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第4話

Auteur: ミチル
要に何度も電話したけど、全然出てくれなかった。

口座のお金がごっそりなくなってるのを知ったあの夜、私は一晩中眠れなかった。

翌朝、すぐ銀行に行って取引明細を確認したら、600万円が数ヶ月前に引き出されてた。

あの時のことを思い出した。数ヶ月前、要が「お母さんが入院して急にお金が必要なんだ。あと2ヶ月で母の投資が満期になるから、それで返すよ」って言ってたっけ。

その後、一度お金のことを聞いたら、要は「お母さんがもう返してくれて、そのお金、ちゃんと口座に戻しておいたよ」って、笑いながら言ってた。「心配しすぎだって!うちのお母さんが踏み倒すわけないでしょ」とか言って。

でも、今となってはそのお金、一度も返ってきていない。

要、このクズ野郎!私のお金、持ち逃げしたんじゃないの?

そんなことを考えてたら、七海から電話がかかってきた。

「美咲、前に気に入ってたブルーオーシャンのあのマンション、覚えてる?庭付きで、買われちゃって残念って言ってたやつ。あの家にさ、今日誰が住んでるか分かる?」

「誰?」

「堀江だよ!」

堀江があの家を買ったって?

なんか嫌な予感しかしない。電話を切った私は、急いでブルーオーシャンに向かった。

あの家は、通勤に便利だし、私も要も職場から近くて、施設も間取りも最高だった。それに小さな庭付きで、私にとって理想そのものだった。でも、まだお金が貯まってないうちに売れちゃったんだよね。

あのとき、すごく惜しいって思ってたのに、まさか堀江も狙ってたなんて。

ブルーオーシャンに着くと、七海と合流。七海がインターホンを押したら、なんと出てきたのは優だった。

優はキャミソールにスリッパ姿で、まるで家の主みたいにふるまってた。

「なんであんたがここに......?」

優がドア枠にもたれかかってるところに、後ろから「誰?」って声がして、堀江が顔を出してきた。私を見るなりびっくりしてたけど。

七海が勢いよくドアを押し開けて、「堀江さん、なんで星野さんがここにいるの?あんたたち、一体どういう関係なの?」って詰め寄った。

堀江は慌てて手を振りながら、「いやいや、違うんだ!この家は俺のじゃなくて、優の家だよ。正確に言うと、優の仮住まいってだけで......要が優に栄養剤を届けるように頼んだから、来ただけなんだ」って弁解した。

私は中に入って
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