どうしていつもこうなるのだろう。彼女が一番惨めで、みっともない姿をさらす時は、決まって彼に見られてしまう。まるで彼の庇護の下にいなければ、人間らしく生きられないかのように。翔太は、さっとスーツの上着を脱ぎ、そのまま彼女の肩に掛けた。男の身から漂うウッド系の香水の香りは、上品で高価なものだったが、美羽には顔を上げられないほどの重さを感じさせた。幸い、翔太は相変わらず高みから見下ろす態度のままで、彼女に目もくれず、佐藤社長の方へ歩いて行った。佐藤社長は悪態をつきながら地面から起き上がろうとした。「誰だ?!俺様のいいところに邪魔しやがって!死にたいのか……あっ!」恭介は足を上げ、起き上がろうとするその身体を再び地面に叩きつけた。穏やかそうに笑いながら言った。「お前、誰の前で『俺様』なんて名乗ってるんだ?ん?佐藤志徳(さとう しとく)」佐藤社長は必死にもがき、顔を上げた。恭介の顔を見るなり、さっきまで土気色だった顔が一瞬で真っ白になった。「し、紫藤様……」翔太は恭介の隣に歩み寄り、タバコに火をつけた。白いシャツを着て、裾をスラックスに入れ、広い肩幅と細い腰、長い脚はまるで逆立ちしたスナイパーライフルのように引き締まっている。片手をポケットに入れ、もう片方の手でタバコを挟み、長い指先でタバコを軽く弾くと、パラパラと灰が佐藤社長の顔に落ちた。佐藤社長も彼を知っていたので、ますます言葉がもつれた。「よ……夜月社長、ど、どうしてここに……」恭介は革靴のつま先で佐藤社長の頬を軽く叩き、にやりと笑った。「俺の縄張りで、こいつの女に手を出しただろ?お前、なんで彼がここにいると思う?」佐藤社長は血の気を失った顔で慌てて弁解した。「……ち、ちがう!夜月社長!誤解です!わざとじゃないんだ!あの北村美雲だ!あいつが!うちの会社と彼女の会社がちょうど契約したばかりで、俺が女を用意しろと言ったら、あいつが『普通の遊びじゃつまらない』って言って、いい女を紹介するって。それが、真田秘書だった……あいつが言うには、真田秘書はもう碧雲グループを辞めて、碧雲の人間じゃないし、夜月社長が彼女を干すって言ってたから、俺がどう遊んでも大丈夫だって……俺はてっきり本当だと思ったんです!彼女が夜月社長の女だって知ってたら、死んでも手を出
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