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婚約者を社長に押し上げたその日、彼女は私を解雇した
婚約者を社長に押し上げたその日、彼女は私を解雇した
Auteur: ホクト・シス

第1話

Auteur: ホクト・シス
俺――佐藤秀中(さとう ひでなか)は、システムの力を借りて、婚約者の由川桜子(ゆかわ さくらこ)が経営する会社を上場へと導いた。

ところが上場当日、桜子は父を死に追いやった仇、田中圭吾(たなか けいご)との婚約を発表した。

桜子を支えるためにすべてを懸けてきた俺は、システムも、彼女の約束も、何もかも失った。

「秀中、私が会社を引き継いだら、あなたと一緒になるわ」

「この会社のCEOは、あなたに任せる」

そう約束していたのに、権力を手にした桜子は、SNSで圭吾との関係を公表した。

――

上場記念パーティーで、桜子は圭吾の腕に手を添え、俺の前までやって来た。

桜子は俺を見て言った。「秀中、田中家の圭吾さんと婚約したの。式は5月21日だから、忘れずに来てね」

俺は無表情のまま彼女を見返した。「田中家が父を死に追いやったことは知っているだろう。桜子、いったいどういうつもりだ?」

俺は二人を正面から見据えた。

すると、圭吾の秘書がしゃしゃり出てきた。

「佐藤社長、今日は由川キャピタルの上場と婚約を祝うめでたい日です。酔っているなら、早めにお帰りください。今の発言は酔っぱらいの戯言として、聞かなかったことにしますから」

俺は冷ややかに彼を見たまま、何も言わなかった。

その視線を受けた圭吾の秘書は、たちまち言葉を失った。

「桜子、俺は君と古参社員たちの関係を壊したくない。歓迎されないのなら、場の空気を乱す前に帰るよ」

そう言って、圭吾は立ち去ろうとした。

桜子は俺を睨みつけた。「秀中、自分がいなければ会社が回らないとでも思ってるの?ここは由川キャピタル、私の会社よ。あなたの好きにはさせないから」

その怒声に、周囲の社員たちが一斉にこちらを振り向いた。

そこへ、俺の秘書である高橋直美(たかはし なおみ)が歩み寄り、隣に立った。

「社長、佐藤社長はあなたと会社のために海外で命を懸けてきたんです。たった一人で由川キャピタルを立て直したようなものです。さんざん働かせた挙げ句、用済みになったからと切り捨てるなんて、あんまりじゃないですか」

桜子は直美を見て、嘲るように笑った。

「あなたに何が分かるの?秀中のそばにいるだけの秘書が、海外の大学を出たくらいで偉そうにしないで」

そう言うと、桜子は手を振って警備員を呼び寄せた。

「この女を追い出して。明日からは江城市にいられないようにして」

俺が冷ややかな視線を向けると、二人の警備員は足を止め、その場に立ち尽くした。

「秀中、体調も悪いし、最近は疲れているでしょう。今日はもう余計なことを言わず、家で休んで。しばらくしたら、あなたの後任には圭吾の部下を据えるから」

桜子は俺に最後通告を突きつけた。

もう、彼女に俺は必要ないのだ。

俺は小さく笑い、電子社員証を差し出した。

周囲が呆然と見守るなか、俺は堂々と会場を後にした。

「秀中さんと桜子さんって、昔は恋人同然だったらしいよ」

「由川キャピタルが立ち直ったのは、半分以上が佐藤社長の功績だろう。用が済んだ途端に切り捨てるなんてな」

「秀中さん、きっとつらいだろうね」

――

何年も前、父は田中グループの工場で技術者として働いていた。

ところが会社側の管理不備で有害な重金属に曝露し、がんを患った。

田中グループは補償を拒んだばかりか、逆に俺たちが会社を陥れようとしたとして訴えてきた。

俺は多額の借金を抱えた。それでも父を救えず、逃げ道を失っていた。

そんな時、俺の前にシステムが現れた。

システムは、桜子を一人前の経営者へと押し上げれば、20億円を超える資産が手に入ると告げた。

俺は迷うことなく、その条件を受け入れた。

桜子の父親の葬儀で、継母に締め出され、雨に打たれていた彼女へ手を差し伸べた。

持ち前の話術とシステムから与えられた能力を武器に、俺は部門長まで上り詰めた。

拉致され、コンクリート詰めにされかけていた桜子を救い出したこともある。涙と血で汚れた彼女の顔には、それでも強い意志が宿っていた。

桜子は震える声で言った。今の自分には何も返せない。それでもいつか、俺が受け取るべきものをすべて与えると。

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