「航君。京極さんにもう顔が知られているのに調査なんて出来るの?」朱莉が心配して尋ねた。「ああ、こう見えて俺はプロだ。絶対の自信はある。それに……どれだけ俺が修羅場を潜り抜けてきたと思ってる?」航は自慢げに胸を逸らす。「え? そうなの? やっぱり興信所の調査員の人達って随分ドラマチックな生き方をしているんだね?」朱莉が目を見開く。今迄朱莉は絵にかいたような平凡な日常生活を送ってきていた。なので航のドラマチックな生き方が正直、羨ましいと思ってしまったのである。あまりにも朱莉が航の話を真剣に受け止めているので、航は気まずそうに言った。「い、いや……修羅場を潜り抜けてきた……って言うのは多少話を盛り過ぎてしまったかもしれないけど……とにかく、俺は京極の事を調べてみようと思う」「あ。でもそう言えば京極さんが気になることを言っていたっけ……」朱莉は京極との会話を思い出した。「何? 気になること? あいつ、一体朱莉に何を言ったんだ?」航は身を乗り出してくると朱莉に尋ねた。「うん、車の中で航君の話題が出て京極さんが言ったの。航君は調査員だから、自分のことを既に色々調べているんじゃないかって」航の眉が上がり、顔が険しくなった。「京極の奴……そんなことを朱莉に言ったのか?」「う、うん。だから京極さんはもしかすると航君のことかなり気にかけているみたいだよ? だからそんな京極さんを調査するって難しいんじゃないの?」朱莉は心配そうに尋ねる。「ああ。確かに調査はやりにくくなるかもしれないが……でも知りたいんだろう? 京極のこと」「知りたいって言うか、どうして肝心なことを何も話してくれないんだろうって。だから私は京極さんと会う時はいつも何処か不安で……」「そんなことは決まっている。それは京極にやましい所があるからだ。それこそ朱莉には言えないようなやましいことがな!」航は力説した。「航君?」「くそっ! 本当にあの京極って男は進出気没で朱莉を怖がらせるような真似をしやがって! こんなことなら、あの九条って男の方がずっとマシだ!」何故かイラついた口調で話す航。(どうしちゃんたんだろう? 航君……何だかイライラしているみたいだけど。違う話題をしてみようかな)朱莉は航に話しかけた。「ねえ、航君。お父さんに報告の仕事って、もう終わったの?」「ああ、終わっ
Terakhir Diperbarui : 2025-04-27 Baca selengkapnya