結婚七年目、桜井竜一がバーで堂々と会社の秘書とキスをするのを目撃した。私がその場を去ろうとしたとき、彼から電話がかかってきた。「ただの友達同士の冗談だよ。そんなに顔をするなよ」電話の向こうでは、彼の仲間たちが私をからかう声が聞こえてきた。今夜もまたやきもちを焼いて、『別れたくない』と泣きついて乞うだろうと言っていた。電話を切る直前に、竜一に私が謝らない限り、彼は家には帰らないと言った。しかし、今回は私は気にしていなかった。彼が帰るかどうか、離婚するかどうか、もうどうでもよかった。数分後、私はSNSに投稿した。「自分を永遠に愛し、誰に対しても自由を許す」個室を開けた瞬間、竜一と会社の秘書が皆に冷やかされてキスをしていた。周りは拍手をしながら、「もっとキスしろ!もっと!」と叫んでいた。十秒ほど待ってから、目の前の二人がようやくゆっくりとお互いから離れた。遠くからでも、私の法律上の夫である彼が口元に笑みを浮かべたのが見えた。そして彼の向かいに座る渡辺真希は恥ずかしそうな表情を浮かべていた。彼女は隣で冷やかしてくる友人に軽く手を振りながら言った。「何言ってるの?桜井さんには奥さんがいるんだから、ゲームに負けてない限りキスなんてしないわよ」そう言いながら、真希はちらりと竜一の方を振り返り、彼がその言葉を聞いて平然としている様子を見て安堵の息を吐いた。そして振り返ったとき、ようやくドア口に立っている私に気づいた。「奥さん、いつ来たの?」真希は私の姿に驚いて目を見開いた。きっと先ほど起きた光景を思い出して混乱しているのだろう。彼女の顔に一瞬だけ動揺が走った。テーブルの下で真希は竜一の袖を引いた。彼女は私がその小さな動きが見えないとでも思ったのだろうが、テーブルは透けていた。真希と竜一のやりとりは全てお見通しだった。「なんでここに来た?」さっきまで騒いでいた連中が互いに顔を見合わせていた。竜一は眉間に皺を寄せ、それが彼のイライラの表れだと知っていた。私が答えずにいると、竜一はテーブルを越えて私の前に立った。「答えろ!お前に聞いてるんだぞ!」竜一の肩越しに、真希の瞳の奥にはには、まだ挑むような光が宿っていた。確かに、会社の中では誰もが知っている。これまでずっと私が追いか
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