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第9話

Auteur: 早月輝代
小林由宇を見つけ、彼の同僚たちの前で紙切れを手渡した。私の団地の下にある家庭料理店で夜に会う約束と、報酬の一部を支払う旨を書き添えたものだった。

夜になり、小林は約束通り現れた。誰かに尾行される可能性を考え、予め個室を押さえていた。

会ってすぐ、私は銀行カードを渡した。「400万円入っています。協力してくれたら、成功後にさらに400万円」

小林の目が輝く。カードを手に取り、「で、どうすればいいんです?」

「まず一つ質問に答えて、御社でコスプレを趣味にしている男性社員は?」

頭を掻きながら考え込む小林。「女性は多いんですが、男性は少ないですね。楓木健一さんと、唐沢天助さん、あと森孝一さんくらいかな」

「特に森さんのは凄いですよ。コスプレのクオリティが。メイクの技術なんて女性社員顔負けです」

さらに尋ねた。「その中で既婚者は?」

「森さんですね。年も結構いってますし、私と同じくらいの年の娘さんがいます。奥さんも良い方で、家で勉強を教えたり家事をしたり」

やはり。はなこを殺したのは彼だ。

「分かりました。次は、少しの間、他の都市で過ごしてほしいです。奥さんは連れていかず、出張という形で」

小林はカードを突き返してきた。「なぜですか?嫌です。また何か企んでるんでしょう。仕事もありますし」

「今日はこれくらいにしておきましょう。やっぱり精神障害者ね」

立ち上がろうとする小林を慌てて引き留める。「あなたの命が危ないんです」

「え?」顔色を変え、警戒しながらもゆっくりと椅子に腰を下ろす。

私は小林由宇に全てを打ち明けた。周防成幸の妻であることも。スカートをまくり上げ、まだ消えない紫色の痣を見せる。

「畜生!」小林は拳で机を叩いた。「警察に通報するべきです。こんな非道は」

首を横に振る。「まだです。証拠がないんです。今通報すれば、一網打尽にするどころか逆に警戒されてしまいます。警察が動いている間に私が消される可能性もあるんです。彼の言葉通り......一人殺した人間は、もう一人殺すことも躊躇わないと」

「君の分析は正しいですね」小林が頷く。「それで、どうするんです?」

「あなたにはしばらく姿を消していただきます。私は毒殺したと嘘をつきます。彼は信じないでしょうから、遺体の場所を聞いてくるはずです。その時、『はなこ』の遺体の場所と交換を持ちかけま
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