「それでね、一度あなたの様子を見に行った時にその事実が分かって、私が児童相談所に通報したの。そして、その親戚夫婦はあなたの養育権を剝奪されて、あなたは一時的に預かっていたこの施設で暮らすことになったのよ」「そうだったんですね。園長先生、その時に通報して下さってありがとうございます。その通報がなかったら、今のわたしはいなかったと思うから」 愛美は改めて聡美園長に、育ててもらったことと命を救ってもらったことへのお礼を述べた。彼女の通報がなければ、愛美はその後無事だったかどうかも怪しいのだ。「いいのよ、愛美ちゃん。あなたは私にとって孫も同然だって、さっきも言ったでしょう? 大事な教え子だったあなたのご両親を亡くした私にとって、あなたは希望だったから」「はい……!」 両親がどうして自分のことを施設に預けたのか分からなかった愛美は、その事情を知って改めて両親から愛されていたんだと分かり、胸がいっぱいになった。聡美園長に預けたのも、恩師である彼女を信頼していたからだろう。「――ところでですね、相川さん。親戚が騙し取ったその見舞金の一千万円、私が全額彼らから取り返すことができたんですが。あなたはどうされますか? ここに現金で用意してあるので、この場でお返しすることもできますが」 北倉弁護士がそう言って、大きな茶封筒を応接テーブルの上に置いた。かなりの厚みがあるそれには、百万円分の札束が十個入っているらしい。「そんな……、こんな大金、受け取れません!」 一瞬、「これだけあれば純也さんにこれまで出してもらったお金が全額返せる」とも思ったけれど、それでは筋が違う。彼に返すお金は、自分で作家として稼いだものでなければ意味がない。 それに、まだギリギリ高校生の身に一千万円という金額は大きすぎる。「いえいえ、これは本来あなたが受け取るべきお金ですから。どうぞ、お納めください。使い道はあなたに委ねますので」「そう……ですか? ありがとうございます。じゃあ……」 封筒を受け取った愛美は、中の札束を二つだけ取り出して自分の手元に置いた。そして――。「これだけわたしが頂いて、あとはこの施設に寄付します。さすがに一千万円は金額が大きすぎるので」「愛美ちゃん……、本当にいいの?」「はい。この施設のために役立てて下さい」「……分かったわ。ありがとう。この園の子供たちのた
Terakhir Diperbarui : 2025-04-04 Baca selengkapnya