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第2話

Auteur: 青木
しかし、氷室時雨と小島優、この二つの名前が頭の中をぐるぐると回り続けた。

吐き気を催すほど、気分が悪くなった。

結局、胃の中のものは何も出てこず、えずくだけだった。

鏡に映る充血した自分の目を見ながら、耳鳴りがした。

氷室時雨が帰って来たことにも気づかなかった。

「どうしたんだ?具合が悪いのか?病院へ行くか?」

いつの間にか背後に立っていた氷室時雨を見て、再び吐き気がこみ上げてきた。

見苦しい姿も構わず、私は身を屈めて、やっとのことで苦い胃液を吐き出した。

腰に手を当てていると、鏡に映った氷室時雨が眉をひそめ、一瞬、嫌悪の表情が浮かんだのが見えた。

私の視線と合うと、その嫌悪感は消え、まるで最初からなかったかのようだった。

彼はスーツのジャケットを脱ぎ、袖をまくり上げて、軽く私の背中を叩いた。

「まだ具合が悪いのか?何か悪いものを食べたのか?母さんを呼んで、二、三日泊まってもらおうか?」

答えを知っていたからだろうか、氷室時雨が母のことに触れた時、彼の表情が柔らかくなり、目に期待の色が浮かんだ気がした。

私は顔を洗い、首を横に振った。「大丈夫。母は父と一緒にいるから、余計な心配をかけさせないでおこう」

氷室時雨の目が一瞬曇ったが、数秒後には唇の端を上げた。

「そうだな、疲れさせてもいけないしな」

「そうだ、君にプレゼントを買ったんだ。気に入ってくれるかな」

プレゼントという言葉に、私の心は思わず高鳴った。

友人がオークション会場で撮った写真を見た。

氷室時雨が今夜、2億円の真珠のネックレスを落札したことを知っていた。

写真を見て間もなく、親友からもお祝いのメッセージが届き、私と氷室時雨の夫婦仲を羨ましがっていた。

しかし、氷室時雨が私に贈ったのは、ネックレスではなく、真珠のイヤリングだった。

それはネックレスのおまけだった。

氷室時雨はいつものように、私の耳たぶにイヤリングを当ててみた。

「似合うな。僕の目に狂いはなかった。悠はやっぱり真珠が似合う」

彼の口から出た悠が、私を指しているのか、母を指しているのか、分からなかった。

母のインスタを見て、見覚えのある真珠のネックレスを彼女が着けているのを見るまで。

ようやく理解した。氷室時雨の言うユウは、私の母のことだったのだ。

結局、最初から最後まで、彼は小島優を想っていただけで、月城悠である私ではなかったのだ。
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