で起きた交通事故により、33歳の若さで亡くなっている。当時は、さまざまな陰謀説が流れた。九条グループの実権を握るため、美雲が人を雇って殺させたという噂まであった。当時の状況だ

  • 夫と息子に捨てられた私、大物の子を授かった   第370話

    ちょうど休日に入ったところだった。怜央側が合意案を確認するのは、次の平日になる。3営業日以内に返答がなければ、彩葉は紗和の代理人として、家庭裁判所へ面会交流調停を申し立てるつもりだった。いずれにせよ、怜央は何らかの反応を示すはずだ。手続きの流れを聞き、紗和はそれなら待てると答えた。その夜、期間限定で客を招いていたレイクサイド・ガーデン邸では、最後の片づけが進められていた。今後、一般の客を迎えることはない。これからは、招かれた者しか足を踏み入れられない完全な私邸になる。庭も屋敷も、これからはただ一人のためにある。咲き誇る薔薇もまた、征臣が愛する人のために用意したものだった。同時に、この邸宅を披露した目的も十分に果たされていた。征臣はわずか1週間で、国内の大型案件をいくつもまとめ上げた。ここで築いた人脈と信用は、今後の事業にも長く生きていくだろう。仕事の拠点として高層ビルを数棟取得し、貿易会社にも出資した。葉山家との案件を含め、ほかにも複数の資金が動く見込みで、国内での事業基盤も急速に整いつつある。海外で展開してきたサンダーボルト・キャピタルの名称も、国内事業を含めて正式に統一された。午後、紗和と征臣は、間もなく帰る友人たちのために送別の茶会を開いた。記憶を取り戻してからの数日間で、紗和は本来の自分を少しずつ取り戻していた。もう再婚歴を気にして、自分は身の程知らずにも上流の男へすがった平凡な女だと卑下することもない。自分自身を受け入れられるようになり、内側から大きく変わっていた。少し前、初めて征臣に伴われて客の前へ出た頃は、まだひどく不慣れだった。誰よりも美しく人目を引きながら、用心深く、ほとんど自分から口を開かなかった。面と向かって挑発されても、警察を呼ばれても、征臣の後ろへ下がり、判断を任せていた。美しくはあっても、どこか心を閉ざしたままだった。だがこの日は違った。紗和は自ら茶会を取り仕切り、客一人ひとりへ自然に声をかけていた。その席で、幼い頃に父から教わった抹茶の点て方を披露することになった。少量の湯で抹茶を丁寧に練り、さらに湯を加える。茶筅を細かく動かしていくと、濃い緑の表面に、きめ細かな泡がふわりと広がった。最後に細い竹串を使い、その泡の上へ絵を

  • 夫と息子に捨てられた私、大物の子を授かった   第369話

    彩葉は、紗和の様子が以前と少し違うことに気づいた。顔立ちは何も変わっていない。それなのに一瞬、別人のように見えた。肩の力が抜け、心からくつろいでいるからだ。前にここへ来たときも、紗和はこの邸宅の主として彩葉を迎えていた。だが、自分にはこの場所が似合わないという思いがどこか態度に滲み、何か失敗しないかと落ち着かない様子だった。晴翔のことを征臣に知られたらどうしようと、ひどく怯えてもいた。身の丈を超えた相手との結婚には、それなりの苦労があるのだろう。彩葉はそう思っていた。だが今の紗和は、征臣の前でも少しも緊張していない。ごく自然に振る舞っていた。紗和はパソコンの画面を指した。「彩葉、私と征臣の希望はメールで送ってあるわ」彩葉は仕事用のパソコンを開き、届いていたメールを確認した。「この件は私が受ける。ただ、今の時点では怜央側から親権や監護について何か申し立ててきてるわけじゃないから、しばらく様子を見る方法もあるわ。晴翔がきちんと育てられているか確認して、問題があれば、その時点で家庭裁判所に面会交流や監護について調停を申し立てることもできる。その場合は、離婚時に決めた内容も改めて整理することになる」紗和は首を横に振り、きっぱりと言った。「彩葉、こっちから怜央の弁護士に連絡して、二つはっきり伝えてほしいの。一つは、月に2回、晴翔と会う時間を設けること。1回につき、最低でも2時間は確保すること。それから、私と征臣が結婚後に築く財産については、晴翔に相続させない形にしたい。養育費について希望があるなら、向こうから金額を提示してもらって。月に2回、晴翔と二人だけで会えれば、表情や様子、栄養状態を見て、虐待されていないか確認できる。それに財産をきちんと切り分けておけば、将来あの子が誰かに利用されて、私たちを攻撃するための道具にされるのも防げるでしょう」彩葉はうなずいた。「わかった。あなたの希望に沿う形で、こっちのチームと内容をきちんと整理して、法的に成立する合意書へ作り直す。そのうえで、相手の弁護士と正式に協議するわ」必要な手続きだった。紗和もうなずいた。彩葉はふと、不思議そうに言った。「でも意外ね。怜央が晴翔を使って、あなたを困らせようとしてないなんて。今まで一度も、自分からこの話を

  • 夫と息子に捨てられた私、大物の子を授かった   第368話

    征臣に、紗和を責める資格などなかった。それでも、責めたいという感情までは消えてくれない。晴翔の存在を思うだけで、胸の奥が苦しくなる。紗和が別の男との間に子供をもうけたという事実を、晴翔はこれから先も、征臣の目の前へ突きつけ続ける。流産したのだと思っていた頃なら、どれほどつらくても、いつかは過去として飲み込めたかもしれない。だが、生きている子供はこれからも成長していく。もう過去の出来事として閉じ込めることはできない。この先ずっと、その存在と向き合っていかなければならないのだ。何のわだかまりもなく受け入れられる男など、そう多くはないだろう。征臣は何度も感情を飲み込もうとした。だが、とうとう立ち上がった。「少し外で頭を冷やしてくる」今のままでは、また紗和を傷つけてしまいそうだった。怜央に抱きしめられている姿を見た、あのときのように。立ち去ろうとした征臣へ、紗和はベッドから飛び下り、背後から腰へ抱きついた。大きくたくましい身体に反して、腰は意外なほど引き締まっている。「征臣、私を責めてるの?」甘く柔らかな声に、征臣は足を止めた。紗和からこんなふうに抱きつかれたことは、これまで一度もない。大人になってから、こんな声で自分に話しかけてきたこともなかった。だが征臣には、そのすべてが嬉しかった。仕草にも、表情にも、声にも言葉にも、自分を特別に思っていることが表れている。自分が怒っているかどうかを、紗和は気にしている。無理にそばへ置くようになってからも、紗和が征臣の気持ちを本気で気にかけているとは思えなかった。そうでなければ、あれほど何度も拒まなかったはずだ。古城でも拒まれた。征臣は不満を抱えながらも、まだ早いという紗和の言葉を受け入れた。宴の日にも、また拒まれた。そして怒りを抑えきれなくなり、とうとう紗和を抱いた。それでも一度として、心から好かれ、大切にされているとは思えなかった。約束や自分の力に屈し、仕方なく従っているだけだと思っていた。だが今、初めて紗和の本心に触れた気がした。「俺の気持ちを、気にしてるのか?」紗和は小さくうなずいた。「気にしてるわ」「どのくらい?」「この世で一番、あなたのことを気にしてる」その一言で、征臣の胸に溜ま

更多章節
探索並免費閱讀 優質小說
GoodNovel APP 免費暢讀海量優秀小說,下載喜歡的書籍,隨時隨地閱讀。
在 APP 免費閱讀書籍
掃碼在 APP 閱讀
DMCA.com Protection Status