تسجيل الدخول僕、橙原郁人に義妹ができた。 紹介されたのは、なんと学校で氷姫と呼ばれている白鷺有紗で。 家で見せる一面は、学校で見る冷たい雰囲気とはまるで別人のように思えて。 彼女が氷姫となっていたのには、どうやら理由があるらしいんだけど……。 それはそれとして、大企業の娘から一般庶民の娘へとジョブチェンジした彼女には、できないことがたくさんあって。 義母である紗苗さんから、彼女のことをよろしくとお願いされたんだけど、うまくやっていけるのだろうか。
عرض المزيد――これは一人の少年と、一人の少女の物語だ。「おはようございます、郁人くん!」「……おはよう」 ゴールデンウィークが明け、今日からまた学校に行く日々が始まる。 ゆさゆさと体を揺すられ、うっすらと目を開けると、すでに制服に着替えている有紗が視界の中に現れた。 夢かな、と思った。 どうしてあの氷姫が僕を起こすんだ、みたいな。 けど、次の瞬間には脳が仕事を始めて目が覚めていく。すぐに彼女が、僕の義理の妹であることを思い出す。「もう朝ですよ」「……七時だけどね」 時計を見やれば、七時を回った頃。 朝は紗苗さんがご飯を作ってくれるので、僕は少々ゆっくりするというのが最近の流れなんだけど。 それを有紗が知らないということもないだろうに。「まだ起きるには早くない?」「そうですかね。せっかくですし起きましょう。そして、一緒にご飯を食べましょう」「……まあ、いいけど」 ここまで会話すれば二度寝する気にもならない。 僕はぐしぐしと目をこすってベッドから立ち上がる。「着替えるから先に行ってて」「わかりました」 ててて、と部屋を出ていく有紗の後ろ姿をぼけーっと見届けつつ、制服に着替えていく。 有紗がこの家に来たのは、春休みのすこし前だったか。ということは、あれからもう三ヶ月が
『あなたの幸せは、あなたが決めるの』 お母さんは私にそう言った。 だからこそ、自分の気持ちに正直になって私は白鷺家を出た。 あそこで自分が幸せになる未来が見えなかったから。 そうして、橙原家に来た私は……うん、幸せだ。 大好きなお母さんがいて。 優しい雅人さんがいて。 学校でお友達はできていないけれど。 涼花さんというお友達はできた。 そして、郁人くんが隣にいてくれる。 これを幸せと言わずして、ならばなにが幸せだと言うのだろう。「……はぁ」 ゴールデンウィーク最終日。 私はリビングでだらしなく寝転がっていた。することがないのだから仕方がない。 朝のうちにお風呂掃除も、お部屋の掃除も、できることはやった。けどお昼を過ぎた頃にはもう全部終わってしまった。 郁人くんのお部屋で漫画を読んでも、なかなかずっとは続かない。 お母さんと雅人さんはお仕事。 郁人くんはアルバイト。 郁人くんのバイト先に突然現れて驚かせちゃおうか、なんて考えは最初からなかった。 なんというか、今は彼の顔を直視できない。 嫌いということはもちろんない。 むしろ……。 だからこそ、みたいな。 先日、郁人くんとお出掛けをしたときに九山さんという方と遭遇した。 私が白鷺家を出る理由とも大
「……」 すごく悲しい夢を見たような気がする。 ふと目が覚めた私は、時計で時刻を確認した。まだ全然夜中で、もう一度寝ることができるんだけど、どうにもその気になれなかった。 体を起こして、カーテンの隙間から外の景色へと視線を向ける。空は暗くて、点々と星がまたたいていた。 新学期に入って、しんどい思いが続いたこともあって、もしかすると疲れていたのかもしれない。 だから、あんな夢を見たのかな。「……お水、飲んでこようかな」 少し落ち着けば、また眠れると思う。 私はベッドから出て、キッチンへと向かうことにした。 夜の家の中は暗くて静かだ。 子供の頃はこの雰囲気がどうにも怖くて、トイレに行くのにもお母さんを起こしていたんだっけ。 何時に起こしても、お母さんは嫌な顔一つせずについてきてくれた。 眠れない日には、ホットミルクを入れてくれたこともあった。 そういう、ささやかだけど大切な思い出があったから、私はそれからも頑張れたんだ。 そして、今はそういう日常が続いている。 私自身もそうなんだけど、雅人さんと一緒にいるお母さんが本当に幸せそうで。 橙原家に救われたんだというのがひしひしと伝わってきて。見ているだけで、心がぽかぽかする。 お母さんはきっと、雅人さんに救われた。 私は多分、郁人くんに……。「あれ、有紗?」 リビングに行くと、どうい
ゴールデンウィーク。 バイトの予定もなく、父さんや紗苗さんも仕事に出た日は、朝にすることもないのでせっかくなので昼まで寝るということは以前までもあった。「……」 スマホで時間を確認すれば、時刻は現在午前十一時半。それはもうしっかり惰眠を貪っての起床だった。 こんな日はアラームなんてもちろんかけていない。 十二分に寝たので自然に目が覚めたというのもあるけど、物音がしたというか、気配を感じたというか、そんな感覚に襲われて目を覚ましたというのが、今の僕的には最も近い感覚なんだけど。「あ、郁人くん。おはようございます」 なぜか、僕の部屋に有紗がいる。「……おはよう。何してるの」 まだ寝ぼけている頭で必死に状況理解に務めるが、全然なにも分からない。 僕が寝るベッドに背中を預けるようにしていた有紗が、手に持っていた漫画を見せてくる。「漫画を読んでいます」「……はぁ、そう」 まあ、ゴールデンウィークだしな。 残念なことに友達がおらず、アルバイトだなんだといった予定のない有紗は、この休みをこの上なく持て余している。 それはこの数日でひしひしと感じていた。 有紗は寂しがりやなのか、あまり自分の部屋にこもることをしない。リビングにいるか、両親が家を出ているときに僕が部屋に戻るとついてくることもあるくらいだ。 そして昨日、リビングに寝転がって天井をぼーっと見つめていた彼女になにをしているのか訊ねてみたところ、『天井を見つめてるんです』と一瞬理解が追いつかない答えが返ってきた