Semua Bab 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした: Bab 721 - Bab 730

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<スピンオフ> 第2章 京極正人 3

「え……? 今、何て言ったんですか?」アクリル板越しにいる京極に飯塚は目を見開いて尋ねた。「ええ、飯塚さん。僕が貴女の身元引受人になりました。住まいも提供しますから、安心して出所出来ますよ。当日は僕が迎えに来ますから」京極は笑みを浮かべる。 「ちょ、ちょっと……! 何勝手に話を決めているんですか!」「駄目でしたか? 以前伺った話では身元引受人も、住む処も何も決まっていないと言ってましたよね?」「ええ、言いましたけど……。でも本気で言ってるのですか? 私は貴方の妹の姫宮さんを刺して大怪我を負わせた犯罪者ですよ? 何所の世界に身内を襲った人間の身元保証人になる人がいるんですか!?」「落ち着いてください。あまり興奮して刑期が伸びたりしたらどうするんですか?」京極の言葉に飯塚の顔色が変わった。「え……? ま、まさか……冗談ですよね?」「ええ、勿論冗談ですよ? そのくらいで刑期が伸びる訳ないじゃありませんか」「! あ、貴方って言う人は……!」思わず飯塚はカッとなり……溜息をついた。「分りました……もういいですよ。好きにして下さい。どうせ私には選択権は無いんですよね?」そう、飯塚にはもはや京極意外頼れる人物は誰もいなかった。飯塚は逮捕された時点で家族からも親戚からも縁を切られてしまったのだ。「ええ、そうですね。貴女には選択権はありません。でも別に僕は貴女にどうこうするつもりはありません。ただ貴女の力になりたいだけですから」京極は真剣な目で飯塚を見た。「わ、分かりましたよ。そこまで言うならお言葉に甘えさせていただきます」「ええ。何も心配せずに身体一つで出所してきて下さい。それではそろそろ今日は帰りますね。この後会議が入っているので」そして京極は椅子から立ち上がると、お辞儀をして立ち去っていく。「本当に……変な人……」飯塚はポツリと呟いた――**** そしてあっという間に時は流れ、年始明け……飯塚が出所する日が訪れた。今までお世話になった人々に挨拶を終えた飯塚は門へ向かって歩き始めた。この日は雲一つ無い、カラリと晴れた青空だった。飯塚は空を見上げ、思い切り深呼吸すると息を吐いた。そして門を見ると既にそこには京極の姿があった。飯塚はゆっくり歩き……やがて京極の前に立った。「京極さん、今日からどうぞよろしくお願いします」飯塚は頭
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-28
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<スピンオフ> 第2章 京極正人 4

「え……ここに今日から住むんですか?」京極と共にタクシーを降りた飯塚は目の前の高級マンションを見上げて、驚いたように目を見開いた。「ええ、そうです。さあ、行きましょう」京極は戸惑う飯塚をよそに、建物の中へ向かう京極。「このマンションはオートロックなので僕と一緒に入らないと締め出されますよ」「え? そ、それはちょっと困ります!」飯塚は慌てて京極の後を追った。エントランスを抜けてエレベーターホールの前に着くと、京極は上行きのボタンを押した。「このマンションは12階建てになっています。ちなみに僕たちが住む部屋は12階にありますから」「え……? 僕達…?…」飯塚がその言葉の意味を考える前に、エレベーターが到着して目の前でドアが開かれた。「さぁ、乗りましょう」「は、はい……」京極に促され、飯塚はエレベータに乗り込むとすぐに京極もその後に続き、ボタンを押した。京極に質問するタイミングを飯塚は失ってしまったが……。(まあいいわ。多分同じ12階に私と京極さんの部屋があるってことでしょう)京極は無言でエレベータに乗り、階層ランプが上の階へ移り変わっていくのを難しい顔をしながら黙って見つめている。(何だか話しかける雰囲気じゃなさそうね……)飯塚はそんな京極を横目で見ながら思った。普段の京極は気さくな人柄に見えるが、ふとした瞬間に近寄りがたい雰囲気を発する時がある。(本当に不思議な人よね。何より自分の妹を刺した人間の身元引受人になるのだから気が知れないわ。この人には気を許さないように注意しなくちゃ)チーンやがてエレベーター無いに到着を知らせる音が鳴り響き、スーッとドアが開いた。「さあ、降りましょう」京極は振り返ることもなく、さっさとエレベーターを降りる。「あ……もうっ!」(全く……さっさと1人で行動してしまうんだから。もう少しこっちを気遣ってくれてもいいんじゃないかしら?)不満を口に出せない飯塚はわざと思い切り不機嫌そうな顔つきでエレベーターを降りると、既に京極は部屋の前でカードキーをかざしてドアを開けている処だった。「飯塚さん、早くこちらへ来てください」京極に呼ばれて飯塚は近づいた。「ここが……私の部屋になるんですか?」「ええ、そうです。この部屋が僕と飯塚さんの部屋になります」京極はガチャリとドアを開けた。目の前にはフローリ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-29
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<スピンオフ> 第2章 京極正人 5

「どうして私が貴方と一緒に暮らさないといけないんですか? いい加減にして下さい!」飯塚は叫ぶと、ハアハア肩で息をしながら京極を睨み付けた。しかし、京極は何を考えているのか、黙って飯塚を見つめていたが……やがて口を開いた。「飯塚さん、僕は貴女の身元引受人です。一緒に暮らすのは必然だと思いませんか?」「いえ! 少しも思いませんよっ!」「こんな言い方をすると貴女を傷つけてしまうかもしれませんが、犯罪履歴のある人物は……ほぼ賃貸契約時に審査で落ちますよ?」「え……?」飯塚はその言葉に耳を疑った。「そ、そんな……嘘ですよね?」「いいえ。残念ながら事実です。9割がた審査で落とされます」「そ、そんな……」飯塚はがっくりと肩を落とした。「ひょっとして……何も知らなかったのですか?」「……」飯塚は返事をしない。余程ショックだったのか、顔色が青ざめていた。「僕の名義でもう一軒アパートを借りても良かったのですけどね……色々面倒なことになりかねない。なので僕のマンションに一緒に住むのが一番効率的なんですよ。幸いここはセキュリティもしっかりしているし、マンションの住人同士も全く交流が無い。干渉される必要が無いので都合が良いと思いませんか?」「……分かりましたよ……。それでは……よろしくお願いします」京極と一緒に暮らす……それは飯塚にとって、とても屈辱的なことであり、耐えがたいことではあったが、家族からも親族や親友。何もかもから見捨てられた飯塚にはもはや京極に頼るしか術が無かった。「そうですか。納得して頂けたようで良かったです。では飯塚さんのお部屋を案内しますよ。僕について来て下さい」一方の京極は機嫌良く話しかけてくる。「……はい」渋々返事をすると飯塚は京極の後について行くことにした。「この部屋ですよ」京極がドアを開けて案内した部屋を見て飯塚は目を見張った。広い部屋に大きな窓からは太陽が降り注いでいる。窓にはレースのカーテンと品の良い淡いモスグリーンのカーテンがかけられ、部屋には大きなベッドが置かれている。しかも布団まで揃っていた。「え……これは……?」(まさか……私の為に部屋を用意したの?)戸惑っていると背後から京極が声をかけてきた。「部屋にはクローゼットが備え付けてあるので用意はしませんでした。多分これだけあれば収納は可能だと思うのです
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-30
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<スピンオフ> 第2章 京極正人 6

 京極が部屋を出て行った後、飯塚は自分の持ってきた荷物を収納棚へしまい始め……あっという間に終わってしまった。「こんなに早く片づけが終わってしまうなんて。いかに自分が何も持っていないかがすぐに分かるわね」飯塚は自嘲気味に笑った。 持ってきた私物はほんのわずかだった。各シーズンごとの服と下着数点、それに化粧水、乳液、日焼け止めクリームにファンデーションと口紅のみだったのだ。 我ながら持ち物のあまりの少なさに呆れてしまった。刑務所の中で生活をしていた時にはそれほど持ち物に執着することは無かった。生活する為の最低限な物さえ手元にあればいいと思っていた。しかし、出所してきた今はそうは言ってられない。 これから生活の為に就職活動だってしなければならないのだ。スーツだって必要になるし、靴にカバン。そして身だしなみを整えるための化粧品だって必要だ。しかし、それらの物を飯塚は一切持っていなかった。「今、手持ちのお金は25万円か……」刑に服していた時に作業報奨金として貰っていたお金は全て使わず貯金していた。出所時、最終的には今手元に残ったのは25万円だけであった。これが今の飯塚の全財産である。なので本当のところ、住む場所を提供してくれた京極には感謝していた。それなのに飯塚は静香に対する負い目と、高いプライドが邪魔をして素直になれずにいたのだ。でも、住むところは提供して貰っても食費は自分で何とかしないといけないだろう。部屋の掛け時計を見ると、早いもので時刻は11時半。そろそろ昼になろうとしている。そこで飯塚は買い物にでも行こうかと、出所時に着ていた薄い上着を羽織り、ドアノブに手を掛けた。――ガチャリ 飯塚は部屋を出ると、廊下を渡ってリビングへと足を向けた。 ****「え……? そこで何をしているんですか?」飯塚はリビングへ入るなり、自分は居候の身分であるにも関わらず部屋を与えられたのに、当の家主はソファに座り、PCを使用している。その京極を見て眉をひそめた。「ああ……仕事をしていたんですよ」京極はPCのキーボードを叩く手を休め、飯塚を見ると笑顔で答えた。「仕事って……確かもう1部屋は京極さんのお部屋でしたよね? そこで仕事をしないのですか?」「いえ、もともと自室は寝る為の場所で本来仕事をする場所はリビングと決めていたんですよ。あ……それともお邪
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-31
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<スピンオフ> 第2章 京極正人 7

 京極に案内されたキッチンは使いやすいシステムキッチンになっておりガスコンロは4口もあった。ガスオーブンは備え付けで、食洗器までついている。「凄い設備ですね……」飯塚は目を見張った。逮捕されるまで暮らしていた飯塚の1kマンションはコンロは2口、当然システムキッチンでは無かったし、小さな電子レンジに小型の冷蔵庫しかなかった。しかも京極の家の冷蔵庫はサイズが500Lもあるのだ。「京極さん……」飯塚は冷蔵庫を見つめた。「はい、何でしょうか?」背後に立つ京極は返事をした。「京極さんは料理を作られるのですか?」「いえ……お恥ずかしいことに料理は……」京極は頭を掻いた。「それなのにこんなに大きな冷蔵庫を買ったのですか?」「はい、そうです」「一体……何故ですか?」「ハハ……何となく……でしょうか?」京極は笑ってごまかしたが¥本当はこのマンションに飯塚を呼び、一緒に暮らす為だったからとは口には出せなかった。「それで何か食材は入っているのですか?」「はい、今はまだ空ですけど……そのうち届く予定です」「え? その内……?」「はい。実は……」京極が言いかけた時。――ピンポーン部屋のインターホンが鳴った。「え? お客ですか?」「いえ、そうではありません。おそらくミールキットサービスの宅配ですよ」京極は玄関へ向かうと、ドアアイで確認して呟いた。「ああ……やっぱりそうだ」京極がドアを開けるとグリーンのキャップにグリーンのツナギを来た青年が大きな段ボール箱を抱えて立っていた。「ミールキットサービスです。商品のお届けに参りました。こちらの伝票にサインか印鑑をお願いします。お荷物は何所に置けばよろしいでしょうか?」「それでは玄関の上に置いてください」京極は玄関をさし示した。「失礼いたします」配達員は荷物を置くとお願いしますと言って京極に伝票を差し出す。「……」京極は差し出された伝票に印鑑を押すと配達員に返却した。「どうぞ」「ありがとうございました」「ご苦労様です」「またのご利用をお待ちしております」配達員はにこやかに言うと玄関を出て行った。「飯塚さん、食材が届きましたよ」京極は大きな段ボール箱を抱えてキッチンへとやって来ると飯塚の足元に置いた。「まさか食材の配達を頼んでいたのですか?」「ええ、僕は全く料理が出来ない
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-01
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<スピンオフ> 第2章 京極正人 8

 食事を終えた京極はリビングで仕事を、飯塚はキッチンで後片付けをしていた。すると飯塚が後片付けを終えた時に京極が声をかけてきた。「飯塚さん、今ちょっとよろしいですか?」「ええ、私は大丈夫ですけど京極さんの方こそお仕事中ですよね? いいんですか? 私なんかと話をしている余裕あるんですか?」現在無職で貯金も心もとない飯塚は、つい在宅で黙々と仕事をこなしている京極が羨ましくて棘のある言い方をしてしまう。「ええ。僕の方はいいんですよ。それで届けられたミールキットサービスを見て気付かれたと思いますが食材は2人分あります」「ええ。その様ですね」「それはつまり……僕と飯塚さんの分というこtでして……」京極は何故か歯に物が挟まったような物言いをする。そこで飯塚は溜息をついた。「京極さん」「は、はい」「はっきり言って下さい。つまりあのミールキットで今後、食事を作って欲しいってことですよね?」「は、はい。そうなんです」京極は照れ臭そうに頷く。「いいですよ、別にそれ位。それで食事時間は決めたほうが良いですよね? 何時がご希望ですか?」「えっと……それじゃ19時でいいですか?」「ええ、分りました。19時ですね。それでは少し出かけてきます」飯塚の言葉に京極は首を傾げた。「え? 出掛ける? やはり買い物……ですか?」「ええ、そうですね。色々買い物をしたいので」「あの、飯塚さん。これで買い物してきてもらえますか?」京極が黒い革の財布を手渡して来た。「え……? 何言ってるんですか!? 買い物位自分のお金で出来ます!」「ええ、そうかもしれませんが、食費位は出させて下さい」「食費……ですか?」「はい、そうです。こちらのライトミールセットは昼食と夕食のセットのみなので朝食分は買わないとならないので。あ、でもお米とか重い買い物をする時は僕に言って下さい」飯塚は自分が勘違いしていたことに気付き、思わず頬が赤くなってしまった。(な、何よ……紛らわしい言い方をして……。てっきりこのお金で何でも好きな買い物をしていいと言ったのかと思ったじゃないの……!)「で……では買い物に行ってきます!」飯塚は自分の勘違いを京極に悟られないように強気な態度でマンションを出た。**** ほぼ3年ぶりの外の世界だった。飯塚は新鮮な気持ちで町を歩いていた。ただ1点気に入ら
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-02
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<スピンオフ> 第2章 京極正人 9

「ただいま戻りました」飯塚がドアを開けてマンションへ戻ってくると、京極が慌てた様子で玄関までやってきた。「飯塚さん!」「な、何ですか? そんな血相を変えて……」レジ袋を下げた飯塚は京極の初めて見る慌てぶりに驚いた。「良かった……遅いから心配になってしまって」ふう~……と溜息をつく京極。「は? 遅いって……今何時ですか?」「15時...…ちょうどくらいです」「何ですか? 外出してまだ2時間も経過していないじゃないですか? 子供のお使いじゃないんですからいくら何でも心配し過ぎです」「ああ……すみません。ただ、今日引っ越してきたばかりでマンションの場所を覚えているか心配になってしまって。それで買い物は済んだんですか?」「ええ。これですけど?」飯塚がレジ袋を見せると京極はレジ袋をサッと取ってしまった。「ちょ、ちょっと……何するんですか!?」慌てる飯塚に京極は笑顔で答える。「荷物、僕が運びますよ」そしてさっさとリビングへ行ってしまう。「ちょ、ちょっと……!」慌てた飯塚は靴を脱いで玄関へ上がり込み、リビングへ向かった京極の後を急いで追った。(冗談じゃないわ! 履歴書なんか見られた日には……!)しかし、時すでに遅く……京極は既に袋から履歴書を取り出していた。「履歴書……ですか?」京極は飯塚を見ると尋ねた。「え……ええ! そうですよ? 見れば分かりますよね!? 働かなくちゃ食べていけないじゃないですか!」飯塚は自分でも良く分からない苛立ちを京極にぶつけていた。そう、今の生活がいつまでも続くとは限らないのだ。京極は他人、しかも被害者の兄である。普通であれば身元引受人は愚か、一緒に暮らすこと自体あり得ないことなのだ。だから飯塚は一刻も早く仕事を見つけなければならない。「あの、飯塚さん。実は……」京極が言いかけるのを、無理やり止めるように飯塚は口を開いた。「とにかく……19時には食事が食べられるように準備はしますから。私は仕事探しをするので、ほっといて下さ……!」そこまで言いかけて飯塚は大事なことに気が付いた。(そうだ……私、スマホも無ければ、PCも持っていなかったんだ……。これじゃ仕事探しなんて……!)悔しそうに下唇を噛む姿を京極は見つめながら語りかけた。「飯塚さん、僕は職業柄、数台PCを持っています。なので少し型落ちはし
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-03
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<スピンオフ> 第2章 京極正人 10

 京極から借りたパソコンは3年間刑務所に入っていた飯塚にとっては最新モデルに感じた。セキュリティもしっかりしており、ネットの速度も速い。飯塚はパソコンでインターネット求人サイトで検索をしながら呟いた。「何が少し型落ちはしますが……よ。これって最新モデルなんじゃないの? 私が3年間アナログ生活を送っていたからひょっとして馬鹿にしてるのかしら?」京極から性能の良いパソコンを借りておいて、飯塚は京極に対して文句を呟いていた。本当に自分でもどうかしていると思う。これほど良くして貰っているのに、感謝の言葉こそ言うべきなのに、素直になれない。それどころか、飯塚の失礼な態度や言葉遣いにも一切、言い返すことも無く、ニコニコと言うことを聞いてくれる京極。だからこそ余計京極には自分の訳の分からない苛立ちやうっぷんをぶつけてしまいたくなるのかもしれない。「本当に私って何やってるんだろう……。こんな性格だから家族にも友達にも見捨てられてしまったのかも……」飯塚はポツリと呟きながら、ネットで仕事の検索を続け……いくつか希望の職種を見つけたので、早速自分のプロフィールを入力し始め…‥手を止めた。「刑務所に入っている間の3年間……空白になってしまうけど、どうしたらいいんだろう……それに賞罰はどうするのかしら?」飯塚は自分が買ってきた履歴書を見た。そこには賞罰を記載する欄は無い。しかし、履歴書の書き方のサイトを見る限り飯塚は賞罰を記載する必要がありそうだ。(3年間の空白期間、私は傷害事件を起こし、刑に服していました……なんて書けるはずないじゃない!)いっそ、服役したことなんか書かなければば、ばれないのでは……? そこまで思い、飯塚は念のために自分の名前を検索に掛けてみた。「……!」次の瞬間飯塚は凍り付いた。そこには自分の名前と共に3年前の傷害事件が詳細に記されていたからである。「そ、そんな……」飯塚の身体は震えた。まさかと思い、試しに別の方法で検索を掛けてみるとまたもや自分の名前がヒットし、事件の内容が記されていたのである。「嘘……でしょう……?」しかし、そこに表示されている内容は紛れもない事実。さらに掲示板を見ると、そこには飯塚の起こした傷害事件について、面白おかしく書かれていた。そのどれもが誹謗中傷が多く目立つ内容ばかりであった。「フ……アハハハ……」飯
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-04
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<スピンオフ> 第2章 京極正人 11

 あれからどれくらい経過したのだろうか……。すっかり仕事を探す意欲を失ってしまった飯塚はふてくされた気分でベッドにゴロリと横になり、そのまま眠ってしまっていたのだ。そして突然外で1時報の音が響き渡り、おもむろに目が覚めた。「え? 嘘!? 私……寝ちゃってたの!?慌てて飛び起き、部屋の壁掛け時計を見ると時刻は16時を過ぎていた。「た……大変!」慌ててリビングへ行くと、未だにソファに座って仕事をしている京極の姿があった。「きょ、京極さん!」すると顔を上げて京極が飯塚を見つめた。「飯塚さん? どうしましたか?」「す、すみません! 私……うっかり眠ってしまって……食事の準備を……」慌てる飯塚に京極は笑みを浮かべた。「眠ってしまったと言ってもまだ16時ですよ? これから食事の準備をしても余裕で19時には終わるでしょうし……それに……」「それに……?」「僕は食事が何時になっても構いませんから気にしないで下さい」「は、はい。でもすぐに準備始めますね」飯塚はキッチンへ行くと冷蔵庫を開けて食材を取り出した。今夜のメニューとして届けられたのはタンドリーチキンカレーとサラダだった。お米も別に2合セットでついていた。しかもお米は無洗米と、どこまでも親切になっている。早速、お米を炊飯器に入れて水をセットすると飯塚は料理を始めた。しかし、料理と言っても肉も野菜も全てカット済みで、料理が好きな飯塚にとっては少々物足りないものだった。あっという間に準備を終え、鍋に火をかけるとすぐに飯塚はやることが無くなってしまった。(本当に京極さんは料理が出来ない人なのね。それとも私に気を遣って簡単に調理できるミールセットを選んだのかしら?)特にすることも無く、飯塚はキッチンからぼ~っと京極の仕事ぶりを見ていた。京極は真剣な表情でPC画面を見ながら、キーボードを叩き、時折電話が鳴っては応対している。(フン……忙しそうで何よりだわね。それなのに私は……)自分だって犯罪を起こすまでは、あの「鳴海総合商社」の本社。しかも秘書課に所属し、仕事をバリバリにこなすキャリアウーマンだったはずなのに……今は自分の犯罪履歴があるせいで飯塚はバイトにすら応募することに躊躇していた。(ネットで自分の名前を検索して出て来なければこんな惨めな思いはしなくて済んだのに……!)悔しさで下唇を噛ん
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-05
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<スピンオフ> 第2章 京極正人 12

「あ、あの……つまり専属秘書というのは?」飯塚はただの家政婦でいるのは嫌だった。すると京極はまるで飯塚の気持ちを汲んでいるかのように言う。「ええ、その名の通り家事以外にも僕の仕事の手伝いをお願いしたいと思っています。実は今僕が新しく作ったIT企業はベトナムで立ち上げたんですよ。本社は今のところベトナムですが、僕は日本に戻ってきたのでこちらで日本の企業を立ち上げて本社にしたうえでベトナムは支社に変更しようと思っていたところです。今現在日本に社員がいないので近々求人を募集しようかと思っていたんです。飯塚さんは日本の社員1人目ということでいかかでしょうか?」「私が……京極さんの企業の日本での初めての社員……?」それは夢のような提案だった。京極から直々の雇用なら履歴書も必要無い。何より当然自分の前科を知っている。そのうえでの採用であり、衣食住も提供してくれるなど、これほど恵まれたことは無い。だが……。「いいんですか? 本当に私みたいな前科者を雇って」すると突然京極が飯塚の両肩に手を置いてきた。「飯塚さん……」京極は今まで一度も聞いたことの無い低い声で飯塚の名を呼んだ。「な、何ですか……?」飯塚は京極の突然の態度に驚き、声を震わせ……その時、初めて京極の険しい表情を見た。しかし、その目はどこか悲し気にも見えた。(な、何て顔で私のこと見るのよ……!)すると強い口調で京極が言った。「飯塚さん、いいですか? もうむやみやたらに自分のことを前科者だとか卑下するような言い方はしないで下さい! 貴女は刑期を全うしたのです。普通の人たちと何ら変わりありません。もっと……自分に自信を持って、堂々と振舞っていればいいんです!」「わ、わかりました……」あまりにも今迄とは態度が豹変した京極を見て、飯塚は焦ったがそれでもこれでようやく自分は一社会人として、仕事を持てたのだと言うことを改めて実感するのだった。「では、飯塚さん。早速僕と雇用契約を結びましょう。今日中に僕が契約書の書類を作ります。出来上がったら飯塚さんに確認して貰って問題が無ければ雇用契約を結ぶことにしましょう」「はい、宜しくお願いします」飯塚は頭を下げた。そしてその後、2人は出来上がったカレーを食べ……飯塚が片づけをしている間に京極は契約書を作成し、その後2人で見直し、この日2人は社長と専属秘書とし
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-06
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