なんでも拾ってくる(動物)息子が拾ってきたのは人間だった。しかもよく見ると、王族のようで。でもここで騒ぎ立てると、面倒なことになりそうだからとりあえず責任をもって育てることにしました。
view more「コノコヒロッタ」
片言で言えば、許されるものではありません!
「貴方はこの家の次期当主ですよ?それが、なんですか?出て歩いては、捨て猫とか拾ってきて……。この屋敷はもはや動物園のようですよ?世話はほとんど使用人がしていますけど。
拾ったなら、最後まで世話を―――ってあんたその子って、人間じゃない?」
「そうだよ。拾ってほしそうだったから」
「どこで拾ったの?」
「貧民街」
「そんなのいっぱい拾ってほしそうな子の中でどうしてこの子……ん?」
私は息子が小さい時から動物をすぐに拾ってくるから、その動物の背景・性格なんかがわかるようになった。
同様に息子は拾ってほしそうなこの中から一番拾わなきゃいけない子を見つけ出すような能力を身に着けたようだ。頼むから、これ以上は動物を増やさないでほしい。
「この子は―――国王陛下の落とし胤のようねぇ。陛下は知らないみたいだけど、我が家で保護しましょうか」
我が家は、これでも伯爵の爵位を賜っている。通常貴族には専属の医者がいたりするのだが、いかんせんうちには専属の獣医さんがいる。いないと困る。
社交界での我が邸の二つ名は‘どうぶつの森’。
息子が拾ってくるものだから。こんな風になった。猫が多いけど、リスとかもいるから、木も庭にあり、‘どうぶつの森’というのがピッタリ。
私は伯爵夫人ということになるのだけれど、社交界に出ていっても「動物臭い」とか蔑む言葉ばかりを耳にするので極力社交界に顔を出さない。
伯爵は、王宮で文官として働いている。
浮気はしてないけど、ろくに帰ってこないし(忙しいと思っておこう)、気にしてない。
それよりも、今回息子シェイクが拾った子をどうしようか?
今、着ているものは……廃棄だね。汚れているし、ところどころ穴が開いている。シェイクの子供の頃の服を着せよう、とりあえず。
「この子を風呂に入れてあげて」
私は使用人に指示を出した。服の指示も。とっておいてよかった、息子の服。
もう絶対着ない、というか18才にもなって無理がある。体形的に。
風呂で磨けば、流石に王家の血筋だねぇ、キラキラしてる。
髪の色は汚れててわからなかったけど、銀髪のようだ。瞳の色は深い青。王家の色だ。どうしよう?隠さないと絶対バレる。不自由になるけど、眼鏡かけてもらうしかないかなぁ?
「奥様!この子すっごく可愛らしい!」
と、使用人が絶賛するように、顔立ちがしっかりしている。
「成長後は絶対いい男よねぇ?その頃に私はオバサンかぁ……」
と、嘆く使用人までいる。
うーん、王家の子だから成長後は王宮に連れていかれるかもしれないし、わかんない。
現段階で王家に王子は一人いるから、そーっとしておこう。下手に「この子も!」とか言うと命に関わる。
「えーと、名前はなんていうの?私はここの屋敷の女主人、伯爵夫人だよ。あなたを拾ったのは私の息子のシェイク」
「僕の名前はフィルです。6才です」
「あらあら、きちんと自己紹介ができて偉いわ!うちの子なんて6才で出来なかったのよ?きちんとできるようになったのは8才だったかしら?」
「母上、やめてください。フィル、僕がシェイク。18才だよ」
「ここは動物がいっぱいで楽しいですね」
「ああ、全部僕が拾ったんだ」
なんでドヤ顔するのよ?世話をする使用人の手間も考えなさい!
「僕も拾われたの?」
「うん、そうだよ?どうした?」
「そっかぁ、そうなんだ。じつはあのまま、餓死すると思ってたんだ」
「僕はねぇ、一番助けなきゃって子がなんとなくわかるんだ。それがフィルだったんだ」
「へぇ~。助けてくれてありがとう。僕一生懸命勉強とか頑張ってシェイクの役に立つように頑張る!」
使用人の中には「健気ー」と涙ぐんでいるものもいる。
「うん、うちにはいっぱい本もあるし、頑張ってね!」
「コラ、シェイク!あんた自身も頑張りなさい。今後の領地経営の勉強とか執事さんならよーく知っているでしょう?教えてもらったりするのよ」
「「はーい」」
「フィルは自分が好きな事を勉強すればいいのよ」
「えー?シェイクの役に立ちたいから、領地経営の勉強するー。シェイクと一緒がいい」
「これは奥様困りましたね?」
シェイクのためになればいいんだけどなぁ?いずれ王宮と思うと領地経営の勉強はなぁ。
んがっ、落ちてるー。令嬢が。そこら辺に。「あのー。名のある令嬢とお見受けするのですが」だって、いい服着てるし。盗賊とかに会わなくて良かったね。「ね?隣国に行けば会えたでしょ?」「フィル!今はそういう問題じゃないだろ?」令嬢はパクパク口を開くのみだ。「あ、もしかして言葉が発せられない?筆談で。大丈夫、僕らは3か国はマスターしてるから」「なんだー。こっちの言葉も大丈夫なんだ、安心」俺は、令嬢が無事で安心だが。この令嬢……奔放といえば良いが、口悪くないか?「俺らは隣国から来た。俺の母上に尻を叩かれるような形で。ちょっと稼いで来いと」「うーん、今の為替レートでそれはナイわね」この令嬢、頭が切れるようだ。「こっちから出稼ぎに行くのはわかるけど、そっちからってのはナイナイ」令嬢が嘲笑を浮かべて、顔を扇ぐような仕草をするし。「おい、フィルはわかってたのか?」「えー、だから令嬢との出会いって言ったんだよー」俺だけか……「あ、そういえば。俺はシェイク。隣国で伯爵家の嫡男をしてる」「それって職業?」痛いところをつくなぁ。「で、こっちがフィル。俺の弟みたいなもんだ」「弟の方が頭がいいみたいね。で、私も伯爵家の者よ」……令嬢だろ?訳ありか?「えーと、名前は?」「私の名前……うーん、レーカとでも呼んでちょうだい」(この令嬢、多分王家の令嬢だろうけどシェノクには黙っておこう)
「そうだ!シェイク。幼馴染の子は?」「そんな子はいません!」 俺はバッサリと切った。うーん……「いっそのことフィルがうちを継げばよくね?」 いい加減面倒になった。――跡継ぎ問題があるのか……「シェイク、頑張れー!どこかに運命的な子がいるはずだから…多分」おいおい、言葉の最後の方が小さいけどいいんだろうか?「運命の子ねぇ……いっそのこと平民の子でもいいかな……」「シェイク!平民は最後の手段にして!まずは他国をあたりましょう?」 貴族主義と言うのか?どうでもいいが、なんか俺にアタリがひどい。そのうち他国ででも自分の伴侶を拾うだろう、うん。そんな中、丁度他国で仕事が舞い降りた。「シェイク、隣国でちょーっとばかし稼いできて」by母上母上の言う事には逆らえない。なんせ後が怖いからな。「さて、フィルいっちょ隣国に行って、ちょっと稼いできますか!」と、俺はやる気をみせたのにさ……。「『ちょっと』ってどのくらい?微妙なニュアンスだよね?ひとっ走り嫁探しに行ってこいって事かもしれないし……?」……ありうる。なんせあの母上だ。「拾ってほしそうな令嬢に出会えば、拾うだけ」「シェイクならそうだよね、いい令嬢に出会えるといいねー」俺は地味にフィルの縁談も考えているんだが?令嬢ってそこらへんに落ちてるのか?否だろう?
「ところで、シェイク様。そろそろ身をかためて跡継ぎのことを考えるべきでは?」「前も言ったがなぁ、俺にはそんな話はツメの先ほどもないんだよ!」「陛下からは何も言われないの?」「しがない伯爵家だからなぁ。これが公爵とかだったら陛下も動くだろうけど――――」「シェイク!縁談話です!陛下よりのお話です。」「はぁ、面倒だなぁ。一応会うけど、釣書にはなんて?」「動物大好き。趣味・乗馬」……うちには動物のイメージしかないのかよ?「姿絵とかないんですか?」「あぁん、ダメダメ。そんなの盛るに決まってるじゃない!「もっと小顔にしろ」とか「もっと美人にしろ」とか何とでもなるからあてになんないわ」「「そういうもんなんですか」」「そういうもんよ」俺もフィルも母さんの迫力に押されてしまった。見合いの日、とうとうやってきた。ずっと来なければよかったのに―――「初めましてシェイク・ハノーバーと申します」「ゴメンなさいねぇ。不愛想な息子で」悪かったな。「こちら、フロガキ侯爵家次女でフローラ様でございます」うん、完全に名前負けだね。姿絵見なくてよかった。「えーっと、ご趣味は乗馬ということでしたが?愛馬とかいるんですか?」馬がかわいそうだな。重量負けしそうだ。「小さい頃より一緒に育った‘アーユ’と言う名の牝馬でございます」「馬だけが好きなの?」「……っそういうわけでは!動物全般好きです」「うちに馬はいないんだよねぇ」「えっ!?」うちを何だと思っているんだ?後日、断りの手紙が来た。母さんにしこたま怒られた。「フィルー。お見合いに来た子さぁ、完全に名前負けしてるんだよ?そして、重量がありそうで、趣味・乗馬って馬がかわいそうって思ったもん」「お見合い中にそんなことを考えてたんですか?というか、陛下が持ってきた縁談ですよ?断られたって評判がたっては、ハノーバー家の評判が悪くなります」「これより悪くなるのか?」「なかなか言いますね」「血縁で跡継ぎでもいいし、なんだったらフィル!お前が跡継げよ~!」「投げやりにならないでください!」
俺はバースに母上に2年以内に結果を出せと言われていると手紙を送っておいた。そんな中、恐れていたことが起こった。王太子の死去―――。まさかうちのフィルには継承権はあるまい。と思っていたのに、王宮から登城するように手紙が来た。「なんなの?今更よね?もう10年位前に1回フィルと面会しているじゃない」その時に継承権を言われたならわかるけど、今更……。当時は王太子の継承で政治揉めたくなかっただろうけどさ。それにしても納得いかない!継承権なら他にもいるでしょうに。フィルじゃなくてもいいでしょう。王宮、相変わらずきらびやかだ。陛下、年取ったな。白髪も増えてダンディーな色気が出ていますな。それはそうと、うちのフィルはあげません!「よく来てくれた。ハノーバー家の者達。面をあげよ」「陛下におかれましては益々ご健勝のようで。この度の王太子様がお隠れになったこと、臣下としても痛み入る次第でございます」「うむ。ついては、そこにおるフィルと申す若者のことで」「フィルにございますか?」クソ狸が今回の主目的を口にしやがった。「フィルは優秀に我が領地で活躍をしております。我が家になくてはならない存在ですね」流石、母上切り込んだ。「ふむ。優秀なのか……」おい、聞いてるのか?『我が家になくてはならない存在』って母上は言ったんだぞ?都合のいいところだけ、トリミングしてるのか?「はい。領地経営もしっかりと学び次期伯爵となる息子の右腕として成長しています」「うーむ。儂はなぁ、フィルに王位継承権を与えようと思ったのだが?」「王ともあろう方が、どこの子ともしれない者に王位継承権を与えてはいけませんよ」「そ、そうか……。では、この話はここだけで。この部屋にいる者、他で話すでない」実質箝口令だな。フィルの身も危なくなるし?
「いい加減、実践で領地経営の勉強です」「「はい、バース先生」」「では、この帳簿に不審な点はありませんか?」俺は数字とにらめっこ。「バース先生、これは横領ではありませんか?」「何?!なんでもない帳簿を見せているはずなんだが……」「うーん、確かにおかしいな。他年度と比較してみよう」フィルは優秀だなぁ。他の年度の帳簿を見ると、どうやら横領しているようだ。……証拠残すなよ。「これは領地を管理している管理人が横領しているようですね。管理人しか帳簿書けませんし。実際に領地に行って確認しますか?」「そうだな。それには母上の許可がいるかも……」「―――いいわよぉ。」鶴の一声と言うんだろうか?地獄耳?遠くの会話を聞いていたようだ。こうして、俺とフィルとバースの3人は領地に行くことになった。「机上では、農地に新しい農具が導入されているはずですね。しかしながら、どうでしょうか?この領地では鍬とかも研いでいるんでしょうか?」「領地の管理人は何をしているんだ?」俺は憤りを感じた。「「横領でしょう?」」俺の想いとは別の事実を2人は告げた。「さて、どうしましょうか?」「管理人は解雇しよう」「それは浅慮というものです。この領地の情報を持っているものを外部に出すということです。あくまでも飼い殺ししなくてはいけません」「「はぁ、なるほどねぇ」」ところで、バースがいない本邸の経営は誰が?という疑問には、母上がするそうです。豊かでない領地、嘘の帳簿。「参ったなぁ。しかしよー。こんなに領地は困窮しているってのに、税金はきちんと納めてるってどこから金を捻出してるんだ?」「金貸しでしょうね。悪徳でないことを祈りましょう」「どうしてここまで領地が荒れたんでしょうか?」「フィル、着眼点がなかなかいいですね。管理人が賭博にでもはまったんでしょう。数年は帳簿を誤魔化せた。しかし、今回フィルが見つけた。彼にしてみれば、見つけられた。ですかね?」「荒れた領地は元通りにできるかな?」「元がどのようなのかはともかくとして、これ以上の困窮は防ぎたいですね。さぁ、管理人に会いましょう」「ようこそ、領地まで足を運んでいただき。最近の悪天候でしょうか?領地が荒れてしまって……」「帳簿によると、最新の農機具を買ったということだが?」「天候には敵いませんよ」「単刀直入に
「面をあげよ。伯爵、その者がそうか?」「はい、フィル・ハノーバーと申します」「優秀だそうだな?」「はい」「其方はのちのち文官を目指しているのか?」「いえ、兄の役に立つことが私の生きがいです」「立ち入った話をする。皆の物さがれ。フィルよ、其方は年齢は?」「16才になりました」「その髪の色や瞳の色は生まれつきか?」「そうです」「ハノーバー家と血のつながりはあるのか?」「??……ありません」「……そうか。立ち入ったことをすまんな」「恐れながら!王たるもの、そのように臣下に軽々しく頭を下げるようなことはいけません」「これ、フィル!」「まぁよい」「それでは、御前失礼します」その日、父上から母上に報告があった。「―――ような会話をしました」「はぁ、やっぱりね。血のつながりだのなんだの言ってきたのね。ホント今更なのよね。だいたい、自分の責任でしょ?そこらの女を勝手に妊娠させてほったらかしにしたんでしょ?ダメダメでしょ」「母上、不敬です」「あら、事実よ」事実でも不敬と言う事実もある。「今、フィルはどうしてるの?」「部屋にいる」俺はフィルの部屋に行った。「フィル!お前、今日俺の弟として陛下に会ったんだってな」「シェイク様は嫌ですか?」「微妙だなぁ。お前みたいな優秀な弟がいたら俺は立場ないもん(笑)」「今の関係がちょうどいいんですね?」「That’s right!」「俺もこの関係がいいです」「だよなぁ。陛下に口出しされたくないよなぁ」「不敬ですよ?」「聞かれてないから、セーフだ」フィルが面白そうに言う。「兄上はまだ婚約をしないのですか?兄上の年齢ですと、結構行き遅れみたいな年齢ですけど?」「フィルー、面白がってんじゃない!それにはわけがあってだなぁ。俺はフィルを拾う前までやたらと野良猫とか拾ってたんだよ」「俺を拾ったのもその一環?」「多分な。俺はどうやら、拾ってほしいと強く思っているものに引き付けられるみたいで、めっちゃ拾ってたんだ。結果、この屋敷には猫とかリスとか動物だらけ。この屋敷の二つ名が‘どうぶつの森’だ」「あー、木も生えてますよね」「リスのためだ。そんなだから、オトシゴロの令嬢は俺を敬遠するわけだな。釣書すらないぞ」「俺の後は拾ってないですよね」「何故だかな」なんでだろう?
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