「会社のその後の発展には、俺は関わってないんだ」それを聞いた廉は驚いたように優里を見て、「えっ、そうだったの?じゃあ君がそんなにすごいってこと?」と目を丸くした。優里は言った。「いえ、それは会社のエンジニアたちの力です。それに、そのエンジニアたちは私が会社を引き継ぐ前からずっと在籍していました。会社がここまで発展できたのは、廉さんの言う通り、智昭のおかげであって、私の力じゃありません」廉は笑って言った。「優里さんって、本当に謙虚だね」最初は、優里が智昭から譲られた会社でキャリアを築いたと聞いて、正直彼女はそれほど大したことないと思っていたし、智昭には釣り合わないのではと感じていた。けれど今、智昭と優里が互いに補い合い、支え合っている姿を見て、智昭は彼女をAI分野の専門家として信頼しているのだろうと、廉は理解した。AIにおいては優里の方が智昭よりも長けており、彼女に任せた方が会社がさらに発展すると考えて、経営を託したのだろう。なにしろ、智昭は大らかで謙虚な人間だ。そんな選択をするのも彼らしい。優里は恐縮して言った。「本当に謙遜じゃないんです……」しばらくして、その話題は自然と終わりを迎え、彼らは話を変えて、A国での面白い出来事について語り合い始めた。彼らはみんなA国に留学していたことがあり、共通の話題も多かった。優里はもともと社交的な性格だったので、今日が初対面の廉ともすぐに打ち解け、この食事の場はとても和やかで楽しい雰囲気に包まれた。ときには、廉が智昭と話すよりも、優里と話す方が盛り上がっているくらいだった。廉は今回、父親と一緒にビジネスで来ており、明日には帰国する予定だった。食事を終えたあと、彼には別の予定もあったため、その場を後にすることになった。去り際、彼は優里と握手しながら言った。「優里さん、今日は君に会えて本当によかったよ。君ってすごく面白くて、魅力的な女性だね」そう言ってから、智昭の方を振り返り、何か言いかけたようだったが、彼が口を開く前に、優里が少し照れたように笑いながら言った。「廉さん、それは褒めすぎですよ」二人に手を振って別れを告げ、廉は車に向かおうとした。そのとき、ちょうど取引先との食事を終えて店から出てきた玲奈と礼二たちとすれ違った。廉は礼二や他の人たちのことは知らなかった。
Baca selengkapnya