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第9話

Author: 灯火かすむ
今朝、名前変更を済ませたばかりなのに……

――情報が漏れた?誰だ、誰が……?

誠司は眉間にしわを寄せ、スマホのパスコードを試みた。

だが、誕生日では開かない。

結婚記念日でもない。交際記念日も違う。

律の誕生日、珠希の命日……

どれも、全部、違う!

連続でミスしたせいで、あと一回間違えればロックがかかる。

「律、お前のスマホのパスコード……なんで……」

混乱する彼の思考を、裕子の電話が遮った。

継真の名前変更手続きに不備があったらしく、至急対応が必要とのこと。

都合がいい。ついでに、情報を漏らした奴が誰か、洗い出してやる。

「律、ちょっとお菓子買ってくる。お前はちゃんと休んでろ。すぐ戻るからな」

律は目を閉じたまま、何も返さなかった。

その沈黙が、誠司の胸を鈍く締めつけた。

重たい苦しさが、心の奥から湧き上がった。

彼は俯き、背中を少し丸めながら、袖で目元を拭ってそっと部屋を出て行った。

彼が出て行って間もなく、裕子が遠慮もなくズカズカと部屋に入ってきた。

「ねぇ、聞いたわよ。あんた、癌なんだって?かわいそうにぃ。

これで将来、東條くんも財産も、全部私と息子のものになるのねぇ」

律は何の反応も示さず、無表情で彼女を見つめ続けた。

その死んだような目が気に障ったのか、裕子は少し不満げに口をつぐんだ。

だが、すぐに面白いことを思い出したように顔を近づけ、唇を開いた。

「ねぇ、もうすぐ死ぬあんたに、最後に一つだけいいこと教えてあげる。

実はさ――あんた、多嚢胞性卵巣症候群なんかじゃないのよ」

律の顔に、わずかな動きが生まれた。

それを見て、裕子は勝ち誇ったように続けた。

「驚いた?あんたが何年も苦しんで、自分を責め続けた『原因』。

ぜーんぶ、昔東條くんの命を助けたときに負わせた後遺症なんだよ。

しかもね、当時の健康診断書も、彼と私が一緒に偽造したの」

その瞬間、自分の中で何かが崩れる音が聞こえた気がした。

けれど、思っていたような激情は湧いてこなかった。

むしろ心は、不思議なほど静かだった。

――きっともう、壊れすぎたのだろう。

もうどうでもいい。

ただ、早く十年前に戻りたい。

誠司なんていない世界で、生き直したい。

「システム、今まで貯めたポイントを使って、『早期死亡』と交換して」

律は、心の中で静かに呼びかけた。

【それでいいのですか?合計一万ポイントですよ。正直、かなり割に合いません】

構わない。

この「攻略システム」は、そもそも自分が誠司に恋をして、想いを伝える勇気が持てなかったときに、生まれた幻のようなものだった。

彼の好感度を数字で見られるようになって、ようやく一歩踏み出せた。

その彼からもらったポイントを、今、すべて返す。

「システム、お願い。交換して」

【了解。ポイント消費完了】

【プレイヤーさんは60秒後に死亡します。攻略対象・東條誠司は5日後に死にます】

律の口から、血が泡となってあふれ出した。

それは顎を伝い、病衣の胸元を赤く染めていく。

その光景を見ながらも、裕子の目に一片の同情もなかった。

「ちっ……怒りでショック死?哀れね。

死んだら、あんたの子どもの骨壺なんか全部犬の餌にしてやるわ。

家に置いとくなんて、不吉だしね!」

その言葉を聞いた瞬間、律の体に不思議な力が満ちてきた。

バタンッ――

ベッドから転がるように落ち、真っ赤に染まった手で裕子の純白のスカートを掴んだ。

「この……クソ女……放せ……放せよ!」

ヒールのかかとが、容赦なく彼女の手を踏みつける。

鋭い痛みが全身に広がるが、それでも律は手を離さなかった。

自分の命なんてどうでもよかった。

でも――

自分の子どもたちを、これ以上、誰にも侮辱させたくなかった。

たとえ、彼らがもうこの世にいなくても。

たとえ、自分以外に誰も彼らを想わなくても。

そのとき、廊下のほうから誠司と医者が話している声が聞こえてきた。

律は、ほんの少しだけ唇を動かして笑った。

彼が真実を知ったとき、どんな顔をするのか――

それだけが、ちょっとだけ、見てみたかった。

でも、見えないのは残念。

今度こそ、本当に――さようなら。

彼女は、十年前の、自分だけの人生に戻っていく。
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