優しい三途の川の渡り方

優しい三途の川の渡り方

last updateLast Updated : 2025-12-23
By:  氷高 ノアCompleted
Language: Japanese
goodnovel4goodnovel
Not enough ratings
16Chapters
335views
Read
Add to library

Share:  

Report
Overview
Catalog
SCAN CODE TO READ ON APP

自殺願望を持った女性・若村有利は、今日を最高の一日にして、死ぬことを決意。 トランプで選んだ死に方の為に、あらゆる所へ向かっていた。 その途中、とある不思議な男に出会う。 それは、「死にたいのなら死ねば」と言うような男だった。 死にたい人間×生きたい人間。 そんな二人の最高の一日が終わりへと向かう中、互いの過去が明らかになり─── 真実を知った後、予想外の切ない展開が待ち受ける!

View More

Chapter 1

死に方1

さあ!人生最期の日だ!

世界が明るい。こんなにも楽しくて良いのだろうか。

きっと、まともな人は許してくれない。

誰しも私を止めるだろう。

カードで『死に方』を選んで、最高の服を身にまとい、最高の食事を済ました後、

「あぁ、これで最期なんだ」って噛み締めながら、死ぬんだ。

我ながら最高の計画だ。

午前四時。

暗闇の中、トランプに『死に方』を書き始めた。

***

「どれにしようかな!」

意気揚揚とした私の目の前に並ぶのは、裏返されたトランプ。

それは単にシャッフルされただけのものではないし、枚数も揃っていない。

とりあえず十二枚。

四枚ずつ綺麗に並べられている、同じ顔をしたカード。

表の数字なんてどうでもよかった。気にするのは、その上に書かれた文字。

「これにしよーっと!」

するりと机の上を滑らせて、私の手に吸い付いたカードはダイヤの4。

それを覆い隠すように、黒いマジックで大きく文字が書かれていた。

「“溺死”かぁ」

一瞬、頭の上まで汚れた水に浸かる自分を想像した。ごぷりと一つ、口から空気が漏れて、私の中から消えていく。それは二度と自分の元にやってくることはない。

思わず笑みをこぼした。いや、溢れたのか。

手に持つカードを床に置き、背の低い机に座るトランプたちを一枚一枚捲る。

それらは皆、正体を現してご機嫌そうだった。

『飛び降り』『轢死れきし』『首吊り』『リストカット』『切腹』『焼死』『OD』『餓死』『毒死』『ガス』『凍死』

とりあえず、思いつくだけ書いてみた。

実際にできるかなんて知らない。無理なら別のやり方を選べばいい。

でもなんとなく、『どれにしようかな』で死に方を決めるのも面白いと思った。そんなことする人なんて、そうそういないだろうから。

溺死は、この中でも割と美しい死に方を選べたほうだ。

ODは失敗すると後遺症を持って生きなければならなくなるかもしれないし、飛び降りや轢死は後々が汚い。餓死には時間がかかるし、凍死なんてどこの雪山に行けばできるのだろう。登ること自体、面倒くさい。

そう考えると、どうしてこれらを書いたのか。結局、どのカードの仮面を剥がしても『溺死』を選んだかもしれない。

私に選ばれた死に方は、軽く指で摘まれた。そのまま立ち上がりぐんと伸びをする。

汚れたパーカーの上を、爆発した髪が撫でた。

「楽しみだなぁ!」

胸が高鳴る。こんなにも幸福を感じたのはいつぶりだろうか。

本来の機能を果たしていない薄い遊び道具は、少し力を抜くだけで、すぐに手から舞い落ちる。

カーテンの隙間から、眩しい朝日が無造作な文字を照らした。

Expand
Next Chapter
Download

Latest chapter

More Chapters
No Comments
16 Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status