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第103話

Author: 八雲詩乃
何と声をかければいいのか迷っていると、男のほうから手を差し出してきた。

「初めまして、安藤さん」

若葉も慌ててその手を取った。

「よろしくお願いいたします、宮本社長」

指先がかすかに触れ合い、すぐに離れた。

司には、若葉が自分を前にして少し緊張しているのが分かった。

その目に浮かんでいるのは、上司に向ける礼儀と敬意だけ。それ以外の感情は、どこにも見当たらない。

やはり、若葉は司だと気づいていなかった。

彼のことなど、まるで覚えていないのだ。

司は静かに視線を外し、テーブルの下でそっと指先を擦った。

「始めてくれ」

指示を受けると、若葉はすぐに仕事へ意識を切り替えた。

直前まで何をしていても、必要とあればすぐに頭を切り替え、仕事に集中できる。それは若葉がもともと持っている強みだった。

準備は万全で、経験も十分にある。

説明を終えると、会議室は大きな拍手に包まれた。

新しく来た責任者は、見た目が華やかなだけではない。実力も申し分ない――誰もがそう感じていた。

昭夫も皆と一緒に拍手を送った。

若葉の発表を聞いても、特に驚きはしなかった。3年間仕事を共にしてき
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