Semua Bab バツイチだけど、嫁ぎ先が超名門だった件: Bab 51 - Bab 60

100 Bab

第51話

私は明の腕にぎゅっとしがみついて、甘えるように言った。 「ずっと心配してたんだよ。お仕事忙しいんじゃないかなって」 明は口元をキュッと引き締めたまま、優しく言った。 「お前以上に大事なものなんて、他にあるわけないだろ?お前のためなら、どんなに忙しくても仕事なんて後回しにするさ」 昔はこういう明の言い方が、たまらなく好きだった。でも今はそんなことを言われても、気持ち悪さしか残らない。 そう言い終えると、明は私の肩を抱き寄せて、涼介に向かって言った。 「嫁を家まで送ってくれて、ありがとう」 涼介は何事もなかったような落ち着いた声で返した。 「お礼なんて言われることはないよ。お前のために送ったわけじゃないから」 一瞬、明の目に驚きが浮かんだが、すぐにフッと笑ってこう言った。 「そうか。お義父さんが天国から見てたら、お前のことをきっと誇りに思うだろうな。こんなに優秀な弟子に恵まれて、感謝してるはずだよ」 涼介は冷めた顔のまま、明にチラッと目をやった。 「当然でしょ。真帆は、先生と奥様がこの世に遺していった、たった一人の血縁者だ。彼女を守るのは俺の当然の責務だと思ってる。それに、もし誰かが彼女を傷つけようとしたら、その人には、地獄を見てもらうことになる」 その言葉には、誰が聞いても分かるほど、はっきりとした脅しの色が込められていた。 明の顔に、さっと陰りが差し、目の奥には鋭く冷たい光が宿った。 これ以上はまずい。そう思った私は、慌てて場の空気を変えようとした。 「ねえ、あなた、お腹すいちゃった。もう帰ろ?先輩も忙しいでしょ」 私の言葉で、ようやく明はその冷たい視線を引っ込め、私の手を取って歩き始めた。 「わかった。帰ったら、お前の好きな酢豚、作ってあげるよ」 こうして私は、明と寄り添うようにして家へと向かった。 振り返らなくても分かる。今もなお、背中にグサグサ突き刺さってくるような冷たい視線がある。それが涼介のものだってことに、疑いの余地はなかった。 家に帰る道すがら、私は妙に気分がよかった。 たぶん、涼介にちょっと揺さぶられている明の様子を見て、なんだかスカッとしたからだと思う。それだけで、気持ちが少し晴れた気がした。 でも、明は明で、ま
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第52話

やっぱり、資産運用マネージャーに相談したって言ったとき、明の目に驚きと戸惑いが一瞬浮かんだ。 すぐに聞いてきた。「お前の資産運用、まだだいぶ先じゃなかったか?なんでわざわざマネージャーに会いに行ったんだ?」 内心でちょっとスカッとした。「クソ野郎、焦ってるな」と。 私は普通のトーンで言った。「更新しに行っただけだよ」 明は眉をひそめた。「更新?」 私はうなずいてリビングに入り、レコードプレーヤーをオンにして、玉置浩二のレコードを取り出しながら言った。「この前の広告で、年利が1ポイント上がるって言ってたからさ。今月末までみたいだし。去年買った資産運用商品、あと1ヶ月もすれば満期になるでしょ?でも来月、海外にいる伯母さんのところにバカンス行こうと思ってるから、時間が取れなくなるかもしれないし、先に手続きしておいたんだ」 「海外にいる伯母さんのところに行くのか?」 明の顔色が少し曇った。「そんな話、聞いてなかったぞ」 明は完全に心の準備ができてなかったみたいで、顔色がみるみる曇っていった。 「だって、まだ自分でもちゃんと決めてなかったし、決まったら相談しようと思ってたんだよ」 リクライニングソファに腰を下ろし、目を閉じた。玉置浩二の歌声が耳に響く。 「赤ちゃんがいなくなってから、ずっと夢を見てる。夢の中で、小さな女の子がずっと後ろをついてくるんだ。私がどこに行っても、ついてくるの。大きな瞳で私を見つめて、何も言わないんだけど、でも分かる。あれはきっと私たちの赤ちゃんだって。この数ヶ月、ずっとその心の影と向き合えなくて、あなたとうまく心を通わせられなかった。ちょっと気分をリセットしたくて、あれこれ考えてみたけど、やっぱり海外に行きたいなって思ったの。伯母さんとは、両親の葬儀以来会ってないし、オタワに行ってみようと思って」 目を閉じていたけど、明が私をじっと見て、何かを探っているのが分かった。 このタイミングで泣かなきゃ、と思った。 でも、午後に涼介と話した後、どうしても涙が出なかった。 だから思い切って、自分の太ももをギュッとつねった。 すると、ようやく涙がにじんできた。 目を開けて、じわじわと涙を浮かべた目で、目の前に立っている明を見上げた。 「ねぇ、あなた。
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第53話

明はそう言いながら、私の手を取ってその甲にキスを落とした。深く澄んだその瞳で名残惜しそうに見つめられて、あまりにも情熱的だから、思わず私が以前調べたことや耳にした言葉が全部嘘だったんじゃないか、ただの夢だったのかって錯覚しそうになった。偽善者!頭の中では無意識に、彼の仮面を剥ぎ取って、その頬に平手打ちして、「どうしてそんな冷酷非道なことができるの?」って責め立てる場面を妄想してた。でも、それはただの妄想にすぎない。現実の私は、そんな情熱的な瞳を前にして、甘えるように言った。「ねえ、ちょっと離れていた方が夫婦の仲が深まるって言うじゃない?私がバカンスから帰ったら、もっとラブラブになってるかもよ?それとも、私がいない間に、他の女性に夢中になっちゃうんじゃないかって、心配なの?」すると明は、反射的に強い口調で言い切った。「そんなわけないだろ!俺が過去にやらかしたこと、もう二度と繰り返さない。俺が愛してるのは、最初から最後までお前だけだ」私はにやりと笑って、「ほんとに?」と茶化すように言った。「ほんとだって」「じゃあ約束して。今まで私に言ったこと、全部本当だって。もしひとつでも嘘ついてたら、天罰が下って雷に打たれ、惨めに死んで、地獄の底に落ちて、永遠に這い上がれないって誓うの」にっこり笑いながら、わざとらしくかわいく言ってやった。明は一瞬、眉をピクリと動かしたけど、すぐにその表情を隠して、私の頬をつまみながら「やんちゃだな、お前は」と優しく言った。私は彼の手を払いのけて、ちょっと拗ねたように口を尖らせて甘えた。「ふーん、言えないんだ?誓えないんだ?」「そんなことあるわけないじゃない」明は軽く笑って言った。「大体、そういう誓いって意味あるのか?それに、俺が言っても、本当に信じられるのか?」私は無邪気なふりをして、昔みたいにバカみたいな笑顔を見せた。「信じるよ。だってあなたが言うことだもん。私にとって、あなたは世界で一番大切な人だもん」「ほんと、お前ってバカだな」明はくすっと笑って、甘えるような声で言った。「俺のかわいいおバカちゃん」私の心のガードが甘いんじゃなくて、明のこのおバカちゃんって言い方が、本当に気持ち悪すぎるんですよ。昔は何度聞いても嬉しかったはずなのに、今はその一言で思わず吐きそうになった
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第54話

当然ながら、思いやり深い妻としてはすぐに心配するよね。「どうしたの?顔色、あんまり良くないよ?」明は深く息を吸って、首を横に振った。「たいしたことじゃないよ。心配しなくて大丈夫」「どんなことなの?あの万能な明が眉をひそめるなんて、ちょっと気になるな。教えてよ」私は、まるで彼の期待に応えるかのように、思いやりのある態度でそう言ってみせた。明は少し言いにくそうな表情を浮かべて、「本当はお前にはあまり話したくないんだけど」と前置きをした。まずは自立心との葛藤について軽く触れてから、ゆっくりと話し始めた。「実はさ、最近大きなプロジェクトを取ったんだ。オーシャングループって知ってる?神浜に本社がある不動産開発会社で、西のほうに新しい土地を取得して、そこに住宅を建てる予定なんだ」「もちろん知ってるよ。うちもオーシャングループの物件だし、管理会社もオーシャングループでしょ?」オーシャングループは有名な大手企業で、全国に物件を展開しているけど、特に神浜での存在感は圧倒的。扱ってる物件はほとんどが高級住宅で、そういえば、どろぼ猫の志穂が住んでるマンションもオーシャングループのハイエンド物件だったな。確か、坪単価は2000万円を超えてたっけ。数年前には、オーシャングループの高級マンションで全国的に話題になった家政婦の放火事件があって、「悪名高き」とも言われていたけど、それでも神浜での支配的地位は揺るがなかった。「もう取得できたの?どこの土地?」「16番地。神浜西駅から3キロ圏内で、都市部にも近い場所。信頼できる筋の情報によると、あのエリアは将来、国の重点開発区域になるって話なんだ。だから、今回はかなり時間をかけてオーシャングループとの提携を取り付けた。彼らが第4期から着工する予定の住宅プロジェクトに、うちが各種建材を提供するっていう内容でさ」「オーシャングループって、全国トップレベルのデベロッパーでしょ?彼らのプロジェクトって千億元規模も珍しくないし、たとえ小規模な開発でも動くお金は莫大だよね。そんな相手とうちみたいな中小企業が組むって、かなりハードル高くない?そもそも入札に参加する資格すらないんじゃ、基準も満たしてないでしょ?」「そう。企業としての実績では正直足りてない。だから俺は、森見株式会社の山田さんと組むことにしたんだ
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第55話

「じゃあ、どうすればいいの?」私は考えながら言った。「4億円って、たとえ銀行の金利がそんなに高くなくても、二年ローンにしたら利息だけでも相当な額になるよ。それに、二年以内に確実に回収できるって保証できる?こういうのって、誰にも断言できないよ。たとえ期限内に回収できたとしても、その間の利息を引いたら、あなたの手元に残る利益なんて、ほんのわずかじゃない?それなら、そんなに頑張る意味って何?結局、他人のために働いてるだけじゃないの?」私は彼の手を取りながら言った。「ねえ、もうそんなに無理しないで。オーシャンみたいな大きなプロジェクトだと、きっとあなたがすごく疲れると思うの。うちはお金に困ってるわけでもないし、今の暮らしだって十分に幸せなんだよ」「それじゃダメなんだよ」明は言った。「お前と結婚したとき、俺はお前の両親の墓の前で誓ったんだ。絶対に幸せな人生を送らせるって。お前は両親に大事に育てられて、たくさんのものを残してもらった。俺がそれを超えられなきゃ、男としてのプライドが保てない。だからこそ、俺は全力でやるよ。両親に天国から安心してもらえるように。俺を選んだことは間違いじゃなかったって、証明したいんだ」「でも、あなたがこんなに頑張ってる姿を見るのは辛いよ。私は、あなたが苦しむのがイヤなの」と私は言った。「お金を稼ぐって、楽なわけないさ。俺だって本当はこんなに無理したくないよ。でも、オーシャンみたいな大手と仕事できるなんて、めったにないチャンスなんだ。たとえ利益が少なくても、小さな仕事を何度もやるよりは、はるかに大きい。ちょっとプレッシャーがあるくらいで、俺はやる価値があると思ってる」明はそう言って、ふうっと大きく息を吐き、私に優しく微笑みかけながら続けた。「まあ、こんな話、お前にしても仕方ないか。自分で何とかするよ。もし万が一、俺の事業が失敗したら、前に言ってくれたみたいに、俺のこと、養ってくれる?」「ダメよ。うちの旦那さまはこんなに優秀なんだから、絶対に仕事で自分の価値を証明しなきゃ!」私はにっこり笑って言った。「ねえ、こうしようか。理財マネージャーに聞いてみるよ。あの3億円、更新せずに引き出せないかって」「本当にいいのか?」明の目に一瞬、喜びの光が浮かんだ。きっと心の中で「ほら見ろ、ちょっと口説けばこのバカはすぐ金
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第56話

私は思った。明は最初から私にお金を出させるための言い訳を考えていて、それで早々にオーシャングループとの提携を決めたのだろう。ただ、どうやって切り出そうかとタイミングを伺っていたところに、私が先に気づいてしまっただけの話。最初から私が気持ちよく3億円を差し出すよう仕向けるつもりだったのだ。ふん、商売?そんなの嘘に決まってる。私のお金を騙し取るための口実にすぎない。はっ、最低!突然、明がこちらを振り向いたので、私は驚いて、慌てて笑顔を作って見せた。彼はアイランドキッチンに寄りかかりながら言った。「そうだ、真帆ちゃん、ちょっと言っておきたいことがあるんだ」「なに?」「これからは、涼介と会わないでほしい」 明はかなり真剣な口調だった。 「俺、嫉妬するし、怒ると思う」「自信ないの?私、もうあなたと結婚したんだよ。まだ誰かに奪われるとでも思ってるの?」私は鼻で笑って言った。「仮に誰かに取られるとしても、相手が涼介だなんてありえないでしょ?あの人、商学部でも有名な高嶺の花だったんでしょ?女の子たちが列作ってパリまで続くくらいのモテ男。私みたいな既婚の女、興味ないって」「でも、万が一ってあるからね。他人の物を欲しがる人って、たまにいるじゃん」明は無意識にそう口にしたのだろう。言い終わるとすぐ、軽い口調を装い「家の嫁があんまり綺麗なもんだから、防火防犯ならぬ『妻防衛』に全力だよ。周りの男ども、油断ならねえな」と冗談めかして付け加えた。私は思わず笑ってしまった。明に聞いてみたい。このクズ男が、いったいどうやって「誠実な男」の仮面をここまで見事に演じきれるんだ?確かに、大学時代は商学部だったはず。演劇科じゃなかったよね?そしてその後に彼が言った一言で、私は心の中で拍手したくなった。「この人生であまえは俺だけのものだからね」私はにっこりと笑って言った。「わかったわかった、はいはい、早くご飯作ってきて」「はいはい、ただいま」明が料理をしている間に、私はシャワーを浴びた。彼、さっき私を抱きしめたし、手の甲にキスもした。うぇ、気持ち悪い!でも、あの時の甘ったるいセリフを思い返すと、たぶん彼は私がすっかり浮気の件を忘れてると思ってる。だから今夜はきっと、寝室に来ようとするはず。その時
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第57話

慌ててメッセージを取り消した。すぐに謝らなきゃと思って、謝罪の言葉を打ち込もうとした。でもその瞬間、相手から返信が届いた。まさかのアドバイスだった。【病気のふりしてみたらどう?】スマホを握りしめたまま、ありがとうって返すべきか迷った。気まずさがじわじわ広がった。気づけば、LINEに見覚えのないコンタクトが追加されていた。プロフィールを確認すると男性。友達リストは一本の黒線だけ、背景は無地、何の手がかりもない。返事はせず、すぐにチャットを削除した。「ただの知らない人よ」って、自分に言い聞かせる。「私のことも、あの人のことも、何一つ知らない人なんだから」落ち着け、落ち着くんだ。それでも、RSKの提案が頭から離れない。確かに、病気なら。たとえあの男がどれだけクズでも、病人相手に欲求をぶつけてくるほど下劣じゃない、はず。だって、あの人は理想的な夫を演じ続けなきゃいけないんだから。でも、病気のふりなんて、すぐにバレる。だったら、本当に病気になればいい。理奈が言ってた。「ある意味、あんたってすごいよね」って。たとえば、夜中でも寝ると決めたらスマホに触れずすぐ寝る。真冬の朝でもアラーム一発で起きる。届いた宅配を数日放置。60秒のボイスメッセージだって平気で聞き切る。よし、やるって決めた。服を脱いで、シャワー室へ。冷水を最大にして、思いっきり浴び続ける。歯がガチガチ鳴る。でも我慢。風邪ひいて入院するほうがマシ。あの豚野郎に触られずに済むなら、それでいい。冷水が肌に突き刺さる。自分の弱さを断ち切って、もう一度作り直してるみたいな感覚。ふと気づいた。病気以外の苦しみって、ほとんどが「認知」が作り出してるんじゃないかって。明の本性を知ってしまった今、不安も期待も、もう何もない。マジで強くなりたきゃ、死ぬか生きるかのギリギリまで追い詰められんと。30分ほど冷水を浴び続けた。髪も乾かさず、そのまま放置。夕方になる頃には、頭が重くて、意識がふわふわし始めた。「熱あるんじゃないか?」額に触れる手。明の顔が曇った。頭痛と高熱で、思考がうまく回らない。病院に連れて行かれて、検査の結果、40度近い熱が出ていて、即入院が決まった。夜中、喉が渇いて目が覚める。薄暗い病室で
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第58話

この声、聞き間違えるはずがない。間違いなく、あの女、志穂の声だ。正直、怒りよりも衝撃の方が勝った。本当に理解できなかった。あの恥知らずな二人は、一体どこまで飢えていて、どれだけ厚かましいんだ。私が病気で入院してるってのに、そんな状況でも我慢できずに、病室のシャワールームでヤるって?人としての最低限のモラルって、どこまで落ちるもんなの?呆れて笑いが出そうになる。しかも深夜の静まり返った時間帯、気が緩んでるのか、二人とも結構大胆にやってる。声の感じからして、志穂はついさっき来たばかりで、二人が中に入ってからもそんなに時間は経ってない。「今夜私が連絡しなかったら、きっと思い出しもしなかったんでしょ?毎日奥さんと一緒にいて、わたしのことなんてもう忘れてたんじゃない?」志穂の声。明が声を潜めて言った。「忘れるわけないだろ。ただ、お前が冷たくて、会ってくれないからさ」「ふん。わたしが冷たくしなかったら、あなた本当に離婚する?どうせ、奥さんとわたし、両方手に入れようとしてるんでしょ。家に妻、外に愛人、ってね」志穂が息を漏らしながら言った。「ん、ちょっと、触らないでよ。奥さんすぐ外にいるのに。そんな場所でできるわけ?」「なんでできない?あんなに熱出して薬まで飲んだんだぞ、絶対起きないって」明の声は必死だった。「こんなに会ってなかったんだ、死ぬほど恋しかったんだよ。お願いだ、欲しくてたまらないんだ」「ほんと最低ね、あぁっ」志穂は荒い息をつきながら言った。「真帆がちょっと可哀想になってきたわ。何年も一緒にいて、あなたがこんなに最低な男だって気づいてなかったんでしょう?見た目は上品で真面目そうなのに、中身はどうしようもないクズじゃない」「俺が悪いのはお前にだけだよ。あいつなんか何様だよ?ん?お前の靴を舐める資格すらねぇっての」明の声には、今まで聞いたこともないような下品さと傲慢さが滲んでいた。「こんなスリルのある場所、初めてだろ?どうだ、興奮するだろ?絶対気持ちよくさせてやるから」「こんなの、スリルってほどじゃないでしょ?スリルって言ったらさ、前にあなたと真帆のベッドでやった時の方がよっぽどだったじゃん。ふふっ。真帆ってまだ知らないんでしょ?毎晩寝てるそのベッドが、わたしたちが何度もイった戦場だっ
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第59話

「この小悪魔め」その後、二人が中で何をしていたかは、あえて語らない。ただ、漏れ聞こえてくる音は、心底吐き気を催すようなものだった。すぐに冷静さを取り戻し、ベッドの端に腰を下ろす。できる限り音を立てないように気をつけた。浴室で繰り広げられている淫らな行為を邪魔するわけにはいかない。柊からは、「明の浮気の証拠になる写真や動画、チャットの記録をできるだけ集めろ」と言われていた。成田が満足いくような証拠をまだ撮れていないと聞いていた。私にバレて以来、明は志穂とのホテル通いを控え、異様なまでに慎重になっていたのだ。今夜ほどのチャンスは、もう二度とないかもしれない。逃したら次がいつになるか分からない。そう思うと、ふつふつと勇気が湧いてきた。浴室の扉の前までそっと近づき、動画か写真を撮る決意を固めた。ただし、何よりも安全が最優先。もし気づかれたら、この恥知らずな二人に結託されて命を奪われるかもしれない。スマホをサイレントモードに切り替え、理奈にLINEを送った。【想像つく?明のクズ、愛人と病室の浴室で不倫してるのよ】ただの愚痴のつもりだった。あとで証拠の動画を送って、保管してもらおうと思っていた。なのに、すぐに返信が来た。【今、神浜に着いた!どこの病院?場所教えて!】状況を理解する暇もなく、さらに追撃のメッセージ。【軽はずみなことはダメよ。すぐ行くから病室の番号教えて】【市立病院、303】【了解。すぐ着くよ。ちょうど近くだから10分以内に行ける。明が15分はもつことを祈るわ。3分で終わるような使えない男だったら困るもの】胸がドクドクと高鳴る。素足のままベッドを降り、録音アプリを起動して、浴室の扉にそっとスマホを押し当てた。薄い壁越しに、二人の淫らな声がはっきりと聞こえてくる。そのとき、ふと気づいた。志穂と私は、まったく違う人間なんだと。彼女が口にしているような言葉は、私の口からはとても出てこない。そもそも経験が少なすぎるのかもしれない。明とそういう関係になったのは、去年のホテルでの一度きり。男女の関係がここまで堕ちるなんて、想像もしなかった。「すごい」志穂の艶やかな声が響いた。「舌の動きが本当に巧くて、天に昇るみたい」「志穂だって上手いじゃないか。久しぶりにやってくれない?初めてしゃぶってくれた時の快感、忘れ
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第60話

実際、理奈が病室に飛び込んできたのは、三分も経たないうちのことだった。キャメルカラーのトレンチコートに白のニットトップス、スキニージーンズを合わせ、足元はJimmy Chooのラムレザーのハイヒール。理奈は、まるで風にでも乗ってきたかのような勢いでズカズカと歩いてきた。迫力全開で、今にも人を食い殺しそうな勢い。めちゃくちゃカッコよかった。「私が天の代わりに成敗しに来たわよ!」すでにスマホは録画モード。バスルームの扉を勢いよく蹴り開けると、裸も同然のクソカップルにカメラを向け、その顔面にグッと迫った。明と志穂はほとんど服を脱いでいて、特に志穂なんて洗面台に腰かけて両脚を持ち上げ、完全に全裸。ブラジャーは腕に引っかかって、今にも落ちそうな状態だった。顔はもう真っ赤に火照って、いかにもな表情。私と理奈が中に入ったとき、明はまだ彼女の中にいた。二人はギョッとして、逃げる間もないまま、明は慌てて体を引いてズボンを拾おうとした。でも理奈のほうが一瞬早かった。ズボンに手を伸ばしたその瞬間、理奈が思いっきり明のお尻を蹴り飛ばし、明はそのまま見事にすっ転んで、顔面からタイルの床に突っ込んだ。パシンッと気持ちのいい音が鳴った。何度か立ち上がろうとしていたけど、まったく起き上がれない。その上、理奈の強烈な蹴りが容赦なくもう二発。完全に追い打ちをかけた。「いや、見て見て、みんな!この恥知らずのクソカップル、誰だと思う?こいつが近藤明!看病中の嫁が熱で入院してんのに、性欲我慢できなくて愛人呼びつけて、病室のバスルームでコレよ?どう思う!?さーて、不倫相手のこの女のツラもしっかり見せてやろうじゃないの」理奈がスマホを志穂の顔にグイッと向けた。志穂は必死に服を探していたけど、私はすぐさま駆け寄って、その服を引っつかんで病室の外に投げ捨てた。私は冷たく笑った。「明が裸なのに、あんただけ服着るって、おかしくない?」「ビッチは脱いで見せるのが趣味なんでしょ?今さら着てもしょうがないじゃない!」理奈はスマホで志穂の体を上下に撮り続けると、志穂は体を隠す余裕もなく、顔を手で覆いながら怒鳴った。「こんなこと、違法よ!」「はあ!?口答えするつもり!?」理奈が吐き捨てるように怒鳴って、志穂の髪を掴み、無理やり顔を晒させた。「隠してんじゃないよ!ほら、みんなによーく
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