しかし悦子の顔のしわは深く、長い苦労を重ねてきたようで、実際の年齢よりも年上に見える。「当時、子どもを産んだあとすぐ仕事に出なきゃならなくて、面倒を見る余裕がなかったの。だから奏が生まれてからは、和夫の母親が面倒を見ていたのよ」悦子は当時のことを思い出しながら話す。「少しお金が貯まってから和夫のところへ行って、子どもに会わせてほしいって頼んだ。でも彼は会わせてくれなかった。そのうち連絡先まで変えてしまって、どうしても居場所が分からなくなったの。それでも名前だけは知っていたから」「その和夫って人、本当に最低ですね」とわこは今や母親でもある。悦子の話を聞き、胸の中に怒りがこみ上げる。「そんな人、死んで当然です」悦子の視線がわずかに揺れる。唇が少し動き、とわこの言葉に続こうとしたように見えるが、結局なにも言葉にしない。空気が一瞬で気まずくなる。奏はとわこを見る。「何かほかにも食べるか」とわこはフォークで皿のブロッコリーを端へ寄せる。「これで十分よ。おばさんにほかに食べたいものがないか聞いてあげて」奏は黙ったまま。悦子が慌てて口を開く。「私はこれで十分よ」「遠慮しないでください。ステーキはあまりお好きじゃないみたいですね。メニューにはほかにも主食がありますから、食べたいものがあれば注文してください」とわこはメニューを悦子の前に差し出す。とわこがここまで気遣うのを見て、悦子は笑顔でメニューを受け取り、チャーハンを一皿注文する。「やっぱりこちらの味に慣れているんですね」とわこは笑う。「ええ」悦子はメニューをテーブルに置き、食べ物の話を広げる気はなさそうだ。「おばさん、これからの予定はどうされるんですか。B国ではお仕事をされているんですか」とわこはもう少し彼女の考えを知りたくなる。悦子は首を横に振る。「生活はほとんど、夫が残してくれた貯金に頼っているの」「じゃあこれからはアメリカに戻るつもりですか?それともこちらに残るんですか?」とわこは続けて尋ねる。「それは……もちろんこちらに残りたいわ。夫ももう亡くなってしまったし」「ご主人との間にお子さんはいらっしゃるんですか?」「いないの。夫と私の間には子どもはいない。でも夫には前妻との娘が一人いるわ。その子はもう結婚している」「そうなんですね。もし国内に残りたい
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