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第460話
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永遠の毒薬 第696話
彼女は、この子が期待されないことを理解していた。それでも、この子を産む決心をした。「ダメだ！」直人は迷わず拒絶し、椅子に座り込むと、莉子の冷たい手を取って、やさしく言った。「裕之みたいな男が父親になる資格なんてない！お前が彼の子を産んだら、絶対に一生彼と縁が切れないんだよ。そんな人生を送りたいのか？」莉子は涙をこぼしながら、つらそうに答えた。彼女も裕之と一生関わりたくはなかった。でも、子供を産んでしまえば、兄が言うように、一生彼との関わりが続く。堕ろせば、彼との関係を完全に切れる。その選択をすることで、胸が痛んだ。でも、もう決めなければならなかった。「わかった、兄さん。私、堕ろす。今すぐ手術の手配をして」莉子は決心を固め、少しだけ心が軽くなった。これからも、きっと心から愛してくれる人に出会うだろう。そのときにまた子供を持つ。その方が幸せだろうと、心の中で思った。「いい子だ。病室でおとなしくしてろ、外に出ちゃダメだぞ」直人は彼女の頭を優しく撫でながら、穏やかに言った。彼はすでに悠と連絡を取って、悠も莉子のために手術を行い、裕之の半分の財産を取り戻すための裁判を支援することを約束していた。莉子が回復したら、離婚して新しい人生を歩む。その時、幸せを感じられるだろう。裕之というゴミ男は、もう無視していい。できるだけ遠くに行ってもらおう。「わかった、兄さん。行ってらっしゃい」莉子は覚悟を決め、心が少し楽になった。急がなくてもいい。いずれ、子供はできるだろう。直人は医者と手術のスケジュールを決め、サインを済ませた。その後、医者のオフィスを出て、すぐに電話をかけた。「裕之、この数日、誰と連絡を取ってるか調べてくれ」電話を切ると、喫煙室に向かい、タバコを吸い始めた。煙が体にまとわりつきながら、直人はしばらく立ち尽くしていた。すると、突然、紗希の顔が目に入った。彼は足を止め、彼女が車椅子に乗って、見知らぬ男に押されながらエレベーターに向かっているのを見た。その瞬間、彼は固まった。エレベーターのドアが閉まると、すぐに我に返った。急いで駆け寄り、ボタンを押し続けた。でも、エレベーターはまるで彼を避けるかのように、まったく動かなかった。直人は仕方なくエレベーターを使わず、安全通路を使って駆け下り
永遠の毒薬 第695話
「裕之お兄さん、あなたって本当に優しい！」美咲は彼の首にしがみつき、甘えるように言った。声は柔らかく、思わず甘えたくなるような響きだった。今や、裕之は彼女にとって唯一の頼みの綱。もし彼を怒らせたら、住む場所すらなくなってしまうかもしれない。ここで生きていくためには、しっかりと彼にしがみついていくしかない。乃亜には、いつか仕返しをしてやるつもりだ。「この世界で、君にこんなに優しくしているのは俺だけだよ」裕之は静かな声でそう言った。「美咲、もし俺を裏切ったら、どうなるかわからないぞ」彼のために、すべてを賭けている。こんなに深く愛しているからこそ、彼は感動している。もし美咲がまた裏切るようなことがあれば、彼女はどうなってしまうのか......そのことを考えると、彼は少しぞっとした。美咲は彼の腕に感じる力が強くなるのを感じながら、少しだけ恐怖が胸に湧き上がった。もし、裕之が自分が本当に愛しているのが凌央だと知ったら、きっと彼女は生きていけなくなるだろう。そのことを考えただけで、心が締めつけられた。「裕之お兄さん、安心して。私は絶対にあなたを裏切らない！一生あなたを愛し続けるし、ずっとあなたの側にいるから！」美咲は小さな声で言った。実際、心の中ではかなり不安だった。これからはもっと慎重に彼に接しないといけない。もし彼に何か気づかれたら、もう終わりだ。「君が俺を愛してくれるなら、俺もずっと君を愛し続けるよ。美咲、少し休んでて、俺は下でちょっと確認してくるから、食事の時に呼ぶよ」裕之は温かい声で言った。まるで完璧な恋人のように。「ご飯を食べたら、外に一緒に出かけようよ」美咲は少し興奮気味に言った。外の世界がどう変わったのか、見たくてたまらない。3年以上も閉じ込められ、世間と隔絶された生活を送っていた。今、外に出られるようになったから、しっかりとこの世界を見たい。「整形外科に連絡しておいた。今日の午後に手術を受けて、その後、君の新しい身分に変えたら、桜華市では誰にも君のことはわからなくなるよ。好きなだけ外に出かけて、遊べるよ」裕之は美咲を抱きしめながら、二人の未来を少しだけ想像していた。「裕之お兄さん、ありがとう！」美咲は顔を上げ、彼の唇に軽くキスをした。その瞬間、裕之は電気が走ったように体が震
永遠の毒薬 第694話
普段なら、彼女が怒れば、凌央は少しは譲歩するはずだった。でも今回は、全くその気配がない。むしろ、携帯を取り出して、山本に電話をかけた。電話が切れると、山本が静かに部屋に入ってきた。真子はその姿を見た瞬間、顔色が一気に青ざめた。これで終わりだ......でも、どこで凌央を怒らせたのか、全然わからない。山本は無言で彼女の前に立ち、丁寧に手を差し出した。「真子様、こちらへ」「凌央！もし私をこれ以上追い詰めるなら、私は死んで見せる！」真子は怒りに任せて、机の角に頭をぶつけようと走った。凌央は顔を険しくし、冷たい声で命じた。「さっさと連れて行け！目障りだ」山本はすぐに駆け寄り、真子の腕をつかんで言った。「真子様、すみません」そう言いながら、彼女を引っ張って部屋を出て行った。「放せ！」真子は必死で叫んだ。「すぐに手を離せ！」山本は無表情で、まるで気にも留めない様子で引き続き彼女を外へと引きずった。車に乗せられた真子は、急いで車のドアを押し開けようとした。「真子様、すみませんでした」山本は一言告げると、手を上げて真子に一発、強く叩いた。真子はそのまま意識を失った。山本は彼女をシートに寝かせて、車のドアを閉めた。車の外で、山本は長いため息をついた。やっぱり、凌央を怒らせるのは最悪だ......ひどすぎる......それに、トレンドのことを凌央に伝えるのを忘れた。その頃、別の別荘では、美咲が怒りを爆発させていた。部屋は荒れ放題、物が散乱している。裕之はドアの前に立ち、冷たい目で彼女を見つめていた。美咲は怒りのあまり、地面に崩れ落ちた。乃亜がどうして離婚しても、また凌央と復縁しようとしているなんて......母親の力で地位を得るつもりか？それとも？「怒りは収まったか？」裕之はゆっくり歩み寄り、膝をついて彼女の目の前に立った。「凌央がそんなに気になるのか？」トレンド一つで、こんなに怒るなんて......それだけ凌央に未練があるってことなのか？もし本当にまだ凌央を愛しているのなら、俺は一体どうなってしまうんだろう？自分がしてきたことが無駄になる。でも、そんなのは絶対に許さない。美咲は彼の冷たい目に少し怯えたが、すぐに思い出した。彼に約束したことを。少し焦ったが、すぐに冷静
永遠の毒薬 第693話
堅達は少し驚いた後、すぐに答えた。「もちろん、真剣だよ」もし真剣じゃなかったら、紗希のそばにこんなに長くいるわけがない。「昨日、彼女を雲間荘に連れて帰った。あなたも行って、少し彼女と一緒にいてやってくれ」乃亜はファイルをちらっと見ながら言った。「私はこれらの書類をちゃんと確認して、終わったらあなたに連絡する」堅達が持ってきたプロジェクトだから、彼女が断るわけにはいかない。お金があるのに、手を出さないのは馬鹿げている。「わかった、すぐに行くよ」堅達は嬉しそうにオフィスを出て行った。乃亜は彼の背中が見えなくなるのを見ながら、ふと彼が言った言葉を思い出していた。何か心に引っかかるものがあった。堅達が紗希の首の痕を見たら、直人に何か言いに行くのではないかと思った。桑武は真子を凌央のオフィスに送り、すぐにその場を離れた。凌央の雰囲気は怖すぎて、何か大きな問題が起きる気がしていた。真子はオフィスに入ると、部屋を見渡し、ソファにゆったりと座った。「秘書さん、紅茶でも入れてくれない？」彼女は、凌央の秘書たちが非常に優秀だと聞いていた。何でもできるらしい。凌央は手元の書類を放って、引き出しから封筒を取り出し、歩いて近づき、手を上げて封筒を真子の胸に投げた。「自分で見ろ」「何を？」真子は冷たい目で凌央を睨んだ。「見ればわかるだろう？」凌央はそう言いながら、もう一つのソファに腰を下ろし、煙草を取り出して吸い始めた。「何を見せるの？」真子は疑問を抱えた。凌央がわざわざ彼女を呼び出した理由は一体なんだろう？「自分で見ろって言っただろ」凌央は煙を吐きながら、冷静に言った。真子は仕方なく封筒を開けた。見る前に、手の感触で中身が写真だとわかった。真子の心臓が急にドキリとした。凌央が彼女を呼んだ理由は、間違いなくいいことではない。来るべきではなかった。「急いで、ちゃんと一枚一枚見ろ」凌央の顔色は暗く、声には冷たい響きがあった。ぞっとするような怖さが伝わってきた。真子は「何をするつもりよ！」と叫びながら立ち上がった。凌央のことは、一度も完全に理解したことがない。彼の計算深さには驚かされる。「見終わったら、また話をしろ」凌央は冷たい目で彼女を見ながら言った。口元には小さな嘲笑が浮かんでいた。真
永遠の毒薬 第692話
彼は長年愛してきた彼女を、どうしても手放すことができなかった。その背後で、秘書は息を呑むようにして見守っていた。社長、乃亜さんのために、これほどの代償を払うのは......少し大きすぎるのでは？乃亜さん、どうか社長を裏切らないでほしい......と心の中で呟いた。乃亜は電話を切ると、ドアの前でただ一言、「入って」と言った。ドアが静かに開き、堅達が入ってきた。風尘仆仆の姿で、まるで急いでどこかから帰ってきたかのようだった。乃亜は少し驚いた。「堅達？」休暇中ではなかったのか？どうして急に現れたのだろう？「久遠社長、この方が井上グループの社長、井上社長です」堅達の後ろにいる秘書が、静かに書類袋を机に置いた。「井上グループは次の盛世との協力プロジェクトを進めたく、久遠社長にご確認いただきたくて参りました」乃亜は眉をひそめて書類を見た。井上社長？ということは、堅達は家業を継ぐために休暇を取っていたのか......「木上、君は出てくれ、久遠社長と話をする」堅達は冷静に、しかしどこか優雅に言った。その言葉の裏には、彼の社会的な地位や落ち着いた風格が感じられた。「わかりました」木上は乃亜をちらっと見て、思わず思った。これが井上社長が好きな女性なのか。こんなに美しい人が相手なら、井上社長が家業を継ぐのも納得だ。以前、堅達は会社を管理するのが面倒だと言っていたのに、こんな変化があったなんて。乃亜は木上の視線を感じながらも、堅達に視線を向けた。彼のアシスタントが彼に好意を持っていることが少し分かった気がした。「木上、出て行ってくれ」堅達は再度、冷静に言った。木上はすぐに答えて部屋を出て行った。その後、乃亜はソファに座りながら言った。「数日ぶりに会ったけど、堅達が井上社長に変わっているなんてね。でも、やっぱり辞表を出して正式に手続きを踏まないと」「申し訳ない」堅達は深く息をつきながら言った。「実は、家業を継ぐつもりはなかったんだ。でも、もし盛世に残ったままだと、直人と対抗することができない。そして、紗希を幸せにできない」乃亜はその言葉に少し驚いた。堅達が休暇を取った理由、最初は家業に戻るのか、相手探しに行くのかと思っていたが、まさか紗希のために決断したとは。「紗希が堅達を考えてい
永遠の毒薬 第691話
電話が繋がると、拓海の優しい声が聞こえた。「乃亜、何かあったのか？今日のトレンド、どうして......」その後、拓海は言葉を切った。明らかに心の中で何かを感じている。もしかして、僕たち、やっぱり別れる運命なのか？拓海は長い間、こんな結末を予測していた。でも、実際にその瞬間が来ると、やっぱり辛い。トレンドを見た後、拓海は2時間かけてその事実を受け入れた。今、乃亜に電話をかけるのは、どこか諦めきれない気持ちがあったからだった。彼は、このまま何も知らずに終わるわけにはいかない。乃亜は、過去に自分が流した情報を思い出し、少し眉をひそめた。「今日のトレンド、実は私が流したの。美咲が出所して、晴嵐が危ないかもしれないから、こうして彼女を引き出そうと思って」相手は影に隠れている。こっちは表に出ているけど、心の中でどうしても不安を感じてしまう。晴嵐を守るために、乃亜は自分を犠牲にしてでも、美咲を引き出したかった。他の人には言えない。でも、彼女は分かっている。美咲が凌央をどれだけ愛しているか。彼女が復縁したことを知ったら、きっと飛び出してくる。それが、彼女を引き出す方法だ。拓海は少しホッとしたように息をついた。「なるほど、そういうことか」その声は明るくなった。「じゃあ、もっと警備を強化して、君たちを守らないと。美咲は、恐ろしい女だから」「ありがとう、拓海」乃亜は素直にその提案を受け入れた。拓海がしてくれることは、当然のように受け入れていた。結婚も近いし、彼に頼るのは自然だと思っていた。「警護をつけるけど、常に気をつけて。裏で何かされる可能性もあるから」拓海は深く息を吸ってから言った。「乃亜、こちらの問題はもう少し時間がかかる。今は君たちの元にすぐには行けないけど、すまない」母子の危険な状況に、彼は心から申し訳ないと思っていた。「大丈夫、会社のことをしっかりやって。私たちのことは心配しないで」乃亜は彼を気遣いながら言った。彼には仕事を集中してもらわないと、解決が早く進まないから。「分かった、気をつけてね」拓海は少し安心したように言った。彼はどんなに疲れていても、乃亜の声を聞けば元気をもらっていた。「拓海、私は......待ってる」その言葉は、結局言えなかった。顔が赤くなったのは確
