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第2話

작가: 阿愚魚
しばらくして、玲奈が着替えから戻ってきた。彼女が身にまとっていたのは、ビキニだった。

偽物のお腹をつけていても、彼女の美しいスタイルは何一つ損なわれていない。

光翔の視線は、最初から最後まで彼女の体から離れなかった。

「玲奈、君は本当に綺麗だな。ほら見ろ、俺が言った通りだ。この水着、絶対似合うって。君は間違いなく一番美しい妊婦だよ」

玲奈は頬を赤らめて、ふざけたように言う。

「気に入ったならよかったわ。またいくつか買って帰るから、家でも着てあげる」

俺は横で無言のまま照明をセッティングしていたが、手が思わず止まった。

彼女は俺の前では、いつも控えめな服装をしていた。

足首まで隠れるような長いスカートばかり選び、たとえ夏でもしっかり全身を覆い隠していた。

肌どころか、顔も帽子やマスクで隠していた。

俺はそれを、彼女が美意識を持ち、自分のスタイルを大切にしているのだと思っていた。

だが今になって分かった。玲奈は俺に自分の体を見せたくなかったのだ。一寸たりとも。

思わず彼女を見上げてしまった俺に、彼女は驚いたように防御の態勢を取った。

慌てて上着を羽織り、光翔の後ろに隠れながら警戒心むき出しの声を上げる。

「あんた、勝手に見るんじゃないわよ!訴えるわよ」

光翔は彼女の頭を優しく撫でながら、穏やかな声でなだめた。

「いいんだよ。カメラマンがわざとやったわけじゃない。君が綺麗すぎるから、男なら誰だって目が行ってしまう」

「でもダメなの!私は光翔にしか見せたくないの!」

たった数言で、玲奈はまた光翔に甘える優しい顔に戻っていた。

その変わり身の速さを、俺はただ黙って見ているしかなかった。

俺は道具を取りに外へ出た。

すると、玲奈が追いかけてきた。

彼女は俺を物置部屋へと引っ張り込み、声を押し殺して言う。

「神崎陸斗、あんた、いつまでちんたらやってんの?もし撮れないなら、さっさと他の人に代わりなさいよ。私たちの時間を無駄にしないで」

俺は眉を寄せ、静かに言った。

「やっと俺が誰か分かったのか?何か説明する気はないのか?」

すると彼女は逆にイライラした様子で答えた。

「説明って何?ただの妊婦写真を撮ってるだけでしょ?あんた、仕事ばかりで私に構う暇なんてなかったじゃない。それくらい許してくれてもいいじゃない」

まるで俺が悪いとでも言うように、彼女は言葉を続けた。

「そもそも、あんたに許可を取るのを忘れてたみたいね」

一瞬、彼女の言葉が詰まったが、すぐに気にしないように手元のネイルを眺めながら言い放った。

「ただの気まぐれよ。その場にいた人を誘っただけ。他意なんてないんだから、あんたもいちいち細かいこと言わないで。光翔も善意で協力してくれてるだけ」

「じゃあ、『旦那』と呼ぶのも善意か?」

俺が問い詰めると、彼女はますます堂々とした態度で言い返した。

「当然でしょ。誤解されたらどうするの?光翔に悪い噂が立つのは絶対に嫌だから、私が守ってあげてるのよ。

私たちのことを邪魔する気?もし光翔の評判が落ちたら、あんたには必ず責任を取らせるからね。忘れないで。今の彼は、私の旦那なんだから」

その言葉を聞いて、怒るべきなのに、俺はただ疲れを感じていた。

他の男を「旦那」と呼び、何事もなかったかのように振る舞う彼女に。

俺はこの一年間、必死に働き詰めだった。

彼女のために六年間かけて積み重ねてきた思いが、すべて無駄だったように思えてきた。

一年前、玲奈の両親に挨拶に行った日のことを思い出す。

彼女の家族がニ千万円の結婚資金を要求してきたとき、彼女は泣きながら言った。

「お金なんてなくてもいい。たとえ駆け落ちしても、私はあんたと一緒にいたい」

俺はそんな彼女を悲しませたくなくて、頑張ることにした。

馬鹿にしていた結婚式の写真だって、金になるなら喜んで撮った。

この一年、体を削りながら必死に働いて貯めたお金。

そのすべては、今、別の男に寄り添う彼女の背中で空しく消えていった。

「ピン――」

玲奈がスマホの通知を確認して、幸せそうに微笑む。

「ちょっと長居しすぎたわ。旦那が心配しちゃう。私はもう帰るから、他のカメラマン探しておいてね」

彼女が去っていく背中を見送りながら、俺は決意を固めた。
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