Semua Bab バツイチだけど、嫁ぎ先が超名門だった件: Bab 41 - Bab 50

100 Bab

第41話

成田からまたメッセージが届いた。【麻美が入学した学校のことを調べたんですが、年間の学費がなんと800万円もするんです。それに生活費やその他の費用を加えると、どんなに節約しても年間で1200万円はかかります。麻美の母親に、その金額を負担できるとは思えません。気になりませんか?その留学資金、一体誰が払ってるのかって】ちょうどその疑問を口にしようとした瞬間、さらにメッセージが届いた。【たまたまなんですけど、志穂についてもう少し調べようと思ってたら、テクノマックス株式会社の公式サイトで気になる記事を見つけたんです】数秒後、リンクが送られてきた。それは、テクノマックス株式会社が経済的に困窮している学生たちを支援するという慈善活動についての投稿だった。こういう活動は、企業イメージの向上や他の目的のために、よく行われているものだ。でも、その「海外留学支援リスト」の中に、麻美の名前を見つけてしまった。成田:【もう一度冷静に考えてみてほしい。あなたと志穂、本当に全くの他人だったのか?僕の考えすぎかもしれないけど、半年前の追突事故から今日までの出来事を振り返ると......志穂は、あなたに強い憎しみを抱いてるようにしか思えないんです。どう考えても、麻美が近藤の指示やお金で動いていたとは思えません。むしろ、志穂から直接指示を受けていた可能性の方が高い。 あなたが出産してたった一ヶ月後に退職し、カナダに留学した。そんな出来事が、ただの偶然で済むと思いますか? 留学申請は、最低でも半年前から準備が必要なんです。前にも話したけど、志穂が付き合ってきた男性たちは、近藤よりもはるかに優秀で、バックグラウンドも完璧だった。彼女は、ただのお嬢様なんかじゃない。豪門の中で育ってきた人間です。 僕が調べた限りでは、彼女と近藤の恋愛経緯を見ても、彼女は見た目こそ甘えん坊なか弱いお嬢様に見えるけど、実際は心理操作のプロです。 前に彼女が近藤と電話してたときもそうでした。運命に翻弄されて、心を痛めながら別れを選んだように見せかけてたけど、僕の見方では、あれは彼女が近藤にプレッシャーをかけてたんです。つまり、『あなたという厄介な存在を、早く片付けろ』って、遠回しに命じてたんですよ。そして成田は、こんなふうに問いかけてきた。【志穂のやり方、ある
Baca selengkapnya

第42話

その日の午前中、私は資産運用マネージャーと会って、満期を迎えた投資を自動的に継続するかどうかについて相談していた。3億円、裕福な人々と比べれば、この金額は多くはないかもしれないが、多少なりとも実績にはなる。マネージャーはニコニコしながら契約の更新書類を準備してくれた。商談が決まれば、お互いにちょっとしたお世辞を交わすのもお決まりだ。マネージャーは書類を片付けながら、ふと思い出したように言った。「赤ちゃん、もう百日過ぎたんじゃないですか?」私は軽くうなずいた。否定しなかったのは、赤ちゃんを失ったことを、あまり親しくもない相手に話す気になれなかったから。それに、きっと彼女は気まずそうに、哀れむような目で私を見るだろう。その視線に耐える自信もなかった。私は、傷を人前にさらけ出して同情を買うような性格じゃない。でも、そのときふと気づいた。私と彼女は今まで電話でやり取りするだけで、LINEすら交換していなかった。それなら、妊娠や出産のこと、しかも、その時期まで、彼女はどうして知っているの?気づいた瞬間、思わず聞いてしまった。「ねぇ、どうして私が赤ちゃんを産んだって知ってるの?」マネージャーはにこにこしながら、特に気にする様子もなく答えた。「年始に、ご主人さんがうちの同僚から、保険を2つ購入されたんです。そのとき、『妻が妊娠中で』って話されてて。それで時期的に、もう百日くらいかなって思って」「保険......?」頭が一瞬で混乱した。いろんな考えがぐるぐるし始めて、特にここ2年ほど話題になっていた、あの妻を殺して保険金を騙し取ろうとした事件。夫が妻の莫大な財産を手に入れるため、高額な保険をかけたあと、タイへ旅行に連れて行き、妊娠中の妻を自らの手で崖から突き落としたという話だ「えっ、このこと......ご主人から聞いてなかったんですか?」マネージャーが意外そうに首をかしげた。私は平然を装って、笑顔で返した。「うちは保険、いろいろ入ってるから、どれのことか正直ピンとこなくて」「へぇ、リスク管理がしっかりしてるご夫婦なんですね。今どき、そんなにちゃんと備えてる人、少ないですよ。多くの人は『保険なんて、あってもなくても変わらない』って思ってますから」マネージャーは話を続けた。「お二人それぞれに人身傷害
Baca selengkapnya

第43話

「ふん、保険の受取人が全部私の名前になってる?一見すると、まるで私のためって感じだけどさ。でもさ、私が死んだら、その保険金になんの意味があるのよ?私には家族もいないし、親も兄弟もいない。唯一の身内みたいなのは、あいつだけだったんだから。つまりさ、そのお金も結局は全部あいつのものになるってことじゃない!」そんな可能性を想像しただけで、背筋がゾクッとして、体が震えて止まらなかった。涙がどんどん溢れてきて、どうにか歯を食いしばって耐えた。「理奈、明って本当に最低なヤツよ!子どもを殺しただけじゃなく、私まで殺そうとしてるんだから!」理奈は深く息を吸って、まずはどこか座れる場所を探してって言ってくれた。でも、落ち着くなんてとても無理だった。「とにかく冷静になって。いい?よく聞いて。私たちはまだ、明がなんでそんな大金の保険をあなたに黙ってかけたのか、その本当の狙いをつかめてないの。証拠がないと、法的にはどうにもならないでしょ?法律の世界では証拠がすべてなの。それに、今あなた一人で神浜にいるんでしょ?感情だけで突っかかっていったら、傷つくのはあなただけよ。あのクズ男、もうまともじゃないんだから。もし面と向かった時、あいつが本気で何かしてきたらどうするの?だから真帆、今は絶対に冷静でいなきゃ。どれだけ気持ち悪くて、どんなに憎くても、今はうまく演じて、切り抜けるしかないの。私、これからすぐに江東に向かうから」理奈の言ってることは全部正しかった。今こそ、冷静にならなきゃ。「ね、大丈夫だから。今いる場所を教えて。信頼できる人をすぐそっちに向かわせるから」 彼女の声には、はっきりとした不安と心配がにじんでいた。 「今のあなたを、一人きりにはしておけない」「うん」私は今にも泣き出しそうな声で、そう答えた。それから電話を切って、自分の現在地を理奈に位置情報で送った。足に力が入らず、フラフラと近くのカフェに入り、どうにか椅子に座り込んだ。きっと、私は今すごく情けなく見えてるだろう。あんな最低な男の本性を知っても、面と向かって立ち向かうことさえできないなんて。ただただ、悔しかった。もっと早く、あいつのあの毒ヘビみたいな性格を見抜けていれば!あの人間離れした冷たさに、もっと早く気づいていれば、私の赤ちゃんはあんなことには
Baca selengkapnya

第44話

理奈が迎えに呼んでくれたのは成田だと思い込んでた。まさか、来たのが涼介だったなんて、想像すらしてなかった。涼介の整った顔に浮かんだ険しい表情と、わずかに寄せられた眉を見た瞬間、私は反射的に背中を向けて、慌てて涙を拭いた。できることなら、そのままどこかに隠れてしまいたかった。こんな情けない姿、涼介には見せたくなかった。自分のバカさ加減と、物事を見抜けなかったせいでこんな結果になったって思われるのが、悔しくてたまらなかった。でも、涙は止まってくれなかった。頬はずぶ濡れで、拭いても拭いても次から次へとあふれてくる。今日、化粧してこなかったのがせめてもの救い。思いきり顔を両手でぐしゃぐしゃにしても、パンダ顔にならないのはありがたい。涼介は私がハンカチを持ってないのに気づいて、静かに言った。「もう、泣かなくていい」鼻をすすりながら、これまで涼介から浴びてきた冷たくて皮肉っぽい言葉たちを思い出した。でも今回の「泣かなくていい」は、どこか戸惑いと苛立ちが混ざっているように聞こえた。私は意地になって、つい言い返してしまった。「余計なお世話よ。私たち、そんなに仲良くないでしょ」どうせまた皮肉でも返してくると思ったのに、彼は黙って私を見つめるだけだった。私が予想していたような言葉は一つも返ってこなくて、沈黙だけがその場を支配した。目に涙をためたまま、私はぼんやりと彼を見上げた。「なんで、まだここにいるの?」涼介は小さくため息をつくと、体をかがめて、チェック柄のハンカチを私の手に無理やり押し込んできた。口調は相変わらず淡々としていて、少し冷たい。「理奈が、俺に迎えに行けって言ったんだ」私は鼻をすすりながら答える。「大丈夫。一人で平気。あなたなんて、いなくてもいい」でも、言い終わる前に、彼にぴしゃりと遮られた。めずらしく強い口調だった。「人に頼まれたことは、ちゃんと果たす。立って。送っていく」送るって、どこに?「帰らない」明のあのクソ野郎の顔なんか、もう絶対見たくない!「じゃあ、別の場所に連れてく。こんなとこで泣いてたら、みっともないだろ」「私のことなんかどうでもいいくせに!」怒りが込み上げてくる。「みっともないって何?辛くて泣いてるだけなのに、座って泣く場所すらないの?」涼介はまた眉をひそめて、真剣な目で
Baca selengkapnya

第45話

「さっき、どうやって来たの?全然道に慣れてない感じだったし、車ガックンガックンしてたよね。あんな運転でよく平気でここまで来れたね。けっこう肝据わってるじゃん?」「運転手がいるんだ」「えっ、じゃあその運転手はどこ行ったの?」涼介は横目で私をちらっと見て、淡々と答えた。「お前のその顔、他人には見せないほうが将来的にいいと思ってね。あとで気まずくならないようにっていう、俺なりの配慮」私は思わず歯ぎしりして言った。「その配慮、ありがたく受け取っとくべきなのかしら?」「いや、別に。必要ないよ」私は彼をじっと見つめながら、わざと微笑んでみせた。「ねえ、涼介。今、彼女とかいないの?」涼介は一瞬きょとんとした顔をしたけど、すぐにいつもの冷静なトーンで「そうだ」と答えた。私はにっこりしながら聞いた。「えっ、こんなに長いことずっとフリーだったの?」涼介の眉がほんの少し寄って、なにかを思い出してるような表情をした。ほんの一瞬だけど、ふっと物寂しげな顔が見えた気がした。もしかして、付き合ってたけどフラれた?それとも、今も引きずってる感じ?やば、ちょっと地雷踏んだかも。別に深い意味なんかなくて、ただちょっと皮肉っぽく言いたかっただけなのに。でもその直後、涼介の表情はもう元どおりで、落ち着いた声で言った。「付き合ったことはない」「へー。こんなイケメンで、家柄もよくて、学歴も完璧なエリートが、恋愛経験ゼロ?なんか信じられないな」私はさらに調子に乗って言った。「もしかして、その原因ってあなたの毒舌なんじゃない?涼介先輩さ、もうちょっと女の子には柔らかくて、礼儀正しく話したほうがいいと思うよ?じゃないと、いっそ黙ってたほうがマシかも。今のままだと、『完璧な高嶺の花系イケメン天才』ってイメージが崩れ落ちて、孤独まっしぐらだよ?」それを聞いた涼介は、冷たい笑みを浮かべた。私は内心、少しくらいは私の言葉が刺さったかと思ってた。でも、全然そんなことなかった。あいつは、私の皮肉なんて何とも思ってない様子で、逆にもっとストレートに、私のプライドを踏みにじってきた。「誰もがお前みたいに、事実を突きつけられるのが耐えられないわけじゃない。自分の失敗や愚かさを認めようとしないのは、お前のほうだ」私は思わず、「つまり何、毒舌
Baca selengkapnya

第46話

涼介の言葉を聞いた瞬間、私は思わず考え込んでしまった。確かに、彼の言っていることは正しい。私が彼の言葉を棘のように感じたのは、そのひとつひとつがまさに私の痛いところを突いていたからだ。自分でも見ないふりをしていた、脆くて弱い部分を容赦なくえぐられたような気がした。ここ最近の私は、無意識のうちに自分の愚かさから目を背けて、すべてを明の冷たさや残酷さのせいにしてきた。でも、今までの出来事を振り返ってみると、本当に明だけが悪かったんだろうか?私自身には、何の落ち度もなかったって、本当に言い切れるの?人って、基本的に他人からの批判を素直に受け入れるのが苦手だ。自分は間違ってないって思いたいし、なんとかして言い訳を見つけて、自分を正当化しようとする。でも、本当は他人の鋭い言葉が突いてくるのって、「真実」じゃなくて、自分が必死に守ってる、弱くて儚いプライドだったりするんだよね。私と明が付き合って、もう七年。そんな長い間、一人の男に騙されてて、それに気づかなかった私。これで愚かじゃないなんて、絶対に言えない。それに何よりバカだったのは、父が「お前は明のことをよく知らない」って忠告してくれたとき、「父は彼の家柄が気に入らないだけだ」って、勝手に決めつけていたこと。父はそんな人じゃないって、今ならわかるのに。家柄なんて理由で反対するような人じゃない。父はいつだって真っ直ぐで、公平で、そんなくだらないことで人を判断するような人じゃないのに。思い出すだけで、自分の浅はかさが恥ずかしくて仕方なかった。涼介は、これまでにも何度か私に手を差し伸べてくれた。口調が少しぶっきらぼうなときもあったけど、あの人はいつだって本気で、私のことを思って言ってくれていた。なのに私はさっき、「言い返してやろう」なんて思ってた。口喧嘩で勝つことに、何の意味があったんだろう。私って、本当に情けない。私は顔を伏せて、心から謝った。「先輩、ごめんなさい。さっきは、あんな言い方して」涼介は少し驚いたように私を見たけど、すぐに穏やかな声で言った。「謝らなくていいよ。君の言ったことも、間違ってたわけじゃないから」「......」「たぶん、それこそが俺の失敗の原因だったのかもな」そう言って、涼介は少し自嘲気味に笑った。「俺にも、反省すべ
Baca selengkapnya

第47話

私がためらっているのを見て、涼介が言葉を付け足した。「理奈に頼まれてさ、お前のこと元気づけてって言われたんだ。頼まれたからには、ちゃんとやらなきゃって」「それ、もう二回も聞いたよ。『頼まれたからには、ちゃんとやる』ってやつでしょ?」私は少し茶化すように口を挟んだ。涼介は真剣な表情でうなずいた。「そう。だから、気にしなくていいよ。話したいなら、ちゃんと聞くから」「話してもいいよ」私は大きく息を吐いて、できるだけ冷静に言った。「ま、そんな大した話でもないけどね」涼介は黙ったまま私を見つめ、私が話し始めるのを静かに待ってくれていた。私はそこで、明に薬を盛られて子どもを殺されたこと、彼が事前に多額の保険に加入していたこと、すべてを淡々と話した。もう冷静になれたと思ってた。でも話してるうちに、特に、あの子が惨めに死んでしまったときのことに触れると、どうしても涙がこぼれてしまった。それでも泣いてるところは見せたくなくて、必死で目を見開いて涙を堪えて、鼻の奥がツンとする痛みにも耐えながら、無理に笑顔を作って涼介に聞いた。「バカだって、自分でもわかってるんだ。こんな最低な男を何年も好きだったなんてさ。でも、明って、なんであんなことしたんだろう?」声がかすれて、苦しそうに眉をしかめながら、なんとか涙をこらえた。「なんで私だったのかな?もともと他人だったのに、誰かを利用するつもりだったにしても、どうして私だったの?時々、どうしても彼に聞きたくなるの。歓迎会の日に一目惚れって、最初から仕組まれてたのかなって」涼介は感情を表に出すまいとするように、厳しい表情のまま、黙って私を見つめていた。「どうやって彼は知ったんだろう?宝井一輝に娘がいて、それが真帆で、神浜大学の外国語学部に入学するってことを。それに、歓迎会の日にたまたま声をかけたって。そんな偶然、あるかな?先輩、こんなの、本当に『運命』なんて言える?」私は口元をゆがめながら、涙を流して笑った。「もしこれが運命だとしたら、神様って本当に、不公平すぎるよね」涼介は眉をひそめ、落ち着いた声で優しく言った。「それはお前のせいじゃない。他人の過ちや罪を、自分への罰にする必要なんてないよ」「今、大事なのは、そのことじゃなくて、これからだよね。真実と答えは、私が証拠をつかんで、明
Baca selengkapnya

第48話

正直に言うと、涼介のその言葉を聞いたとき、心の底からじんときた。彼とはそんなに親しいわけじゃなかったけど、それでも私を肯定してくれた。それがたとえ礼儀でも、気休めでも、この瞬間だけは確かに救われた気がした。「先輩、慰めてくれてありがとう」私はほんの少し微笑んで、そう言った。「いや、別に」涼介はちょっと気まずそうな顔をして、冷たいトーンで返した。「ただ、思ったことを言っただけ」私はそれ以上何も言わずに笑った。でも心の中では、「そんなに無理しなくても、もうちょっと自然に慰めてくれてもいいのに。顔、めっちゃ困ってるじゃん」って思ってた。ふいに、涼介が眉を寄せて、少し真剣な声で言った。「お前ってさ、やたらいい言葉を欲しがるけど。泣いたり笑ったりしてる顔、別にそんなに綺麗じゃないよ」「......」「ごめん。これも、正直な感想」涼介が付け加えた。ほらね、だから黙ってたほうが良かったのに。そのあと、私たちは何も言わずに、並んで歩いた。少しして、涼介がぽつりと話しかけてきた。「お前、こんな話、聞いたことある?」「ん?どんな?」「子供の頃、たまたま読んだ話なんだけどさ。どの本だったかは思い出せないけど、内容は今でもちゃんと覚えてる」涼介はそのまま話し続けた。「その話によるとね、神様が人間を作ってる途中で、ちょっと用事ができて席を外したらしいんだ。そしたら、その隙に悪魔が来て、未完成の人間にいたずらしようとして、体じゅうに汚れを塗りたくったんだって。神様が戻ってきたときには、もう手の施しようがないくらい汚くなってて。で、神様はどうしたかっていうと、人間をひっくり返して、きれいな中身を外に、汚い外側を内側に隠したんだ。それで、精神的には『人の心が汚い理由』を説明しつつ、肉体的には『人が排泄をする理由』になったっていう、そういう話」初めて聞いたけど、すごく興味深かった。そして自然と、明のことが頭に浮かんだ。外見は華やかで、イケメンで、明るくて話し上手で、まさに理想の男性って感じ。でも中身は偽善的で、ずる賢くて、冷酷で、邪悪で、本性はひどく歪んでいて恐ろしかった。もしかして、彼を作ったときも、神様が悪魔に邪魔されたのかもしれない。涼介は、まるで私をそっと慰めるような声で言った。「明がなんでそこまで残
Baca selengkapnya

第49話

昔、家にいたころは、何かあるとすぐに甘えた声で慌てて聞いてた。 「パパ、どうしよう?これ、どうすればいいの?」そんなとき、父はいつも決まってこう言った。 「何事も、まずは冷静に。そんなに焦ってバタバタしてたら、うまくいくものもいかなくなるよ」そんな父の言葉を思い出すと、胸がぎゅっと締めつけられた。まるで今も、父の面影が目の前にあるような気がして。私は顔を上げて、涼介をじっと見つめた。 「先輩、父が好きだったもうひとつの言葉、知ってる?」涼介は自信ありげに眉を上げて言った。 「もちろん」私たちはほぼ同時に口を開いた。「順調な時も調子に乗らず、苦境でもひるまない。平穏な日々でも奢らず、ピンチでも恐れない。心中が激動しても、顔は平静を保てる人こそ、真のリーダーと言える」言い終わったあと、思わず涼介と顔を見合わせて笑った。涼介が微笑んだとき、その笑顔が驚くほど整っていて、普段の冷たくて近寄りがたい雰囲気とはまるで別人だった。小説ならどう表現するだろう? 「二月の春風のように優しく、心地よい」とか、「三月の春雨のように静かに潤す」とか、そんな感じ?そんな風にぴったりくるくらい、ふとした笑みに品があって、やわらかくて。普段からあんな風に笑っていれば、彼を追いかける女の子の行列なんて、きっとパリまで続いちゃうんじゃない?ふと、涼介ってそんなに悪くないのかも、と思えてきた。 彼は十分に素晴らしい人なのに、ただ少しだけ、人間らしい温かさが足りない気がする。あたかも別世界から来た貴公子のように、俗世のけがれをまったく感じさせない。遠くから憧れる存在ではあっても、簡単には近づけない、そんな人。だから、つい聞いてみた。 「先輩、なんであんなに明と犬猿の仲になったの?商学院じゃ、『両雄並び立たず』って言われてるくらいだよ」涼介は少し怪訝そうに私を見た。 「お前、明とあんなに長く付き合ってたのに、聞いたことなかったの?」「うん、はっきりとは聞いてない。聞いたけど、『性格が合わない』ってだけだったし、私もその時はあまり深く追求しなかった。だって、男の人って女の子みたいに細かいことで喧嘩したりしないと思ってたから」「確かに、性格は合わないよ」 涼介の口調には、どこか父に似た節度があっ
Baca selengkapnya

第50話

黒のベントレー・コンチネンタルがマンションの入り口に停まっていた。私はシートベルトを外して車を降り、「ありがとう」と涼介に声をかけた。でもまさか、こんな時間に——しかも会社にいるはずの明が、マンションの前に現れるなんて、思ってもみなかった。彼がいつからそこにいたのかは分からない。運転席の窓は半分だけ開いていて、顔は険しく冷えきっており、目つきは鋭くて冷たい。まるで氷の刃みたいに、私を突き刺してくる。一瞬、体が固まって、動けなくなった。頭の中で思考が高速回転する。どう説明する?なんて言えば納得してくれる?そのときふと、涼介の言っていた「何事も、まずは冷静に」って言葉を思い出した。焦ったら、思考も判断も鈍る。動揺すれば、それだけでボロが出る。明の前では、絶対に冷静を装わなきゃいけない。私はすぐに笑顔を作って、小走りで明に近づいた。できるだけ明るい声で話しかけた。「今日は早かったね?」明は、私がまるで何もやましいことがないかのように振る舞う様子をじっと見つめた後、口元にうっすらと笑みを浮かべて、静かに尋ねてきた。「どこ行ってたんだ?」怒っているのは明らかだった。いくら表面上は冷静を装っても、その目の奥にある苛立ちは、涼介が車から降りてこちらに歩いてきた瞬間、一気にあふれ出して、もう隠しきれないほどだった。明も車を降り、私の手をぎゅっと掴んで、涼介の前に立ちはだかるように向き合った。これまでの駆け引きで、私の演技力もだいぶ鍛えられてる。私はとっさに言葉を繋げた。「今日は先輩に本当に助けられちゃって。途中でスマホのバッテリー切れちゃうし、タクシーもつかまらないし、あなたにも連絡取れないし。でも先輩にたまたま会って、送ってもらったの」にこっと笑って、明の顔を見た。「お二人も久しぶりだよね?」明と涼介が最後に会ったのは、両親の葬儀の時だったはず。あの時、涼介が私に名刺を渡して「何かあったら連絡して」と言ってくれたのを見て、明が突然殴りかかって、二人は祭壇の前で取っ組み合いになり、最終的には警備員に引き離された。私は一歩近づいて、明の耳元でささやいた。「こんな人目のある場所で、変な顔しないでね。ここは大人の余裕ってやつ、見せてほしいな。だって今日送ってくれたんだし、一応は感謝しないと」明はこくりと頷いた
Baca selengkapnya
Sebelumnya
1
...
34567
...
10
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status