妻の行動に絶句する、俺の人生なんだと思ってんだ!

妻の行動に絶句する、俺の人生なんだと思ってんだ!

last updateLast Updated : 2026-02-02
By:  心優(mihiro)Completed
Language: Japanese
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マッチングアプリで知り合った2人。お互いの過去の恋愛も知らないまま同棲し、半年で妻の妊娠が判明。そのまま籍を入れて夫婦になった。可愛い息子、蓮斗は、3歳になった。 そんな時、妻の美衣子が毎週末になると、夜な夜な出かけることに…。あまりにも頻繁なのと、最近の妻の変化に不信感を抱く夫、翔太。 真相を暴く為に、調査会社に勤める友人に調査を依頼した。 そこで明るみになった事実を受け止め切れない…。 夫、翔太が歩む人生とは…。

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Chapter 1

第1話 疑惑

どんな男の心にも、手に入らなかった「特別な女」がいるという。

江崎詩織(えざき しおり)はずっと、賀来柊也(かく しゅうや)だけは違うと信じていた。なにしろ二人は、若い頃からずっと一緒にいたのだから。

でも、そんなのはただの幻想だった。

結局、誰もがそんな「忘れられない人」を胸に抱いて生きている。柊也もまた、その例外ではなかったらしい。

詩織が柊也と付き合い始めたのは18の時。それから、もう7年が経つ。

二千日を超える夜と朝を共にし、誰よりも深く肌を重ねてきたというのに。それでも、彼が若い頃に一度だけ目にしたという女性の面影には、敵わないなんて。

なんだか、笑えてくる。

7年もかけて、一人の男の本心さえ見抜けなかったのだ。

一体どれほどの想いだったのだろう。こんなにも長い間、その人を胸の内に秘めさせてしまうほどだなんて。

詩織の意識が逸れていることに、彼女の上で激しく体を動かしていた柊也は気づいた。不機嫌さを隠しもせず、彼女に集中を促す。

彼はベッドの上では、いつも貪欲だった。

その拍子に、彼の腕がベッドサイドに置かれていた黒いビロードの小箱に当たった。

落ちそうになったそれを、柊也は慌てて受け止める。下にいる詩織に当たらないように。

見慣れないものだったからだろう。彼は珍しく興味を示した。

「なんだ、これ」

詩織は感情の読めない表情でその小箱をひったくると、無造作にベッドの脇へ放る。そして柊也の首に腕を絡め、喉仏に唇を寄せた。

「こんな時に別のものに気を取られるなんて。もしかして、私に飽きたの」

その吐息まじりの囁きに、柊也は抗えない。小箱のことなど一瞬で思考の彼方へ追いやられた。

男が自分に夢中になっているその時、詩織は傍らに追いやられた黒い小箱に視線をやった。瞳が、じわりと潤む。

──柊也、あなたはこの箱の中に何が入っているかなんて、永遠に知ることはないのよ。

……

ひと月前、エイジア・キャピタルが上場を果たした。柊也の仲間たちが、彼のためにささやかな祝賀パーティーを開いてくれた。

詩織はめいっぱいお洒落をして、そのパーティーで柊也にプロポーズするつもりでいた。

本来、そういうことは男がするべきだろう。

でも詩織は、柊也を深く愛していたから。彼のためなら、女の意地もプライドも捨てて、自分からプロポーズしたって構わなかった。

この日のために、彼女が丸7年も待っていたなんて、誰も知らない。

柊也は仕事一筋の男だった。詩織はそんな彼のために、好きだった専攻を変え、興味のなかった金融の世界に飛び込んだ。

大学を卒業すると、海外の有名大学からの誘いも断り、エイジア・キャピタルに入社して柊也を支えた。

一番下の平社員から、一歩一歩キャリアを積み上げ、彼のトップ秘書にまで上り詰めたのだ。

その裏にあった苦労は、詩織本人にしかわからない。

付き合い始めて一番夢中だった頃、詩織は何度も柊也に問いかけたくなった。

「私と、結婚してくれる?」

けれど、その言葉を飲み込んで、結局一度も口にすることはなかった。

母がよく言っていた。贈り物も愛情も、自分からねだるものじゃない、と。

相手が自ら与えてくれるのが「愛情」で、こっちから求めるのはただの「施し」よ、と。

それに、柊也は愛情を言葉にするような男ではなかった。

これまでの長い間、彼の隣には詩織しかいなかったし、他の女性の影など一度も見えたことはない。

だから結婚は、二人にとってごく自然な成り行きのはずだった。

詩織はその未来を信じて、これまで会社の矢面に立ち、がむしゃらに戦ってきた。

仕事の大小や困難さなんて、関係なかった。

交渉のためにどれだけ酒を飲み、何度病院に担ぎ込まれたか、自分でももう覚えていないくらいだ。

急性アルコール中毒で流産した時は、手術台の上で本当に死にかけた。

親友の近藤ミキ(こんどう みき)が彼女に尋ねた。

「死の淵を彷徨って、少しは後悔した?たった一人の男のために、自分をこんなボロボロにしてまで、それって価値のあることなの」

詩織は迷いなく頷いた。

「価値はあるよ」

そんな詩織に、ミキは称号を授けた。

『愛に突っ走る勇者』!

そして、こう言った。

「あんたが、負けないことを祈ってる」

その時の詩織は、自信満々に答えたのだ。

「柊也が私を負けさせたりしない」

その信念だけを頼りに、彼女はエイジア・キャピタルが上場するその日まで、ひたすら耐え抜いたのだった。

柊也が本港市で上場を知らせる鐘を鳴らしたあの日、詩織が部屋に閉じこもって、一人で泣きじゃくっていたことなど誰も知らない。

泣き終えると涙を拭い、詩織は柊也へのプロポーズのサプライズを準備し始めた。

仕方ない。柊也はあまりにも忙しすぎた。

エイジア・キャピタルが上場を果たし、いくつものプロジェクトを抱えている。親しい友人や仕事仲間からの祝いの席にも、次から次へと顔を出さなければならない。二人のことまで考える余裕なんて、きっとないはずだ。

だから、自分から動くことにした。

柊也の負担を、少しでも軽くしてあげたかったのだ。

早くから覚悟を決めていたというのに、いざその瞬間を前にすると、詩織は心臓が張り裂けそうなくらい緊張していた。

ドアの外に立ち、何度も深呼吸を繰り返しながら、震える手をもう片方の手でさする。

口を開く前に声が詰まって、暗記するほど練習したプロポーズの言葉が出てこなくなってしまいそうで、怖かった。

ドアの向こうではパーティーがたけなわで、男たちの大きな話し声が聞こえてくる。

「なあ柊也、柏木志帆(かしわぎ しほ)とはまだ連絡取ってんのか」

「柏木志帆?それって、柊也の『忘れられない女』だろ?なんで今さらその名前が」

「あいつ、近々桜国に帰ってくるらしいぞ」

「マジで?じゃあ、柊也もついに本命とよりを戻せるってわけか」

その言葉に、興奮で微かに震えていた詩織の手が、ぴたりと止まった。

「つーか、志帆ちゃんの親父さん、最近じゃかなり出世してるらしいじゃないか。柊也が彼女と結婚すりゃ、柊也自身にとっても会社にとっても、メリットは計り知れないだろ。エリートと美人のお嬢様、家柄だって釣り合ってるしな。

しかも相手は柊也の『忘れられない女』だ。仕事も恋も、一気に手に入れるってか。最高じゃん」

そう言ったのは、柊也の幼馴染である宇田川太一(うだがわ たいち)だった。

自分は柊也と「ガキの頃からの付き合いだ」といつも豪語している男だ。彼の言葉に、嘘はないのだろう。

柊也に……忘れられない人が、いたなんて。

詩織の心臓が、不意にぎしりと軋むような痛みを立てた。

「じゃあ、詩織さんはどうなるんだ?」誰かが興味本位といった口調で尋ねる。「なんだかんだ、もう長年尽くしてくれたんだろ」

太一は、それを鼻で笑った。

「手切れ金でも渡してやればいいだろ。

そんなに惜しいなら、結婚してから囲っとけばいい」

彼の周りでは、そういった男は珍しくもなかった。家庭を壊すことなく、外にも女を作る。それが彼らにとっては当たり前の感覚だったのだ。

ドアの外で、詩織は感覚がなくなるほど強く拳を握りしめていた。

彼女は、柊也の答えを必死に待っていた。

彼がすぐに反論し、そして皆に宣言してくれることを。愛しているのは詩織で、結婚するのも詩織なのだと。

しかし、いくら待っても聞こえてきたのは、彼の気のない一言だけだった。

「いつからそんなゴシップ好きになったんだ、お前ら」

反論も、否定もしない。

それは、まるで事実だと認めているかのような響きだった。

「はいはい、わかったって。せっかくのめでたい日なんだ、もっと面白い話をしようぜ。退屈で寝ちまいそうだ」

太一がソファから身を起こし、その場の空気を変えようとする。彼は札付きの遊び人で、いつも変わったゲームを提案しては場を盛り上げる役だった。

「各自、今までで一番ヤバかった経験を一つ話すってのはどうだ」

すると、誰かがとんでもないことを口にした。

「カーセックス」

太一が茶化す。

「そんなの、別にヤバくもなんともねえだろ」

相手は付け加えた。

「新幹線で、な」

その一言で、個室全体がどっと沸いた。

「お前、やるな!」

太一は興奮気味に、退屈そうにしている柊也に尋ねた。

「柊也は?なんかヤバい経験あるか」

柊也は数秒考え込んだ後、静かに口を開いた。

「好きな女のために、不倫した」

その一言で、部屋中が先ほど以上に沸き立った。

あの賀来柊也が、だぞ。この江ノ本市でも指折りの名家の跡取りで、どんな女だって手に入るはずの男が。本気で愛していなければ、そんなことまでするはずがない。

太一の反応は、誰よりも激しかった。その甲高い声は、ドアを隔てていても詩織の鼓膜をビリビリと震わせる。

「相手、柏木志帆だろ!やっぱりまだ志帆ちゃんのこと、好きだったんだな!昔、お前は志帆ちゃんが好きで、志帆ちゃんは俺のいとこ、宇田川京介(うだがわ きょうすけ)が好きだった。だから、お前は不倫相手に甘んじたのか! 柊也、お前ってやつは……マジもんの純愛ファイターだな!」

男たちの囃し立てるような笑い声が、頭から浴びせられた冷水のように、詩織の体を芯から凍えさせた。

胃の奥から、何かがせり上がってくる。気持ち悪さに耐えきれず、詩織はその場にゆっくりと蹲った。

太一はまだしつこく食い下がっていた。

「なあ柊也、正直に言えよ。十月十日、お前、志帆ちゃんに会っただろ」

柊也が聞き返す。

「なんで知ってる」

「あいつがあの日、SNSに上げてたんだよ。『再会はこの世で一番ロマンチックなこと』だってさ。絶対あんただと思ったぜ!

で、どうだったんだよ、その夜は。再会を祝して一発、ってとこか?」

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第1話 疑惑
「ごめん、今週の土曜日、急に飲み会が入ったから、蓮斗のこと見ててもらってもいい?」 月曜日の夜、妻である美衣子が俺に言った。 「え? また? いつも急だな」 ──それに最近多く続いている 蓮斗は、俺たちの愛息子。 まだ3歳になったばかり、母親が恋しい時期なのに、美衣子は、夜な夜な出かけることが増えた。 「皆んな忙しいから、直前にしか日にちを決められないのよ」 学生時代の友達との約束のことを言っているようだ。 「にしても……」 「何? 貴方が、『たまには友達と会って来たら?』って言ってくれたんでしょ?」 たまにはとは言った。 いつも家事も育児も頑張ってくれているから、 息抜きも必要だと思ったし、『友達と会う時間も取れない!』と愚痴を溢していたから、そういう時間も大切だと思ったから……。 だけど、先週も行っていたし、なんなら先々週もだ。この3週間、毎週土曜日になると出掛けている。 「毎週じゃない?」 「だって、私には必要な時間なんだもの……」と、視線を落とし、俯きながら言われると全否定は出来ない。 美衣子は、俺(翔太)と結婚してすぐに妊娠した為、仕事も辞めて今は専業主婦だ。 毎日、家事と育児に奮闘し、ずっと家に居ると、社会から遮断されたような気持ちになると言う。 今までは、出掛けると言っても近所のスーパーへ息子の蓮斗と買い物に行く程度だったのだろう。 だから俺の休みの日には、家族で出かけるようにはしているが、美衣子はそれでも物足りないようなのだ。 万一、育児ノイローゼや鬱になられても困ると思ったので、そういう提案をしたのだ。 なのに、最近では、それがどんどんエスカレートしているように思える。 ──本当に、女友達なのか? そう疑う気持ちも出て来てしまった。 なぜなら、今までは、外に出掛けない日は、 化粧もしないですっぴんのまま、朝起きた時と同じスウェット姿のままで一日中過ごしていたようで、夜に俺が帰っても同じ格好の事が多かった。 育児疲れかと思って、大目に見ていたが、日に日に酷くなっていた。 ──こんな女だっけ? と、微塵も女の色気を感じなくなっていた。 なのに、最近では華やかな洋服に着替え、毎日綺麗に化粧もして
last updateLast Updated : 2026-01-08
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第2話 証拠写真
さすがに急が3週間も続くと、おかしい! と思い始め、翌日、俺は調査会社に勤めている友人、高橋に相談したのだ。 その友人にも、俺たちが出会ったのは、マッチングアプリだとは伝えていなかったので、まずは、それから伝えると、高橋はとても驚き、 『申し訳ないが、なら、まだマッチングをやってる可能性は高いな』と言われた。 ──やっぱり、そうか…… そして、俺は、高橋に正式に調査依頼をし、スマホのメッセージを見る方法を教えてもらった。 美衣子がお風呂に入っている時に、美衣子のスマホを見てしまったのだ。 そこには、恐ろしい文言が並んでいた。 Mという人物とのやり取り…… 〈また、夜会えるか?〉 〈うん〉 〈旦那は、大丈夫なのか?〉 〈全然大丈夫! 子どもを預けてれば、何処へも行けないだろうし、それに、あの人がたまには友達と会ってきたら? って勧めてくれたんだし〉 〈お前、ひっで〜な! それは、女友達のことだろ?〉 〈そんなの私に居ないわよ 笑〉 〈ハハッ、なら仕方ないから俺が可愛いがってやるか〉 言い表せない絶望感と悲愴感が襲ってきた。 ──まさか、美衣子が不倫…… 高橋に言われた通り、落ち着いて、それを証拠として、自分のスマホに収めた。 そして、更にスクロールして遡って確認した。 そもそも、このMという男とは、何処で知り合ったのか? マッチングアプリなのか? すると…… 〈最近、益々マーくんに似て来たよね〉 ──え? 〈だよな、イケメンだな蓮斗!〉 …… ──!! どういうことだ? まさか蓮斗は、俺の子じゃなくて、コイツの子なのか?! そんな…… 頭を鈍器で殴られたような衝撃で、身体中の血の気がサーッと引いて行くような感覚に襲われた。一気に大きなストレスがかかったのだろう。 手が震え出した。 驚きと同時に、怒りを通り越して、強い憤怒しかない! そして……その後に、信じられないぐらいの悲しみが襲いかかった。 ──蓮斗が、俺の息子じゃない……? 嘘だろう? 3年もの間、我が子として育てて来たのに…… それは、とても重要な証拠だった。 怒りと悲しみに襲われながらも、今俺がしっかりしなくては……と、 また、写真を撮ってスマホに
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第3話 映像証拠
そう聞かれて、もう美衣子とはやっていけない。 離婚の方向で考えるしかない! それに、もしも蓮斗がMという奴の子どもだとしたら、俺は、蓮斗と離れ離れになってしまう。 そもそも親権は、母親の方が取れる確率が高い。 ましてや、俺とは血が繋がっていないとなると、美衣子が働いて蓮斗を育てる事が可能だ。 放棄するなど、よっぽどのことがない限り、俺が育てられる可能性は、低いのだろう。 俺は、騙されたことと、蓮斗と離れなければならないこと、両方の悲しみで涙を堪え切れなかった。 悔しさから滅多に涙など流さない俺は、布団の中で1人、声を殺して男泣きをした。 ──どうして、気づかなかったのだろう どうして、見抜けなかったのだろう…… そして……ふと思った。 蓮斗は、3歳。 俺たちは同棲して、半年で妊娠が発覚し籍を入れた。 と言うことは、美衣子は、少なくともその頃からMという男と会っていた。 俺と同時期に会っていたのか? 俺は、それを知らずに、何の疑いもなく自分の子だと信じて籍を入れてしまったのか…… 疑う余地などなかった。 この父親と見られるMと美衣子は、以前も付き合っていたのか? なぜ結婚しなかったのだ? あれこれ、確認したいことが山積みだ。 その前に、俺はまずDNA鑑定をすることにした。 そして、土曜日は、蓮斗を実家に預け、高橋と共に現場を押さえに行くことを決意した。 もう終わりだ…… ──水曜日の朝 結局、一睡も出来なかった。 美衣子と顔を合わせることなく、俺は早めに家を出た。 後3日も、何も言えずに、美衣子と顔を合わせるのは辛い。 もちろん蓮斗には、会いたい! でも……もし俺の子じゃなかったら…… そう考えると、内臓を抉られるほど、堪らなく悲しくて辛い。 すぐに、蓮斗の歯ブラシと俺の歯ブラシをDNA鑑定に提出した。 急ぎで出したので、ちょうど週末には、結果が出るだろう。 仕事終わりに、とりあえず、高橋に会いに行くことにした。 「久しぶり! 大丈夫?……じゃないよなあ」 と言う高橋。 「すまないな、久しぶりに会うのに、こんな依頼」 「いや、大丈夫だ! コレが俺の仕事だからな」 高橋に会うのは、俺たちが入籍した後、数名でお祝いパー
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第4話 映像証拠2
そして、きっと風呂に入っている間に、男と連絡を取るはずだ。それは、恐らくRというパパ活男だろう。 高橋に借りた小型カメラは、すぐには設置出来ない。 しかし、俺は風呂に入る前、咄嗟にリビングの隅に置いた鞄の中で、自分のスマホの録音ボタンを押しておいた。 美衣子とRとのメッセージの記録を写真に撮った時、電話をかけた形跡を発見したからだ。 メッセージを送るより電話をかけて説明した方が早いからだろう。 そして、蓮斗と楽しいお風呂時間を過ごして、先に蓮斗を上がらせようと風呂のドアを開けた時、慌ててスマホをテーブルの上に置いた美衣子を確認した。 ──やっぱり…… それから、1人で風呂の中でボーっと想いにふけ、ゆっくり上がった。 蓮斗は、美衣子が髪を乾かし、着替えているのを見ているようだ。 もう3歳だから、随分自分で出来る事が増えて来た。 風呂から上がると、俺はようやく晩ご飯にあり付けた。忙しかったと言うだけあって、スーパーで買ったお惣菜だということは、一目瞭然だ。 それでも、今は、美衣子以外の人が作った物だからと、有り難く口に放り込む。 「パパ、おやすみ」 「おお、蓮斗おやすみ〜」 今まで当たり前に聞いていたパパと言う呼び名。今は、妙に突き刺さる。 そのまま美衣子が寝かしつけに行った。
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第8話 始まりの終わり
車をコインパーキングに停めて、高橋らと合流する。 自宅マンションからは、何駅も離れた都会。 「悪ぃ〜な」 「おお、来たか」 「こんにちは、お世話になってます」と、女性スタッフの宮本さんにもご挨拶する。 「お疲れ様です。こちらこそ」 今の状況を聞くと、2人は、コンビニで待ち合わせて合流したようだ。 駅などでは、人目が付くとでも思ったのだろうか。 その後、オシャレなカフェに並んで今、入ったばかりだと言う。 確かに、こんなオシャレなカフェには、子連れでは入り辛いし、女性同士やカップルが多いように見受けられる。 それを外から宮本さんが撮影してくれている。 並ばずに入れるようなお店なら調査員も店内に入ることがあるようだが、これだけ広い店内なら席が離れることも多い。なので、会話までは聞こえないが外からの撮影のみとなるのだと言う高橋。 「大変な仕事だな」 「まあな、でも俺には向いてると思ってる」と言う。 確かに、そうかもしれない。俺には、無理だと思った。 しばらくすると、2人がカフェから出て来た。 店の中だと相手の顔は、よく見えなかったが、出て来てようやく見えた。 美衣子のメッセージから察するに、恐らく元カレだろうと思えるMという男。 美衣子と同じぐらいの年齢。 細身で背が高く、なかなかのイケメンだ。 ──コレが元カレか…… そして、蓮斗の父親かもしれない男 チラッとしか見えなかったが、 俺は、複雑な心境になった。 そのまま尾行する。 高橋が宮本さんが撮影してくれているカメラを覗きながら、 「雰囲気が少しお前に似てるかも……」と言った。 「俺?」 「うん、似たようなタイプだな」と言う。 ──そうなのか…… 美衣子は、元カレと俺を重ねていたのだろうか? この男との結婚が叶わなかったから、アプリで俺を選んだのか? また、謎が増えてしまった。 そして、また違うコンビニに入った2人。 高橋が、 「このパターンなら、コンビニを出たらラブホテルへ直行だな」と言った。 ついに、この時が来たか…… 「どうする? 一歩入った時に止めるか? 出て来た所を止めるか?」 Rとの証拠は、動画で撮れているが、Mとの証拠は、今のところは、メッセージだけ。
last updateLast Updated : 2026-01-13
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第10話 聞き取り
すると、高橋が、 「今日は、夫である翔太さんに、あなたたちが本当の事を話してくれるよう、示談をする為に話し合いの場を設けさせていただきました。なので決して嘘は、吐かないでくださいね。虚偽の証言をせずに全て正直に話してください! でないと、あなた方がどんどん不利になりますよ。今日示談が成立しなければ、司法に委ねなければならなくなることを一応伝えておきますね」と言うと、 「「え?」」 と、2人同時に反応した。 「司法? 裁判ですか?」 「裁判所に判断してもらうことになりますね」 と言われると、初めてヤバイと思ったようだ。 「慰謝料か? 金か?」と、俺を見ながら言うM男に怒りしか湧かないが、 「そんな小さな問題じゃねーわ!」と言うと、 「は?」と言うM男。 美衣子の方を見て、 「もう全部分かってんだよ……」と、蓮斗の顔が浮かんで、つい悲しそうに言ってしまった。 そして、高橋がもう一度美衣子に聞くと、 「元カレ……」とボソッと言った。 M男は、 ──!! 驚いた顔をしていたが、もう嘘を吐いても仕方がない。 今度は、M男の方を向いて、聞いた高橋。 すると、 「そうだけど今は、友達だ」と往生際が悪い。 「では、今日は2人で何をしていましたか?」と聞かれると、 「たまたま会っただけだ」と言うM男。 「まだ嘘を吐きますか?」と言われると、 どうも認
last updateLast Updated : 2026-01-15
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