LOGIN秘密裏に四年、恋を育んできた西園寺茜(さいおんじ あかね)がついに柏原諒助(かしわら りょうすけ)との関係を公にする日を迎えたはずだった。 ところが、諒助は別の女のために、茜の命さえ顧みず、わざと交通事故を引き起こし、平然と記憶喪失を装ったのだ。 茜は怪我で入院したのに、諒助は新しい彼女を抱き寄せ、友人たちと「茜はきっと、また犬みたいに俺に縋ってくるさ」と賭けをしていた。 諒助は知らなかった。茜が彼の記憶喪失が本物の芝居だと気づいた瞬間、彼との関係を完全に終わらせる決意をしたことを。 諒助が他の女性とイチャイチャを見せつけている間、茜は二人の思い出の品を捨てた。 諒助が茜を他の男に突き飛ばしている間、茜はその男に壁際に追い詰められ、壁ドンされかけていた。 諒助が茜のご機嫌取りを待っている間、茜はウェディングドレスを選んでいた。 そして、茜がキャリアの頂点に立ち、若き女性富豪として成功を収めた時、諒助は思い上がって、片膝をついてプロポーズした。 「茜、俺、記憶戻ったんだ。結婚してくれ」 茜は指に光る10カラットのダイヤの指輪を撫でながら口を開こうとした、その時、背後から強引に腰を抱き寄せられた。 「消えろ。うちの奥さんが汚いものを見るのは嫌がるんでね」
View More茜が車内で次の手を考えていると、和久と悠人はすでに静かに車を降りていた。茜は慌てて窓を開けた。「二人だけで行くの?」和久は苦笑した。「今回は悠人に助けてもらってるからな。あいつを一人にするわけにもいかない。玉城たちが家の周りについてるから、心配しなくていい」茜はうなずき、スマホを強く握りしめて祈るように結果を待った。……その頃、星羅はこの家から出されたものは一口にしていなかった。睡眠薬などを盛られているかもしれないからだ。外の空が暗くなっていくのを見て、恐怖がどんどん増していく。突然、ドアがガチャリと開き、片方の足を引きずった男が入ってきた。「おお、写真で見るよりずっと可愛いな」「何よ。あなただって、別に醜いわけじゃないんだし。ちゃんと探せば相手は見つかるはずよ。なんでこんな卑劣な手を使うの?」「ああいう女どもはみんな、金目当ての嘘つきだ!だったら最初から俺は時間を無駄にするつもりはない。俺はお前が気に入ったんだ」男は率直に言った。「私には好きな人がいるの。近づかないで。あなたが思うほど、私は弱くないわよ」星羅は必死に強がって見せたが、辰哉に嗅がされた薬のせいで、体に力が入らない。後ろに下がろうとした時、自分の足を引っかけてしまい、そのままベッドに倒れ込んでしまった。男はその隙を逃さず、ニヤリと笑ってのしかかってきた。「離して!助けて!」「誰も助けに来ないよ。お前のお兄さんが、ちゃんと金を受け取って俺にお前を売ったんだから」男は片足が不自由でも、腕の力は異様に強く、星羅を強引に押さえ込んでいた。男が顔を近づけ、口づけようとした瞬間、星羅は思いきり自分の額を男の鼻にぶつけた。「ぐあっ!」男は鼻血を出してベッドから床に転げ落ちた。星羅はすぐに立ち上がり、ドアに向かって走ったが、男は痛みをこらえながら片足で執拗に追いかけてきた。見知らぬ大きな家の中で、星羅は逃げる方向を間違え、行き止まりの部屋に追い込まれてしまった。振り返ると、男にまた行く手を塞がれていた。その時、星羅は男の背後に誰かの影を見て、視線を向けた。「警告しておくわ。私に触れないで」「お前はもう俺の金で買った嫁なのに、なんで触れちゃいけないんだ?」「私がいつ同意したの?これは立派な犯罪よ」「関係ない。
みんなでひと通り確認してみたものの、やはり何も分からなかった。星羅はいったいどうやって姿を消したのか。悠人は焦燥を隠しきれない様子で、何度も映像を巻き戻した。「茜さん、もう一度しっかり思い出してみてくれ。今日、彼女が何か言ってたことはないか?」焦るあまり、茜は頭が真っ白になった。そこへ若彰から連絡が入り、辰哉は車で逃げたが今も追跡中だという。今、星羅を助けられる手がかりを持っているのは自分しかいない。茜は自らを奮い立たせ、ふと化粧室での会話を思い出した。「星羅ちゃん、お兄ちゃんに早く結婚してほしいって言われてたの。向こうの家が、かなりの金を出すって。星羅ちゃんは断ったけど、お兄ちゃんがお母さんの職場に絡みに行くのが嫌で、自分のお金を手切れ金にして縁を切ろうとしていたわ。なけなしの二百万を貯めたって言ってたから、きっとそれを全部渡したはずよ」「たかが二百万で、あの男が満足するはずない。どうやら実の妹を拉致して売り飛ばし、金に替えたらしいな」鷹が容赦なく推測を口にした。悠人の顔色が暗く沈んだ。茜はすぐに言った。「落ち着いて下さい。それだけの金を出せる家なんて、この辺りの田舎では限られています。ほとんどが細々と小さな商売をしてる家ばかりで、そんなにまとまったお金がある人は珍しいです。つまり、普通では嫁の来手が見つからないような、何か『特別な事情』がある家のはずですよ。少し調べればすぐ足がつくと思います」全員で手分けして聞き込みをすると、最終的に悠人が有力な手がかりをつかんだ。ある店に、つい先ほど置かれたばかりらしい、結婚祝いの菓子折りのような包みがあった。ところが店主に、誰かの祝い事でもあったのかと尋ねても、店主は首を振るばかりだった。だが、悠人が部下に少し手荒く聞き出させると、店主はようやく口を割った。親戚の息子が結婚したものの、足が不自由なため、披露宴は開かないことにしたのだという。お金があって、体が不自由。茜の読み通りだった。さらに、店主は新婦のことを知っているかと聞いた悠人に対し、「近くの町の女性だとだけ知っている、顔は見たことがない」と答えた。どう考えても、嘘だった。悠人から報告を受けた茜は、自分の地元の人脈を使ってさらに詳細な情報をつかんだ。「山の上で果物を作っている裕福な農家よ。
次に気がついた時、星羅は見知らぬ薄暗い部屋のベッドに寝かされていた。内装を見る限り、ホテルなどの宿泊施設ではない。自分がどこにいるのかまったく分からなかった。ズキズキする頭を押さえながら起き上がり、辺りを見回してから、窓のところへ歩いて下を覗いた。思わず頭が真っ白になった。誰かの家の中だ。そこへ、背後のドアが開き、みすぼらしい身なりの、小太りな中年の女が入ってきた。女は星羅の体つきを上から下までねっとりと眺め、満足そうにうなずいた。「うん、あなたの兄貴の言った通り、これなら丈夫な子供を産んでくれそうだ」「あ、あなたは誰?」星羅が警戒して尋ねた。「あなたのお姑さんよ。今夜、うちの息子と寝てもらって、無事に妊娠したら入籍ね」「ね、寝る!?私、何の同意もしていないのに、あなた、これは立派な拉致監禁よ。犯罪だって分かってるの?」星羅は毅然と警告した。「難しいことを言われても分からないわ。ただ、こっちはあなたのお兄ちゃんにちゃんとお金を渡した以上、うちの息子にしっかり子供を産んでもらうからね。さあ、これを食べなさい。食べたら風呂に入って準備してちょうだい」そう言って、女は食べ物を置いていった。星羅は呆然とした。立ち上がって抵抗して逃げようとすると、ドアの外で見張っていた人に押し戻され、冷たい床に叩きつけられた。その瞬間、すべてが分かった。自分は辰哉に借金の肩代わりとして売られたのだ。慌ててポケットを探ってみると、スマホはすでに取り上げられていた。ここは三階で、窓から飛び降りれば死ぬか大けがだ。それでも、希望が完全にないわけではない。外に出る前に、茜にメッセージを送っておいた。茜が異変に気づいてくれれば、必ず助けに来てくれるはずだ。……その頃、茜はずっと重要なお客様との打ち合わせ中で、スマホをサイレントにしていた。契約書に無事サインをもらってから、ようやく星羅からのメッセージに気づいた。【兄が取り立ての人たちに囲まれてるみたい。様子を見に行ってくる。あいつが死んだら大変だから】取り立てという言葉に、茜は幼い頃に見た借金取りの恐ろしい形相を思い出した。すぐに星羅に電話をかけたが、何度かけても出なかった。何かあったのかもしれない。茜は早足で会議室のエリアへ向かった。鷹と悠人がそれぞれ別の
「たった二百万?そんなんじゃ焼け石に水だ!」辰哉は不満そうに言った。「じゃあ、勝手にすれば。誰かに殺されても、私は知らないから」星羅はきっぱりと言い放った。辰哉はその冷たい目を見て、これ以上食い下がっても無駄だと悟った。手を差し出した。「……くれよ」星羅はスマホを取り出すと、カメラを向けて録画ボタンを押した。「さっき言ったこと、もう一度繰り返して。後でごまかすつもりなら、ここまでの会話は全部録音してる。お金が欲しいなら、カメラに向かってちゃんとはっきり誓って」「お前ってやつは……身内相手に、ずいぶん小賢しい真似をするじゃないか」辰哉は腹立たしそうに顔を歪めた。「したくないけど、お兄ちゃんがどういう人間かは私が一番よく分かってるから。さあ、早く言って」星羅はスマホのカメラを彼に向けた。仕方なく、辰哉はカメラに向かってぶっきらぼうに言った。「俺は高橋星羅から二百万を受け取る。これから星羅には一切迷惑はかけないし、二度と金も要求しない」録画できたのを確認してから、星羅は目の前でお金を振り込み、席を立って振り返らずに去っていった。辰哉はスマホの着金通知を見つめたが、その顔には喜びのかけらもなかった。自分の妹のことは、自分がよく分かっている。一度「やらない」と言ったら、本当に二度と動かない頑固な女だ。ガラス越しに、遠ざかる星羅の後ろ姿を睨みつけた。辰哉は前から目ざとく調べていた。あの「茜」というのは金持ちの家の娘で、柏原社長の彼女だ。何より大事なのは、彼女が星羅の親友だということだ。星羅が泣きついて頼めば、茜が金を出すのを断るはずがない。星羅が、自分をただ助けたくないだけなのだ。なら、こっちにも考えがある。……星羅は寮の部屋に戻り、黙々と荷物をまとめ始めた。同じ部屋の同僚が、またねちねちと嫌みを言い始めた。「ねえ星羅、こんないい仕事、もったいなくないの?もしかして他に行くあてでもあるの?」星羅は、その言い方からすぐに嫉妬と悪意を感じ取った。ウォーカーヒルのような高級ホテルにいれば、浮気相手を怒鳴り込みに来る本妻の修羅場に出くわすことも珍しくなかった。本妻の肩を持つスタッフもいれば、愛人の贅沢な暮らしを羨むスタッフもいた。特に、愛人がどれほどの価値のある贈り物をもらっているかを知ると、なおさ
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