若子は十日間の入院を経て、ようやく退院した。 お腹の子はすでに五カ月目。 彼女のお腹は大きくなり、動くのもひと苦労だった。 少し歩くだけで疲れてしまい、ほとんどの時間をベッドで過ごすしかない。 しかし、西也はそんな彼女を細やかに気遣い、食事も飲み物も全て自分で運び、まるで彼女に何一つさせまいとするかのようだった。 果てには、風呂まで手伝おうとする始末。 だが、さすがにそれは若子が拒否し、できる限り自分で入ることにした。 どうしても無理なときは、メイドを頼ることにしている。 西也も、そこは無理強いしなかった。 夕食を終え、若子はベッドに腰掛けながら、ふと祖母に電話をかけたくなった。 考えてみれば、しばらく連絡を取っていなかった。 修と離婚した後も、藤沢家の人たちは「離婚しても、藤沢家の人間だ」と言ってくれた。 だが、現実には彼女は自然と藤沢家と距離を置くようになった。 それは意図したものではなく、気づけばそうなっていたのだった。 電話をかけると、出たのは光莉だった。 「もしもし」 「お母さん?」若子はすぐに彼女の声を聞き分けた。 「どうして母さんが出るんですか?」 「若子、どうかしたの?」 「おばあさんと話したいんですけど......どうして母さんお母さんが携帯を持っているんですか?」 「ああ、今おばあさんのところにいるの。でも、ちょっと都合が悪くてね」 「おばあさん、具合が悪いんですか?」 「......少しね。あんたも退院したことだし、そろそろ話しておくわ」 光莉は、華の病状を伝えた。 若子は、言葉を失った。 心がぎゅっと締めつけられる。 そんな彼女の様子を見て、西也がすぐに駆け寄った。 「若子、どうした?」 「おばあさんが......病気になったの......会いに行かないと」 「病気って......何の?」 「認知症」 若子は涙を拭いながら答えた。 「すぐに行かなきゃ......」 そう言って、彼女は布団をはねのけて立ち上がろうとする。 「若子、落ち着いて」 西也はすぐに彼女の腰を支えた。 「止めないで。私は行かなきゃ」 「止めてるわけじゃない」 西也は静かに言う。 「車を出すから、一緒に行こう」 彼が
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