こうして加奈子と莉奈のやりとりは、ますます頻繁になっていった。数日前、莉奈が言った。「夏休みに帰国して大会に出るの。もうエントリーが始まってるんだけど、どうしてもサイトに入れなくて……代わりに申し込みを手伝ってくれない?」加奈子は疑うこともなく答えた。「あいにく私のパソコン、昨日壊れちゃって修理に出してるのよ」「そう……じゃあお兄ちゃんに頼むわ」と莉奈。結婚式で莉奈に面子を立ててもらったばかりだし、せっかく役に立てる機会を逃したくない加奈子は、慌てて言った。「大丈夫よ、陽翔のパソコンを使えばいいわ。ただの申し込みでしょ?」そして彼女は書斎へ行き、陽翔のパソコンを使って莉奈の代わりにエントリーを済ませた。だが、その後に起こったことは、今思い出すのも恐ろしい。陽翔家の会社のファイアウォールが破られ、数多くの機密文書が流出、大きな損失を被ったのだ。会社はすぐに警察へ通報した。技術者と警察が調査を進めた結果、問題の痕跡は陽翔のパソコンにあった。陽翔は断固否認した。「俺は陽翔家の人だ。会社に損害を与えるなんてあり得ない!」その時、加奈子の頭に、莉奈の「大会の申し込み」の件がよぎり、心臓が大きく跳ねた。だがすぐに、「莉奈が私を騙すはずない」と思い直した。ところが、技術者が使用履歴を調べると、アクセス先はその大会サイトに絞り込まれた。サイトには大量のトロイの木馬が仕込まれており、大会自体も存在しない架空のものだった。加奈子の顔は真っ青になり、冷や汗が止まらなかった。陽翔は「自分じゃない」と言い張り、使用の有無を確かめるため召使を呼んで尋ねた。すると召使は「その時間帯に加奈子が書斎に入っていた」と証言したのだ。全員の視線が一斉に加奈子に向けられ、その怯えた様子からも証言が真実だと分かった。陽翔の父の目は、まるで彼女を食い殺すかのような憤怒で燃えていた。恐怖に駆られた加奈子は、観念して全てを打ち明けた。幸いチャット記録が残っており、彼女が莉奈に騙された形跡はあった。その場で加奈子は慌ててチャットアプリを開き、莉奈に電話をかけたが、すでにブロックされていた。加奈子は緊張していた。彼女と陽翔家の人々は、天藤グループへ説明を求めに向かった。対応したのは広和だった。陽翔家の追及に対し
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