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第2話

Author: のんびり
花火の轟音の中、優月は手に持っていた許しチケットを放り投げ、残り二枚も全てゴミ箱に捨てた。

「もう、おじさんなんて絶対に許さない!」

そう言うと、彼女は涙ながらに自分の部屋へと駆け出し、ドアを閉ざした。

彼女の部屋を覗くと、優月は小さなベッドで丸くなって、眠りについた。

頬には涙の流れたあとがくっきりと、そしてその胸には、家族三人で遊園地へ行った写真を抱えている。

優月はこの写真が大好きで、いつも取り出しては、じっと見つめていた。

これは私たち家族三人で遊園地を訪れた、唯一無二の思い出の記念写真だった。

翔太が玲奈の「ここが好き」の一言で、遊園地を丸ごと買い上げて誕生日プレゼントとして贈って以来、優月は二度と遊園地に行きたいと言わなくなった。

私はそっとその写真をしまい、優月の頬の涙を拭い、そのまま休ませた。

翌朝、私はすぐに離婚弁護士に連絡し、離婚協議書の作成を依頼した。

しかし、電話を終えた後、優月がドアの隙間からこっそりと顔をのぞかせた。

招き寄せると、彼女は飛び込んでくるように部屋に入り、私の足にしがみついた。

心の痛みを必死にこらえ、私は尋ねた。「ママがもしおじさんと離婚することになったら……優月はママと一緒にいたい?それともおじさんと?」

優月は私を抱く手をぎゅっと固くし、うつむいた。泣き声まじりに、訴えるように言った。「別れなきゃダメなの?おじさんは約束してくれたんだよ、七歳の誕生日を過ぎたら、パパって呼んでいいって。もう少しだけ待ってて、おじさんにもう一度だけチャンスをあげようよ、ママ……」

娘の言葉に、涙が出そうになるほど胸が痛んだ。

翔太と結婚して数年、彼は初恋の人に誤解を招くのを恐れ、私たちの結婚関係を公にすることはおろか、娘は生まれてから一度たりともパパと呼ぶことさえ許されなかった。

ある日、優月が恐る恐るパパと呼びかけた。すると彼は激怒し、優月を玄関に跪かせ、おじさんと呼ぶことを何度も何度も繰り返させた。声が掠れるほどに。

それ以来、優月は家でも外でも、二度とパパと呼ばず、ただおじさんと呼び続けている。

そして、彼女は再び昨日ゴミ箱に捨てた許しチケットを拾い上げて言った。「ママ見て、まだ一枚残ってるよ。おじさんにもう一度だけチャンスをあげようよ」

涙に濡れて腫れたその目は、それでも強く訴えかけるように私を見つめていた。私は彼女の髪を優しく撫で、深いため息をついてうなずいた。

翔太はあの日を最後に、一度も家に戻って来なかった。

ある日、優月が一枚の招待状を手に、期待に満ちた眼差しで私に言った。「ママ、学校の授業参観でね、先生がパパとママが一緒に来てって言ったの。おじさんと一緒に来てくれない?友達に私のパパを見せてあげるって約束しちゃったんだ」

招待状を手に、私は一瞬ためらった。優月の期待に輝く瞳を見ていると、その希望を打ち砕くことなどできなかった。

ただ、翔太が来てくれるのか、全く確信が持てなかった。

結婚して五年、彼は優月の保護者会や授業参観に一度も出席したことがないのだから。

優月に返事をする前に、私は一度、翔太に電話で確認してみることにした。

しかし、受話器の向こうから聞こえてきたのは、幼い女の子の声だった。

「もしもし、パパのお電話ですか?パパは今シャワー中ですけど、もうすぐ出てきますよ」

私は爪を立てて掌を刺す痛みで堪え、無言で電話を切った。

優月に「おじさんは来られない」と伝えようとしたその時、翔太から折り返しの電話がかかってきた。

「玲奈はまだ小さいから、『おじさん』と『パパ』の区別がつかなくてね……誤解しないでくれ。優月だけが俺のたった一人の大切な娘なんだ」

彼の慌てて弁解する様子は、どこか見苦しく映った。もはや、その言い分の真偽を詮索する気すら、起こらなかった。
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