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第7話

Author: 前川進次
美琴がテントを組み終えるまで、ずいぶん時間がかかった。

正直、どうしてこんなに不器用なのか理解できなかった。

自分でできないなら、母親に手伝ってもらえばいいのに、まったく自己認識がない。

次の課題は料理対決。食材を自分で集めるところから始めなければならない。

周囲はほとんど山林と池だけ。浅い山林には果物が少しあるけれど、それだけでは腹の足しにはならない

池には魚が泳いでいて、満腹になるには魚を捕るしかないようだ。

みんな池のほとりに集まると、清水さんは水面を跳ねる魚を見て目を輝かせた。

すぐにズボンの裾をたくし上げて、池に入る準備を始めた。

「お母さん、私が代わりに行くよ」と心配そうに声をかけると、清水さんは笑いながら手を振って私を止めた。

「何を言ってるの。私は田舎育ちだから魚捕りなんて朝飯前よ。ちょっと見てなさい!」

清水さんは誰よりも先に池に入り、あっという間に大きな魚を三匹捕まえてみせた。

その腕前は見事なもので、服もほとんど濡らしていない。

私はバケツを持って横でサポート。息ぴったりのコンビネーションだった。

その時、美琴が不満そうに言った。「凜華ち
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