11月1日午前8時―― 今日は朱莉が東京へ戻る日である。当初の予定では明日香達が日本へ戻って来る日に合わせて東京へ戻るはずだった。しかし、新生児を迎えるにあたり、沖縄から発送したベビー用品を受け取って部屋を用意しておきたいと朱莉が姫宮にお願いをすると、すぐに姫宮は朱莉の提案を聞き入れてくれた。(きっと翔先輩にお願いしても断られていたかも。姫宮さんにお願いしておいて良かった)ただし、翔からは億ションに戻った後は子供を迎えるまでは極力目立たない行動を取るように念を押されている。 朱莉が梱包して発送したベビー用品はもう全て六本木に発送済みだ。今は必要としない朱莉の荷物も全てまとめて発送した。このマンションには家具・家電も含めて食器類も全て備え付けだったので、朱莉自身の発送した荷物は微々たるものであった。所有する車は既に数日前にフェリーで東京の方へ輸送手続きを済ませてある。明日には運転代行業の業者が億ションまで運んでくることになっていた。 朱莉が乗る飛行機の便は11時。那覇空港へ行くにあたり、モノレールを利用する予定であった。「早めに那覇空港へ行ってお土産屋さんでも見ていようかな……」朱莉は呟くと、部屋の掃除を始めた。今までお世話になって来た部屋なので念入りに掃除を始めた。夢中になって掃除をし、気が付いた時には9時半になっていた。「大変。もうこんな時間だ。早く出かける準備をしなくちゃ」着がえをし、簡単にメイクをすると最後に忘れ物が無いか部屋の中をざっと確認し、足元にいたネイビーを抱きあげた。「ネイビー、いよいよ東京へ帰るよ」そして暖かなネイビーの身体に顔を寄せた。 キャリーバックにネイビーを入れ、ショルダーバッグにキャリーケースを持って朱莉はマンションを出た。そして自分が今まで住んでいた部屋に向かってお辞儀をした。(今までお世話になりました)心の中で感謝の意を述べると、朱莉は那覇空港へ向かった——**** 朱莉は那覇空港へ向かるモノレールの中で物思いにふけっていた。実は一つ気がかりなことがあったのだ。それは京極に黙って沖縄を去ること。本来であれば京極は朱莉を追って沖縄へやって来たようなものなので、本日東京へ戻ることを告げるべきなのかもしれない。しかし、何故突然戻ることになったのか尋ねられた場合、朱莉は答えることが出来ない
Last Updated : 2025-04-29 Read more