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第5話

Author: 涼木
その時、処置室の前のモニターが、突然長く平坦な警告音を鳴らし始めた。

ピ——

それは、無情な1本の直線だった。

救急隊員の体が、その場で固まった。

彼はゆっくりと振り返り、もう動かなくなった緑の線を見つめ、苦しげに目を閉じた。

「……駄目です」

救急隊員は、死亡時刻を告げることすらできなかった。

必要な救命処置すら受けられないまま、この子はすでに命を落としていたのだ。

私は地面に跪いたまま、動けなかった。

周りの世界から、音が消えたようだった。

看護師のすすり泣きも、救急隊員の怒号も、何も聞こえない。

私の目に映るのは、ストレッチャーの上の小さな体だけだった。

勇人の顔は、すでに土気色に変わっていた。

胸元の白いシャツは血に染まり、乾いてどす黒く変色している。

ヒーローのフィギュアを固く握りしめていたはずの小さな手は、今はだらりと担架の縁から垂れ下がっていた。

フィギュアは床に落ち、乾いた音を立てた。

私は折れた脚を引きずりながら、少しずつ這って近づいた。

フィギュアを拾い上げ、もう一度その手に握らせる。

「勇人、ヒーロー、ちゃんと握ってて……

ヒーローが、ママを守ってくれるんでしょう?」

私は自分の頬を勇人の冷たい小さな顔に押し当てた。涙はとっくに涸れ果て、ひりひりとした痛みだけが残っていた。

「どうして……ママを守ってくれないの……

起きて……ねえ、ママを見て……」

何の返事もない。

廊下全体が、死んだように静まり返っている。

その時、廊下の奥から、ヒールの硬い音が響いてきた。

甘ったるい女の愚痴とともに。

「この病院、消毒液の臭いがほんとキツいんだけど。

章平ったら、私はもう平気だって言ってるのに、わざわざ全身検査させるんだもん。

膝の擦り傷なんて、もう血も止まっているのに」

聞き覚えのあるその声に、私の背筋は瞬時に凍りついた。

ゆっくりと振り返る。

章平はオーダーメイドの黒いスーツを身にまとい、背筋を伸ばして立っていた。

片手で夏子の腰を抱き、私が1度も見たことのないような、甘さと呆れの混じった表情を浮かべている。

「事故を起こしたのなら、念のため病院で検査しておくに越したことはない。

あとになって何か症状が出たら困るからな」

その声は、驚くほど優しく、甘かった。

夏子は彼の胸にもたれかかり、得意げに甘えた声を出した。

「全部、あの当たり屋の女のせいよ。あんな怖い思いさせられて。

あの女のこと、絶対に許さないでよね」

章平は顔を上げ、興味なさげな視線を救急処置室のほうへと流した。

「心配するな。俺の女に手を出そうとする奴は、誰であろうと許さない」

彼は大股で歩み寄ってくる。背後のボディガードが即座に前へ出て道を開けた。

「そこをどけ」

ボディガードが乱暴に、周りの看護師や医師たちを押しのける。

章平は、私から2メートルほど離れた場所で足を止めた。

地面に座り込む私には目もくれず、まっすぐ救急隊員を見据える。

声は、氷のように冷たかった。

「うちの病院で騒ぎを起こしているのは、お前たちか!

警備を呼べ、つまみ出せ」

救急隊員は怒りに全身を震わせ、章平を指差して怒鳴りつけた。

「あんたは人間じゃない!

あんたのひとことのせいで、5歳の子供が手遅れになって死んだんだぞ!

夜な夜な悪夢にうなされると思わないのか!」

章平は眉をひそめ、その非難をまるで的外れだとでも言うように受け流した。

「どうせ当たり屋だろう。死んでも自業自得だ」

彼はようやく、見下すような視線を担架の上へと落とした。

その瞬間。

章平の体が、はっきりとこわばった。

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