俺――佐藤秀中(さとう ひでなか)は、システムの力を借りて、婚約者の由川桜子(ゆかわ さくらこ)が経営する会社を上場へと導いた。ところが上場当日、桜子は父を死に追いやった仇、田中圭吾(たなか けいご)との婚約を発表した。桜子を支えるためにすべてを懸けてきた俺は、システムも、彼女の約束も、何もかも失った。「秀中、私が会社を引き継いだら、あなたと一緒になるわ」「この会社のCEOは、あなたに任せる」そう約束していたのに、権力を手にした桜子は、SNSで圭吾との関係を公表した。――上場記念パーティーで、桜子は圭吾の腕に手を添え、俺の前までやって来た。桜子は俺を見て言った。「秀中、田中家の圭吾さんと婚約したの。式は5月21日だから、忘れずに来てね」俺は無表情のまま彼女を見返した。「田中家が父を死に追いやったことは知っているだろう。桜子、いったいどういうつもりだ?」俺は二人を正面から見据えた。すると、圭吾の秘書がしゃしゃり出てきた。「佐藤社長、今日は由川キャピタルの上場と婚約を祝うめでたい日です。酔っているなら、早めにお帰りください。今の発言は酔っぱらいの戯言として、聞かなかったことにしますから」俺は冷ややかに彼を見たまま、何も言わなかった。その視線を受けた圭吾の秘書は、たちまち言葉を失った。「桜子、俺は君と古参社員たちの関係を壊したくない。歓迎されないのなら、場の空気を乱す前に帰るよ」そう言って、圭吾は立ち去ろうとした。桜子は俺を睨みつけた。「秀中、自分がいなければ会社が回らないとでも思ってるの?ここは由川キャピタル、私の会社よ。あなたの好きにはさせないから」その怒声に、周囲の社員たちが一斉にこちらを振り向いた。そこへ、俺の秘書である高橋直美(たかはし なおみ)が歩み寄り、隣に立った。「社長、佐藤社長はあなたと会社のために海外で命を懸けてきたんです。たった一人で由川キャピタルを立て直したようなものです。さんざん働かせた挙げ句、用済みになったからと切り捨てるなんて、あんまりじゃないですか」桜子は直美を見て、嘲るように笑った。「あなたに何が分かるの?秀中のそばにいるだけの秘書が、海外の大学を出たくらいで偉そうにしないで」そう言うと、桜子は手を振って警備員を呼び寄せた。「この女を追い出して
Read more