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5話 文化祭本番

last update Date de publication: 2025-10-13 08:00:04

 クラスで何の露店《ろてん》を出すかを決めている。中々、話し合う時間を取れなかった私達は、時間を取り戻すように会話を広げていった。

 班は6グループに分けられている。私達は皆の意見を纏《まと》めて、結局チョコバナナに決めていた。自分の意見が通らなかった事は残念だが、コストと時間を考えると一番安牌《あんぱい》なのかなとも思う。

 定番のチョコバナナを定時してきた班は私達以外に1グループが提出《ていしゅつ》している。意見が被《かぶ》った事もあり、一番有利《ゆうり》なポジションにいた。

 後の班は、リンゴ飴、イカ焼き、クレープ、焼きそばが出ている。祭りと言えばたこ焼きだが、誰も出していない。その事実を知った美月《みつき》はショックを隠せない様子だった。

 もう一つの定番、焼きそばが出ている。この意見を出した班は男子の意見を採用している様子だった。個人的にはオススメの逸品《いっぴん》だが、結局食べ歩きを考えると難しいだろう。

 「各班の提案の中で候補を絞《しぼ》ろうと思う。今回は食べ歩きがメインだから、焼きそばは難しいと思うの。私の意見に賛成《さんせい》の人は挙手して欲しい。揉《も》めない為にも、顔を伏《ふ》せてね」

 学級委員のメグは皆にそう伝えると、食べ歩きにいくい焼きそばの意見を集計《しゅうけい》していく。皆は素直に彼女の言う事を聞き、机に顔を押し付けた。

 結果は想像通りだった。焼きそばに対しての集計結果は反対が多かった。焼きそばを推していた班は残念そうな顔をしている。多数決で決まった事を受け入れると、焼きそばは除外《じょがい》されていった。

「……美味しいのに」

 美月はたこ焼きの次に好きな焼きそばが除外された事を悔《く》やんでいる。私はそんな彼女の横顔を観察しながら、ぼんやりしていた。視線に気づくだろうと思っていたが、気づきもしない。

 遊莉《ゆうり》だったら、この視線に気づくのかもしれないーー

 そんなこんなで話は続き意見を絞《しぼ》っていく。その中で一番の最有力候補だったチョコバナナが採用される結果となった。

 私の班と同じ意見を出していたもう一つの班、その中に遊莉《ゆうり》も含まれている。私は内心喜びながら、未来に期待を寄せた。

 何故なら、二つの班が中心となり露店《ろてん》をする事になったからだ。材料費やパフォーマンスの事で話す機会が増えていく。それは彼女と同じ時間を共有《きょうゆう》する事を意味する。

「遊莉と一緒にいる時間が増えるね。よかったね、美穂《みほ》」

「へっ」

「ふふふ。顔が緩《ゆる》んでるよ」

 自分の気持ちを隠せているはずだったが、人間観察が趣味の日雪《ひゆき》には叶《かな》わない。私が遊莉《ゆうり》に対して抱いている気持ちに気づいているようだ。

 内心焦っているが、表面に出さないように取り繕《つくろ》っていく。これで誤魔化《ごまか》せる訳じゃない。それでもここで肯定《こうてい》すれば、日雪《ひゆき》の思うつぼな気がした。

「茶化《ちゃか》さないでよ、日雪」

「美穂を見ていると、からかいたくなるのよ」

「……もう」

 コソコソと話していた私達に注がれている視線があった。気持ちを通じ合わせた遊莉は仲良さそうに話している私達に複雑な感情を抱いている。

 遊莉以外にトキメク事なんてある訳ないのにーー

 「Cクラスは露店でチョコバナナをする事になりました。二つの班は協力して進めていく事。何か疑問がある場合は私か先生に言ってね」

 メグの言葉が教室中に響いた。

 □□

 自分に与えられた役割をこなしていくとあっと言う間に時は流れていく。勉強と文化祭の準備、そして部活。同じ事の繰り返しのように見えても、作業内容は変化している。そうやって形のなかったものを、纏《まと》めて一つの結果へと繋げようとしている。

 私は部活に入っている事で露店にいる時間が極端《きょくたん》に短い。文化祭へ向けて練習してきた曲達を披露《ひろう》するからだった。

 彼女は帰宅部だ。私とは違って露店を中心に動く事が出来る。他の催《もよお》し物もあるが、それでも遊莉には余裕があった。

「じゃあ私達は演奏会の準備をするから、帰宅部組はよろしくね」

「任せて」

 日雪がそう伝えると、帰宅部代表として遊莉《ゆうり》が返事をした。彼女がいれば何か問題が起きても対処出来ると踏んだ日雪《ひゆき》は安心するように微笑むと、私を連れて準備へと向かった。

「遊莉がいるから安心だわ」

「そうだね」

「私達は自分の演奏に集中しよう。きっと成功させる」

「勿論《もちろん》だよ」

 私達は決意を固め、部室へ入っていく。殆《ほとん》どの部員が揃《そろ》っていた。最後に部室に入ったのは私達の後に入室した実崎《さんざき》先輩だった。

「全員揃《そろ》ったね。皆に楽しんで貰う為に精一杯頑張ろう」

 部長の言葉に私達は大きな声で「はい」と意気込みを見せていく。人前で演奏するのは緊張するが、思い切り楽しもう。

 それがきっと一番いい演奏になるはずだからーー

 ゾロゾロと自分の楽器と譜面台ふ《ふめんだい》を持ち、部室から体育館へと大名行列のように行進していく。程よい緊張感の中で各々が沢山の想いを抱きながら、舞台裏《ぶたいうら》へと滑《すべ》り込んだ。

 演奏の時間に合わせて時間を取れた生徒達が楽しそうに待っている。文化祭は一般の方も入れるようにオープンにしていた。前の四列は客席となっていて、保護者や子供達、年配の人で溢《あふ》れかえっている。

 想像よりも観客が多い事に驚きながら、舞台裏から隠れるように覗《のぞ》いている。そんな私の背中をちょいちょいと刺激を与えた。

「今は演奏に集中しよう。緊張するかもだけど、私達がサポートするから安心して」

「実崎《さんざき》先輩……」

 こういう時に頼りになる先輩がいるのは心強い。私は両手で自分の顔を挟むと、切り替える為に呼吸を整えていった。

 今頃、遊莉《ゆうり》も露店を頑張っているだろう。そう思うとなんだか勇気が溢《あふ》れてくる。

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